鬼ごっこ? なにそれおいしいの? なんて展開から派生したお食事会は無事に終わり、死んだ世界戦線と生徒会の絆が深まった。それが事実かどうかは別として素うどんおいしかったです。
そしてそれから数日経ったある日、戦線メンバーはブリーフィングルーム、またの名を校長室にまたもや集められた。言わずもがな、仲村さんからのお呼び出しである。
「さて、今日集まってもらったのは他でもないわ」
定位置に座り腕を組んだ仲村さんが言った。
「……質問、いいか?」
おずおずと手を上げた音無くん。
「まだ何も言ってないじゃない」
ごもっともである。やらなきゃいけないような気がした、とか言ってるけど音無くんも大概染まってきているようで嬉しい限りです。仲村さんもご満悦の様子。
「では改めて。まずは連絡事項よ。遊佐さんよろしく」
結局遊佐ちゃんなのね。そんな気はしてたけども。
「ゆりっぺさんに代わりましてお伝えします。遊佐です」
スッと一歩前に出て遊佐ちゃんが口を開く。
「本日付けで陽動部隊、ガールズデッドモンスター、失礼、Girls Dead Monsterは5名で活動をしていただきます。ユイにゃんさん、こちらへ」
何で言い直したのだろうか。やたら発音良いし。ほら、日向くんめっちゃうずうずしてる。つっこみたくてしょうがないって顔してる。
「どーも! 今日からガルデモ! ユイにゃんガルデモ! ユイにゃんです!」
「何言ってんだこいつ」
思わず口からもれちった。
「ふっふっふっ! 先輩! 事実が受け入れられていないんですね! この事実が! ユイにゃんガルデモに電撃加入と言う事実が! 事実が! じーじーつーがっ!」
「ユイにゃんうっさい」
「なんでなんでなんでなーんーでー! ほーめーてーよー!」
「その髪、地毛? 脱色していい?」
「はーなーしーきーいーてー!」
コホン、と誰かが咳払い。遊佐ちゃんでした。ユイにゃんと一緒にごめんなさいしておいた。
「続きまして、翌日にある球技大会についてお話しします」
あ、やっぱりなんか仕掛けるんだ。仲村さん何か考えてたもんね。
「それについては私から言わせてもらうわ」
ここぞとばかりに仲村さんが発言。遊佐ちゃんがつまらなそうに一歩下がります。ドンマイ。
「遊佐さんの話にあった通り、明日は球技大会があるの」
「へぇ、そんなものがあるのか」
音無くんは知らなかったようです。まぁ、俺も少し前に仲村さんに聞いて知ったんだけど。
「ライブでもやって邪魔するのか?」
日向くんが少し悪い笑みを浮かべて言う。その言葉に一番反応したのは仲村さんや音無くんではなく、岩沢さん。先日楽器も戻ってきたし、ユイにゃんも正式に加入したしでライブやりたくて仕方ないみたい。
「いいえ、ガルデモは新メンバーも増えたばかりだし、5人体制に慣れるまではライブでの陽動は行わないつもりよ」
だそうです。残念だったね岩沢さん
「ん、今回は仕方ない」
「あれ、意外にすんなり引き下がったね」
「この間楽器が戻ってきたばかりだしな。まだ5人でのちゃんとした音合わせはやってない」
「そっか。じゃあライブはまた今度だね」
「すぐにやってやるさ」
「楽しみに待ってます」
「ん、期待してていいよ」
な、と岩沢さんがガルデモの皆に視線を投げる。その中にはもちろんユイにゃんも含まれており、一瞬遅れてから、びっくりさせてやるぜコラー! 今からとても楽しみです。
「ひさこちゃんひさこちゃんひさこちゃん」
「連呼すんな」
「うん、ライブのときはカメラとか持ってった方がいい?」
「ライブ中は原則カメラ禁止。第一お前持ってないだろ」
「チャ―さんに作ってもらう」
「いや、仕事増やしてやるなよ」
「ですよね」
残念だけど、仕方ない。てかそもそもチャ―さんはカメラ作れるのだろうか?
「関根ちゃんは、まぁ、いいや」
「異議あり! なっつん異議あり!」
「発言を認める」
「えっ」
「えっ」
「白状します。却下されると思って何も考えてなかったです」
「素直でよろしい。そんな関根ちゃんには差し入れに素うどんを持って行きます」
「ハムッ、ハフハフ、ハフッ!!」
「熱いから気を付けてね」
「うぃ」
ほんとは甘いものがいいなー。ん、なんかケーキ的なもの持ってく。やったー。
「入江ちゃんも頑張ってね。応援してる。超してる。ハイパーしてる。あ、横断幕とかいる? 作るよ?」
椎名さんが。裁縫とか得意なんだってさ。仲村さんが言ってた。
「え、えと、いや、ちょっと……」
「入江ちゃんが俺の応援なんかいらないって言う。傷ついた。超傷ついた」
「えっと、ダウト」
「お?」
「なんかこのやり取りも慣れて来た、かも……?」
「この調子で適当に相手してくれると嬉しいです」
「がんばる……!」
「うん、ライブに向けて頑張ってくだしあ」
「あ、そ、そうだね。ライブがんばる……!」
この子は本当に大丈夫なのだろうか。少し不安である。
「そしてユイにゃんめんどい」
「そこは応援するところー!」
「俺なりに精一杯応援してるつもり」
「罵倒してるの間違いだろテメー!」
「うわ、すごくめんどくさい」
「ユイにゃんにもカメラとか差し入れとか頑張ってとか言ってよー!」
ガックンガックンされてます。なんか最近これに慣れ始めてる自分が嫌。
「頑張ってカメラを差し入れに持ってく」
「そんなもんいるかコラー! ユイにゃんも甘いもの! 甘いもの! あーまーいーもーのー!」
「甘いもの? 大学芋でよろしいか?」
「あ、割と好きです」
「マジか」
予想外の反応。
「芋けんぴとかも好きだったりします!」
「あ、ユイにゃん」
「はい?」
「いいからじっとしてて」
「え、このシチュエーション、まさかキス――」
「芋けんぴ、髪に付いてるよ」
「う……わー」
「うん、ありえないよね」
「ありえませんね! 髪に芋けんぴくっついてたら普通にわかると思います!」
「差し入れで持ってくから髪に付けてライブ出てよ」
「嫌です!」
「ですよね」
ガルデモの人たちとそんなくだらないやり取りをしていたら、不意に仲村さんが声を張った。
「そういう訳だから皆頑張ってちょうだいね! はい、解散!」
どう言う訳なのだろう。
「岩沢さん聞いてた?」
「ん、主に洋楽を」
「話聞いてよ」
この人に聞いた俺がアホでした。しかし、仲村さんの話なんも聞いてなかった。ガルデモの人たちも聞いてなかったみたいだけど、俺のせいじゃないと思う。
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