えんぜるびっつ。   作:ぽらり

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「えーと、つまり、アレだ。まとめると、日向くんは球技大会のメンバー集めをしていた、と」

 

「そうだ。で、まだ人数が足らないからお前を探してたってワケだ」

 

「えっ? 俺? 運動苦手だって知ってるよね?」

 

「それがどうした。俺はな、ナツメ、お前と野球がやりたいんだ」

 

 だそうです。俺の所に来るくらいだからよっぽどチームに入ってくれる人がいないんだね。哀れ日向くん。

 

「とりあえず座ってお話ししよっか。お菓子あるよ」

 

 屋上で行われていたお菓子パーティーに日向くんと音無くんと野田くんと椎名さんを追加。すでにいたガルデモメンバーを加えると中々の人数。うーん、これはお菓子足りるか不安です。

 

「ちなみに球技大会って何やるの? ひな、やっぱ音無くん」

 

「え、ああ、野球だそうだ」

 

 なんでだよ!? とか日向くんが何か言ってるけど聞こえない。不思議だね。我ながらなんと都合の良いお耳。

 

「となると、俺入れてもメンバー足らないね。どうすんの?」

 

「そうなんだよな。ナツメはあてとかないか?」

 

 ユイにゃんが! ユイにゃんが! ここに期待の助っ人美少女が!

 

「なくもないことはないようなそうでもないような」

 

「ないんだな?」

 

 打つぜー! 超打つぜ―! ユイにゃんにおまかせあれー!

 

「えっと、メンバーはここにいる音無くんと日向くん。野田くんに椎名さんだよね?」

 

「あとお前な」

 

 地元で名を馳せに馳せたこのユイにゃんがいれば勝ったも同然! サントアンヌ号に乗ったつもりでいて下さいよー!

 

「あと四人だね。NPCの人達に協力してもらうことってできないの?」

 

「なるほど、その手があったか。あー、でもアレだ。ゆりに睨まれるかもしれん」

 

 ところでサントアンヌ号と言えば豪華客船と銘打ってはいたものの一年中短パンしか穿かない子憎とか単純に趣味に特化していた釣りしてる人とか乗ってましたよね。しかもアニメで沈没してましたし。

 

「そだね。できれば戦線メンバーでチーム組んでおきたいね」

 

「でも目ぼしいところはもう押さえられてる感じなんだよ。日向の人脈が凄くってさ」

 

 ハハッと笑う音無くん。実は鬼畜の才能があるようです。日向くんがへこんでる。入江ちゃんがそっと差し出したチョコバットはきっと入江ちゃんなりの慰め。でもアウト。追い打ちですね、わかります。

 

「かーまーえーよー!」

 

 ドーンとユイにゃんが横からタックルをしてきた。いたひ。

 

「めんどくさいです。とても」

 

「かまってよー!」

 

「うわぁ、いつにも増してめんどくさいことこの上ない。どうしてくれようこいつ」

 

「かまってってばー!」

 

 何このかまってちゃん。すごくめんどくさい。音無くんとかもう視界に入れてすらないし。その気持ちわかります。

 

「じゃあ、ユイにゃんあと四人心当たりある? 野球やってくれそうな人」

 

「おまかせあれーって、ちょっと待てコラー! さりげなくユイにゃん除外してんじゃねーぞテメー!」

 

「うん、心当たりあるの?」

 

 音無くんもそこは引っかかったみたいでようやくユイにゃんを視界に収めた。ようやくね。

 

「いやいや、心当たりがあるもなにもここにいるじゃないですか」

 

 え? と音無くんと顔を見合う。それから改めてここにいる人を見回した。音無くん、日向くん、野田くん、椎名さん、ユイにゃん、岩沢さん、ひさ子ちゃん、関根ちゃん、入江ちゃん。そして、俺。以上10人。そう、10人。

 

「おお、なるほど」

 

 ひさ子ちゃんは高松くんのチームに入ったとか言ってたからチームには誘えないにしても残りは9人。

 

「野球、できるじゃん!」

 

 盲点だったと言わんばかりの表情をした音無くんの横で日向くんが嬉しそうに言った。

 

 

 

「改めて見ると不安になるメンツだな……」

 

 男子高校生さながらのお世辞にも綺麗とは言えない字で書かれた即興オーダー表を見ながら日向くんが呟く。場所は自動販売機前。甘いお菓子ばかりだったためか、音無くんが苦味を欲したので男子メンバーのみ移動したのだ。ついでに女子メンバー(岩沢さんを除く)の飲み物も買って来いとのお達しがあったが、けしてパシリではないと言っておく。ここ大切。

 

「よかったね。三人とも参加してくれて。特に岩沢さん」

 

 実はここに来る前に岩沢さん、関根ちゃん、入江ちゃんへのメンバー勧誘はすでに終わっていたりする。快く、とは言えないまでも日向くんの話術(笑)によって彼女達は参加してくれるようだった。しかし、人のことは言えないけども、運動得意そうには見えないね、あの三人。

 

「まったくだぜ。しかし、まさか岩沢まで参加してくれるとは」

 

 自分で誘っといてなんだけどダメもとだった、と日向くんは言った。確かに興味のないことにははっきりとその意思を示す岩沢さんが参加してくれる確率は結構低い。しかし。

 

「でも一つだけ。岩沢さんは何やるか分かってないかと思われ」

 

「……冗談だよな?」

 

 岩沢さん慣れしていないのがよくわかる。引きつった笑顔の日向くんだけども、酷だが言うしかあるまいて。音無くんと目が合った。下されたGOサイン。では遠慮なく言わせていただこうか。

 

「岩沢さん、始終話聞いてなかったと思う」

 

「参加してくれって頼んでちゃんと返事したぞアイツ」

 

「パターン岩沢。返事だけです」

 

 ぶっちゃけ良くあるらしいです。ひさ子ちゃんが愚痴っていたのを聞いたことある。あの子もなかなかの苦労人なのです。と言うか、岩沢さん関連に関してはあの子が一番の被害者かもしれぬ。てかそもそも聞いてたとしても、岩沢さんは野球できるとは思えない。まぁ、関根ちゃんと入江ちゃんもそうなんだけども。

 

「し、しかしっ! 言質は取ってる! 無理やりにも参加させてやるぜ!」

 

「まぁ、言ったからには参加してくれるとは思うけども」

 

 これは負けかもわからんね。日向くんには申し訳ないけども、メンバーに不安がありすぐる。もちろん、俺も含めて。

 

 で、このあとは適当に女子メンバー達の分の飲み物を買って屋上へ戻りました。ひさ子ちゃんにおせーぞーとか文句言われたけど甘い物食べてたからかニコニコしてて全然怖くなかったです。しっかり女の子してるね。

 

「ところで音無くん。いつの間にか野田くんいないけども、どこ行ったの?」

 

「さぁ?」

 

 まぁ、いいか。明日会うだろうし。今日は皆で夜までこのままお菓子パーティーする所存です。

 

 


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