えんぜるびっつ。   作:ぽらり

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 順調にゲリラ参戦を果たし、順調に勝ち進んだチーム高松とチームクライスト(笑)。そんな彼らに対して、俺達も負けてらんねー、と息巻く日向くんを先頭に第一会場へと赴く。当然の如く歓迎はされずにまたか、とぼやかれるもこちらのチームは誰も動じない。実に図太い神経の持ち主達が集ったものだと感慨深くなる。なんて思いつつ、日向くんの人望に一抹の不安を感じている俺を尻目に、我らがキャプテン日向秀樹は球技大会への参加権利を勝ち取った。どうやらユイにゃんがアシストしていたみたいだけども、きっと役に立ってないだろう。むしろ邪魔していたと思う。不思議とそんな気がするのだ。でもそれがユイにゃんクオリティー。

 

「いわさわさんせきねちゃんいりえちゃん」

 

 参加交渉後、意気揚々と自軍のベンチへ向かう日向くん達を追う途中で歩きながら三人に声をかける。

 

「ん?」

 

 なんだなんだー、と興味津々の様子で近寄ってくる関根ちゃんと違い、岩沢さんは僅かに視線だけを向けて返事をする。入江ちゃんはなにー? と小首を傾げながらトテトテと寄って来た。なにこの小動物かわゆい。

 

「実はかくかくしかじかで」

 

「ん、これこれうまうまね」

 

 消えそう云々とかを適当にぼかしつつ、試合中に日向くんにイタズラしようZE☆と提案。岩沢さんはあまり興味なさそうだったけど、手伝ってくれるそうで。入江ちゃんは少し渋ったけど、言わずもがな乗り気も乗り気な関根ちゃんに後押しされる形で了承。残りの三人は試合中に声をかけるつもりです。

 

「うし、ここで負けたら罰ゲーム決定だからな」

 

 ベンチの前で円になり一人一人の顔を見回した日向くんが言う。そう言えばそんな話もあったね。

 

「一番、ピッチャー音無」

 

 そう続けて音無くんを指差す。前に軽く打順やポジションは決めていたので特に驚くこともなく音無くんが頷く。

 

「俺はっ!?」

 

「まぁ、待て。待つんだ野田。二番は俺。ポジションはセカンド」

 

 自分より先にあがった音無くんの名前に過剰反応を示した野田くん。そんな彼を嗜めつつ、日向くんはオーダーを発表していく。

 

「椎名っち、三番でショートな」

 

 浅はかなりではなく心得たと小さく頷いた椎名さん。野球初心者らしいけども、何故か頼もしい限りです。

 

「そして四番キャッチャーが、お前だ」

 

 わざとらしく野田くんの肩に手を置き、頼んだぜとばかりに熱い視線を送る日向くん。さすがの野田くんも四番の意味は理解していたらしく、満更でもない様子だ。チョロいな野田くん。

 

「ただし、走者一掃しないとお前の負けだからな」

 

「容易いことだ」

 

 日向くんは発破をかけるのも忘れない。やはり付き合いが長いだけあるのか、野田くんの扱いが上手い。ユイにゃんが茶番乙ですね! と言ったのは仕方ないと思う。

 

「次は関根。サード頼んだぜ」

 

「だが断る」

 

「なんでだよっ!?」

 

「あたし野球やったことないんですよー。それに女の子ですしおすし」

 

 野球自体をやったことない上に五番と言う大役には抵抗がある様で、あたしには無理ですよーなっつんいるじゃないですかーと言う関根ちゃん。まぁ、そうなるよね。

 

「ナツメは運動神経がアレだから。ひさ子から聞いた話だとお前の方がマシなんだとさ」

 

 なん……だと……? あまりの事実に驚きを隠せない、と言うのは冗談でそんな気が薄々してた。自分の運動神経の無さはある程度自覚しております。そして、関根ちゃんが渋々納得して引き下がる。なんかゴメンね。

 

「で、次が岩沢。センターな」

 

「ん? 歌っていいのか?」

 

「守備位置な。センターマイクじゃない」

 

 なんだ、とつまらなそうに岩沢さんが言う。この人これから野球をするってことわかってるのだろうか。多分、チーム全員が同じことを思ったに違いない。人選ミスかな、と日向くんが呟いたけどはっきり言おう。人選ミスです。

 

「七番ファースト、ユイ」

 

 気を取り直して日向くんが続ける。

 

「お、ラッキーセブンですねー! ユイにゃん頑張っちゃいますよー!」

 

「やる気があるのがせめてもの救いだな……」

 

「ところでファーストってなんですか?」

 

「……後で説明するから待ってろ」

 

 軽く頭痛を覚えたのか、頭を押さえて苦悶の表情を浮かべた日向くん。胃薬とかも必要になるかもわからないね。救急箱あったかな。遊佐ちゃんに用意してもらえば良かったかもです。

 

「入江はーー」

 

 日向くんはそこまで言って言葉を飲み込んだ。何事だ、と日向くんを見てから入江ちゃんを見たら、あら大変。入江ちゃんが顔を青くして小さく震えてます。何事でしょうか。

 

「だ、大丈夫か……?」

 

 引きつった笑顔で恐る恐る声を掛け直した日向くんに向かって入江ちゃんが小さく頷いた。

 

「そ、そうか。お前は八番レフトだ」

 

 つつー、と入江ちゃんの目から涙が零れた。

 

「みゆきちを泣かすなーっ!」

 

 関根ちゃんがオーバードライブ。先輩だろうが関係ねぇー! と掴みかからんばかりの勢いで日向くんに詰め寄る。そのままギャーギャー文句を言い、日向くんもギャーギャー言い返す。収集つかなそうなので、先に静かに泣き始めた入江ちゃんの様子を伺います。

 

「どしたの? お腹痛い?」

 

「……だいじょぶ」

 

「無理して出なくても大丈夫だと思われ」

 

「……だいじょぶ。でる」

 

 そう言われてもとても大丈夫そうには見えない。無理やりにでも休ませるべきかと音無くん辺りに判断を仰ごうとしたら、入江ちゃんの頭に手が置かれた。岩沢さんである。

 

「ん、いつも通りでいいよ」

 

 そのまま入江ちゃんの頭を撫でる。安心したように入江ちゃんの顔が緩む。顔色も僅かにだけど良くなってきているみたい。どうやら緊張してただけのようです。そして、そこへ日向くんとのお話が終わった関根ちゃんが横からドーン。入江ちゃんに抱きついた。

 

「大丈夫。あなたは死なないわ、あたしが守るもの」

 

 綾波乙。できれば入江ちゃんではなくサードを守ってほしい。で、神妙な顔した関根ちゃんの発言で雰囲気がぶち壊れてなんとか一息。そんな時、不意に肩に手を置かれた。心底疲れた顔した日向くんでした。

 

「九番、ライト」

 

「知ってた」

 

 試合前からすでに疲れてる人もいるみたいだけど、試合自体は何事も無かったかように開始されます。先行は我々チーム日向。では、プレイボール。

 

 

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