皆さんこんにちは、お昼のナツメです。なんつって。さて、意気揚々と参戦したこの球技大会の第一回戦。現在のスコアは我らが野田くんの満塁ホームランによる走者一掃で一挙四点を加算し7-0と大きく引き離して勝ち越しています。このまま守りきればコールドゲームとなり我々の勝利なのですが、実はまだこの回はアウトカウントが一つも無いのでもう少しだけ攻撃が続きます。さぁさぁ、お次のバッターはどこのどいつだい?
「あたしだよ!」
「関根ちゃんでしたか。そうでしたか」
「てゆーかなんで試合続くの? 7点取ったら終わりじゃないの?」
「こっちが先攻だからだね。この点差のままでもう一回守備ついて守りきれば」
「――コールドゲームだ」
あぁん、俺の台詞ぅ。
「関根せんぱーい! かっ飛ばしてきちゃってくださいねー!」
「ユイ、現実を見よう。無理だから。あたしみたいな素人の女がいきなりバット持ったところで打てるはずないじゃない」
「そうだ……っ! この世界は、残酷なんだ……!」
「あたし達にできることは、あのピッチャーをこのバットで……!」
「特に理由の無い暴力が相手のピッチャーを襲うー!」
「行くぞユイ! 駆逐してやるー!」
「してやんよー!」
今日も相変わらず仲の良い関根ちゃんとユイにゃんです。微笑ましいね。
「ナツメ、そろそろあの二人止めてくれ」
「ヤダ。日向くんが行けばいいジャマイカ」
「一般人が奇行種を止められる訳ねーだろ」
「ジャマイカはスルーですか。そうですか」
「真面目な話、いい加減試合進行の妨げになってるとか言われちまう。無効試合とかになっちまったらゆりっぺに何言われるかわかったもんじゃねーぞ」
「岩沢さん、よろ」
「ん」
怒られるの嫌です。でも俺が行くとそのまま巨人化しちゃいそうだからここは岩沢さんにお任せ。駆逐しちゃってくださいな。
「じゃあ、みゆきち、なっつん。行ってくるね!」
「しおりん、ファイトっ」
「いてら。ケガしないように適当にやり過ごしてくだしあ」
岩沢さんから何を言われたかは分からないけども、何故か元気いっぱいの様子で打席へ向かっていく関根ちゃん。やる気があるのは良いことだ。日向くんが何度も頷きながら言っていた。やる気と結果って比例しないよねって言ったらほっぺを抓られた。痛かったでござる。入江ちゃんに慰めてもらおうかと思ったけども、真剣な眼差しで関根ちゃんを見てたから遠慮して野田くんと遊ぶことにしました。だって暇そうにしてたんだもの。
「野田くん、さっきのホームラン凄かったね」
全然見てなかったけども。
「あの程度、誇ることでもない」
「またまた謙遜しちゃって。後で仲村さんに感想聞かなきゃね」
見てなかったと思うけども。
「ゆ、ゆりっぺは、見ててくれただろうか……?」
「ちゃんと伝わったんじゃないかな」
耳から。遊佐ちゃんが報告はしてると思うし。
「そ、そうか。そう思うか」
「え、うん」
遊佐ちゃんの仕事はとても信用できますので。そう言えば遊佐ちゃんはまだ屋上にいるのかな、と思ったら普通にフェンスの後ろにいました。いつの間に。あんなに綺麗な金髪さんだし、戦線の制服着てるしで割と目を引くはずの遊佐ちゃんなんだけども不思議と存在感がなく目立っていない。いつからいたのか、全く気が付かなかった。
「そもそも俺とゆりっぺの出会いは」
今思うと俺は遊佐ちゃんのことをあんまり知らない。まぁ、自分自身のこともよく知らないんだけども。そして、これはあくまで推測。たぶん、戦線のメンバーの中でも遊佐ちゃんのことを深く知っている人は少ないんじゃないかと思う。特別、自分から情報を発信するタイプではないだろうし。もしかしたら誰も知らないなんてこともあり得るかもしれない。そんな時、遊佐ちゃんと目が合った。見過ぎた様だ。
「その時だ、俺は咄嗟に」
しばし見つめ合い、不意に遊佐ちゃんが右手をあげた。ぶいサイン。遊佐ちゃんぐうかわ。
「おい、聞いているのか?」
「うん、かわいいは正義」
「そうか。そうだな!」
過去とか知らないけども別に気にしないよね。いいお友達です。
「あ、ときに野田くん。実は手伝ってほしいことがあるのですが」
「断る」
「仲村さんからの指令だったりするんだけども」
「……なぜ貴様がゆりっぺから直接指令を?」
「遊佐ちゃんと仲良いからかと。連絡もつきやすいし」
「……なるほど」
「ん、手伝ってくれるとみました。と言っても具体的なことは何も決まってないんだけどね」
「どういうことだ?」
「とりあえず、追って連絡するので頭の片隅にでも置いておいてくだしあ」
「ゆりっぺの頼みとあればやぶさかではない」
「ん、よろです」
チョロいね! 野田くんにチョロインの称号をあげてもいいんじゃないかと思う。間違いなくヒロインじゃないけども。あと気が付いたら関根ちゃんは三振してました。お疲れ様。1アウトです。
そして、次のバッターは岩沢さん。一応構えてはいるけれども、岩沢さんからは打つって言う気概が微塵も感じられないのは何故だろうか。あ、岩沢さんだからか。納得。
「お前って結構薄情なとこあるよな」
「音無くんには負ける」
割と本気でそんな気がする。
「ゆりから聞いた。岩沢、消えかけたんだってな」
「ん、未練たらたらで残留してるけどね」
「残留か。岩沢が残るって、ここにいたいって、そう思ったってことだよな?」
「そだね。まだこの世界でガルデモの皆と歌いたいって言ってた」
そして岩沢さんバッターアウト。見事に一回も振らなかったよあの人。
「……アイツはどうなんだろうな」
呟く音無くん。アイツって誰でしょうか? なんて疑問は浮かばずに真っ先に浮かんだ青い顔。違った。青い人の顔。つまりブルーメン。
「音無くん的には日向くんに消えてほしくない感じだ」
「――そう、だな。うん、多分、きっと、消えてほしくないんだろうな、俺は」
「うん、そんな音無くんに朗報ですお」
「朗報?」
「今日、日向くんが消えるのを阻止します。協力者は本人と音無くんを除いたこのチームの人たち」
「……本気か?」
「ん、割とみんな乗り気なようで何よりです」
みんなゲスだね。人の成仏邪魔しようってんだからさ。
「俺は……」
「まぁ、具体的に何するとか決まってないけども、音無くんも協力してくれると楽しい、違った。嬉しいです」
「……考えさせてくれ」
さて、あんまり見てなかったけども、いつの間にか打席にいたユイにゃんが三振したようなので守備にでもつきませう。うん、これが最後になることを祈ってます。もう動きたくないです。
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