えんぜるびっつ。   作:ぽらり

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「ようFカップ」

 

 不意に立ち寄った食堂にて偶然にもひさ子ちゃんと邂逅。お一人様でした。ご一緒しましょう。そうしましょう。

 

「……またお前かよ」

 

 そんな心底嫌そうな顔しないで下さいよ。傷つくじゃないすかやだー!

 

「それ肉うどん? ガルデモの人って肉うどん好きだよね」

 

「お前だって素うどんばっかじゃねーか」

 

「ノンノンノン。スープ・ウィズ・ウ・ダンヌ」

 

 ここ大事。

 

「要は素うどんだろ」

 

「そうとも言う」

 

 むしろそうとしか言わねー。言うんじゃない、感じるんだ。うっせ。なんてやり取りをしつつ向かいに着席。座んなよとか言ってるけど、無視して着席ったら着席。ツンデレですよ、わかってました。

 

「ひさこちゃんひさこちゃんひさこちゃん」

 

「ちゃん付けで連呼すんな」

 

「ひさコング先輩」

 

 スネ蹴られた。普通に痛い。

 

「不服と申すか」

 

「申さないヤツがいるなら会ってみてーよ」

 

「しかし藤巻くんには大ウケの様です」

 

 少し離れたテーブルを指差せば、腹を抱えて机に突っ伏した藤巻くんがプルプルしてます。コング発言した時点で水を吹き出してたのは確認しますた。ちなみにその水を盛大に浴びたのは向かい合って座っていた大山くん。哀れなり。

 

「てめっ、藤巻ぃ! 笑ってんじゃねー!」

 

 無理言うんじゃねー、とのお返事。変なあだ名が定着しないと良いね。

 

「ひさ子ちゃん、がんばっ!」

 

「うるせーよ。てかそのちゃん付けもやめねーか? 普通にひさ子でいいんだけど」

 

「ヤダ、つまんない」

 

 うわっ、すごい顔された。とても華の十代である女子高校生のする顔とは思えない。でもスネ蹴られないだけマシか。と思ったらスネに激痛。時間差とは小癪なことを。

 

「お前と話すと疲れる」

 

「岩沢さんとどっちが疲れる?」

 

「……お前」

 

「今の間は何だろうね。岩沢さんに代わって小一時間ほど問い詰めたいんですが構いませんね!」

 

「もうお前めんどくさいー。帰れよー」

 

 とか言いながらスネをゲシゲシするのやめて下さい。足ずらしても同じ位置をピンポイントで蹴ってくるひさ子ちゃんには脱帽です。足に目でも付いてんじゃないのこの子。

 

「……お前、なんかちょっと関根と気が合いそうだな」

 

「関根? 誰それ?」

 

 残念ながらそんな友達も知り合いもいなのですよよよ。

 

「ガルデモのベース弾いてるヤツ。会ったことないのか?」

 

「ひさ子ちゃんと岩沢さんだけしか」

 

 そもそもひさ子ちゃんと会ったのも最近だよね。そだな、今度練習見に来れば? 暇があったら行く。お前いつも暇じゃん。ですよね。

 

「差し入れはラー油でよろしいか?」

 

「なんでラー油? そのチョイスがわかんねーよ」

 

「ラー油はお嫌いですか? 醤油の方がお好みですか?」

 

「調味料を選択肢から外せ」

 

「調味料の大切さを知らないとは。これだから料理できない人は……」

 

 まったくやれやれだぜ。きっと料理のさしすせそ言えないよこの人。

 

「砂糖、塩、酢、醤油、味噌」

 

「どや顔ワロタ」

 

 ああん、スネ痛い。

 

 

 

 楽しいお食事会の後、ひさ子ちゃんと食堂で別れて腹ごなしがてら校舎内を闊歩する。かっぽかっぽ。馬の足音っぽい擬音だね。別に蹄は無いけども。

 

「なっつん先輩見っけー!」

 

 めんどいの来た。

 

「ユイにゃんめんどい」

 

 自称小悪魔系パンク美少女のユイにゃん。割と戦線加入当初から仲良くなった子です。でもめんどくさいのがたまにキズ。

 

「会うなり何ですかその言いぐさー! せめてオブラートに包めやコラー!」

 

「オブラート? なにそれおいしいの?」

 

「あ、基本的にオブラートは無味無臭ですね。味の付いてるものもあるそうですが、そもそもの使用用途がお菓子とか薬の包装ですのでそれに味を求めるのもどうかと」

 

 ヤダこの子博識。そんなムダ知識どこで仕入れたのだろうか。

 

「それより聞いて聞いてー! 先輩聞いてー!」

 

「聞くから離れて。あと俺1年だから。先輩じゃないから」

 

 うん、実は1年生でした。俺含め、誰もあんまり気にしてないんだけどねー。みんな優しい(遠い目)。

 

「今更呼び方変えるのもめんどくさいんでこのままいきます」

 

「文字にして4つ程とるだけなのですが」

 

 むしろ省略できて良いのではないでしょうか?

 

「じゃあ、先輩で!」

 

「なぜ名前の方を省略したし」

 

 実は、と言うか戦線メンバーには大抵当てはまるけども、この子も例に漏れず中々ぶっ飛んだ子です。頭のネジが5、6本足りてないとは戦線主要メンバーである日向くんの言葉。割と的を射てるかと。

 

「そんなことより、さっき岩沢先輩に会ってたんですよ! 凄くないですか? ユイにゃんスゲー! てめぇも褒めろよオラー!」

 

 うわぁ、テンションたけぇ。

 

「うん、よかったね。ユイにゃん岩沢さん好きだもんね。2人で何してたの?」

 

「岩沢先輩は自動販売機で水買ってました!」

 

「ユイにゃんは?」

 

「それを陰から見てました!」

 

「ユイにゃん、それは会ってたじゃなくて見かけたと表現するのが正しい」

 

 言い方って大切。それに今のはなんか聞き様によってはストーカーっぽいのであまりよろしくないかと。

 

「話しかければよかったのに」

 

「そんな恐れ多いことできるかー!」

 

 一体この子の中で岩沢さんはどんな扱いなのだろうか。無駄に神格化とかされてないかちょっと心配になります。が、しかし。だが、しかし。

 

「そう言えば俺さっきまでひさ子ちゃんと一緒にご飯食べてたんだぜ(ドヤァ」

 

 ふはははは、どうだ羨ましかろう。実際蹴られまくっただけの様な気がしなくもないんだけど、事実は事実なのだ。でもまだちょっとだけ脛がズキズキしてるのはここだけの秘密なんだぜ。

 

「そんな、一緒にご飯食べてるだけでも羨ましいのに、その上あのひさ子先輩をちゃん付けだなんて……」

 

「むしろ呼び捨てで良いくらいに言われますた」

 

「い、何時の間にそんな親しくなりやがったんですかこの裏切り者ー!」

 

「一体いつから――味方だと錯覚していた?」

 

「何……だと……?」

 

 驚愕の事実に顔を歪ませるユイにゃん。戦線の人って大概ノリが良くて助かります。

 

「まぁ、何はともあれ、今度そういう機会あったら声掛けますよ」

 

「絶対ですよ! 嘘吐いたら屋上からヒモ無しバンジーの刑ですからねー!」

 

「節子、それバンジーやない、飛び降りや」

 

 そんな感じでしばらく2人でワイワイやってました。この子と絡むといつもこんなもんです。

 

 


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