えんぜるびっつ。   作:ぽらり

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「と言う訳でお邪魔しますけども構いませんね!」

 

「アナタのチームはまだ試合中だと思ったのだけど?」

 

 宣言通りに戦線本部である校長室にお邪魔しています。色々とご相談があったりなかったり。今はいないけども、来るときに遊佐ちゃんにも声かけたのでそのうち来ると思います。

 

「とりあえず一回戦は勝った。7-0の」

 

「――コールドゲームね」

 

「みんなわざとやっているんじゃなかろうか」

 

 そんなに俺に言わせたくないのだろうか。

 

 

 

「それで? 何しに来たの? ありがと」

 

「粗茶ですが。ちょっとお話が」

 

 お茶を淹れて、一息。話すことをまとめます。まずはなんだろう。インカムのことは遊佐ちゃん来てからでもいいし、日向くんの件もインカムあった方がやりやすいから話的には繋げておきたいよね。うん、じゃあまずはあの話題だ。

 

「昨今の若者の食の乱れについて」

 

「嘆かわしいことね。私にもいるわ、食生活の乱れている友人が」

 

「心中お察しいたします」

 

「その人、素うどんしか食べないのよね」

 

「ですよね」

 

 だと思ってました。では改めて。

 

「打ち上げって、いいよね」

 

「否定はしないけど、手持ちには手持ちの良さがあると思うわ」

 

「うん、ネズミ花火とか投げ付けたくなるよね」

 

「持ってないじゃない」

 

「そうだね、爆竹もだね」

 

「また持ってないわね。放置系がお好みかしら?」

 

「投擲系が好きです。でも花火やる時は何故かいつも両手にチャッカマンがあるんで花火持てないれす」

 

「いるわよね、そういう子」

 

「そんな子だけど、何か?」

 

「なんでちょっとドヤ顔してるのよ」

 

 どやぁ! 

 

 

 

「まぁ、そういう訳なのですが」

 

「いいんじゃないかしら。賛成よ」

 

 さすがリーダー。あんな短い会話の中でもこちらが言いたいことをしっかりと聞き取ってくれていた。打ち上げって単語しかなかったけども。仲村さんまじすげぇ。

 

「準備は球技大会の罰ゲーム組にやってもらいましょうか」

 

「あれ、死より恐ろしい罰ゲームは?」

 

「考えてなかった、と言うのが本音よ」

 

「マジか」

 

「死より恐ろしいって何よ。そんなの思いつく訳ないじゃない」

 

「仲村さんならできる! 諦めんなよ! 日本一になるって」

 

「言ってないわ」

 

「ですよね」

 

 

 

 

 打ち上げで花火やりたいね。そうね、でもあまり目立つものはダメよ。なんで? 前にキャンプファイヤーやった時にボヤ騒ぎを起こしたのよ。さすがリーダー。褒め言葉として受け取っておくわ。褒めてないお。うっさい。

 

「何にせよ、野外で火を扱う場合は生徒会の許可が必要なのよね」

 

「そうなの? ヒャッハーだから? 汚物は消毒しなくちゃだから?」

 

「そんな人が現れてしまうからよ」

 

「時は、201X年っ……!」

 

 なんてことは冗談な訳で、実際はさっき仲村さんが言ったボヤ騒ぎが原因らしい。なんでも仲村さん達がボヤ騒ぐ前に過去に一度だけボヤ騒いだ人たちがいたそうな。その2回の事例が結構な尾を引いているらしく、火器を外で扱う際には生徒会の厳正なる審査とやらが必要だとかなんとか。めんどくさい。しかしながら打ち上げ花火等は無しの方向で持っていけば、なんとかなるかも知れないというのが仲村さんの読みだ。

 

「という訳で、ナツメくん」

 

「ですよね」

 

 そんな気はしてました。

 

「でもまだ仲村さんにはお話があるのでもう少し待ってくだしあ」

 

「何かしら?」

 

「日向くんについて」

 

「青いわね」

 

「うん、青いね」

 

 お話終了。

 

「違くて日向くんが消えるような気がしなくもないわけだからみんなで」

 

「長いわ、三行で」

 

「日向くん

 

 成仏

 

 そんなことより打ち上げやろうぜ!」

 

「許可する。全力で阻止しなさい」

 

 まさか今ので通じるとは思わなかった。驚愕である。しかし。

 

「任務了解。つきましてはインカムください」

 

「連携が取りやすいようにかしら? と、ちょうどいい所に」

 

 仲村さんが入口の方に視線を向けた。釣られるようにして視線を追えば、そこには遊佐ちゃんが佇んでいた。ぶいサインのオプション付きである。きゃわわ。

 

「空気の読める女。どうも、遊佐です」

 

「早速で悪いけど、ナツメくんにインカムを渡してあげてちょうだい」

 

「数は?」

 

「9つ。彼のチームの人数分よ」

 

「把握しました」

 

 あれ、日向くんにも渡すのだろうか。作戦聞かれちゃいますがな。

 

「日向くんにだけ渡さなかったら逆に怪しまれるわよ」

 

 それもそうか。

 

「日向くんには私につけるように言われたとか言って渡しなさい。そうでも言わないと付けないだろうし」

 

 なるほどなるほど。確かにそうかもです。野球に限った話じゃないけども、スポーツってのは余計な装飾品は外すように言われるんだったっけ。まぁ、普通に危ないもんね。

 

「ではナツメくん、アナタにオペレーションを通達する」

 

「え、あ、はい」

 

「チームのメンバーと協力し、日向くんの消滅を全力で阻止しなさい。オペーレーション名は『ただし日向、テメーはダメだ』!」

 

 なんというネーミングセンス。

 

「作戦の細かい内容はアナタに一任することとする」

 

「あい、わかった」

 

「……最終的な判断もアナタに任せるわ」

 

「そこは日向くんじゃないの?」

 

「……その点も含めて、よ」

 

「あい、任された」

 

オペレーションなんて大層な物言いだけども、要約すれば皆で日向くんにイタズラしようZE☆ってこと。わかりやすいね。

 

「でもその前にナツメくんには行くところがあるわよね」

 

「ん、立華さんのところだね」

 

「あら、話が早いわね。それじゃあ、今から行ってきてくれるかな?」

 

「いいともー!」

 

 いい番組だったわね。途中から誰が出てるか把握できなくなってたのは俺だけじゃないはず。入れ替わりが激しかったのよね。そだね。

 

 閑話休題。

 

「ではいってきます。あ、遊佐ちゃん一緒に行く?」

 

「仕事がありますので」

 

「あれま、残念」

 

 仲村さんはここで球技大会の様子を見てなきゃいけないとか何とかで待機しているそうな。どうやら立華さんのところには一人で行くことになりそうです。

 

「どこにいるのかわからないので生徒会室へ向かおうと思います」

 

 いってらっしゃい。仲村さんと遊佐ちゃんからそんなお言葉を頂いた。ついでにインカムも。いってきます。とりあえず生徒会の人達のところへ向かいます。と言っても生徒会室に向かうだけなのですが。

 

「あれ、立華さん達も球技大会参加してたら会えないんじゃねこれ」

 

 思わず足が止まったけども、他に行くとこもない。

 

「まぁ、いいか」

 

 気にせず向かいます。

 

 


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