えんぜるびっつ。   作:ぽらり

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 ある日、浦島ナツ太郎が暇を持て余し歩いていると1人の少女とその少女に虐められている一匹のカメと出会いました。要はユイにゃんと日向くんですね。大変仲が宜しいようで何よりです。

 

「おー、綺麗なコブラツイスト」

 

「見てねーで助けろナツメぁぁぁあぁああ!?」

 

「オラオラオラー!」

 

 小柄なクセして頑張るユイにゃんマジぱねぇっす。よくその身長差できめられたもんだわさ。俺じゃあ絶対無理かと思われ。

 

「そしてここで豆知識。コブラツイストってアバラ折りとも言うんだってさ。ホントに折れるのかな?」

 

「今実証しますよせんぱーい! あ、ちなみに他にはアブドミナル・ストレッチとかグレイプヴァインって言い方もあるそうです」

 

 さすがユイにゃん変なところで博識。てか本当に先輩って呼ぶのね。別にいいけども。

 

「へぇー、詳しいなお前ら--って言ってる場合かぁぁあぁあああ!?」

 

 とかなんとか言ってもちゃんとのってくれてる日向くんの芸人魂もさすがです。見上げたものだと思います。まぁ、見習いはしないけども。ところで。

 

「2人とも仲良いね」

 

「お、嫉妬? 嫉妬ですか先輩? もうどうしようもない位に可愛いユイにゃんがこの青いのとキャッキャッウフフしてるからって嫉妬ですか? 醜いけどわかるよその気持ち! だってユイにゃん可愛いもんね! でも残念! ユイにゃんにはもう心に決めた人が」

 

「はっ」

 

「鼻で笑われたー! せめて最後まで聞けやコラー!」

 

「だが断る!」

 

「聞いてよー! 最後まで聞いてくれればサービスしちゃうよ!」

 

「ほう、詳しく」

 

「期間限定! ユイにゃんの」

 

「はっ」

 

「だから聞けっつってんだろてめぇぇぇ!」

 

「ユイにゃんテンション高いね。すごくめんどくさい」

 

「オブラート包んでってばー!」

 

「オブラート? なにそれおいしいの?」

 

「いや、前回も言いましたが基本的には」

 

「ところで日向くんが泡吹いてるけど大丈夫?」

 

「あ」

 

 手遅れでした。こうしてまた一つの尊い命が天に召されましたとさ。あーめん。

 

 

 

「危うく死ぬところだったじゃねーか……」

 

 さっきまで締められていた首をさすりながらジトっとした眼で見てくる日向くん。

 

「正直、生きてたことに驚きです」

 

「生命力がゴキブリ並みですね!」

 

 絶賛正座中なのは俺とユイにゃん。床が冷たいよーい。ちなみにユイにゃんのコブラツイストは素人ながらもどうやら結構しっかりと決まっていたらしく、日向くんは呼吸困難に陥っていたそうな。泡吹いて倒れた日向くんだったけど、意識が落ちてただけだったってさ。丈夫だね。

 

「しかしなぜ俺まで正座を強要されているのだろうか。説明を要求する」

 

「旅は道ずれ世はなさけー!」

 

「お前俺を見殺しにしたじゃねーか」

 

「いちれんたくしょー!」

 

「オ、レを……オレオ? この世界にあるのかな?」

 

「死なばもろともー!」

 

「そこだけ抜粋すんなよ。ちなみにオレオはある」

 

「同年、同月、同日に生まれることを得ずとも、同年、同月、同日に死せん事を願わん」

 

「これが俗に言う桃園ならぬ学園の誓いである」

 

「あ、無理だわ。俺じゃ手に負えねーや」

 

 お疲れー、と退場して行く日向くんでした。とてもさわやかさんでした。

 

 

「ところでユイにゃん仕事とかないの?」

 

 日向くんに見捨てられ、特にすることもないので一緒にいたユイにゃんと校舎内をうろつく。まぁ、元々すること無くて暇を持て余してたんだけども。で、実はこの校舎内をうろつくって行為はユイにゃん曰く、今は授業中なので一応これも消えないための行動だったりするとかなんとか。

 

「こう見えて私は陽動部隊のサポーターなんですが、ぶっちゃけ」

 

「その尻尾ホンモノ? 引っ張っていい?」

 

「最後まで聞ーいーてーよー!」

 

 襟元掴んでガックンガックンするのはやめて欲しい。苦しいです。割と。

 

「で、暇人さん? 多忙さん?」

 

「暇です!」

 

「働けこの暇人がっ!」

 

「そっくりそのままお返しします!」

 

「返す言葉もございません」

 

 戦線に加入してからいまだに雑用係りで、主なお仕事は戦線本部、つまり校長室でのお留守番。仲村さんがいる時は基本的にお暇を頂く感じです。それから、最近では力仕事すら回ってこなくなってます。非力なのがバレたのだろうか。別に隠してたつもりもないけども。まぁ、実は楽だから割と気に入ってたりしてる。ビバ自由業。いや、なんか違うな。

 

「どこ行こっか? 特に目的ないけども」

 

「適当にフラつきましょう! 先輩は誰かとのエンカウント率がやたらと高いと有名なのでガルデモの皆さんに会えるかもですから!」

 

 早くもよくわからない噂が流れているらしかった。誰かって誰さ。噂流したのも誰さ。

 

「まぁ、いいけど。あんまり期待はしないでね」

 

「何してるの?」

 

 とか言ってたら即行でエンカウント! 驚きの早さです。

 

「おー! さっそく来ましたねー!」

 

「今は授業中よ。教室に戻りなさい」

 

「って、天使じゃないすか! ヤダー! いきなりボスキャラとエンカウントとかどんな裏ワザ使ったんですかー!?」

 

「授業中の校舎内を大声出しながらフラつくという裏ワザをだな」

 

「裏ワザというより暴挙ですね!」

 

「むしろ天使さんの正しい召喚方法だよね」

 

 天使さんって実は生徒会長らしいし、お仕事だもんね。そりゃ来るわ。

 

「ユイにゃんと先輩をリリースして天使をアドバンス召喚っ!」

 

「甘い。リバースカードオープン! トラップ発動! 奈落の落とし穴!」

 

 そんなもの除外してくれる!

 

「あぁ! せっかく召喚したのに! 鬼! 悪魔!」

 

「勝負の世界とはこういうものです。身の程を知りなさい小娘が」

 

 腕組んでドヤ顔してやったった。めっちゃ悔しがってる。ざまぁ!

 

「ざまぁ!」

 

「うー! 先輩大人げない!」

 

「うん、たぶん年齢は一緒です」

 

 学年が一緒だしね。

 

「知ってます! 言ってみただけです!」

 

 そんな折、コホンとわざとらしい咳ばらいが一つ。やべ、忘れてた(爆)。

 

「せ、先輩、どうしましょう。完璧に忘れてました。デュエルしてる場合じゃなかったです……!」

 

 デュエルて。めっちゃ真剣な顔で言ってるけどデュエルて。

 

「話を聞く気になった? 授業に出て。それから……」

 

 ゴクリ、と唾を飲み込む音が聞こえた。

 

「個人的にはシンクロ召喚の方が好きよ」

 

「!?」

 

「光射す道になってみたいの」

 

「!?」

 

 この天使、やりおる……!

 

 


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