えんぜるびっつ。   作:ぽらり

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 日向くんや音無くんが去っても打ち上げは続く。ジュース片手にふらついていたら地上では珍しい顔を発見したため、思わず話しかけてしまったのは仕方のないことだと思うのだけども、久しぶりに会う気もするし、何より彼と話すのは楽しいので全く問題無いと判断した。

 

「やっぱりレイスティンガーはロマンだと思う」

 

「確かにあのギミックには驚いたな」

 

 ギルドの主、チャーさん。その人である。半ば地底人化しているチャーさんが地上に出てきているのは中々のレアケースなので、そのうち深海王とか天空王とかボロスさんとか出てくるんじゃないかと戦々恐々待った無し。サイタマ先生はいずこに?

 

「海外勢とか色々いたのになんだかんだみんな大好きレイスティンガー」

 

「ブロッケンも中々だが、ビークは何故かダメだったな」

 

 ああ、いたねそんなの。影薄いからな。記憶に残らない薄さです。ん? 記憶喪失のヤツに覚えられてるくらいには濃いのか……? あれ、そうかもね。まぁ、作らんがな。ですよね。

 

「しかし珍しいね。チャーさんが上に来るなんて」

 

「ゆりから声がかかってな」

 

 だから来てみたと言うチャーさん。よくよく周りを見回してみれば、作業着と思わしきツナギ姿の生徒がチラホラ。総出というワケではないみたいだけども、チャーさんに便乗して打ち上げに参加しているギルドメンバーもいるみたいだ。きっと息抜きも兼ねているのだろう。

 

「いつもお疲れ様です。ギルドは相変わらず忙しい感じ?」

 

「最近はそうでもないな。武器の発注もなくなった」

 

「なんと」

 

 それは知らなかった。

 

「今はもっぱら子供の頃に流行ったものを各々が作ってる」

 

「なにそれ胸熱」

 

 そうだろうそうだろうと満足気に頷くチャーさんは自分が作ったものを含め、今まで作成されてきた試作品を持ってきているらしい。これはもう見せてもらうしかあるまいて。それを伝えれば、元よりそのつもりだと返された。俺以上の適任はいないとのこと。光栄である。もうワクワクが止まらない。

 

「まずはコレだな」

 

「ワイルドワイバーン……だと……?」

 

 そうだ、コレがワイのワイルドワイバーンや。ワイのワイルドワイバーン……。ちゃう、ワイのや。ワイのやない? ワイの。

 

「フェニックスシリーズも作られていたんだがな、スプリングが強すぎて本体は壊れるわ、怪我人は出るわ。基礎設計からやり直しだ」

 

 話から察するに製作者はチャーさんではないらしい。しかし、本体が壊れる程のスプリング強度とは。原作通りに岩とか粉砕するのが目標だったのだろうか。ガラス玉には少々酷なハードルである。

 

「グリフォンが好きでした。作ってほしいれす」

 

「ライトとレフトだな。任せろ、発注済みだ」

 

「さすかチャーさん、惚れた」

 

「悪いがコレでも嫁がいる身でな」

 

 そういえば前にそんなこと聞いた気がする。確か、仲村さんに似てる人だとかなんとか。チャーさんが死んだ世界戦線に力を貸してくれている理由はそこに繋がるらしい。これは日向くんだか大山くんからのリークです。

 

「次はこのファイヤーボール」

 

「ストリングプレイスパイダーベイビー!」

 

「とりあえず、ゆりに渡そうと思う」

 

「中村ならぬ仲村名人ですね、わかります」

 

 その後もチョロQ、ゾイド、ダンガンレーサーに爆丸と出るわ出るわの懐かしホビー達。個人的にはバイオパズラー製作者に賞賛を送りたい、とか思ってたら製作者はチャーさんでした。あなたが神か。バイオセイレーンは部屋に飾ります。

 

「後は、ああ、コレがあったな」

 

「こ、これは……」

 

 すっと差し出されたそれは手のひらに納まってしまうような小さなイルカ。しかし、その身に刻まれた紅いファイヤーパターンが王者の風格を漂わせる。返しのついた針すらその自己主張の強い姿にとっては、オマケにしか過ぎないのだろう。

 

「キングオルカイザー……!」

 

「ギルドに釣り好きなヤツがいてな。そいつが魂込めて作り上げた一品の一つだ」

 

「まさか、他にも……?」

 

 こちらからの質問に対しチャーさんはスケルトン、レジェンダーホーク、ドラゴンワーム等と思い出しながら答えてくれた。締めに覚えてるかぎりだけどな、とシニカルに笑う姿は死んだ世界戦線のギルドを束ねる長に相応しい背中だったと記載しておく。

 

 

「なんかなっつんが嬉しそうな顔してる!」

 

「良い物が見れたもので」

 

 関根ちゃんからの第一声。チャーさんが仲村さんに挨拶してくると席を外した後、近くにいた関根ちゃんと入江ちゃんとひさ子ちゃんとユイにゃんのところにお邪魔することにしたため、反応してくれたのだ。個人的には未だに素晴らしい作品の数々を見れたことによる余韻が残っているが、その場には4人以外にも気になる人がいたので顔を出してみることにしたのである。

 

「やっほー椎名さん。打ち上げパーティ楽しんでる?」

 

「うむ。心が躍る」

 

 椎名さんにしては珍しく第一声が浅はかなり以外の回答だったことを鑑みると、返答の通りに楽しんでくれているらしい。そして。

 

「ようFうっ」

 

 無言で人の鳩尾に肘をぶち込まれた。言わずもがなひさ子ちゃんだね。その後もグリグリと肘を押し込んでくるひさ子ちゃんは最近遠慮がない、なんてことはなく初めから割と遠慮なかったです。早々に打ち解けたんだとポジティブ解釈すればきっと救われるじゃないかな。ああ、なんて希望的観測。うん、やっぱり人間素直が一番だ。素直になろう。ひさ子ちゃんは口より先に手が出る人です。俺限定で。

 

「正直、すまんかった」

 

「次言ったらお前一週間岩沢担当な」

 

「あの人担当とか付いてんのね」

 

 務まる気がしない件について。気をつけねばいけない様です。というか、岩沢さんが若干問題児扱いされていることについては誰も触れーーないね。満場一致。こと音楽以外に無関心な岩沢さんに対する妥当な評価なのだろうか。まぁ、基本的に無害だから偏に問題児とも言えないのだけども。そして、件の岩沢さんご本人は未だに姿を見せていない。やはりと言うかなんというか。とりあえず。

 

「ひさ子ちゃん、いつもご苦労様です」

 

「別に苦労とかはねーよ。親友だしな」

 

 さも当然の様に言い放つひさ子ちゃん。素晴らしき友情に乾杯したい所だけども、ひさ子ちゃんがそろそろ迎えに行ってくるとこちらに背を向けて歩き出したのでとりあえず背中に向かって手を振っておいた。

 

「そのまま戻って来れないに肉うどん一枚!」

 

 と関根ちゃん。

 

「岩沢さんと一緒にギター持って帰還に素うどん一枚」

 

 これは俺。

 

「案外普通に帰ってくるに焼きうどん一枚で!」

 

 ユイにゃんものってきた。残るは入江ちゃんと椎名さんだ。

 

「う、うどんのレパートリーがないよぅ」

 

 別にうどん限定のベットではなかったのだけども、言いたいことはちゃんと椎名さんが言ってくれるはずだ。

 

「1つだけ日本語に訳せない言葉がある。それはRock’n Rollだ」

 

「そこは浅はかなりとお答え頂きたかった!」

 

 

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