えんぜるびっつ。   作:ぽらり

65 / 71
65

 

「いや、忍者ではない。私は暗殺者だ」

 

 椎名さんのその発言によって、俺たちが囲むテーブルはまるで周囲から切り取られたかの様に静まり返った。ゴクリ、と入江ちゃんが息を飲み、同じくゴクリとユイにゃんが喉を鳴らした。ジュースで。

 

「ーーやはり暗殺教室」

 

 真剣な眼差しの関根ちゃんがいち早く反応をした。考えることは一緒だったみたいです。

 

「ターゲットは先生。でも流石の椎名さんでもマッハ20は捉えられないと思われ。やはり殺せんせーは強い(確信)」

 

「マッハ20は早いよねー。だってマッハだよマッハ。正直体験したことないからよくわかんないけど」

 

 だよねー、と関根ちゃんと言い合う。マッハとか普通に生きてたら体験することはそんなにないと思う。未知の領域です。あと、酔いそう。ちなみに中村さんが好きです。仲村さんではないのでご注意を。

 

「と言うかユイにゃん。質問しといて興味が無さそうなのはどうかと思う。見事は投げっぱなしジャーマンである」

 

「想像通りでしたので! もうちょっとこう、意外性が欲しかった!」

 

「否定はしない」

 

 なんとなく皆察してたと思う。多分。

 

「と言うワケで、アレやりますか関根ちゃん」

 

「コードネームだね! やってみたかった!」

 

「関根ちゃんがツーカーすぎてちょっと怖い」

 

「なんだとー!」

 

 そんな関根ちゃんはさて置き、この場にいる人のコードネームを考えようのコーナーになります。まずはユイにゃんがターゲット。

 

「はい、思いついた人は挙手」

 

「きた! なっつん! 降りてきた!」

 

「ほい、関根ちゃん」

 

「淫乱ピンーー」

 

「それアカンやつや。需要も無いし」

 

「じゃあ、ロリ枠(笑)」

 

 いろいろ心外じゃー! と憤慨してるユイにゃんはさておき、続いて椎名さん。暗殺者だし、なんかかっこいいコードネームとか考えてくれそうで結構期待値が高い。ここはビシッと決めてくれるやも、とユイにゃんも目がキラキラしてる。

 

「尻尾……」

 

「いや、生えてるけども。まぁ、いいや」

 

 無かったことになんかしてないので悪しからず。お次は、と視線を入江ちゃんに送るも何やら真剣に考えている様なので一旦おいておく。ユイにゃんのコードネームなのだからそこまで真剣に考えなくても良いのに。さすが入江ちゃん、とてもよいこ。

 

「なっつんは? 何かある?」

 

「シンプルにめんどくさい」

 

「え、考えるのが?」

 

「いや、コードネームが」

 

「え、あ、うん。シンプルに『めんどくさい』って言うコードネームってことだね」

 

「いや、『シンプルにめんどくさい』で」

 

 シンプル大切。あるのとないのでは大違い。

 

「なるほど。シンプルにめんどくさいか。コードネームと言うか、感想な気がするよ、なっつん」

 

「そう? 結構合ってると思うけどもシンプルにめんどくさい」

 

「シンプルにめんどくさいかー。まあ、候補としては有りかな」

 

「でしょ。ユイにゃんはシンプルにめんどくさいで」

 

 どや、と関根ちゃんと一緒にユイにゃんに視線を投げれば、なんと言うことでしょう。俺に向かって飛びかかってきた。

 

「あ! やせいの ユイにゃんが とびだしてきた!」

 

「めんどくさいめんどくさい言い過ぎなんだよー! あたしめんどくさくないー!」

 

「ナツメは なにを なげる?」

 

 おかし

 ジュース

 バイオセイレーン

 ▶︎暴言

 

「どうしようもないくらいめんどくさいな君は」

 

「くさくないって言ってんだろー! 何がくさいだよ! クンカクンカしろよオラァァァッ!!」

 

「いや、それはちょっと……」

 

「ひーくーなーよー!」

 

 ユイにゃんやっぱめんどくさい。なので関根ちゃんに引き剥がしてもらって気を取り直します。

 

「入江ちゃんどう? 無理しなくても大丈夫なので、気軽にどぞ」

 

「えっと、その、ピ、ピンーー」

 

「ピン?」

 

「ピンキー、とか」

 

 なんと言うか、もう、こう、アレだ。入江ちゃんはかわゆい。はっきりわかんだね。関根ちゃんなんか鼻おさえながら上むいてる。きっと愛が溢れそうなんだ。誰か首を叩いたげて。

 

「ユイにゃん気に入ったのあった? シンプルにめんどくさい?」

 

「ピンキー!」

 

「だよね。でも名前負けだから却下」

 

「なんでじゃー!」

 

「個人的にはシンプルにめんどくさいがイチ押し」

 

「やーだー! ピンキーが良いです! かわいいし!」

 

「じゃあ、近しいので淫乱ーー」

 

「それは絶対に嫌」

 

 ユイにゃんの真顔初めて見た! そこまでか。そんなに嫌か。そりゃそうだ。なので仕方ないけども協議の結果、ユイにゃんのコードネームは尻尾に決定。椎名さんの案が通りました。ピンキー? 却下です。だって溶解液出せないじゃないのさ。芦戸さん見習え。

 

「次は誰いく?」

 

「なっつんなっつん! 次はあたし!」

 

「ほい、関根ちゃんね。元気寿司」

 

「えっ」

 

「コードネーム、元気寿司」

 

 いや、関根ちゃんの取り柄かなって。あと、お寿司食べたい。玉子とか。

 

「みゆきちー! あたしにも! あたしにもかわゆいのをー!」

 

「……しおりんは、しおりんだよ」

 

「見たかなっつん! かわゆかろう! かわゆかろう!」

 

「入江ちゃんが?」

 

「もちろん!」

 

「ですよね」

 

 わかってました。でも、入江ちゃんは世界遺産にしようと思います。関根ちゃんは協力してくれるだろうし、死んだ世界戦線の皆んなもきっとわかってくれる。死んだ世界戦線の世界遺産。縮めると死んだ世界遺産。あれ、世界遺産(入江ちゃん)が死んでしまった。これダメなヤツだわ。

 

「ユイにゃん、あー、尻尾は? ちなみにこのままいくと関根ちゃんのコードネームは自動的に元気寿司になります」

 

「ちょっとなっつん! しおりん! あたしは断固としてしおりんを推します!」

 

「いつもどおりでつまんない」

 

「なん……だと……?」

 

 なので却下。いつもとは違う何かを求めましょう。

 

「むむむ! 以外と難しいですねコレ!」

 

「考え過ぎずに思ったこと、感じたことを言ってみよう」

 

「詐欺笑顔!」

 

「ユイ、いや、尻尾。ちょっと屋上に行こう」

 

 久々にキレちまったよ、と言いながら関根ちゃんはユイにゃんの襟を掴んでフェードアウトーーはさせません。どうにか堪えてもらって続行。多分、ユイにゃんは後で何かある。関根ちゃんからきっとある。その時は入江ちゃんと遊んでようと思います。

 

「さて、元気寿司、詐欺笑顔ときまして続いては椎名さん」

 

「日本のほこり」

 

「ん、なんかスゴイのきたね」

 

 関根ちゃんも嬉しそうだ。ちょっと照れてる。いきなり日本の誇り扱いだもの。意外にも椎名さんからの関根ちゃんへの評価は高いのだろうか。

 

「し、しーなたん! その心は?」

 

 嬉しさを隠しきれていない関根ちゃんが椎名さんに問う。やはり気になるのだろう。そして椎名さんがゆっくりと口を開いた。

 

「寿司は日本のほこりだと、ゆりから聞いた」

 

「寿司かよっ!」

 

 すーしーかーよー! と悔しそうにテーブルをバンバン叩く関根ちゃん。そんなことだろうと思ってました。薄々気がついてたけども、椎名さんもそこはかとなくポンコツ臭がするよね。仲村さんの影響か。と言うか、戦線メンバーの中ではポンコツ臭がしない人の方が少ない気がすることに気がついた。陽動班のリーダー様とかが顕著である。

 

「関根ちゃん、気に入ったのは?」

 

「うぐぐ……。げ、元気寿司で……」

 

「じゃ、それで。次は誰行こうか?」

 

 楽しいお茶会はまだ始まったばかりです。

 

 

 

 

▼コードネーム

ユイ:尻尾

関根:元気寿司

入江:

ナツメ:

椎名:

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。