唐突に始まったコードネーム決めはユイにゃん、関根ちゃんと続いた。なので、その次に彼女がターゲットに選ばれたのは必然とも言えるだろう。
「次はみゆきち! もちろんみゆーー」
「みゆきちはダメ。関根ちゃんは過去から学ぶべき」
「なっつんがイジワルだ! さてはなっつん、あたしのこと好きだな!」
「恋愛脳乙」
冗談だよー。知ってた。なっつんは岩沢先輩か遊佐さんだよね。みんな好きです。ハーレムと申したか。みんな良いお友達れす。だよねー。
「しかし、みゆきちがダメかー。どうしよう」
「思ったことを」
「みゆきちマジ天使」
「ん、それね」
じゃあ、次はユイにゃん言ってみようか。関根ちゃんの時は中々インパクトあったのでちょっと期待。
「むー……。あ!」
「思い付いた?」
「貧乳系コミュ障!」
「お前マジぶっ飛ばすぞこのやろう」
「えっ」
誰がコミュ障だ。入江ちゃんはちょっと人見知りするだけだ。あと、早いとこ謝っときなさい。入江ちゃんがショックを受けて泣きそうな顔してるから。こみゅしょうけい、ひんにゅう……とかつぶやいてるから。それにしても、入江ちゃんって胸気にしてたのね。これは女子特有の悩みか。男にはわからんのです。
「しかし、関根ちゃじゃなくて、元気寿司が怒ってない。意外です」
怒るそぶりどころか、特になんの反応も示さない関根ちゃんに違和感が発生。どしたの?
「だってなっつん。みゆきちの貧乳はステータスだもん。希少価値だもん。ただでさえ愛くるしいのに希少価値まで付いてるんだよ。つまり、お得感満載!」
「その発想はなかった」
ひんにゅう……。わたしはこみゅしょうでひんにゅう……。とブツブツ呟きながら力無く笑う入江ちゃん。入江ちゃんにしては珍しい表情です。実は結構気にしてた様だ。ひさ子ちゃんにコンプレックスとか抱いてなければ良いけども。
「でもそこの尻尾も貧乳だよねー。見事なブーメラン! 全体的にロリロリしいし、松下五段のとこ行けば? あ、ロリポップ持ってってね!」
カラカラ笑いながら言う関根ちゃん。やっぱりちょっと怒ってるみたいです。さっきのコードネーム、そして入江ちゃんへのという見事な二連撃が関根ちゃんに刺さったらしい。嫌じゃー! と喚くユイにゃんを放置した関根ちゃんは入江ちゃんに慰めの言葉を並べている。そんなみゆきちが大好きだよ、とか。どんなみゆきちでも大好きだよ、とか。もう付き合えば良いんじゃないかな、この二人。
「さて、椎名さん。入江ちゃんのコードネームよろです」
「待て。確かゆりが何か言っていた様な気がする」
「あ、コレ多分ロクでもないヤツだ」
あーでもないこーでもないとうんうん唸りながら椎名さんは記憶の掘り返しに没頭し始めた。じゃあ先に俺が、と言おうとしたら椎名さんは手をポンっと叩いて、思い出したと言った。せっかくなので聴きませう。入江ちゃんはまだ完全には復活してないけども。
「椎名さん、どぞ」
「りあす式海岸」
「それは入り江。いや、正確にはちょっと違うけども。でも、しーなたんがちょっと出てきたから良しとします」
確かリアス式海岸は色々な何かが入り組んでるんだっけ? 何かが何かは正直覚えていない。まぁ、それでも、名称だけはしっかり覚えてる不思議。前方後円墳とか竪穴式住居とか百葉箱とか。今でも忘れない不思議な単語の数々。特に思い入れはないのだけども。
「じゃー、先輩の意見いってみましょー! ラストですよ! 早く早くー!」
椎名さんの意見は無かったことにしたのか、ユイにゃんが少し急かしながら意見を求めてきた。ちゃんと考えてありますがな。
「まいなすいおん。カタカナじゃなくて、平仮名ね。そっちの方がかわゆい」
近くにいるだけで癒されるよね、入江ちゃんって。そんな想いを込めてこのコードネーム。こら、ユイにゃん。また懐かしいものを……。とか言わないの。貧乳系コミュ障よりマシでしょうに。
「み、みゆきち。気に入ったのあった? いや、無いとは思うんだけど」
関根ちゃんがやや気を遣いながら入江ちゃんに聞く。いや、まいなすいおんは大分マシな方だと思うのだけども。関根ちゃんはお気に召さなかったのか。
「あ、これダメだ。みゆきちがまだ貧乳ショックから抜け出せてないや。こっちで決めちゃう?」
「よろしい。ならば協議だ」
このあと滅茶苦茶協議した。
「じゃあ、入江ちゃんのコードネームはりあす式海岸で」
入江ちゃんが正気に戻ったところで協議の結果を伝えた。微妙そうな顔してたけども、貧乳系コミュ障よりマシだったのだろう。入江ちゃんが個人的にはまいなすいおんが良かったと呟いてくれたのはとても嬉しかった。明日からも頑張れそうです。
「次はしーなたんかな! あたし張り切っちゃうよ!」
「いや、次はこのナツメが行こうかと」
関根ちゃんのやる気を削ぐのは申し訳ないが、椎名さんは最後と決めておりました。だって今日の主役だし。
「お? そうなの? まぁ、いいや。なっつんのコードネームだね! よし、覚悟しろ!」
「かかってきなさい」
まず最初は、と関根ちゃんが視線を巡らす。一生懸命に考えてくれてる様子の入江ちゃんに、いつもと変わらない表情の椎名さん。それに、無い頭を懸命に捻っているユイにゃん。だから思ったことを言えと。考えるんじゃ無い、感じるんだとは誰の言葉だったか。
「まぁ、あたしからかな」
「では元気寿司ちゃん、お願いします」
「うむ。なっつんのコードネームはラー油王子!」
「好んで入れたことは無いけども」
だいたい岩沢さんのせい。でも無難な意見か。前に関根ちゃんにそうやって呼ばれたことあるし。
「椎名さん、次お願いします」
「転生者」
「この世界はある意味で皆転生者な希ガス」
「ゆりもそんなことを言っていたな」
また仲村さんか。付き合いが長いとは聞いていたものの、椎名さんが仲村さんから教えてもらった知識については、そこはかとなくアホの匂いが漂う。一体、椎名さんをどうしようというのかね。
「そろそろみゆ、えっと、りあす式海岸いってみようか。難しく考えずに気軽にいってみよー!」
関根ちゃんの前ぶりにより、視線が入江ちゃんに集まる。急に集まった視線に僅かに緊張したのか、一瞬だけ驚いた表情を浮かべた。入江ちゃんらしくて和みます。誰も急かすことはないので、ゆっくりどうぞと伝えれば、じゃあ……、と前置きし、入江ちゃんが口を開いた。
「誰とでも仲良くなれる人、かな」
「入江ちゃんが八方美人って言う。死にたい」
死ねないけども。しかし、入江ちゃんに言われるとかなりヘコむ。もう頑張れない。
「い、言ってないよぅ」
「言ってないの?」
「色々な人と仲良くなれて、スゴいなーって。私、人見知りだし……、コミュ障だし……」
おおう、自虐入った。でもそれは関根ちゃんにお任せ。
「特に何も考えてないんだけどもって言ったら入江ちゃんはどう思うのだろうか」
「そ、それもスゴいかな……」
気を遣わせてしまった。後でデザートの食券をあげようと思います。
「ラー油王子、転生者に八方美人。良い感じだねー。ラストは尻尾だよ! 決まった?」
「ちょ、八方美人違う」
「ラストは尻尾だよ!」
流さりた。まぁ、いいや。あと、尻尾とはユイにゃんのこと。
「そーですねー。先輩はー……」
「考えたらアカンって尻尾にゃん」
「負債!」
「おい」
「戦線の高額負債!」
「何で言い直した」
こちらの話は聞き流され、協議が始まる。もう好きにして下さい。文句は言わないので。多分。
「候補としては尻尾の案かしーなたんかなー。あたしのは在り来たりだし、りあす式海岸のにすると何かなっつんだけズルいし」
ズルいって何ぞ。せっかくりあす式海岸の入江ちゃんが考えてくれたのに。でも八方美人って人聞き悪い。遊佐ちゃん辺りには鼻で笑われそうだけども。
「あたしは尻尾の案に1票! そっちのが面白い! みゆきち式海岸は?」
「混ざっとる混ざっとる」
「私は、どっちでも……」
「じゃあ、尻尾の案に決定で!」
この度、めでたく戦線の高額負債なりました。まぁ、文句は言わないのです。でもユイにゃん、てめぇはダメだ。
▼コードネーム
ユイ:尻尾
関根:元気寿司
入江:りあす式海岸
ナツメ:戦線の高額負債
椎名:
→