えんぜるびっつ。   作:ぽらり

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 花火の時間がやって参りました。死んだ世界戦線の男子メンバーが中心になって会場の机を片付け、花火の準備を行う。と言っても、机を端によせることと、水の入ったバケツを用意する事くらいしかやることは無いのだけども。あ、立華さんもバケツの用意を手伝ってくれてる。男子に任せとけば良いのに。あれ? 直井くんもいる。帰るって言ってたのに、バケツ持ってる。お、向こうでは音無くんに日向くんがバケツを両手に。高松くん、大山くん、松下五段、TKも同様だ。しかし、藤巻くんと野田くんは一個だけ。片手だ。なんでって、片手がふさがっているからだろう。なぜ片時も武器を離さないのだろうか。疑問は尽きない。と言うか

 

「バケツ用意しすぎじゃね? 何個用意するのさ」

 

 会場の男子がもれなくバケツを持っている。男子1人につきバケツ一個くらいの割合になりそうだ。うむ。ここは俺も取りに行くべきか。でないと疎外感が否めない。

 

「バケツ取ってくる」

 

「おー、行ってこい。ついでに火もな」

 

「取ってきた」

 

「おう。ごくろーさん」

 

 そんなひさ子ちゃんとの短いやりとりも済み、後は花火が配られるのを待つのみだ。残念なことに花火は数が限られてしまっているので平等にとのことだ。

 

「ようやく来ました。花火の時間ですね。わくわく」

 

 いくつかのグループに花火が配られ始めた。配るのは遊佐ちゃんを始めとする諜報班及び、ギルド勢などの裏方部隊。しかし、チャーさんは配る方にはおらず、戦線の男子メンバーと一緒に話をしながらジュースを飲んでいる。けしてお酒ではない。

 

「まぁ、チャーさんはジュースよりお酒の方が似合ってるよね」

 

 この世界にいるってことは高校生なのだろうけども、たまにいるよね、そんな人。ちなみにこの世界にお酒はない。生前、ロクな人生を送ることのできなかった高校生が対象のこの世界だもの。そりゃそうだ。しかし、お酒を作ることはできると思われる。まぁ、本来は違法になってしまうが、生前の法が機能しているかと聞かれれば怪しいものである。だから問題無いとか仲村さんあたりなら言いそうだ。きっと誰も止めないし。でも未成年の飲酒喫煙はダメ絶対。

 

「ひさ子ちゃんはお酒って飲んだことある?」

 

「ねーよ。女子高生なんだと思ってんだ」

 

「年齢的にヤンチャ盛りかと」

 

「わからなくもねーけど、こう見えて結構真面目だよ私は」

 

「えっ」

 

 おい、なんだ今の反応は? 意外でした。あたしを何だと思ってんだよ。Fカップ。お前一週間岩沢担当な。ごめんなさいだから手離して頭が割れちゃう。

 

「頭がズキズキするよぅ」

 

「良い薬に……ならねーか。お前だし」

 

「そだね。もう結構投薬されてるけども効果ないもんね」

 

「お前も中々手遅れだよな」

 

「お前も? お前もって言った? もう一人は誰なのか小一時間ほど−−」

 

「うるせーよ」

 

 あふん。

 

 なんてやりとりをひさ子ちゃんとしてたら、関根ちゃんと入江ちゃん、ユイにゃんがいつの間にか花火を持ってウズウズしていることに気がついた。花火を配る人はまだこちらには来ていないというのに何故花火を持っているのでしょうか。非常に不思議です。

 

「我慢できなかったから、みゆきちと一緒に取りに行ってきた!」

 

 瞬く間に不思議が解消された。

 

「なるほど。ユイにゃんは?」

 

「ファンの子達がくれました!」

 

「ああ、大きいお友達からか」

 

 とても納得した。強く生きろユイにゃん。君の賞味期限は短いぞ。

 

「ファンの子っつってんだろー! 松下五段からじゃーなーいー!」

 

「なぜ個人に限定した」

 

 誰も松下五段とは言ってなかろうに。あんま松下五段いじめんな。きっと重い過去を持っていても強く生きてる人なんだから。ここは死後の世界だけども。

 

「まぁまぁ、なっつん。松下五段は置いといて、花火やろーぜ!」

 

「ん、まぁ、いいか。やりませう」

 

「なっつんバケツ準備!」

 

 関根ちゃんの号令のもと、みんなの中心になるようにバケツを地面に置く。

 

「先ほど取って来たバケツがこんなに早く役立つとは……」

 

 またアホなこと言ってるとばかりの視線がひしひしと。きっとひさ子ちゃん。とりあえず無視します。

 

「お次は火!」

 

「まかせろ」

 

「なぜ両手にチャッカマン」

 

「シークレットオブソード2」

 

「紅蓮腕……だと……?」

 

 驚愕した様子の関根ちゃんはさておき、みんなの手に花火が渡っていることを確認したので火をつけて回ることに。同時にそれとなく周りを確認すれば打ち上げ参加者全員に花火が行き渡ったのか、生徒会長からの諸注意が行われていた。がしかし、真面目に聞いているのはおそらく生徒会勢とNPCだけのようだし、ここは死んだ世界戦線の意向に則り花火を始めようと思います。ごめんよ立華さん。反省はしていない。

 

「火着けるよー」

 

 とりあえずいつの間にか一番近くに来ていた岩沢さんに声をかけると、彼女は少し驚いたような表情を浮かべた。あれ、何か変なこと言ったっけ?

 

「ハートにか?」

 

「ん、ちょっと何言ってるかわかんないです」

 

「ハートに火をつけて、か?」

 

「いや、花火につけたいです」

 

「The Droosだろ? 隠さなくていい」

 

「話聞いてよ」

 

 あと、割と曝け出してると自負してます。隠すようなことは特にない。遊佐ちゃん辺りは自重して下さいとか言うかもしれないけども。

 

「あたしはやっぱり、ジ・エンドかな」

 

「あ、続くんだコレ。ひさ子ちゃんヘルプ」

 

 思わずひさ子ちゃんに助けを求めるも、担当はお前だろと視線で返された。そういやそんなこと言ってた気がするけども、マジだったんですか。そうですか。務まる気がしません。助けてください。なんて視線で返したら、しょうがねーなとかぼやきつつもひさ子ちゃんは岩沢さんの手を引き俺からちょっと離れた。ありがとうひさ子ちゃん。ありがとうFカップ。小石が飛んできた。エスパーかひさ子ちゃん。顔を狙うのは勘弁してください。

 

「んじゃ、みんな付けるよー」

 

 再びそうやって声をかければ、両手を上げて元気よく返事をしてくれた関根ちゃんとユイにゃん。二人には負けるけども、楽しそうな様子で入江ちゃんも頷いた。ひさ子ちゃんは岩沢さんに手を焼いてるけども、しっかりと花火やろうぜと楽しげに語っていた。普段あまり表情の変わることない岩沢さんも楽しそうに少し口角を上げてわかったと了承。みんな楽しそうで何よりである。

 

「ね、椎名さん」

 

「む?」

 

「花火。楽しみましょう」

 

「……そうだな」

 

 岩沢さん以上に表情に変化のない椎名さんは、少し間があって同意してくれた。椎名さんがこれを機にみんなともう少し打ち解けてくれればいいなと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、この花火を誰に当てれば良いんだ?」

 

「野田くん or 日向くん」

 

「心得た」

 

 

 

 

 

 

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