えんぜるびっつ。   作:ぽらり

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 あ、そう言えばと思い出したのがつい先日。実際にそれを言われたのはもう少し前だったり。うん、暇があったら行くと言ったのをすっかり忘れてました。忙しかったんです。嘘です。ごめんなさい。ひさ子ちゃん怒ってないといいけどなーとか思いながら目指すはガルデモの練習スペースである軽音部の教室。けいおん! りっちゃんかわいいれす。

 

 途中、ハルバートを片手に携えた野田くんとはち合わせて仲村さんに対する胸の内を厚く語られたので椎名さんに頼んで半狂乱の鬼ごっこに興じてもらったり、謎の男であるTKが徐に目の前でヘッドスピンし始めたので先日仲村さんにもらったベイブレードをゴ―シュウッ! 対抗してきたTKの髪を巻き込んでアウチッ。さすがドラグーン。

 

「お邪魔しますけどかまいませんね!」

 

 教室に着いて、扉を開いて叫んだ。キョトンとした顔がお出迎え。

 

「ど、どちらさまで……?」

 

 ドラムを叩いていたであろう少女がおずおずと尋ねてきた。

 

「ナツメです。ひさ子ちゃんいますか? もしくは岩沢さんでも可」

 

 見た感じいないけどね。

 

「2人とももう帰りましたけど……」

 

「ですよね」

 

 どうやら入れ違いらしく少し前に2人とも仲良く帰ってしまったらしい。野田くんとかTKと遊んでる場合じゃなかた。ちくせう。

 

「せっかく遊びに来たのに。岩沢さんと一緒にひさ子ちゃんで遊ぼうと思ったのに」

 

「ひ、ひさ子先輩で遊んじゃダメですよぅ……」

 

 ダメですか。ダメダメですよぅ。

 

「ところでアナタはどちらさん? 噂の関根さん?」

 

「あ、い、入江です。しお――関根はちょっと用事で。でもすぐ来ると思います」

 

「しお、関根? しお、しお、あ、塩。塩関根? よくあるよね。塩チョコとか、塩飴とか。でも普通の関根さんがほしいのですが売り切れですか? 入荷待ちですか?」

 

「え、あ、えと、その、あ、あの……!」

 

 テンパってる。超テンパってる。戦線では珍しいタイプのようで面白い。とかなんとかやってると。

 

「たっだいまー! 愛しのみゆきち! 待たせたな!」

 

 なんか来た。

 

「お? 誰だ貴様はー! あたしのみゆきちに手を出したらただでは済まさんぞー!」

 

「ナツメがログアウトしました」

 

「逃げんのか―い!? って、ナツメ? ナツメって、もしや君が噂のナツメくん?」

 

「人違いです」

 

「違わないです」

 

「違わなくないです」

 

「違わなくなくないです」

 

「違わなくなくなくないです」

 

「違わなくなくなくなくないです」

 

「キリないです」

 

「ないですね」

 

 誰か止めてくれないと、と入江さんに視線を送れば。

 

「せ、関根入荷しましたっ!」

 

 とてもなごみました。

 

 

 

「改めまして、ナツメです」

 

「あたし関根。先輩達から話は聞いてるよ。ようやく会えたねー」

 

「ここで会ったが?」

 

「百年目! ではなく初邂逅! 覚悟しろラー油王子!」

 

「うん、ひさ子ちゃんに練習見に来ればって言われたので来ました!」

 

「ひさ子先輩帰ったけどな!」

 

「知ってたけどな!」

 

「あたしとみゆきちしかいないけどゆっくりしていってね!!!」

 

 入江さんおいてけぼりで2人で騒ぐ。

 

「あ、でも本当にちょっと見てく?」

 

「いいの? おらワクワクすっぞ」

 

「よーし、みゆきち! いっちょやってみっかー!」

 

 関根さんはとても元気な子のようで、話してて楽しいです。

 

 

 で、一通り演奏してもらったら丁度いい時間になったので三人で食堂へ向かう。お腹空きました。と、そう言えば、二人とは短時間ながら結構仲良くなれたようで入江ちゃんも普通に話してくれるようになり、それぞれ呼び方もさん付けからちゃん付けへ変更しますた。

 

「なっつん! なっつん!」

 

 関根ちゃんとはすごく仲良くなりました。ひさ子ちゃんの言う通りだったね。気が合いそうです。でも若干ユイにゃんと被る。

 

「関根ちゃんに懐かれた。困る。入江ちゃん助けて」

 

「こ、困るんだ?」

 

「このままフラグがたってしまうと入江ちゃんを交えた三角関係に発展してしまい修羅場ルートの回避ができない」

 

「交えないでよぅ」

 

「交じりませんか? 一緒に修羅場りませんか?」

 

 修羅場らないよぅ。ですよね。

 

「そうだそうだ! みゆきちはあたしのだ!」

 

「ダメ。この際入江ちゃんは戦線の共有財産にすべき」

 

 こんな珍しいタイプは大切に保存しなくては。さぁ、早くしまっちゃおうね。あれ、なんか違う。

 

「そんなふうに考えていた時期が私にもありました。でもやっぱりみゆきちは個人で愛でるべきだという独占欲に気付き云々」

 

「うるせー! 松下五段ぶつけんぞ!」

 

「ごめんなさい」

 

 そんなに嫌ですか。

 

「んー、嫌って訳じゃないんだけどねー。直接話したことないし。でもイメージが先行しすぎてる感じかなー」

 

「遊佐ちゃん情報?」

 

「そうそう、遊佐さん情報」

 

 関根ちゃんも遊佐ちゃんの言ってたガールズトークに参加してたらしい。この様子だと入江ちゃんどころかガルデモは四人とも参加してそうな勢い。あれ、やばい。この二人はともかく残りの二人のガールズトークって想像つかない。おかしいな。でもとりあえずゴメンよダブルギターウーマンズ。

 

「ちなみに入江ちゃんも松下五段は苦手?」

 

「私は別に……」

 

 苦笑いで濁す入江ちゃんに優しさを感じた。この子ええ子や。

 

「入江ちゃんマジ天使」

 

「天使じゃないよぅ」

 

「今のは松下五段の気持ちを代弁しただけです」

 

「やっぱりちょっと苦手かも」

 

 ゴメンよ五段。陥れるつもりはこれっぽっちもなかったんだ。できる限りフォローしとくからね、と思っていたけど話してるうちに脱線して忘れてました。いつものことだけども。

 

「また今度練習見に行くので、その時はよろしくです」

 

「お、待ってるよー! 一緒にひさ子先輩で遊ぼうね!」

 

「ひさ子先輩で遊んじゃダメだよぅ。でも、いつでも来てね」

 

 まってるよー、と入江ちゃんに言われてしまったのでこれはもう行くしかない。行って関根ちゃんと一緒にひさ子ちゃんで遊ぶしかない。もしくは岩沢さんでも可。今日練習見に行って良かったです。新しく友達が二人も増えました。

 

 そして食堂にて。

 

「二人とも肉うどんだ。ひさ子ちゃんたちも肉うどんだったしやっぱりガルデモの人って肉うどん好きだよね肉うどん肉うどん」

 

「女の子に向かって肉肉言うなー! このス・ウドゥンスキーめ!」

 

「私は食券が余ってたからだよぅ」

 

 大変賑やかな食事でした。

 

 


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