シールダー(偽)になりました   作:仙儒

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頭を空っぽにしてお読み下さい。


宝の鶴

 エンガノ岬沖海戦。

 

 小沢艦隊の囮機動部隊がアメリカ空母群を引き付けることに成功する。

 

 その中には、史実では存在していないはずの空母が一隻混じっていた。

 

 翔鶴型空母3番艦、宝鶴。

 

 国の宝である鶴を称して拝命された名。

 

 日本に残された精鋭空母の一隻。瑞鶴隊と並ぶ最高練度を誇る。ミッドウェーで生き残ったエースパイロットに、熟練パイロットが数多く編成されていたことでも有名であった。

 

 

「宝鶴、機関トラブル発生! 航行不能です!! 更に偵察機からの入電でアメリカ空母機動部隊少なくとも十隻。艦載機1000機が此方に迫っているとの報が届いています! このままでは全滅してしまいます!」

 

 艦長と言われた初老の“女性”は「そうか……、」と短く告げる。

 

「宝鶴隊は全機発艦! 小沢部隊と合流せよ! 総員最上甲板!!」

 

 艦長の周りに士官たちが残る。

 

「君たちも早く退艦を」

 

 艦長である女性がそう言うが士官たちは動こうとはしない。

 

「我々も残ります!」

 

 その言葉を聞いた艦長は静かに、だが、逆らうことを許さないと言うような声音で言う。「今後の奉公を頼む」っと。

 

 士官たちは最早艦長の意思は固く、説得は無理だと判断し、涙ながらに敬礼をして「形見を!」と口にした。

 艦長は尊敬する二航戦の司令官の真似をして、軍帽と、刀を渡す。

 

 そうして、誰も居なくなった艦橋で、宝鶴隊が発艦していくのと、退艦していく将兵を見ながら口を開く。

 

「これで良かったんだよな…、宝鶴。思えばこの艦を賜った時から不思議なことばかり起きている気がするよ。巷では幽霊艦だの、なんだのと言われているが名前に恥じない艦だよ。そうだろう? なぁ、宝の鶴。ホウカクよ」

 

 その問いかけに答える者はいない。

 

 そして、宝鶴隊は全機発艦し終え、空のかなたに消えていく。全員が退艦したのを見届けた時、艦長と言われた女性は倒れた。

 

 次に目を開けた時には送り出したはずの部下たちに囲まれていた。

 

 理解が追い付かない。

 

「誰か甲板にいるぞ!」

 

 その言葉に、脱出した乗組員たちは甲板を見上げると、そこには確かに人が立っていた。

 こちらに向かって敬礼をしている。

 

 もう、宝鶴に人は乗っていないはずだ。では、あれは誰だ?

 

 疑問に思っている間に、宝鶴が“独りでに”動き出す。

 

 

 誰もが己の目を疑った。

 

 そして、戦闘旗とZ旗があがる。

 

 誰もいないはずなのに、機銃が空に向かって撃たれる。

 

 

 いつの間にか飛来していた米航空機を次々に機銃が撃ち落とす。

 

 それでも、空に展開するおびただしい数の戦闘機は減った様子を見せない。宝鶴に戻ろうにも、機銃で撃ち落とされた戦闘機が次々に落ちて爆発、爆撃機の爆弾による爆発による水柱で近づけない。

 

 数の暴力に負けて、遂に宝鶴の甲板に爆弾が落ち、爆発を起こし黒煙と火柱があがる。

 

 それから、徐々に速度が落ち、爆弾の雨と雷撃の波が容赦なく宝鶴を撃つ。

 

 火柱と黒煙をあげ、それでも健気に機銃を撃ち続ける宝鶴。

 

「もういい。もう十分だ!」

 

 誰かがもらした言葉が響く。

 

 それでもなお、宝鶴は沈まずに抵抗を続けている。

 

「ありがとう!! もういい! 沈んでくれ!!」

 

 傾斜はひどく、最早浮いて航行しているのが奇跡であった。

 

「沈めー!!」

 

 気が付けば離艦した乗組員全員が涙を浮かべてそう叫んでいた。私もその一人だ。

 

 艦尾と艦首に亀裂が入り、燃えていない所を探す方が大変だった。遂には機銃の弾も尽きたのか反撃の手が止んだ。そこに爆撃と雷撃の嵐が容赦なく宝鶴を襲う。

 

 それでも、5時間。

 

 5時間も宝鶴は沈まずに耐え続けた。

 

 奇しくも、それは作戦を完遂したと判断して、本隊並びに、はぐれた囮機動部隊の撤退するのに要する時間でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから7X年の月日が流れた。

 

 世界を突如謎の生命体が支配した。

 

 人類はこれを深海棲艦と呼称。

 

 それに唯一、あらがうことができるのはかつて、第二次世界大戦を戦い抜いた艦の御霊。

 

 これらを人類は艦娘と命名し、人類の命運をゆだねた。いつか静かな海を夢見て……。

 

 

 

 

 

 

 横須賀鎮守府。

 

 建造時間6時間。

 

 第二種軍装で本を読んで待っている若い女性がいる。

 

「そろそろだと思うんだけど……」

 

 腕時計をちらりと見て呟く女性。

 

「テイトク、デキタ!」

 

 小人がやってきて、軍服の女性に伝える。

 

「ありがとう、妖精さん」

 

 女性は妖精さんと呼ばれた小人の後ろを着いていく。

 

 妖精さんの未知のテクノロジーでできた建造ドックに入る。

 

「サーv、じゃなかった。翔鶴型3番艦の宝鶴だ。問おう。俺のような役立たずを造った大バカ者はどこにいる?」

 

 そう言って私を見つめて、

 

「認めたくないが、君しかいないか……。これより先、君の命運は俺と共にあり、俺の楯は君と共にある。この身が朽ち果てるまで君を裏切らないことを誓おう」

 

「お、お、お、男――⁉」

 

 私の悲鳴にも似た声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いたか?」

 

「はい、ありがとうございます…」

 

 改めて見てみる。

 

 銀色に輝く癖っ毛の髪の毛が浜風みたいに片目を隠し、黄金の瞳が此方を見つめている。

 

 左手には背丈と同等くらいの大きさの十字架を思わせる楯のようなデザインの飛行甲板を手に持ち、右手にはボウガンを持っている。

 こんな形の飛行甲板は初めて見た。

 腰には軍刀が付けられていて、黒をベースに、所々紫の配色がなされた絵本に出てくる騎士のような格好であった。

 

「そんなにじろじろ見ても何も良いものなんてないぞ」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 急いで視線を反らして反射的に謝ってしまう。

 

「いや、別に責めているわけでは無い……、すまない。人と接するのが苦手なんだ。こういう場合、どう声をかければいいのかわからない」

 

 そう言って、軍刀の反対側についているホルスター? のような所にボウガンをしまい、苦笑いを浮かべながら頬をかく仕草をする。照れ隠しなのだろう。

 

「取り敢えずは……」

 

 そう言いながら、手を差し出す彼、宝鶴。

 

「これからよろしく」

 

 少し理解が遅れたが、意味をすぐに理解して、こちらも笑みを浮かべて差し出された手を握る。

 

「こちらこそよろしく」

 

 宝鶴の手はごつごつしていたが、温かく頼りがいのある手だった。

 

 

 

 ……、上への報告どうしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうやら俺は死んでしまったらしい。

 

 神様のミス。よく見かける二次創作のテンプレだ。

 

 お詫びとして願い事を叶えて、転生させてくれるらしい。

 

 他の転生者に会ったら嫌だな~。特に自分が物語の主人公だと思って増長して、平気で人を殺しにかかってこられたら、何もできないまま殺される自信ある。

 それに、対抗するためにある程度俺もチート能力が必要なわけだ。

 

 ……、ごめんなさい。嘘です。本当はチート無双したいだけです。

 

 と言うわけで、型月の能力や宝具頂戴! ってお願いしたらおk貰った。

 

 あれ? もしかしなくても、俺踏み台転生者じゃね?

 

 

 そう思っているうちに目の前が真っ暗になり、気が付いたら戦前の世界に居た。

 

 しかも、人間ではない。もっと言えば生き物ですらなかった。

 

 神様、流石にこれは酷くないですか? 何? 最新鋭空母翔鶴型の3番艦「宝鶴」って。鉄の塊じゃん。これじゃぁ、貰った転生特典が使えないよ!

 そもそも、翔鶴型の空母って2番艦の瑞鶴までじゃなかったっけ? 俺の知る限り、「宝鶴」なんて空母存在しないぞ。

 

 まぁ、第二次世界大戦の内容ってあんまり詳しくないんだけどさ。

 

 そして、一番おかしなところは、俺に乗ってくる軍人さんが全員女なのだ。

 

 なんでさ。

 

 それから、観艦式やなんかにも参加したけど男は一人も居ない。

 

 時は進み、段々と空気がピリピリしてきた。

 

 開戦が近い。

 

 朝もはよから日暮れまで、パイロットたちが訓練訓練また訓練。

 

 トレース・オンして、電文や操縦を奪ったりできるようになったりしていた。

 

 前世では英語は全然できなかったのに、艦になってからは不思議とスラスラできた。それだけではない。三国同盟があったからかドイツ語、フランス語もできるようになった。

 

 真珠湾奇襲するのに、確か外務省が英訳するのに手間取った結果、宣戦布告が遅れて卑怯者のレッテルを張られたのをどこかで聞いたので、長官が電文送れって言った時に、外務省に英訳の電報を送ったのだがどうなっただろうか? 俺の知っている悲惨な戦争にならないことを祈るのみだな。

 

 

 

 各地で破竹の快進撃が続く日本。この頃から海軍は天狗になり始めている。

 

 元々強かったエリート意識が、更にエスカレートしている。

 

 電報で、「勝って兜の緒を締めよ」と打って全艦艇に送っといた。

 

 

 

 ミッドウェーで暁の一航戦が沈んだ。

 

 戦争の主導権がアメリカに渡った。

 

 

 

 

 

 捷一号作戦が採用された。

 

 史実だと栗田ターンと言う謎の反転が行われた作戦。

 

 詳しくは知らない。

 

 ただ、作戦の立案者の参謀長で元エースパイロットの人が日記に「老い耄れ、臆したか」と書き残しているのをなぜか思い出した。

 

 作戦行動中、日本の空母がほぼ壊滅するのを思い出し、なけなしの偽善に駆り立てられた。おそらく、現場の熱気にあてられたのだろう。

 頑張って、一時的に航行不能状態にして、囮機動部隊に「俺、動けないから置いてって」と電文送った。

 

 後は賭けだったが、上手くいった。艦載機が全部発艦し、総員退艦したのを見届けた。

 

 艦長だけは俺と運命を共にしようとしたから、後ろからぶん殴って気絶させて、甲板から投げ捨てた。

 

 今まで、人に触れることはできなかったのに、どうして最後の最後で触れられるようになったのかね。神様も粋な計らいをしてくれたもんだ。

 

 甲板から離艦した乗組員たちに訣別の意を込めて敬礼をした。

 

 さて、ここからは自棄だ。

 

 囮機動部隊が向かったのと別方向に向かう。……、予定だったんだけど、すぐに発見されて雷撃と急降下爆撃の嵐が俺を襲う。幸い、離艦した乗組員とはある程度離れることができた。

 後は爆撃を避けつつ機銃を撃つ。もっとだもっと! もっと来い!!

 

 だが、現実は無情で、ゲームと違って弾にも燃料にも限りがあり、機銃の弾が尽き、爆弾の直撃で燃料に引火。

 

 遂には動けなくなり、空を睨む。あれだけ撃ち落としたのにまだ来るのかよ……、流石は物量チートのアメ公さん。マジパナイ。

 痛覚やなんかが無くて良かった。後は我慢比べだ。

 

 地獄のような時間が続く。

 

 爆発の音が止むことは無い。

 

 痛覚も何もないが、心が抹消されていく。

 

 視界が欠ける。

 

 左目はもう見えていない。

 

 

 勇気を出し、自身を奮い立たせるために、知っている曲を片っ端から歌う。

 

 

 右の視界にも亀裂が入る。

 

 それでも歌い続ける。

 

 

 ふと、

 

 

 視界に桜の花びらが見えた。

 

 なん、だ――? 遂に幻覚でも見えたか。

 

 視界が一気にクリーンになる。見えなくなった左目に光が戻る。亀裂が入って見えた右目の視界が元に戻る。

 

 海ではなく、あの地獄でもなく、桜の木があった。

 

 

 

 ……、終わったのか。

 

 

 

 何もかもが。

 

 なぁ、俺は俺のできることを全てやり尽くしただろうか?

 

 疑問は尽きないが、まぁ、いいか。今はゆっくり眠りたい気分だ。

 

 

 

 ――――今一度、力を貸して欲しいのです。

 

 

 声が聞こえた。女の声だ。ひどく懐かしい感じがするのはなんでかな?

 

 体が引き上げられるような感覚に襲われる。不思議と不快感は無かった。

 

 

 目を開けると軍服を身に着けた若い女性が立っていた。

 

「サーv、じゃなかった。翔鶴型3番艦の宝鶴だ。問おう。俺のような役立たずを造った大バカ者はどこにいる?」

 

 全力でネタに走ることにした。

 

 気分は月の聖杯戦争に召喚された際の紅い弓兵の気分。サーヴァントと言いかけて、気が付いたが、このネタ通じるか? 人間だったころの名前を言っても、誰それ? って成りそうだったから、転生してから付けられた名を言うことにした。

 

 

 その後少々あったが、なに、気にするほどの事でもない。

 

 それよりも、艦娘寮に案内すると言われて、それどころでは無かった。表面上は冷静を装っていたが、内心、動揺を隠せないでいた。

 取り敢えず、案内された部屋にあった姿見で自分の容姿を確認してみたらFGOのギャラハッドそのものだった。

 通りで、左手に持っている楯に見覚えがあるわけだよ。

 

 あれか? 艦娘皆の楯になれってか。

 

 マジかー。

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