シールダー(偽)になりました   作:仙儒

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ご都合主義万歳


演習

 楯とボウガンを壁に立てかけると、どこからか、大量に湧き出した妖精さんが群がり、運ばれて行ってしまった。

 

 妖精さんは確か、ビジネスライクがスタンダードだった気がするんだけど……、ただの気まぐれか。

 

 そんなことよりも、試してみたいことがある。

 

 俺は型月の能力と、宝具を貰ったはずだ。

 

 試しに、王律鍵バヴ=イルを強くイメージして手を前に出す。

 

 しかし、何も起こらない。

 

 トレース・オン。

 

 しかし、何も起こらない。

 

 湾曲の魔眼。曲がれ!

 

 しかし、何も起こらない。

 

 死が俺の前に立つんじゃない! 直死の魔眼!

 

 しかし、線と点など見えない。

 

 その後も、思いつく限り試してみたが、何もできない。無論霊体化もできなかった。

 

 おい‼ 神様の嘘つき‼ 転生特典はどうした! またか? 俺を殺してしまった時みたいに、またミスをしたのか!?

 

 ええい、まだだ。まだ終わらんよ!

 

 最後の賭けで、楯をイメージしたら出てきた。楯だけかい!! 本格的に艦娘の楯になれってか? ハハハ、そんなバナナ。

 神様これじゃぁ、俺強えぇーーー無双ができないよ!

 

 唯一使える楯は対悪宝具。毒とか、悪意に反応するらしいけど、そもそもこの時代に毒殺とか確率的に限りなくゼロに近い。

 悪意も同様だ。正義と悪は立ち位置が複雑で、正義が悪に裏返ることもあれば、悪も又、正義になり得る。システムとしての悪と言うのも存在する。

 

 型月の世界は難しい。

 

 と言うか、この楯って精神の護りを形にしたものだけど、俺、自慢じゃないけど、心は硝子…、否、豆腐だ。なんだか開始早々に詰んだ気がするんだが……。

 俺、マシュ見たいに真っすぐじゃないし。清らかな心の持ち主でもないし。凹む。

 

 まぁ、それはおいおい考えよう。

 

 それにしても提督遅くないですか? そのおかげで恥ずかしいところを見られずに済んでいるわけなんだけどね。

 大人しく座って待つか。

 

 

 それから程なくして提督が戻ってきた。

 

「すいません。色々やることがありまして。早速で悪いのですが手短に説明します」

 

 この世界では男性は絶滅危惧種らしい。

 だから、海軍将兵全員女性だったのか、納得。

 そして、国家で男性を保護しているらしいのだが、俺は男ではあるけれど、艦娘? でもあるため、どう扱ったらいいのか、扱いに困っているとのこと。

 そのことで、取り敢えず、艦隊司令部に報告したら軍上層部が俺を寄こせと言い出したこと。

 国も男性保護法の名のもとに俺を回収しに来る可能性が非常に高いこと。

 

 俺の霊其(カラダ)がどちらもろくなことにならないと告げている。

 

 絶対にエロいことする気だろ。ウス=異本見たいに! ウス=異本見たいに!

 

 大事なことなので二度言いました。

 

 何? 足柄さんみたいに皆飢えた狼なの? …なんだろうな~。足柄さんなら大歓迎だけど、軍の上層部の連中や、国のお偉いさんなんかは初老がいいところだ。

 熟女好きには申し訳ないが、初老の婆さん相手に興奮するほど俺は上級者ではない。

 

 で、早速車飛ばして此方に向かっているお偉いさんがいるらしい。

 

 日にち改めろよ、どんだけ男に飢えてるんだよ。

 

 提督が報告と言う名の相談をしてしまった手前、断ることはできないんだろうことは想像つくし、軍と言う究極の縦社会では、上司の言うことは絶対だ。下手をしなくても出世できなくなるだろうし、下手したら首が飛ぶ。

 

 提督の階級がどの位だか知らないけど。そう言えば、まだ名前も聞いてないな。

 

「提督、君は一つ大事なことを忘れているぞ。本来ならば一番初めに言うことだ」

 

「大事なこと?」

 

 提督は首を傾げる。本当に気が付いてないらしい。

 

 はぁ、とわざとらしくため息をついて、口を開く。

 

「俺は翔鶴型空母の3番艦の宝鶴だ。提督の名を」

 

 そこまで言って、ようやく理解できたようで、手をポンと叩く。

 

「私は波月章香大佐です。つい先日横須賀鎮守府に着任しました」

 

「章香、か。ああ、実に君に似合う響きだ」

 

 それにしても、この若さで大佐か。スゲーな。

 よくよく考えてみたら、艦これの提督って少佐スタートのエリート士官だったな。

 

 それにしても、ここ横須賀鎮守府だったんだ。俺呉生まれで、そのまま呉鎮守府に配属になっていたから、観艦式で横須賀鎮守府に一回来ただけなんだよな。

 因みに、その時お召し艦してた比叡での食事会で集団食中毒事件を起こして、かなりの騒ぎになった。艦娘の比叡の飯マズ設定はここから来たのではないだろうか?

 更に言えば、空母の母こと鳳翔にはイタリアンだかフランスだか何だかの料理のプロが腕によりをかけて料理を振舞っていたとかなんとか……、よくわからないが料理が美味いのはその影響だろう。確か、艦娘の性格や特技なんかは、艦時代に大きく左右されるってどこかで聞いたことあるし。

 

 話がそれたな。

 それからは仮想敵国アメリカとの開戦ムードが高まって、訓練、訓練また訓練の日々だった。

 空母の発着艦って難しいから。

 

 って、提督顔真っ赤だよ。熱でもあるのか?

 

 ダメだよ、誰か艦娘が秘書艦やってくれて、昔の提督ほどではないだろうけど、それでも提督の仕事は激務なのは変わらんだろうし、横須賀鎮守府と言う日本最大の基地を任されている重責もあるだろう。

 

 言葉は悪いが、提督が倒れでもしたら指揮系統が麻痺し、最悪の場合そこから総崩れ、なんてことが起こりえるのだから。

 的確な指示を出すためにも、休める時はきちんと休んで貰わないと。

 

 これから上官との交渉もあるのだから。

 

 そのことを口にすると、違う! と言って睨まれた。

 

 童顔でタレ目な、綺麗と言うよりも可愛い系の顔で睨まれても怖くない。

 これを口にしたら、更に不機嫌になるか、最悪拗ねられるのはわかりきっているので、言わないが。

 

 そんなことをしていたら、部屋の扉をノックする音が響く。

 

「あきつ丸であります。佐渡中将をお連れしたであります」

 

 あきつ丸はゲーム通りの口調をしているが、言葉にどこか棘がある感じだ。

 

 提督も顔を嫌そうに歪めた。

 

「ありがとう、あきつ丸。応接室にお通ししてくれる?」

 

「その必要は無いわ」

 

 勝手に扉が開けられて、第二種軍装を着たでっぷりと太った婆さんが、品の無い笑みを浮かべてズカズカと部屋に入って来る。

 部屋の中に香水の臭いが充満する。臭い。鼻が曲がりそうだ。

 厚ぼったい化粧は若者を意識しているのか知らないが、ケバい。口紅を濃く塗った唇は少し開かれ、舌なめずりしてる音が非常に不愉快だ。

 

「急にごめんなさいね。これ、お近づきの印に受け取って頂戴」

 

 格好つけのつもりだろうか? 花束を俺に渡してきた。

 そして、決め顔をして提督に向かって鼻で笑った。

 

 人は見た目で判断してはいけないと人間の時に親に口を酸っぱくして、耳にタコができるくらい言われたが、流石にこれは……。

 

 品の悪さと頭の悪さがにじみ出ちゃってるし、明らかに悪人って感じだ。

 

 ここまで、ありとあらゆる面で人に好かれない要素全開なのはある意味、才能かもしれない。

 

「はぁ」

 

 呆気に取られて、反射的に花束を受け取ってしまったが、それをどうとらえたのか、勝ち誇った顔を提督に向ける佐渡中将。

 

「彼、宝鶴と言ったかしら? この子はどうやら私を選んだみたいよ。当然よね。貴女みたいな親の七光りで今の地位に座ってる女なんかよりも、”私自身”の実力で築いた”優秀な”者の指揮下に入れる方が彼の誉れにも繋がるわ。それに、私の方が彼を高待遇で過ごさせることができるわ。当然の結果ね」

 

 なんか自分が如何に優秀かみたいな話し方してるけど、どう考えても優秀に見えないし思えない。提督が唇を噛み切って、血を流しながら佐渡中将を睨んでいる。よく見てみると微かに震えていて、握りしめられた拳から血が滴っている。

 軍のような究極の縦階級社会において、下の者は発言権すら与えられないのが現実だ。その顔を見ながら愉快そうに下品な笑みを浮かべて、腕を絡めて密着してくる。

 

「さぁ、行きましょう」

 

 そう言って甲冑の上から下半身を触られ、顔が近づいてくる。

 

 

 ―――――たくさん可愛がってあげるわ♡

 

 

 全身に鳥肌が立ち、醜い脂肪の塊(佐渡中将)を突き飛ばす。

 

 流石にこの行動は予想外だったらしく、盛大に転んだ。ついでに、格好つけるために無理して履いていたハイヒールが原因で足首から「グキッ!」と言う嫌な音が聞こえた。足を細く見せるために無理して履いただろうストッキングもビリビリと音を立てて破け、さながら縄で縛られたチャーシューを連想させた。

 

 状況が飲み込めなかった醜い脂肪の塊(佐渡中将)は暫く呆気に取られていたが、やがて状況が理解できたのか、凄い形相で髪の毛を振り乱しながらこちらを睨みつけてきた。ちょっとしたホラーだ。

 

「ちょっと格好いいからって、こっちが優しく接してやってるのを良いことに、付け上がりやがって、私の好意をふいにしたわね! 兵器は兵器らしく私に従いなさいよ!!」

 

 えー、自己中かよ。

 しかも、兵器とか言い出したぞ、おい。さてはお前……、ブラック鎮守府だな!

 それにしても、此処まで中身が子供だとは思わなかった。踏み台転生者以外にもこんな奴がいるんだな。

 

 立ち上がろうとしては、無理して履いたハイヒールと、恐らく、挫いた足の痛みで立ち上がろうとしては、バランスを崩してのた打ち回る様はシュールを通り越して、ホラー映画を見てる気分になった。

 

 最終的には、立ち上がることを諦めて、こちらを睨んで「このままで済むと思うなよ! 七光りの小娘と兵器風情が! スクラップにしてやるわ!」と捨て台詞を吐いた後、這いつくばりながら出て行った。

 

 だから、怖いって。俺ホラー苦手なんだよ! 夢に出てきたらどうしてくれる!

 

 部屋にはキツイ香水の香りと、突き飛ばした際に一緒に投げ捨ててしまった花束が残されていた。

 取り敢えず喚起して、塩でもまいておくか。花束には申し訳ないけど、飾る気にはなれなかったので、ゴミ箱に捨てた。

 

 なんか、一気に疲れが出て来たな。

 

 それにしても、である。

 

 酷い者を見た。

 

「ふはははは、痛快であります。ざまーないのであります!」

 

 このあきつ丸、ちょっと黒くない? 気持ちはわかるけどさ。

 

 その後、あきつ丸が救急箱を持ってきてくれて、提督の手と唇の治療をした。

 

 

 

 後日、醜い脂肪の塊(佐渡中将)から決闘の申し込みが来た。

 内容も酷い物で、俺一人で挑めだの無茶ぶりと言う名の我儘が呪いのように綴られていた。

 

「こんなふざけた内容が通ると思ってるのか!」

 

 決闘の内容が書かれた紙をビリビリに破いて、それでも怒りが収まらず、行き場のない怒りを拳に込めて執務デスクに叩きつけようとする手を、優しく受け止める。

 

「こんなつまらないことで、提督が怪我を負う必要はない」

 

「でも!」

 

「……、ありがとう」

 

「っ!」

 

 どうなだめれば落ち着いてくれるかわからなかった。反射的に謝ろうとしたが、俺のことを思ってここまで本気で向き合ってくれているのだ。謝罪はむしろ逆効果になる。

 そう言えば、ゲームのキャラが似たような状況になった時、ヒロインに謝ってしまったのをヒロインが優しく、こういう時は「すまない」じゃなく、「ありがとう」と言うんだと主人公に教えたのを思い出した。

 

 だから、俺はお礼を、ありがとうと伝えた。

 

「わかりました。でも宝鶴は建造されたばかりです。こちらも精鋭で護り抜きます」

 

「わかった」

 

 どうでもいいが、深海棲艦が出てきたことで、第二次世界大戦の末期と同じなのだなと思った。

 有能で未来ある人材が戦火に散り、無能ばかりが生き残りふんぞり返る。軍上層部が腐っているのはいつの時代も変わらないのだな。

 

 だから、俺は軍に見切りを付けた。

 

 一番最初に俺を呼んでくれた彼女の為にこの楯を預けてみよう。

 

 

 さて、覚悟は良いか? 俺は13番目。災厄の席に立つ男だ。

 

 

 

 

 

 そうして、決闘の時が来た。

 

 演習場には多くの軍関係者が集まっていた。

 

 良くもまぁ、これだけの人数が集まった物だ。

 

 控室の前に行くと、醜い脂肪の塊(佐渡中将)が腕組みをして、下品な笑みを浮かべて立っている。

 

「なんの用ですか?」

 

 提督が棘のある言葉を投げかける。

 

「最後のチャンスをくれてやろうと思ってね。宝鶴、私の奴隷になれば許してやろうじゃないか! 忠誠の証に私の足を舐めながら許しを乞うんだよ。ほら、速く」

 

 そう言って片足をこちらに向けてくる。

 まるで、そうするのが当たり前のような態度だ。だめだ、頭がいかれてる。

 しかも、醜い脂肪の塊(佐渡中将)の中では俺が足を舐めて許しを乞い、奴隷になるのが決定事項らしい。

 

 馬鹿らしい。本気でそれ以外の行動を取ることがないと信じているあたり、救いようがない。いっその事、此処で殺した方がこの国のためなのでは? と思ってしまう。

 

「断る」

 

「なっ!」

 

 後ろで提督が殴りかかろうとしたので、言葉を口にした。

 

 醜い脂肪の塊(佐渡中将)は断られるという返事が返ってくるとは夢にも思ってなかったのだろう。絶句していた。

 

 だが、直ぐにニヤニヤしながら、「残念だよ、実に残念だ」と言いながら去っていった。

 

 ありゃ、何か企んでいるな…、そう思って全員で控室に入ると、爆破テロの後みたいな惨状になっていた。

 魚雷や弾薬は最早使い物にならない。ボーキサイトも燃料も無い。

 艦娘の装備品は全て壊されていた。

 艦娘の装備品は現代兵器では傷一つつけられない筈なんだけどな。さては敵さん、先に来て自分の配下の艦娘に破壊させたな?

 

 そんな中、俺のボウガンだけ無傷で残っているのが気になった。

 

 絶対に罠だよな。

 

 提督に仲間たちの怒りが頂点へと達した。

 

 皆が、審判に反則行為が行われたことを告発しに行こうとした。それを止める。

 

「止めてくれるな、明らかに反則だ」

 

 それはわかっているが、これだけのことが起こっているのに、審判が何のアクションも起こさないなんておかしい。

 考えられることは一つ。

 審判は既に相手とグルになっている。

 

 放送が流れる。

 

 早く来ないと、不戦勝になると。

 

 今からでは修理に補給は間に合わないし、認められないだろう。

 

 俺は皆の制止を振り切って、演習場に出る。

 

 既に敵は艦載機を発艦しており、演習場に入った瞬間に爆撃の嵐が襲う。

 

 おい、反則だぞ。

 

 回避行動に移行しようとしたら足が動かない。ちらりと足元を見てみると艤装から燃料が漏れていた。

 

 艤装を脱ぎ捨てる。

 

 水面に足を付けると、確かに地面を踏んでいるのと同じ感覚が伝わってくる。

 

 こればかりは、賭けだったが、どうやら賭けには勝ったらしい。ギャラハッドの実の父親であるランスロットは、何を隠そう、湖の乙女に育てられたのだ。

 当然、水霊の加護が与えられている。ならば、実の子であるギャラハッドも水霊の加護を持ってる可能性があった。

 

 水の上を走る。

 

 艤装を履いている時と違って、波や潮の流れの影響を受けない。何よりも燃料を気にしながら走行する必要はない。これが大きい。

 

 隙を見つけて、艦載機を発艦させようとした時に頭に何かが流れ込んできた。これは危険だと意味のわからない謎の確信が行動にでて、反射的にボウガンを手放して、楯で身を護る。

 

 次の瞬間、ボウガンが爆発四散した。怪しいとは思っていたが、やっぱり、細工されていたか。

 

 さて、此方の手札は楯と剣しかない訳だがどうしよう。

 

 ゲームと違い、此方の攻撃ターンなど巡ってこない。攻撃をしたければ自ら動いて、隙をつくしか無い。

 っていうか、相手六隻全員空母とかズルくね?

 

 アウトレンジから決めたいわね! ってか? 姉の瑞鶴の口癖だったな。そして、この状況は瑞鶴の嫌いな七面鳥撃ちと呼ばれた状況ではないか。

 

 急降下爆撃、雷撃、艦上戦闘機による機銃攻撃。

 

 楯のおかげで、何とかなっているがじり貧だな。これじゃぁ、近づけないから剣は使えない。

 

 ここいらで、スキルとやらを試してみるか。マシュも宝具展開はできなかったが、スキルは最初から使えた筈だ。

 

 宝具とスキルは本能ってキャスニキが言っていた気がする。

 

 俺に力強き護りを!

 

 

 ―――今は脆き雪花の壁

 

 何かに体を包まれるような感覚がした。優しく温かな言葉にし難いこの感覚。

 

 これが、神秘の力。って、「今は脆き雪花の壁」かい! 初期の初期じゃねーか!

 

 やはり、最初から上手くはいかないか。

 

 練度が上がったり、改装されたりしたら真に迫ることはできるだろうか?

 

 ついでだ。全部試してみるぞ。

 

 ―――時に煙る白亜の壁

 

 よし、成功。これで無敵状態だ。この世界には無敵貫通何て言う神秘殺しは存在しない。後はこれがどこまで持つかだ。

 

 我慢比べ……、なんてするつもりはない。

 

 安心したからか、心の余裕ができて居た。おかしい。これだけの猛攻を仕掛けてきている。ゲームと違い、艦載機運用にも燃料に弾薬、ボーキサイトを消費している筈だ。なのに、こんな猛攻を続けられるだろうか? 仮に、空母が三隻づつ交代で攻撃しててもこの猛攻はおかしい。

 

 ! もしかして、ゲームではできない洋上補給をしているんじゃないだろうか?

 

 そうとしか、考えられなかった。

 

 流石にそれは反則だぜ、クソババァ! 審判は買収済みだから反則判定をしないだろう。

 だが、流石に観客全員は買収できないはずだ。誰か疑問に思って異議申し立てとかしてくれないかな?

 

 段々と急降下爆撃や、雷撃、艦上攻撃機の機銃攻撃の精度が明らかに落ちている。

 

 疲労か。無理もない。

 

 気が付けば、日は傾き、夕日が沈みそうだ。反撃のチャンス。夜戦ができる空母や艦載機は限られている。

 昼間のような猛攻は、もうできない。

 

 結局、数時間の間、俺は攻撃を耐え続けたのか。

 

 剣を抜き、一気に距離を詰める。俺の勝ちだ。

 

 また、頭に何か危険を知らせる確信…、未来予知のような映像が今度は脳裏にはっきりとよぎる。

 だが、幾ら予知できても避けられないこともある。

 

 無理やり頭を捻ったが、被弾してしまう。

 

 くそったれが! 空母の後ろに戦艦六隻控えさせておくとかありかよ。いつから連合艦隊の演習になったんだ畜生!!

 

 脳が激しく揺れる。

 

 目の前が暗転する。

 

 それでも、立ち上がろうとするが、脳震盪で立ち上がれない。

 

 いつの間にか、時に煙る白亜の壁の無敵効果が切れていたらしい。

 

 動け! 動け! 動け! 頼むから動いてくれ俺の体!

 

 提督の悲鳴が聞こえた気がした。

 

 いる筈のない仲間の声が耳に届いた気がした。

 

 

 そして、能面のような無表情で死んだ目をした相手の顔がなぜか脳裏に焼き付いて離れなかった。

 

 ああ、これ死んだわ。そんなどこか他人事のような考えが漠然とし、意識が完全にブラックアウトする。

 

 

 

 

 ―――――

 

 ――――

 

 ―――

 

 

 気が付くと、中世の街並みが広がっていた。

 

 人々で賑わっている中に立派な軍馬に乗った騎士たちが、人々に手を振りながらゆっくりと進んでいく。

 

 ……、円卓の騎士たちか。それも、最盛期の。

 

 向かっている先は、無論白亜の城、キャメロット城だ。

 

 景色が急に変わる。

 どうやら、キャメロット城内部のようだ。

 

「やぁ、座らないのかい?」

 

 急に声をかけられて、振り返ると見知った人物がいた。

 

「ギャラハッド卿」

 

「……知ってて当然か、何せ今は君そのものでもある。さて、長い話になるだろう。遠慮なく腰をかけてくれ」

 

 そう言われても、円卓の席には順番と、それぞれの役割がある。それに、特定の席に座ると飲み込まれる呪いの席も存在したはずだ。むやみやたらに座って残念賞、なんてことは避けたい。

 

 それを察してか、ギャラハッド卿は円卓に腰かけ、此処に座れと指をさす。

 言われたままに、その席に座る。どうでもいいが、円卓に腰かけていいのか?

 

「そこが、災厄の席。13番目の席だ」

 

 マジか。立ち上がろうとしたら肩に手を置かれて立てない。

 

「……、何で俺なんかに力を貸してくれるんだ?」

 

 ふと、疑問に思ったことを口にする。

 俺はマシュのようにひたむきで素直な人間ではない。己の我儘のために力を願い手にした人物だ。

 

「そうだな、俺は英雄として生き、英雄として死んだ。ほとんどの英雄のように悲劇や理不尽で終わるのではなく、幸せな最期を迎えた。そのことに悔いはない」

 

「…、尚更わからないな」

 

「最初は気まぐれだった。だが、お前を見ていて何で力を貸したのかわかった。俺は俺を継ぐ者が欲しかったんだ、とね」

 

「買いかぶりすぎだ。俺はギャラハッド卿程の聖者じゃない」

 

 ギャラハッド卿は首を振る。

 

「宝鶴、お前は気が付いてないようだが、宝鶴としての最期を迎えた時、君は逃げなかった。わかるか? それは自分のためじゃなく、誰かのためのものだったからだ。お前は臆病者ではあるが、卑怯者では無かった。だから、俺は安心して後を託せたんだ」

 

 再び景色が変わる。

 

 黄金の稲穂が揺れる理想郷。その中にギャラハッド卿の楯が墓標のように突き刺さっていた。

 

「お前の願いは何だ? 最初は死にたくないからでいい。それは生き物として当然の摂理だ」

 

 俺の願い…、わからない。わからないけど、

 

「どうか、俺の進むべき道を示すための力を!」

 

 そんなに深く刺さっていないはずなのに、重くて抜けない。

 

「それは、お前の心の重さだ!」

 

「うおぉぉーーー!!」

 

 楯が少し動いた。もう少し、後少しなんだ!

 

「それは、お前が神に願ったものだ」

 

 俺はギャラハッド卿の言ったことを復唱する。

 

 これは、俺が神に願った奇跡だ!

 

 楯が光り、表面の紋様が少し変わったような気がした。

 

 ギャラハッド卿は満足げに口を開く。

 

「及第点だが、見事だ。さぁ、行け」

 

 

 

 

 

 ――――

 

 ―――

 

 ――

 

 

 

 意識がぼうっとするが、まだ生きているようだ。

 

 胸が熱い。

 

 今ならできる気がする。

 

 

 ――――奮い断つ決意の盾

 

 

 攻撃が俺に集中する。

 

 仲間が俺を庇おうとしているが、間に合わない。

 

 それでいい。

 

「仮想宝具 擬似展開 人理の礎(ロード・カルデアス)

 

 別にロード・カルデアスの方は叫ばなくても展開できるんだが、気分だ。

 

 その宝具は自分を、そして、何より仲間を守るために。

 

 巨大な魔方陣が展開される。そこに光の線が走り、レンガでできた白亜の壁が具現する。幸い集中砲火による爆炎で、魔法陣と白亜の壁が隠れるようになっている。

 これで俺は楯で集中砲火を防いでいるように見えるだろう。

 

 

 叫んだせいで、周りに男だと感づかれたよな。

 

 その証拠に演習相手の艦娘たちの攻撃の手が止む。

 

 タイミング良く白亜の壁も消える。

 

 

 

 

 

 こうして演習は予期せぬ事態で幕を閉じた。

 

 余談だが、醜い脂肪の塊(佐渡中将)は男性保護法違反と俺を轟沈させようとした殺人未遂、その他にも叩けば埃が出るわ出るわで、軍法会議にかけられ、獄刑が言い渡された。

 恐らく、もう生きて日の目を拝むことはないだろう、とのこと。




徹夜して書いたから変なところがあっても大目に見てね。
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