お空の下でも不幸を叫ぶ   作:非人間

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 割とゲームの設定と小説の設定がごっちゃになってたりする。っていうかそもそもゲームのシナリオあんまりしっかり読んでない系騎空士だから絶対にどこかで設定がガバる自信がある。


第1話

「何だここ」

 

 少年が目を覚ます。いや、目を覚ますという表現は適切ではないかもしれない。どちらかといえば、気づけば突然そこにいたという表現の方が適切に思える。とはいえ周りの人々がそこまで騒いでいないところから、急に少年がそこに現れたわけではないのが分かる。

 

 何が何だかわからないといった風にキョロキョロしている少年の肩に、正面から歩いてきた男の肩がぶつかる。

 

「ぼーっと突っ立ってんじゃねぇ!!」

「は、はい!!どうもすいません!!」

 

 身長2メートル近くの大男にそう怒鳴られて、少年は情けなく逃げ出し端っこの方にあった樽に身を隠す。少年が立っていた場所は、やけに人通りが多く、そんな場所であんなふうにキョロキョロしていたら人のぶつかるのも当然だろう。改めて落ち着いて、少年が辺りを見回してみるとそこには、列を作るように出店が並んでいた。

 

「祭りでもやってんのか?」

 

 そう呟いては見たものの、その結論には何だか違和感がある。お祭りに並ぶ出店といえば、基本的に食品中心だろう。何の為なのか分からないぐらいに同じ商品の店が並んでいて、それぞれの店で値段設定が微妙に違かったりして、少しでも値段が低い店を求めて歩き回って見たりする。少年の持つ祭りのイメージとは、その程度のものだった。

 

 だがここは違う。そんなフワフワした雰囲気はどこにも無かった。どちらかといえば、そこに広がっていたのは緊張感、それもピリピリしたものでは無く活気に溢れた、いわゆる商人魂みたいなものだった。

 店の構えも二、三日使ったらすぐに片付けてしまう様なものではなく、数ヶ月ぐらいの連続しようには容易に耐得るような、いやそれこそこの場所に店を開けてしまうような立派なものだった。

 

それに

 

「じゃあその肉はうちの船に積み込んどいてくれ」

「もうちょっと負からんもんかね」

「ダメダメ、これでももう出血大サービス何だから」

 

「どっちかっつーと、キャラバン隊みたいな感じか?」

 

 金の動きの規模が違う。小学生のお小遣いなんてないも同然な量の金が、そこでは動いていた。それに扱われている商品のジャンルも、少年のイメージの中にある祭りのものと違っているように感じた。

 

「この剣、まじもんじゃねぇよな。こんなもん時代劇の中でしか見たことねぇぞ」

 

 少年が身を隠した樽の中にある刃物は、祭りのくじ引きにあるプラスチック製の安っちいものではなく、包丁などと同じような何かを切るためのものに見えた。それも刃渡り十センチなんてちゃちな代物じゃない、何十センチもの長さの、敵を切り倒すためのもの。

 

「いや恐ろしいのはそんなところじゃない」

 

 少年が恐れたのはなにも得物の鋭さだけじゃない、その、剣の心得のない少年でも扱えば確実に人を殺してしまるような、そんな明確な武器が、無造作に樽に突っ込まれてばら売りされている所だった。つまりそれは、最低でもこの場所に訪れている人たちは、活気の溢れる値切り交渉を行っている人たちは、みんなで協力して積荷を運んでいる人たちは、この剣で何かを斬り殺すことに躊躇いを覚えないのだろうと思ったところだった。

 

 こんなもの、誰かが盗んで振り回そうとしたら、周りの人間が止めに入る前に二、三人は殺されてしまうのではないか。そこまで考えたところでだった。あまりにも当たり前のことを、少年は思い出す。

 

「何言ってんだ俺は。もしそんなことになったら、店が雇ってる()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 さらに思考は連続していく。

 

「あれ?そもそも時代劇って何だっけ、何で祭りにあんなイメージ持ってたんだっけ」

 

 何か、そう何か致命的なことに気付けない感覚がある。

 それとは別に、この光景が当たり前なのだと訴える声も聞こえる気がする。

 

「そういえば俺は何でこんなところにいるんだっけ」

 

 頭を右手で搔いて見る。何も起こらない。

 

「っていうか、()()()()()()()()()()()

 

 記憶喪失。

 

 その単語が脳裏をよぎる。状況把握に回していた思考を、全て自己認識の為に向ける。

 

 まずは自分の名前、これは憶えている。自分の名前は上条当麻だ。何で名前は憶えているんだろう、そんなことはどうでもいい、次だ。他に、ほかに何か憶えている事はないだろうか。無い。何も思い出せない。何か、とても大切な何かをしていた途中だった気がする。

 

 焦る、焦る、苛立つ。

 

 何故か右手で頭を搔くのが止まらないことが、やけに気になった。その手を離した。

 

「まぁいいか、覚えてないもんはしょうがないし、とりあえず動くか」

 

 そう呟くと少年は、上条当麻は、先ほどの数瞬の違和感が無かったかのように、あっさりと立ち上がろうとする。樽に手をつき、体を持ち上げる。その際に右手の指先が、剣にそっと触れた気がした。

 

 キイィィィン!!

 

 なんだか、甲高い音が鳴った。それに続くように指先が触れた剣がガラガラと音を立てて砕け散った。

 

「なっ、なんだこれっ!?」

 

 焦る、当麻は先ほどとはまったく違った理由で焦る。先ほどの焦燥がぶっ飛ぶぐらいの勢いで焦る。そして気付く、なんだかみんなが自分の方を見ていることに。マイクの代わりに崩れ落ちた剣のかけらを握り締めちゃった、犯罪者系アイドル上条当麻は、営業スマイルの代わりに焦ったような苦笑いを浮かべる。

 

(逃げよう!!今すぐここから逃げ出そう!!)

 

 衣食住無し、記憶無し、戸籍無し、金無し、コネも無し。割と事態が洒落にならなくなってきた当麻は、こちらを向いてひそひそと内緒話をしている連中の穴を必死に探す。

 が、見つからない。もともと人通りの多かったことに加えて、響いた音が気になったのか様子を見に来た人たちもかなりの数になっている。これでは当麻が駆け込んでいっても速攻で捕まるのが落ちだろう。そんな人々の表情が一様に厳しいことから説得も難しいように思える。というか実際に当麻は剣を壊しているので、悪いのは一方的に彼なのだが。

 

(まずい、騎空士たちも動き出し始めやがった)

 

 向かいの店の中で、仰々しい武装をした集団が店主らしき人物と打ち合わせをしている。

 正面突破の確立が一気に低下していく。

 

(こうなったらこの店の中を突破するしか道が無い。どうせこっちの店にも騎空士はいるんだろうけど、確実に抜けられない表に出るよりはよっぽどましだ)

 

 そう結論付けて、店の中に駆け込もうとした当麻の背中に声がかけられる。

 

「どうしたんですか~、なにを騒いでいるんですか~、皆さん~」

 

 意識の隙を突くようにかけられた声に当麻の足が止まる。振り向いた先にいたのは、一人のハーヴィンだった。おっとりした雰囲気で、なぜかその肩に緑色の鳥を乗せていた。

 彼女は、壊れた剣と当麻の表情、そして周囲の反応を見回し、一つうなづく。そしてその口を開く。

 

 当麻はシンプルにまずいと思った。状況から考えてこのハーヴィンがこの店の店長なのだということには鈍い当麻でも気付く。他の店の騎空士たちがここに踏み込んでこなかったのは、このハーヴィンとの関係を気にしていたからということに気付くのにもそう苦労はしない。だからここで彼女が「この人をとっ捕まえちゃってくださ~い」なんていおうものならその瞬間に当麻の身柄は確保されてしまうのだろう。

 

 けれども身体能力は唯の一般人である当麻は、今にも開こうとしている彼女の口を塞ぐ術を持たない。ゆえに身構える。彼女の言葉の後の周囲の反応に全力で警戒する。作戦なんて考えている時間はもう無い。こうなったら出たとこ勝負だ。

 

 そんな風に考えていたからこそ、当麻は彼女が叫んだ言葉が信じられなかった。

 

「大丈夫です~、彼のことはこちらで対処しますので~、皆さんは気にせずお買い物を続けてください~」

 

 そんな言葉が聞こえた気がした。当麻には信じられなかった。だから回りの反応に警戒した。そしたらもう一度信じられないものを見ることになった。

 

「シェロさんがそういうならまぁいいか」

 

 皆そんな感じだった。彼女が来るまでは殺気立ってすらいた空間が一気に弛緩した。当麻が人を殴り倒してでも逃げ切ろうとしていた事態を、このシェロさん呼ばれたハーヴィンはたった一言で鎮めて見せた。あっけにとられた当麻の頭の中には、もう逃げようなんて気は起きなくなっていた。

 

 ただ

 

「すいません、お店のもの壊しちゃって。後あんな空気作っといて、逃げようとしてすいませんでした」

 

 これだけは自分から言っておかなければ、彼女に謝罪を求められてからではなく、自分から謝罪の言葉として切り出しておかなければ、もう一生彼女に、いや世界中の人に上条当麻として向き合えなくなってしまうと思った。

 

 そしてその言葉を受けたハーヴィンは、何一つ表情を変えることなく、

 

「はい~、自然とその言葉を出せる人を~、力で押さえつけるようなことにならなくて良かったです~」

 

 そういってのけた。

 

「さて~それじゃあお店の奥で~お話を聞かせてもらえますか~?」

 

 そういって身を翻し、店の奥へ入っていったハーヴィンは扉を開けてこちらに手招きした。

 

「これは不幸なんて言葉で片付けちゃだめだよな」

 

 そう小さく呟いた当麻は、ハーヴィンの後に続いて店の奥へ入っていった。




 店のもの壊しても上条さんならすぐに謝りに行くような気もするけど、禁書は結構上条さんの株を落としに行くことにためらいが無いから良いんじゃないかなって。

 あと禁書っぽさもイメージして書いてみたけど、何か変な感じになった気がする。
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