敵6両のうち、2両撃破、2両が足周りの損傷(中)、上出来だ。たった2両の戦力では相手は進撃出来ない。戦力を整のえようにも時間がかかるため、実質奇襲部隊は戦線離脱。こちらは15両。あちらは9両。数の上では此方が有利、しかし質は敵が上。
西林先輩はうまくやれるだろうか?私は部隊に本隊に向かうように無線で指示を出した後、西林先輩に報告の無線を入れる。
『奇襲部隊は予定通り使い物にならなくなりました。念のため1両偵察用に残しておきます』
『了解、良くやったわ。あとはこちらの仕事ね』
『ええ、バックアップに入ります。健闘を祈ります』
相手の奇襲部隊を完全に潰さないのは、相手に精神的焦りを与えるためだ。幾ら上級生とは言え、戦車の足周りの修復には時間と体力を消耗する。自分達より格下の生徒に奇襲を阻止された揚句、相手の戦車は1両も撃破出来ていない。自分達のプライドは完全にへし折られている。そんな士気が低下した状態ではたして協力して足周りの修復が可能か・・・否!!
しかし修復しなければ、本隊がやられる。いくら質はこちらが上でも、相手は15両、こちらは9両と数は上だ。もしかしたら・・・という不安が焦りを生む。その焦りは最初は小さな焦りだ。しかし焦りがミスを呼び、さらにそのミスが原因で周りに焦りが感染する。焦りが蔓延した状態で何が出来る・・・否!!何も出来ない。
作業速度は低下し、ミスも多発する。そうなれば仲間通しのトラブルが生じ、最終的には取っ組み合いまで発展する。
今の私の回線には、奇襲部隊に所属する先輩方の怒声や罵声がBGMとして流れている。勿論使われていない周波数なので、他の車両には流れていない。
何故そんな事陰湿な事を?・・・奇襲部隊の3年生の隊長が西林先輩の陰口を言っているからだ。別に陰口を言ってはいけないとは言わないが、限度というものが世の中にはある。あの3年生は最初戦車道の事で批判していた。『黒森峰に相応しくない』『西住流を冒とくしている』等・・・しかしここ最近は『ヤリマン』『売女』『援助交際』と戦車道に関係ない事を言いふらし、ネットにまで書き込みを行う始末←学校のPCで書き込みしているので調査は簡単w
今回の部隊の再編が出来ない無能者、仲間の陰口をネットという不特定多数が閲覧できる環境に流した事等を行ったという証拠を揃え、試合終了後に消えてもらう事にした。
西林姉妹の意見に反対という人間は多い。しかし人柄や人格が嫌いない人間は、3年生の行いを良くないと思っている人間より少ない。だからそんな人間を見つけ出し、今、この状況での3年生の発言を『記録』している。
妨害はしていないいよ?妨害はね。
さて今回の作戦について簡易に説明すると、
①奇襲部隊への対応
→アンツィオ高校の作戦を少し変更し、偽の情報を相手に与える事で、油断と慢心を誘った。結果はご覧の通りとなる。
②本隊への対応
→自爆覚悟の突撃だ。相手とこちらの戦車は同じ=攻撃力も防御力も車重も同じ。同じ戦車がそこそこの速度でぶつかれば、どちらも車両にダメージが入る。そうなれば数が有利なこちらに軍配が上がるのは当然である。この作戦は知波単学園の突撃を模倣している。タイミングさえ間違えなければ、十分勝算はある。
勿論接近するまでに撃破される可能性もあるが、別にかまわない。何故ならこの試合は勝つ事が目的ではない。如何に今の黒森峰が脆弱化を皆に知らしめるのが目的である。何故なら・・・『無様な結果であれば』私達は戦車に乗れないのだ。そもそも無様って何?『あさましい姿をさらす ・ 醜態を晒す ・ 恥ずかしい姿を晒す』・・・私達はすでに奇襲部隊を撃破している。
そもそも無様とは誰が判断する?判断する人間何て決めていない。師範?本日の師範がここにいるのは、ルールが適切に守られているかを判断する審判役であり、無様を判断する人間ではない・・・
この試合に関しては、私達にメリットはあるけれど、デメリット1つも無い。相手にはデメリットは多数ある(1年生主体にレギュラー陣が負けたとなれば、赤っ恥だ)がメリットは何もない。まぁ、5両以上撃破出来なければ『無様』とするなどの条件を提示されたらヤバかったが、そんな事はなかったので良しとしよう。
しかしおかしな点がある。西住まほ隊長の事だ。
①無様という言葉を使った点
→何故条件を曖昧にしたのか
②作戦を変更していない点
→幾つかのパターンは考えていた。しかし実際に相手が行った作戦は、スタンダードな作戦だった。一切捻りが無かった。
考えれば他にも出てくる・・・隊長は本当に勝ちにきているのだろうか?