模擬戦は終了し、予想通り我々の敗北という事で決着した。考えれば当たり前の事だ。幾ら作戦が良くともそれを実施する人間の練度が低ければ成功率は格段に低下する。しかし結果が敗北であろうとも、奇襲部隊の6両のうち、車両2両撃破、2両の足周りに重大な損害を与え、本陣にダメージを与えた事はレギュラー陣及び家元に大きな衝撃を与えるだろう。何処からどう見ても無様な結果でない事は明確である。
「今日の模擬戦に関して各々思う事があると思うだろうが、まず私から言わせてもらう」
西住まほは意見を述べ始めた。
「まず当初西林姉妹との約束していた「無様な結果であれば、レギュラーから外れてもらう」という件に関してだが、今回の模擬戦での結果から、これまで通りのポジションとする。これについて異議のある者は?」
流石にこの結果を無様という人間は、その人間の人間性が無様だw 案の定誰も意義を唱えなかった。
「では、この件に関しては「全員一致で異議なし」とする。以後この件を蒸し返す事は隊長命令で禁止する。続いて今回の西林側の作戦についてだが・・・西林、説明してくれないか?」
「はい」
西林凪(姉)が立ち上がり発言する。
「今回のこちら側の作戦内容は、現在戦車道を行っている学園が良く行う作戦を少しアレンジして実施しました。奇襲部隊へはアンツィオ高校の作戦で対応しました。本家はハリボテですが、今回は木製で簡易に作成しております。しかし事前の情報等で油断しやすくしているうえ、塗装等をリアルにしているので、簡単にハリボテと認識しにくくしています。本陣への対応は知波単学園の突撃としました。単純に突撃するのではなく、ある程度タイミングと突撃箇所を絞っています。また突撃後の対応についてもこちらである程度アレンジしました」
「時間差における突撃か?」
「その通りです。1陣が突撃を行います。それも全速力で。数両が生き残れば、その生き残りが再度突撃します。そのタイミングで2陣も突撃を実施します。在り来たりでありますが、突発的な事態に弱い黒森峰であれば通用します。今回は2陣の突撃のタイミングが遅すぎたため各個撃破されました」
「確かに突発的事態への対応は、指揮系統が一本化されている黒森峰では少し遅れるな」
「その一瞬の隙を突くのが今回の作戦の要でした」
「今回の作戦を実施し我々に何を言いたかった?」
西住まほが西林凪に真意を問う。
「今回私が言いたかった事は、各学園が自分達の伝統を捨てて我々に挑んできた場合及び新参高が今回のように他高の作戦を流用した場合、状況によって我々は敗北する可能性が示唆される・・・と言う事です」
西住流の弱点を実戦で示し、いつか敗北する・・・と一介の生徒が西住流家元に警告している。
「今回の模擬戦の過程をみると、確かに敗北する可能性はあるな。では何処を改善する事で、敗北する可能性が低下する?」
「すみません。今回の模擬戦での結果から考察したいと思いますが、今はまだ出来ていません」
「途中まででいい」
「分かりました。恐らく一本化された指揮系統の改善が急務かと。しかし無暗に指揮系統を変更すると、かえって悪化する可能性があります。案としては、隊長及び副隊長の下に一人ずつ副官を付け、両名が不在時においても指揮系統がマヒしないようにするのがいいかもしれません。副官については、各車長より選抜するのが良いと考えます」
「これで突発的な事態に対応出来る根拠にはならないと思うが?」
「はい。一度何処かでこの考察の検証したいと思っています。どうでしょうか?」
「分かった。一度資料を作成し、私に見せてくれ」
「分かりました」
その後反省会と言うミーティングは順調に進んでいった。
まぁここまでは『私達』が書いた筋書き通りだ。この模擬戦の真の狙いは2つ。一つは黒森峰に燻っていた西林という火種の消火。私をレギュラー指名した西林凪が問題を起こしてしまうと、私のレギュラー取り消しが考えられたからだ。今回の件でしばらくは大丈夫だろうと思う。また副産物として無能な人間の排除も完了出来るといううれしい事例もあり、この事案に関しては大成功といえる。
そしてもう一つは『俺』が言い出した事なのだが、私には良く分からない。
『家元にある質問をして、その回答を周知させろ』
??
その質問が
『撃てば必中 守りは固く 進む姿は乱れ無し 鉄の掟 鋼の心 ・・・勝利至上主義であり、いかなる犠牲を払ってても勝利する・・・それが西住流。いかなる犠牲とは?土砂崩れや雪崩で流されてしまった場合は?増水した河川に落ちた場合は?燃料系から燃料が漏れ火災が発生した場合は(車両にダメージが入り、ハッチがあかない場合等も込み)?例え車内はカーボンで守られているとは言え、限界があります。しかし全てをカーボンに任せ、我々はそれらの車両の乗員を見捨て勝利する必要があるのですね?そして仲間の命を犠牲にして手に入れた勝利を手に、我々は大手を振って歩いてもよろしいですね。西住流は最強である。仲間?我々の仲間は我々の勝利を邪魔しない者が仲間である。今回亡くなった者は我々の勝利を邪魔した者であり、仲間ではありませんと。堂々とインタビューで答えてもよろしいでしょうか?』との事だった。少し疑問を持ちつつ、私は家元に質問した。
そして返ってきた回答は
「愚問ですね。西住流は勝つ事が全てです。如何なる犠牲を払ってでも」
そして人格の主導権を『俺』に奪われた。
『まったく持ってその通りですね。この言葉を家元から直々にお聞き出来て私は感激しています。勝利に貢献しない者、若しくは勝利への道を閉ざす可能性が有る者は邪魔でしかない。この言葉、私は胸に刻みこの先黒森峰に貢献したいと思います』
「・・・ええ、頑張りなさい」
『はい!』
『聞いたぞ?聞いたぞ?家元の口から!
如何なる犠牲を払っても勝利を手にしてもよい=それを批判した者は家元が処断する。そしてこちらの悪は善となり、お咎めなしとなる。勿論敗北しても敗北となった要因を作った人間をつるしあげればいい。
そう
例えそれが、西住流の人間であって
実の娘であっても
西住みほ・・・
君の居る
副隊長と言う肩書き
奪い取らせてもらうぞ!』