私は私の日常を守るだけ   作:yudaya89

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第19話「決勝後 疑惑の砲弾」

 

決勝戦は生憎の雨となってしまった。直前での天気予報でも時間経過と共にさらに大雨となると予想されていた。序盤、双方相手の動きを見ながら車両を指定の場所に配置していった。プラウダは今年から新たな戦法を取り入れており、『俺』曰く二重包囲と一旦後退し相手を引きずり込んで逆撃する戦法との事だ。勿論『俺』との協議でこの戦法への対応をみほにそれとなく伝え、今回の作戦にも反映している。

 

 

 そして中盤、こちらが相手の車両運用速度に遅れをとった瞬間をプラウダは見逃さず部隊中央に突撃した。この突撃によりこちらの部隊を分断してしまった。原因は2つあり、1つはやはり部隊の熟練度によるもの。もう1つは雨による足場だ。大雨でぬかるんだ地面への場数はプラウダが圧倒的に多い。相手は雪国高であり、雪解け時には練習地はぬかるんでいる。黒森峰でもぬかるんだ地面での練習は実施しているが、やはりプラウダには遠く及ばない。

分断され、フラッグ車を逃がす役割である殿を私の車両が勤めた。殿として7両を足止めし、最後の1両は手ごわく近接戦までもつれ込んだが何とか撃破することに成功した。フラッグ車と逸れてしまったが、殿の結果は4両撃破、3両を走行不能であった。これで優勝出来れば、私の車両は優勝に大きく貢献したとなり、何かしら優遇されるだろう。

 

 雨の中フラッグ車と合流するため、私の車両は森の中を走行していた。戦闘開始より雨脚は強くなってきているが、何とか他の車両と無線が繋がり、フラッグ車の位置、作戦内容を把握出来た。作戦内容は森を進撃している隊長の部隊と、川沿いを進撃しているみほの部隊で相手部隊を挟撃するとのことだ。森を進撃している隊長の方は問題ないとのこと。しかし川沿いを進撃しているみほの部隊は3両で、道幅も狭いため敵と遭遇した場合撃破される可能性が高いため、反対側から偵察を依頼された。もしも敵が居た場合は、すぐさま撃破せよとのことだ。

 

 数分後森を抜け、みほの部隊が進撃している道の反対側に出た。スコープでみほの部隊を確認したが、進行している道は殆ど余裕のない極めて細道だった。横は反転しにくい崖、もう片方は川であり、おまけに1㎞先に敵車両2両を確認した。みほにその事を報告し、すぐさま反転しようとしたが、うまくいかない。このままではフラッグ車が撃破される可能性が非常に高い。車長である楓先輩から攻撃指示が出た。しかし敵はこちらと同じ程度の防御力を有している戦車である。たった2発で2両撃破出来る可能性は極めて低い。戦闘車両を撃破出来たとしても横の崖を通って2両目がフラッグ車に向かうだろう。そうなれば・・・

 

 解決策は1つのみ。敵車両2両を2発以内に倒す事だ。敵車両の前方の道を砲撃し、相手の進行を阻止する方法も考えたが、砲撃される可能性があるため却下。いつまでも考えている暇はない、一発相手の戦車に当てて、気をこちらに向けさせ、時間稼ぎをするしかない。

 

そして私は敵先頭車両に向けて砲撃を実施した。

 

 

 

 結果は

 

 

 

 『プラウダ高、フラッグ車戦闘不能   黒森峰女学院の勝利!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 優勝から一夜明けた昼過ぎ、私は西住まほ隊長に呼び出された。用件は分かっている。私が放った1発の砲弾の事だ。

 

 

「昨晩は良く眠れたか?」

「いえ」

「・・・霧林ナナ、君が昨日搭乗していた車両を調べさせてもらった」

「はい」

「整備士の結論としては、砲身、照準に『異常なし』との事だ」

「はい」

「その話を前提に、昨日のあの砲撃について、もう一度聞かせてくれないか?」

「分かりました」

 

 

 

 楓先輩から攻撃指示が出た直後に、2発でどのように相手車両を撃破若しくは足止めを行うか悩んだが、答えが出ないまま相手車両に1発砲撃を行った。その砲弾は相手車両に確かに命中した。しかし命中箇所が相手装甲の端であったため、兆弾し、砲弾は崖へと命中してしまった。何時もなら特に問題ない、または崖が崩れて相手車両の進路妨害が可能となるだろう。しかし今日は大雨であり、崖に大量の雨が染み込み、崖全体的が崩れやすくなっていた。そこに砲弾が当たれば・・・

 

 砲撃を受けた車両は攻撃を受けた方向を確認するため一旦停止し、我々の車両を確認後砲撃を行った。しかし相手の車両が砲撃を行った数秒後、目の前に大きな石が落ちてきた。私もスコープで相手を見ていたから分かる。あと数mずれていれば、先頭車両は走行不能になり、これから起きる大きな崖崩れに巻き込まれていただろう。

 落石を確認した車長は周りを確認し、崖崩れの予兆を感じ取り、進撃をやめ、後退を指示した。そしてその直後、先ほどまで敵車両が停止していた場所が崩れ落ち始めた。敵車両は後退しているがその速度は遅く、後退から数秒後には車長の指示だろうか、戦車2両の乗員は戦車を乗り捨て、その場から走って避難した。

 私はその光景を確認し、直ぐに連盟へ連絡する事を提案した。勿論この提案に楓先輩は同意し、無線で連盟に連絡したが、雨と雷雲の影響で連絡出来なかった。この時の『人』としての対応は、近くの連盟事務所に向かうが正解である。しかし我々にはフラッグ車の護衛という『黒森峰』としての対応が優先となる。勿論私達は『黒森峰』としての対応を優先した。そして相手フラッグ車を補足し、残りの車両で応戦、これを撃破した。我々は前代未聞の10連覇を達成した。無論私の砲撃の話は早急に隊長へと報告を行っている。

 

 そして優勝旗授与後に行われた優勝祝賀会の途中に戦車道連盟から連絡が入った。内容はあの崖崩れの件についてだ。普通なら特に問われない事例だが、決勝戦・フラッグ車の危機・10連覇という特殊な状況であったため、優勝旗授与後『あの崖崩れは人為的に発生したのでは?』という審議が発生した。そして返答次第では、再度決勝戦を実施する、またはプラウダ高の優勝とする。という話になった。1つめについては、再戦という意味で納得できるが、2つ目のプラウダが優勝になる理由については、もしも人為的に崖崩れを生じさせたなら、それは人命を無視した、戦車道というスポーツへの冒涜行為である。また敵乗員の生命危機を知りながら、救助を行わなかったという理由だった。そして、祝賀会は中断され、私の砲撃についての調査及び私の車両の無線履歴の調査が開始された。

 

 

 結果は先の話どおり、私の車両の照準、砲身に異常はなかった。

 

「それではあの崖崩れは偶然と言うことだな」

「もしも崖崩れを人為的に生じさせるのであれば、もっと簡易的に実施できます。それこそ、敵車両前方に連続砲撃を行えばいいわけですか」

「そういう事を言っているのではない。本当にワザとじゃないんだな?もしもワザとであれば、私はお前を・・・」

「許しませんか?それとも・・・殺しますか?」

「!!」

「信じて・・・くれないのですか?私を・・・隊長は・・・」

「霧林・・・」

「あの砲撃は誓ってワザとではありません」

「分かった。すまなかった。家元には霧林の行為はワザとではない。あれは偶然だったっと報告しておく」

「分かりました」

 

 

 

 

 しかし、そんな事で事が収まるハズがなった。

 

 






 偶に主人公の名前を前作の主人公の名前と間違えます。
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