「あの砲撃は誓ってワザとではありません」
「分かった。すまなかった。家元には霧林の行為はワザとではない。あれは偶然だったっと報告しておく」
「分かりました」
しかし、そんな事で事が収まるハズがなった。
それから私を取り巻く環境は一変した。まずクラスメイトからは避けられ、教師陣からも避けられる。戦車道においても同様だ。私の居場所はなく、指示されるのは練習が終わるまでのランニングだ。戦車にも乗れず、誰かも相手にされない・・・それが1ヶ月続いた。しかしその間、一切嫌がらせ等のイジメまでには発展しなかった。生徒や教師からはその程度であったが、代わりにOB、OGからの連日嫌がらせを受けた。授業中、練習中、休日関係なしに呼び出され、ひたすら嫌味を何時間も立たされた状態で聞かされた。
私が何をした?
私が何をした?
私が・・・何を・・した?
『何もしていない』
え?
『ナナ?何をしている?
何故今休んでいる?
何故普通に授業を受けている?
何故普通に練習している?
何故今の環境を変えようとしない?
何故自分の行為を偶然と証明しない?
何故お前はそこまで無知なんだ?』
「そこまで言う!!」
『無知を無知と言って何が悪い?』
「じゃあ教えてよ!!今の状況を打開する案を!!」
『分からないか?』
「分かるわけないじゃない!誰とも話せない!!練習もランニングだけ!!OG、OBの対応も誰もしてくれない!!助けてよ!!」
『諦めるか?』
「え?」
『もういいじゃないか・・・ナナは頑張ったよ・・・あと数日で今回の大会の再考が終わる。恐らく結果は黒森峰の優勝は取り消しになるだろうな。そうなれば今より状況は悪化する。それこそイジメ・・・いや・・追放されるだろう』
「い・・いや!!なんで!!」
『黒森峰のイメージを損ない、尚且つ10連勝という偉業を台無しにした『犯罪者』にはそれ相応の報いは当たり前だろ?』
「そ・・そんな」
『西住みほのイジメがあっただろ?あの程度で済むはずがない。あれ以上のイジメがナナに襲い掛かるだろう。それこそ全校を挙げて・・・な』
「・・・」
『な?戦車道なんてこんなもんだ。優勝、10連勝・・・それを誰かが止めたら、原因を作った人間を「犯罪者」扱いする。それがこの黒森峰の闇だ。どうだ?戦車道の名門黒森峰の闇を知った気分は?』
「最悪」
『そうだろ?そして今からその最悪の状況がナナを襲う事になる。まぁレイプされないように気をつけような』
「や・・・めて」
『そういえば教師陣にもナナは人気だぞ?あとは街の男性からも「やめて!!」・・・』
「もう嫌!!戦車道なんてやめる!!明日にでも黒森峰から転校する!!」
『本当に?』
①戦車道を諦める
②打開策を講じる
①戦車道を諦める
もう戦車道なんて
どうでもいい!!
『そうか・・・
本当に
ありがとう
絶望してくれて
ありがとう』
その瞬間私の目の前に白い空間が広がった。
??何処ここ?
私の対面には人の形をした黒いものがいる。
誰?
『俺だよ。ナナ』
「俺?」
『そうだ。こうして対面するのは初めてだな。ここは言わば精神世界と言うものだ』
「どうして私がここに?」
『約束しただろ?だから貰いにきた」
「・・・約束?」
『そうだ。ナナ・・お前・・・戦車道に絶望しただろ?初めに約束したじゃないか?【もしも今後お前が選んだ道で「絶望」するようなことがあれば、『罰ゲーム』受けてもらうからな】って、だからお前には罰ゲームを受けてもらう』
「待って!!」
『ナナ俺は聞いたぞ?『本当か?』と。そしてナナは「もう戦車道なんてどうでもいい」と。だから俺との約束である罰ゲームを受けてもらう。異論は認めないよ」
『俺』との会話が終わり、目の前の黒い人型の物が段々白くなってきた。見る見るうちに黒いものが白に変わり、その姿が・・・
私?
『そう、俺との罰ゲームの内容は、【『俺』とナナの意識を入れ替える】だ。今までメインはナナで俺がサブだった。それを俺をメインとする。言っただろ?ここは精神世界だと。今まで白い世界、メインの世界に居たナナと黒い世界、サブの世界に居た俺を入れ替えるんだ。俺が段々白くなり、ナナが段々黒くなる』
『俺』の言葉を聞いた瞬間自分の姿を見る。先ほどまで白かった私の体が、真っ黒に変化していた。
『お願い!!さっきの言葉を取り消して!!』
「悪いな。その願いは聞き入れない」
『お願い!!まだ・・・わた・・・・な・・に・・・』
さよならナナ
あとは俺に任せて
ゆっくり
休んでくれ
1年後
「プラウダ高!フラッグ車戦闘不能!!黒森峰の勝利!!」
「優勝は黒森峰女学院!!」
俺の放った砲弾はフラッグ車に見事命中し動きを止めた。これで11連勝だな。
翌日の朝刊の内容は
『黒森峰!!脅威の11連覇!!』
『黒森峰にスキなし!!』
俺は部室でコーヒーを飲みながら朝刊の内容に目を通す。去年はあれだけ目の仇のように叩いた我々を手のひらを返し褒め称える。これだからマスメディアは・・・
ナナと入れ替わった俺が取り組んだ事は、【疑惑の砲弾】が偶然である事の証明だった。これにより黒森峰の優勝を確実とし、尚且つ俺の名誉挽回となる。そうする事で自然と俺の環境は改善される。
疑惑の砲弾については西住しほへ「ある物」と引き換えに証明してもらった。まぁ半分脅迫ともいえる行為であったが、そんな事を気にしている暇はない。そして砲弾の証明後、それを戦車道連盟へ西住流家元及び日本戦車道連盟の強化委員である蝶野亜美の両名の名で報告し、それが正式に受理された。そのことにより俺の疑いは正式に晴れた。
その後俺はレギュラーメンバーへ復帰、西住まほがドイツへ留学したことで、みほが隊長へ、俺が副隊長へ就任した。また隊長の事務仕事を副隊長である俺が引き受ける代わりに、副隊長代理として逸見エリカを俺の下に配属した。そして黒森峰は怒涛の快進撃で1年後に11連勝を果たした。
「ね?ナナ」
「ん?何エリカ?」
「今更聞くことじゃない事だと思うんだけど、あなた昔と印象が違うと思うの?何かあったの?」
「何もないよ?ただ」
「ただ?」
「約束を守ってもらっただけだよ」
「どういう意味?」
「意味なんてないよ。
俺は私、
私は俺、
俺は霧林ナナ
それ以上でもそれ以下でもない