「継続高校フラッグ車、戦闘不能。黒森峰の勝利」
此方の被害は2両、予想の範囲内に収まって安心した。次はおそらく聖グロリアーナ女学院になるだろ。あそこの隊長は・・・苦手なんだよな。「俺」に任せたいけど、代わってくれるだろうか。
『聖グロってのは、チャーチル歩兵戦車、クルセイダー巡航戦車、マチルダ歩兵戦車を主力としての強固な装甲を活かした浸透戦術を得意としているだろ?どういう理由でこの3種類の戦車による運用になったかは不明だが、どう考えても機動力、攻撃力、防御力が不足している。黒森峰ではなく他高であれば通用するが、クルセイダーの機動力以外、全てこちらが勝っている』
「それはわかっているけど・・・」
『なら、負ける理由を教えてくれないか?』
「負ける理由以前の問題で、率直に言うならあっちの隊長が苦手。なんていうか・・・よく分からないけど」
『・・・まぁそこまで苦手であれば、試合に影響する可能性を考慮して俺に代わる方が懸命だな』
「あれ?優しい?」
『もしもこれで負けた時、俺にも責任があるからな。まぁ先の言葉通り、負ける理由が見つからないけどな』
「でも隊長のダージリンさんは、その不利な状況でも自分達より格上の・・・プラウダにも練習試合で勝利してるよ。油断はするなっていつも『俺』が言っているよ」
『あぁ、確かに今の俺は油断しているかもしれない。でもな、ここいらで一度危険な目にあったほうがいい場合もある』
「どういう意味?」
『今の黒森峰は先の副隊長の事件で大幅に人員を変更した。1回戦、2回戦と特に問題なく勝利している。そこが落とし穴だ。変更時に新しく配属された隊員は浮ついているだろう。余裕が出てきている。それが3回戦に影響することは大いにありえる』
「気を引き締めると言う意味?」
『表面上の意味ではそういう意味になる』
「今回も裏の意味合いもあるという事」
『まぁ今回は表面上の意味合いの方が重要になる。まぁ裏の意味合いを説明すると、
聖グロの主な決定権はOB、OGにある。彼等の決定した事が覆ることはそうそうない。例えば聖グロが大敗を期したとしても彼等は何かと理由をつける。作戦が甘い、錬度が足りていない等。そういのが今後続く可能性は大いに考えられる。しかし中には異議を唱えるものもいる。
例えば、『今の機動、攻撃・防御力では黒森峰には勝てない。それどころか黒森峰、プラウダ、サンダース以外の高校にも苦戦する』や『そろそろ別の戦車の採用を認めてわ?』などだ。後者を唱える者はいないかもしれないが、前者なら昨年の隊長であるアールグレイが発言する可能性がある。ならば、このような事にならないように、此方が一芝居うてばいい。まるで苦戦しているかのうように5~8両撃破されればいい。勿論決勝用の車両ではなく予備の車両でだ。激戦の末、ギリギリ勝利する事が出来たと世間に見せ付ける事で来年、再来年の聖グロの戦力増強は不可能になる。なにせあの西住が率いる黒森峰に大きな損害を与えたという実績があるのだから』
「・・・」
『どうした?』
「今後の事も考えての、今回の作戦・・・」
『いや、あくまでも牽制程度の事だ。聖グロの浸透戦術はある意味完成している。これをワザワザ強化させる必要はない。彼女達には停滞してもらう』
「・・・」
『相手は喜ぶだろう。自分達が尊敬するダージリン様が誰も成し得なかった黒森峰に大きな傷を与えた事を。自分達の戦略・戦術が黒森峰を追い込んだ事を』
「でもこちらは全て想定範囲内の出来事。彼女達の糠喜びを遠目でみていればいい」
『そういう事だ。そしてダージリンは近くない将来、自分の過ちに気付き、後悔する。そして二度と聖グロが他の戦車を使用することはない』
「相手の嫌がることを平然とやってのける。今まで誰もそんな事を考える・・・いえ、考える事があっても実行しようとした人はいない」
『ならば、俺達がその初めてになろうじゃないか。楽しいぞ~。お前の苦手なダージリンの悲しそうな顔を見るのは』
「そうね。悔しい顔を見れば、少しは苦手意識を克服できるかもしれないわね」
時々俺の思考に同調してしまう・・・でも悪い気はしない