①ナナを殺す
②ナナに相談する
私の中に2つの選択肢が発生した。
私達の人生をここで終わらせる訳にはいかない!!
ナナはいつも一人で資料室にいる。その事を一年生にそれと無く聞いたところ、殆どの生徒が夜中まで資料室で調べ事をしている事を知っており、二年生の中にも知っている生徒が居た。なら誰もが容疑者になる。後はどうやって殺るかだ。
焼き殺す・・・ダメだ、火災警報器が作動するし、悲鳴も上がる。静かに殺す方法を検討する必要がある。
撲殺・・・ダメ、状況次第では容疑者が絞られる可能性がある。後ろからの撲殺であれば親しい人間と疑われる。正面からでは殺し損ねる
水攻め・・・論外。彼女を沈めるだけの水を用意するなど・・・
絞殺・・・如何にこちらのDNAを残さないようにするか・・・変質者に襲われて、抵抗したため絞殺された・・・いいわね。
ならば、必要な物は?どこにでもある紐・・・それなら資料室にあるビニール袋を使えばいい。
次は、手に跡が残らないようにするには?・・・装填手が使っている革の手袋を使えばいい。次の日にその子が手袋を使えば、内側の私の指紋は消える・・・いや、ここはもっと慎重に・・・よし、家庭科室にあるビニール手袋を履いた状態で革の手袋を付ければいい。
上記の物品は簡単に手に入る。家庭科室は常時開いている。部室には特に問題なく入る事が出来る。
後は今日、決行するだけ・・・・・・
私は
何を
考えている?
ハッと、我に返った。私は何を考えている?殺す?霧林ナナを?
そもそもこの資料は『過去』の資料から作成したものであり、はっきり言えば、何処の誰でもまとめられる資料だ。そう考えると過去に同じことをした人間もいたはずだ。
だから冷静に考察すれば凪が言っている事は間違っている事がわかる。凪にチャンと説明して約束を破るようだけど凪も同席してナナと話そう。
霧林ナナ『』
休み時間に楓先輩から、今日凪先輩も同席して話がしたいと言われた。それでは約束が違うと反論したが、「凪には誰とは話していない」「同席する事は約束していない」と、大人の対応されてしまった。
それと今までは校舎に入る時は私のPWで入ってくださいと伝えていたが、2人で来るなら申請してくださいと伝えた。事務から出入りが頻回ですけど?と注意されてしまった。これ以上不正を行うと、隊長から呼び出しをくらう羽目になる
凪【】 楓「」
【貴方が・・・この資料を?】
『はい』
【この資料を私達に渡した目的は?】
『先輩の目的に少しでも協力出来たらな?と、思いまして・・・』
【私の目的ね・・・詳細を話した子はいないのに・・・誰から聞いたの?】
『聞かなくても分かりますよ。今年の試験、皆の話している噂・・・それらから推測は出来ましたね。まぁあくまで推測ですが、先日楓先輩との話し合いで、確証しました』
【この資料は隊長には?】
『流石にまだ未完成ですので渡していませんが、ある程度は報告しています』
【はぁぁ・・・・・・・楓?】
「何?」
【この資料をもとに、西住隊長と模擬戦をしようと思う・・・協力、してくれない?】
「別にいいけど・・・大丈夫なの?」
【この資料はまだ未完成よね】
『勿論まだまだ煮詰め直す必要がある箇所が幾つかあります。まぁ10日もあれば・・・』
【10日で?凄いじゃない。だてにこれだけの資料をまとめただけはあるわね】
『ありがとうございます。まとめるだけなら2日程度で終わりますが、この資料が本当に有効であるかを確認するために、幾つかの戦術パターンを基にシュミレーションを実施したいと思います。そこで問題があれば、随時修正したいと思います。その作業に少々時間がかかり、約10日となります』
【「・・・」】
『そうと決まれば、今からやりましょう。時間もまだありますし!!先輩達の経験した中で一番思い出に残っている試合から話してください。なるべく詳しく』
「今から?もう夜中よ!?」
『大丈夫です。まだ夜中です。明日は朝からのれんしゅうはありませんから、まだ五時間あります』
【「・・・」】
『それと、この件に関してはお・・私は関わっていない事でお願いします。あくまでも先輩方姉妹がまとめたという事で』
その日から連日遅くまで残って資料の作成を行った。流石上級生、戦車道の知識や戦略は俺より遥かに多く、ナナや俺に取って充実した日々を過ごした。
経験を積んでいく事で、人間は育っていく。いくら教科書を熟読しても得られる事は少なく、時間の経過とともに記憶から薄れていく。しかし実際に自分自身が体験し、得られた事は中々忘れない。その経験をもとにマニュアルを作成したり、新人に話したりして、事故防止などを促す事が出来る。そうした事は戦車道にも通じるところがある。だから俺は先輩の体験して最も記憶に残っている試合内容を聞く。その話から何を得られるかは聞いてみないと分からないが、それでも聞くことには価値がある。
撃てば必中 守りは固く 進む姿は乱れ無し 鉄の掟 鋼の心
そんな格言の下で育った西住まほでさえ、やはり女子高生なんだな~と伺える一面などの話も聞けた。
(「犬好き」「天然(戦車道以外)」「妹好き」など)
しかし戦車道においては、そういった影はなりを潜め、優秀な指揮官となる。しかし幾ら指揮官が優秀であっても、指揮される人間がどうだ?幼少期から西住流当主として育てられた人間とそうでない人間差は、縮めようにも縮まない。
西住まほが指揮しているのは、ごく普通の戦車が好きな女子高校生だ。そんな女子高生が西住流の鋼の心は持ち合わせていない。何かの拍子に鋼にヒビが入る場合もある。
そのヒビの入った鋼を壊す事は容易なことである。
「私と模擬戦がしたいと」
資料が纏まったので定例会議の終盤で西住隊長に模擬戦を申し込んだ。
俺が何故定例会議に参加しているかって?議事録作成のためです。
「はい」
勿論あの姉妹から提案してもらっている。
「模擬戦を行う理由は?」
「以前私から提案させてもらっていた黒森峰の改革のためです」
凪先輩の発言を聞いた他の上級生から
「まだそんな他愛事を!!」
「いい加減にしろ!!」
罵倒の嵐がしばらく続いたが
「西林」
隊長の発言で周りが黙った。流石だ。
「はい」
「過去に西林が提出した資料に目を通した。良くできていたし、分かりやすかった。今回はそれを模擬戦で西住流である私に勝って証明するということだな?」
鋭い眼差しが凪先輩を見据える。
「いえ、勝敗で判断しません。結果ではなく過程を見て頂きたいと思います」
「しかし私に勝たないと証明した事にならないと思うが?」
「勝つ事で証明にはなりますが、圧倒的な戦力差からの僅差での敗北でも十分証明は出来ると思います」
「何故戦力を同等にしない?」
「自分達で経験してほしいです。どうして?何故?っと。戦力差が同等だった場合、偶々などと言い訳されては意味がありませんから。そのため西住隊長側は2、3年生から模擬戦メンバーを選出してください。我々は1年生からメンバーを選出します」
またもや罵声の嵐が始まった。当たり前といえば当たり前だ。しかしその嵐を鎮めたのはまたもや隊長だった。
「少し静かにしてくれないか?」
「「「「!!!!」」」」
怒気を含んだ一言で会議室は静かになった。コエ~
「西林?」
「はい」
「今なら引き下がる事も出来る。引き下がるのであれば、今までの事は無かった事にする。どうだ?」
「すみません」
「・・・そうか。覚悟は出来ている・・・と、いうことだな?」
「はい」
「いいだろう。2日後に模擬戦を行う。こちらのメンバーは全てレギュラーメンバーとするがいいか?」
「はい」
「覚悟が出来てるようなので、先に伝えておく。無様な結果であれば、西林姉妹はレギュラーから外れてもらう。それに加え、どのような理由があっても在学中は戦車に乗れないと思え」
「分かっています。しかし私が選出した1年生には・・・」
「分かっている。この件に関しては西林2名のみが対象だ」
「ありがとうございます」
これで全て揃った。
あとはナナと西林姉妹がうまくするだろう。俺は高みの見物とするかw