私は私の日常を守るだけ   作:yudaya89

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第07話「出来ない?今からやれば出来るようになる」

  

 

 

 あれから2日経過した。目の前には、Aチーム、Bチームの戦車を合わせた計30輌が鎮座していた。たった2日、されど2日。根回しをするには十分な時間だった。何をしたかは今体の所有権を持っているナナの表情を見てもらったら分かる。何?見えない?そうか。

 

 

 血圧、心拍数が普段よりも高い

 

 

 呼吸も速い

 

 

 

 そう、緊張しているのが、俺でも分かる。ナナの表情が分かる周りの人間なら一発で解るだろう。

 

 

 

 何故ナナが緊張しているかを説明するには、2日前に話を戻す必要がある。

 

 

 

 2日前 ミーティング後

 

 

 嵐のミーティングが終了し、西住隊長と模擬戦する事が決まった。西住側をAチーム、西林側をBチームとし、各チーム15両、西住側は全ての車両にレギュラーメンバーが、西林側の構成は、みほ、逸見を筆頭とするメンバーは西住側となるため、本当に1年生主体のメンバーでの構成となった。勿論それだけでは不足なので、2軍の2年生を起用することなった。この2軍に関しては、1軍の練習後の極僅かな時間しか戦車に乗れない。車両に乗れる人数は限定されているため、その日その日で壮絶な戦い(ジャンケン)が行われてる。今回、起用されるメンバーの抽選も壮絶になるだろう。

 

 

 そしてある問題を解決する必要がある。それは不正行為である。西林否定派の人間なら必ずやるであろう不正行為を未然に防ぐ必要がある。例えば通信を傍受、もしくはこちらのメンバーの2軍に甘い言葉を掛けて試合中の不正行為に加担させる。こちらの動きは筒抜けとなり、戦況を見て少し単独で動き撃破、もしくは偵察中に見つけた等と本隊へ報告される。勿論試合中の通信記録は記録室のPCに保存されているが、割り当てられている容量が少ないためすぐに上書きされてしまい、重要な証拠が消えてしまう。今から申請しても通るには時間がかかる。

 

 

 通信の他にも脅迫も考えられる。1年生を脅し、砲撃をワザと外させる、戦車の動きをギクシャクさせるなどの妨害工作を指示する。こちらが疑っても1年生だから操縦スキルが乏しいなどの理由で逃げられる・・・

 

 

 

 さて、これらの問題を解決する魔法はあるのかと聞かれると、普通なら無い!!でもここは黒森峰女学院であり西住流戦車道と親密な関係がある学園だ。

 

 

 

 

 

 

「なるほど、そう言った行為がある可能性があると?」

『こちらとしては有る筈がないと思います。勿論隊長自身が不正行為は「ありえない」と保障して頂けるのであれば、この話は無かった事にして頂きたいと思います』

「なるほど、しかしそれは我々にとって失礼極まりないのでは?」

『失礼は承知しています。この件は私の独断です。西林先輩の判断ではありません』

「処罰するなら自分にしろと?」

『そうです』

 

 

 俺は今西住隊長と話している。隊長を信頼していないわけではない。今回の模擬戦は勝利するか僅差で敗北する必要がある。そのためにはあの人を無理矢理でも召喚する必要がある。そのための交渉だ。

 

「何故其処までする?君は何故西林に肩入れする?」

『最初は別に興味はありませんでした。しかし先輩の本当に黒森峰を変えたい気持ちが私を変えました。なので微力ながら協力したいと思いました。そして私に出来る事を考え、最初にこの問題を解決しようと思いました』

「「最初」にか・・・それでもしも私がそれに対して拒否したらどうする?」

『どうもしません』

「言っている事が矛盾していないか?」

『拒否するという事は、そんな不正はないと言い切るという事です。言い切った以上、もしも私が不正を証明できる確固たる証拠を提示した際、隊長は自身で「不正行為すらも防止できなかった」と釈明する必要が出来てきます。その場合、やり直しとなりますので、こちらとしては特に問題ありません。そしてその話が家元の耳に何かの拍子で入ってしまった場合・・・』

「それは脅しか?」

『いえ、提案です。私の提案を採用する事で不正がない状況で模擬戦を実施するか、それとも隊長自身で不正を防止するか・・・前者は両者にメリットもデメリットもありませんが、後者には隊長だけデメリットがあり、こちらにはメリットしかありません』

「なるほど・・・君の提案を受け入れたいが、時間がない。それに関しては何か解決策はあるか?」

『では、こちらの資料を添付し、これをSNSや戦車道掲示板で配布しても良いか聞いて頂けますか?勿論来られない場合は、手違いで流出する場合があると・・・』

「・・・」

『勿論提案です』

「世間では、それを脅迫というのだが?」

『いえいえ、事前に何が起こるか提示しています。どれを選択したらよいか、選択してはいけないのか・・・それを決めるのは、このメールを見た人間だけです。隊長も考えた結果、自分にとっても私達にとってもメリットしかない選択肢を選びました。このメールを受け取った方にも、是非このような選択肢を選んで頂きたいと私は思います』

「分かった。資料を添付したメールを送っておく。それとこれは霧林、君の独断行動だな?」

『はい』

「では敗北の際は西林姉妹と同じペナルティーを受けてもらう。退部は認めない」

『分かりました』

 

 まぁ交渉は成功?したいと思う。あとは隊長の頑張り次第と言える。 

 

 

 

 西住まほ

 

 去年、3年生の先輩方が引退後、西林の言動が目立つようになった。最初は練習内容の変更から始まり、最終的には新人選考時の内容まで口を出すようになってきた。最初は皆もある程度は賛同し、実際に変更した内容もあった。しかし新人選考の内容に口を出し始めたころから一部の生徒が不満を言い始めた。その不満に賛同した一部の生徒が私のところへ「西林は西住流に不満がある。そんな人間が隊長車両の砲手というのはどうだろうか?」と意見してきた。

 

 確かに彼女達の意見は最もだったが、西林の意見も的を得ていた。事実彼女が指摘した内容を改善した事で、練習効率が上がり、2軍の生徒も戦車に乗れるようになった。その点に関しては私も彼女を認めている。しかし彼女達の立場は新入生選出後更に悪化した。夜遅くまで資料室に籠り何かをまとめ、西住流を打倒する策を練っている、現隊長に不満がある。などの噂が広まり、副隊長ですら彼女達に不満を持ち始めた。そんな最悪な状況下で西林姉妹は私に模擬戦を挑んみ、敗北した場合は戦車に触れることなく卒業する。その条件は西林に不満を持つ者には最高のネタである。

 

 

 そんな状況で不正行為が行われないはずがない。極論で例えるなら、私以外全員がグルだとしたら防ぎようがない。そしてその行為を報告でもされてみろ、お母様から雷が落ちるだけでは済まない。ならば霧林の案に賛同するのが得策であるのは誰の目から見ても明らかだろう。そしてもう一つの案にも私は賛同する。

 

 

「お母様、夜分に申し訳ありません。まほです」

『どうかしましたか?』

「実は相談がありまして」

 

 

 まさか模擬戦の審判にお母様を使うなど・・・

 

 

 まったく、命知らずなのか

 

 ただのバカなのか・・・

 

 命知らずならまだしも、バカなら少し面倒だな。

 

 

 

 

 

 2日後

「どうぢてそうなってるの!!」

『ハハハw。頑張れよ?』

「なんで私が車長なのよ!!おまけに審判に西住流家元が!!」

『不正行為防止のためだ。因みに俺が隊長に提案した。恐らく機嫌はすこぶる悪いと思うぞ?ただ得さえ忙しいのに、こんな模擬戦の審判を要請されたんだ。因みにナナの名前でなw』

「!!!あ・・・あ・・あんた!!何考えてるの!!」

『まぁ落ちつけ。今回はチャンスだぞ?ここである程度活躍したらお前の名前は審判の件と合わせて家元に覚えられる可能性がある。どうだ?これならお前の夢をかなえるための一歩になるんじゃないか?』

「・・・確かにそうだけど」

『因みに負けたら、卒業まで雑用だからな?隊長との約束で』

「なんで今頃言うのよ!!」

『本番に言った方が、お前の為だと思ってな。どうせ寝れなくなったりするんだから。まぁ頑張れよ?任せたぞ?雑用♪』

「まって!!」

『車長が出来ないとか言うなよ?出来ないじゃあない、やった事がないから出来ない。じゃあ今日車長を死ぬ気でやって結果を出せ。少しぐらいなら協力してやるよ』

 

 

 

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