私の小虎   作:ジト民逆脚屋

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いきなり小虎高感度

一夏¦良い奴、でも鈴音泣かせたから少し嫌い。千冬と似た変な感じがする
箒¦一夏が好きなのに、一夏が嫌な事する変なの
セシリア¦お菓子やお茶をくれる。けど香水の匂いが苦手
ラウラ¦お菓子くれる、好き
シャルロット¦変なの。よくわからない
鈴音¦大好き……!!


嫌い!

しかし、どうしたものか。鈴音は背後に近付く気配に、辟易とし、溜め息を吐いた。

この数日、どうにも視線と気配を感じる。宝仙やラウラといった他の面子が、一緒に居る時は感じないが、一人で部屋から出ると、いつの間にか付きまとわれている。

 

「はぁ……」

 

正直、鬱陶しい事この上ない。

一度だけ、宝仙が途中合流した時は、ついうっかり、鈴音が迷惑していると漏らして、宝仙が犯人を追い掛け回した。

だがそれでも、犯人を捕まえる事も、その姿を捉える事も出来なかった。

あの宝仙が捕まえられなかったという事は、それ相応に厄介者だという事だ。

つまり、鈴音単独で捕まえるのは難しい。

 

小虎(シャォフー)は、何処行ったのかしら?」

 

何か嫌な予感がする。何処かの頭の弛いバカが、あの子にちょっかいをかけている。そんな予感がする。

だから、急いで合流しなくてはならないのだが、

 

「あの子ったら、また携帯忘れてるわね」

 

電話に出ない。さて、どうしたものか。

手は思い付かないが、学園内に居るという事は、いきなり武力行使の可能性は低い筈だ。

ならば、少々手荒にいくかと、鈴音はその気になる。

一年で〝専用機持ちの代表候補生〟になったのは、伊達ではない。

 

「一応、警告はしておくわ。五秒以内に去りなさい」

 

五秒数えて、しかし気配に退く意思は感じられない。鈴音は息を吐いて、力を抜く。

気に食わない。腹立たしい。自分達はただ、普通に学生を楽しみたい。それだけなのに、勝手な思惑に巻き込んで、あの子を戦いに引き摺り出そうとする。

いい加減にしてほしい。

極力、脱力を意識して、鈴音は気配の元へ歩を進める。間合いに入った瞬間、一気に瞬発して仕留める。

今の鈴音に、容赦の二文字は存在しない。場合に依っては、骨の一本や二本は折るつもりでいる。

一歩、二歩、三歩、後一歩で一息に飛び掛かれる距離だ。

 

「遺言は聞くわ。言わせるかは、まだ決めてないけど」

「……非礼は詫びます。しかし、物騒過ぎませんか?」

「そっちの都合で迷惑してるってのに、随分と偉そうね? 捻り切ろうかしら」

 

眼鏡を掛けた、落ち着いた雰囲気の学生に、鈴音はゆっくりと歩み寄る。

 

「……こっちはね、普通に学生楽しみたいのよ。あんた達の都合や、理由なんて知ったことじゃないの」

「存じております。しかし、だからこそお伝えに……」

 

何をと、問う前に鈴音はある音を聞いた。

炸裂する様な、割れる様な砕ける様な、音というより衝撃に近いそれ。それは、呂・宝仙の音だ。

 

小虎(シャォフー)……!!」

 

鈴音は学生の事など、どうでもいいと、音の元、アリーナへと駆けた。

 

「……また、何をやってるんですか? ……当主」

 

背後に聞こえた声を放り捨てて。

 

 

 

 

 

〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃

 

 

 

 

 

……嫌い! 嫌い嫌い嫌い嫌い!!

 

「いやちょっと、待たない?!」

「うるさい! お前嫌い!!」

 

宝仙は感情任せに崩天爪月を振るう。目の前で何か言っている変な水色頭は、意地悪をするから嫌いだと、宝仙は己の力と感情を乗せた一撃を叩き付ける。

 

「謝る! 謝るから、ちょっと待ちましょう!」

「うるさいうるさいうるさい!」

 

変な三角の槍と、ウネウネする水が邪魔で、いまいち上手く当てられない。

嫌な水色は使う武器も意地悪だ。だったら、そんなもの壊れてしまえと、呂虎は更に力を籠めて、方天戟を振り抜いた。

だが、それも水と槍に逸らされる。

 

「当たれ!」

「そんなの当たったら死ぬわよ!」

 

……死んじゃえ

 

鈴音が聞いたら、確実に怒られるから、言わない様な事を思いながら、宝仙は攻撃を続ける。

既に宝仙の中では、水色は敵となった。鈴音に教わった、敵の話は基本聞かなくていい。大体が見苦しい言い訳だから。

だから、敵が何を言っても、基本聞く必要は無い。

 

「鈴音に、鈴音にあげようっておもってたのに……!」

「だからごめんってば!」

「うるさい!」

 

授業が半日で終わり、特に何もする事が無かったから、暇潰しに学園内を探索していたら、宝仙が好きな甘い匂いがした。

一体、何かと匂いを辿り、見付けたのは〝料理部〟と銘打たれた部屋だった。

匂いに誘われるまま、部屋の扉から顔を出せば、同じクラスで、よく宝仙に菓子をくれる者が居た。

何をしているのか、クッキーを焼いていると言う。宝仙が興味津々と、クッキーの焼ける光景を見ていると、生地がまだほんの少し余っているから、作ってみるかと問われた。

宝仙は即座に頷いた。

慣れない初めての作業に、四苦八苦しながらも、周りのサポートにより、どうにか見苦しくない程度のものが焼き上がった。

後はラッピングするだけ、鈴音喜んでくれるかなと、宝仙がウキウキしながら、包み紙を選んでいた時、この水色が現れた。

そして、いつの間にか宝仙が焼いたクッキーを、全て食べてしまっていた。

瞬間、宝仙は水色に襲い掛かり、逃げ出した水色を追い掛け回し、今のアリーナでの戦いになった。

 

「嫌い! 嫌い嫌い嫌い嫌い!」

「……中々キツイわね……」

 

方天戟の連撃は止まる事無く、水色、更識楯無は槍と機体のナノマシンで操る水で、それを受け流していく。

だがそれでも削られる。一撃一撃が必殺の威力、下手な受け方をすれば、ISが誇る絶対防御すら貫きかねない。

早く何とかして無力化し、落ち着かせなくては、話も出来ない。

 

「……ちょっと、今日蒸し暑くない?」

 

だから、少し大技を見せて、頭を少し冷やしてやろう。そう考えた楯無は、周辺に散布していたナノマシンに指示を送る。

呂・宝仙の一歩前の空間に集まり、爆散しろ。

己でも中々派手な技だと思う、この清き激情(クリアパッション)を、こうしてぶつければ、きっと止まる。今まで誰を相手にしてもそうだった。それから仕切り直して、有利に話を進めればいい。

楯無はそう考えていた。

 

「お前嫌い!」

「嘘でしょ……!」

 

楯無の基本戦術の一つは、言葉で煙に巻き、事実を隠して欺き、致命の一撃を与える。だがこれは、相手が言葉を聞いている、という大前提が必須となる。

そして、宝仙は鈴音から敵の話を聞く必要は無い。そう教わっている。

つまり、呂・宝仙は更識楯無の天敵と成りうる。

 

清き激情の爆発を突破し、宝仙は驚愕に固まる楯無に方天戟を突き込む。

完全に見誤っていた。かの人中計画の成果を。呂・宝仙の性能を、楯無は完全に誤っていた。

突き込まれる方天戟を回避する。至近とはいえ、学園最強であり、国家代表の実力は伊達ではない。力に任せた宝仙相手なら、回避からの反撃も容易く、がら空きのわき腹に、槍の一撃を叩き込んだ。

 

その筈だった。

 

「は?」

 

宝仙を弾き飛ばす筈の穂先に、方天戟が突き刺さっていた。理解が出来ない。今、どうやっても突き出した長柄物を戻して、こちらの穂先を突き刺す時間は無かった筈だ。

なのに、紫電を帯びた宝仙はそれをした。

引き吊った笑いが込み上げてくる。彼女の体内にある炉心、生体反応式縮退炉〝雷公鞭〟に、火が入った。

 

「……消えちゃえ」

 

死が形を持って迫ってくる。そう感じた。

己の槍、〝蒼流旋〟が花咲く様に裂け広がり、方天戟に纏う紫電が、己の水を灼いていく。

人間、死が迫ると時間が遅く感じるというのは、本当の事だった。

 

「まだ、まだぁ……!」

 

死ねない。蛇腹剣〝ラスティーネイル〟を抜き、装甲と一緒に犠牲にする事で、直撃を避ける。

装備の殆どは破壊された。だがまだ生きている。生きている限り、可能性はある。

しかし、その可能性も消えようとしていた。

 

「は、はは、本当に嘘みたい……」

 

今までの常識が全て蹴散らされ、踏みにじられる。起こしてはいけない神代の怪物。それが目の前に居た。

振り下ろされる方天戟、武器は折れ、水は灼き尽くされた。回避しようにも、機体が上手く動かない。

これはもう、ダメかもしれない。

 

……ごめん、簪ちゃん

 

お姉ちゃん、死んだ。

楯無が諦めかけた時、宝仙の動きが止まった。

 

「うー?」

 

楯無が顔を上げれば、宝仙の体にワイヤーが何本も巻き付いていた。それだけではない。何やら腕の動きがおかしい。まるで、両腕が空間に縫い止められたかの様に、動きを止めている。

 

「……なんとか、間に合ったか」

「ラウラ?」

「私も居るわよ、小虎(シャォフー)?」

 

黒い機体、その腕を発現させたラウラが、その掌を向けて息を吐き、その隣に立つ鈴音の声を聞いた宝仙が、ビクリと体を竦めた。

 

「り、鈴音……」

「まあ、何か理由があるみたいだし、それ聞いてからね?」

 

宝仙と楯無、二人を見る笑顔の鈴音の目は、笑っていなかった。




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水色¦大嫌い!!
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