※さいしょからやりなおしますか?   作:あーけろん

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プロローグ〜二週目 8日

ーーーーこれより、物語の導入(トレーラー)を始めます。

 

 

 

 

 

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––––––よくある話だ。と、誰かが言った。

 

 

「はぁ…、はぁ…、はぁ、クソっ!」

 

明かり一つ見当たらない洞窟を、手にある松明のみの光で疾走する。時折岩に足をつまづかせてしまいそうになるが、なんとか致命的な失敗(ファンブル)をせずに洞窟を走る。

 

今の装備は腰にぶら下がった折れた直剣に歯抜きの皮鎧のみ、仲間はここにはいない。そんな状況で奴らから逃げるために足を動かす。

 

 

––––––冒険者になったばかりの者が初心者同士でパーティを組むこと。

 

 

こうして全力で走っている最中も、後ろから足音が止むことはない。時折怒号にも似た叫びをあげながら、小柄な奴らは後ろから迫ってくる。

 

緑色で小柄な奴ら『小鬼』達から。

 

「何が『ゴブリンくらい楽勝』だよ‼︎速攻でやられてんじゃねぇか‼︎」

 

つい先程まで仲間だった––––––今では肉塊–––––––男に唾を吐く勢いで悪態をつく。

 

 

––––––回復薬や解毒薬といった充分な用意をする事なく、クエストに挑むことも。

 

 

 

「っ!出口だ‼︎」

 

松明以外の光源が視界に入る。自分たちが入ってきた出口だ。ここまで走って来られれば松明はもう必要ない。

「これでも喰らえ‼︎」

 

松明を後ろ手で放り投げ、後ろから追ってきている小柄な奴らを牽制する。火を怖がったのか、迫る小鬼達の音が次第に小さくなる。後ろを振り向くと、先程まで追ってきていた小鬼達が遠くに見える。

 

「へっ!後はこのまま…!」

 

 

––––––今思えば、この時気がつくべきだった。後ろから迫ってきていた小鬼達が、不気味に笑っていることを。

 

 

 

 

最期の力を振り絞り、出口へと走る。既に息は絶え絶えで、姿勢も安定しない。どんどん光が強くなっていき、その身を外に放り投げた時––––––––––。

 

右側頭部に、強烈な衝撃が走った。

 

あまりの衝撃に姿勢が歪み、そのまま地面へと倒れこむ。頭には鈍器で殴られたような感覚、スローモーションに流れる視界には血のついた棍棒を振り切った小鬼の姿が見えた。

 

––––伏兵。

 

敵を貶めるための常套作、子供でも考えるありきたりな策。それに気がついたのは、頭を殴られてからだった。

 

 

–––––––兜があれば防げたのかなぁ。

 

殴られて出てきた感想は、自分でもびっくりするほど簡単なもの。頭を殴打されたせいで思考能力すら悪くなったみたいだった。

 

揺れる視界の中でゴブリンが棍棒を振り上げているが、身体が痺れているように上手く動けない。

 

––––––思ったより、あっけない終わりだなぁ。

 

 

襲いくるであろう衝撃に身を任せ………。

 

 

 

 

––––––そのまま、一党が全滅する事も。

 

 

 

 

俺は、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……あの〜、大丈夫ですか?」

「……………えっ?」

 

 

––––––次に目を覚ましたら、そこは冒険者ギルドだった。

 

 

ガヤガヤと騒がしい建物に、そのカウンターに立つ受付嬢–––––––今では心配そうにこちらを覗き込んでいる–––––––は、つい一時間程前に自分がいたところと酷似していた。

 

 

「随分お顔が優れないようですが、なにかありましたか?」

「…あっ、いえいえ!大丈夫、です。なんの問題も、ない、です…」

「…?まぁ、なら良いんですけど。それで、先程の説明は理解していただけましたか?」

「あっ、えっと、すいません。よくわからなかったので、もう一度最初からお願いします」

 

受付嬢が嫌な顔一つせずに営業スマイルを浮かべ、冒険者のシステムについて説明している。そんな最中、俺の頭の中はグルグルと混乱していた。

 

(なんだ⁉︎一体何が起こってるんだ⁉︎俺は、たしかにあの洞窟の出口で…!)

 

そう、殴られたのだ。出口に潜んでいた小鬼に側頭部を殴られて、そのあと頭を思い切り殴打されて死んだ筈、なのだ。

 

けれど、こうして今俺は冒険者ギルドの受付で、冒険者の心得…先程聞いた説明をもう一度聞いている。

 

そっと頭の右側を触ってみても、特に血などはついておらず至って健康体だ。それに自分の装備、狭い洞窟内で振り回して折ってしまった剣、少ない貯金を叩いて買った革鎧も今の自分は身につけていない。

 

(……白昼夢?)

 

 

そんなあまりの出来事に、いままで見てきたことは夢だったのでは、という考えが浮かんでくる。

 

 

「…と、ここまでは大丈夫ですか?」

「あっ、はい。大丈夫です。すいません、何度も」

「いえいえ、これが私達の仕事ですから。次に、冒険者カードを作成してもらいますけど、文字の読み書きは出来ますか?」

「えと、はい。大丈夫です」

「わかりました、ではこのカードにご記入ください」

 

 

渡されたカードに汚い文字で個人情報を書き込んでいく。これも、ついさっきに経験した事だ。少しかけて書き終えたあと、受付嬢に手渡す。

 

受付嬢が内容を確認した後、カウンターに白磁のプレートが置かれる。

 

 

「これは貴方の身分を保証するものになります。絶対に失くさないで下さい」

「…ありがとうこざいます」

 

初心者を表す『白磁』のプレートを受け取り、カウンターを後にする。ここまでは白昼夢のとおりに動いている。そして、俺はこの後………。

 

 

「なぁ!そこの君、今冒険者カードを書いてた人だよね?」

「……っ⁉︎」

 

 

振り向いた先に居たのは、人当たりの良い笑みを浮かべている青年。既に革鎧と直剣を装備し、首に白磁のプレートをぶら下げている。

 

『初めまして!早速で悪いけど、この後一緒にクエストに行かないか?』

 

その顔を知っている。

 

『大丈夫さ!小鬼くらい、俺たちに掛かれば楽勝さ!』

 

その慢心を知っている。

 

『やめろ、いやだ、来るなぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎』

 

彼の断末魔を知っている。

 

苦悶と絶望に満ちた顔を知っている。

 

 

その姿は白昼夢で見た、小鬼達にすり潰され、見るも無惨な『肉塊』に変わる前の彼にそっくりだった。

 

「…あっ、あぁ。そうだよ」

「そっか!ならさ、今からクエストに行かないか?人手が欲しいんだよ」

 

生唾を飲み込み、そっと息を吐く。心臓の鼓動が煩わしく、胃がキリキリと反応する。

 

「因みに、なんのクエストに行くんだ?」

「あぁ。そう言えば言ってなかったな」

 

 

 

 

「ずばり、『小鬼』退治さ‼︎」

 

 

 

 

–––––あぁ、そっか。

 

 

この時、自分が見ていたのは決して白昼夢ではなかったという事を理解し、蹲って胃の内容物を木の床にぶちまけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『二週目』1日目

 

 

今日ほど読み書きを学んでおいて良かったと思った日はない。これが出来なければ、日記を書くことすらままならないのだから。

 

今日という日を忘れないために、日記を書いていこうと思う。

 

まず初めに、俺は一度死んでいる。そう考えていい筈だ。現に筆を走らせている今でも、死んだ時の感覚を思い出せる。頭に走った衝撃に、死ぬ間際の冷たい氷のような感覚。あれは決して、夢なんかじゃない。

 

ギルドではその事実に頭が追いつかず、その場で吐いてしまったが、そのお陰で彼の……前のパーティリーダーの誘いを断る事が出来たのは僥倖だった。

 

体調不良を理由に冒険を断り、その後片付けをしてギルドを去った。周りの冒険者から変な目で見られたから、パーティメンバーを探すのは苦労しそうだ。

 

色々混乱したので、今日はもう寝ることにする。寝床は馬小屋に確保することが出来たし、明日は武器と防具の調達をする事にする。

 

 

なんだか、長い夜になりそうだ。

 

 

 

 

 

『二週目』2日目

 

 

前回と同様の装備を手に入れる事が出来た。鉄の直剣に歯抜けの皮鎧。後は前回の死因である頭部の打撃を防ぐ為に鉄兜を買った。回復薬と解毒剤は金がない為買えなかった。冒険をしつつ買い揃えていくしかないだろう。

 

…それと、昨日誘われた男。受付嬢に聞いたのだが、ほかの仲間に声を掛けて四人のメンバーを集め、そのまま小鬼退治に向かったらしい。けど、今日になってもまだ帰ってきてないそうだ。前回と同じ場所に行ったのなら、日帰りで帰ってこれる場所だ。…一応、覚悟した方がいいだろう。

 

それとパーティメンバーの件だが、やはり昨日の事が後を引いたのだろう。誘ってみてもあまり色良い返事は貰えなかった。病弱な奴とは冒険に行きたくないのだろう。仕方ないとは言え、少し悔しい。

 

なので、明日は一人でも行けそうな地下水道に向かう事にする。鼠や蟲退治をして金を稼がなければ、一週間もせずに飢え死にしてしまう。気を引き締めいこう。

 

 

 

 

『二週目』3日目 依頼:「ドブ鼠5匹の討伐」 達成 金貨三枚

 

 

なんとか木箱にへばりついているが、気を抜いたらすぐに気絶してしまいそうだ。けれど、今日の出来事を記さなければならない。

 

今日は予定通り、単独でドブ鼠討伐に向かった。

 

下水道は臭いが酷く、とても鼻では息を吸えない状態だった。地下に降りてからは手にある小さな灯のみで周り、孤立している鼠を探しては切り殺していった。

 

最初の一、二匹は軽く殺せたのだが、三匹目以降からはかなり苦戦した。剣に血糊が付着して切れ味が落ちてしまっていたのだ。その為、残りの三匹程は剣の柄や松明で殴り殺す羽目になった。

 

一匹のみの鼠を探すだけでも苦労したのに、そこから更に戦闘で苦戦した為かなり疲労が溜まっている。

 

防具は地面に埋め、身体も川で清めたので、明日は朝一で剣を研いだ後、再び下水道に行く事にする。…思ってたよりも苦労しそうだが、なんとかやっていくしかないだろう。

 

 

 

 

『二週目』4日目 依頼:「ドブ鼠5匹の討伐」 達成 報酬 金貨三枚

 

 

剣を研いだ後、ギルドで回復薬と解毒剤を購入して冒険に向かった。単独の場合報酬が一人で使えるので、装備を揃えやすいのは利点だと思う。

 

今日も前回と同様、下水道にいる鼠を一匹ずつ殺していった。血糊がついた時に落とす用としてボロ布を持っていったので、切れ味を落とす事なく殺す事が出来た。

 

解毒剤と回復薬を使わずに済んだので、今日の稼ぎは盾を購入する事にする。

 

…それと、一昨日に書いた彼らの一党が全滅した事が正式に確認されたらしい。みすぼらしい防具を纏った銅等級の冒険者が四人分の死体を確認したそうだ。

 

やはりあの感覚は間違いでは無かった。では、俺は今回死んだ場合どうなるのだろうか?また生き返るのか?それとも今度こそ死ぬのか?

 

そんな事を考えていても仕方ない。今日はもう寝ることにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

『二週目』5日目 依頼:「ドブ鼠5匹の討伐」 失敗

 

 

 

大型の大黒蟲(ジャイアントローチ)に遭遇した。大きさは成人男性と同じ程度かそれより大きい程度。小型を含む大きな群も率いていたため、勝つ事を諦めてほうほうの体で逃げ帰った。あんな大きな蟲がいるなんて聞いていない。

 

殺しておいた鼠に群がっていたから逃げ切れたものの、死体が無ければ俺も危なかっただろう。ギルドに報告をし、注意を促すようにしてもらった。

 

…今日初めて依頼に失敗した。けれど、依頼を失敗した喪失感よりも生き残った安心感の方が大きい。

 

どのみち勇者になんてなれないのだ。堅実に勝ちを拾いに行こう。

 

 

 

『二週目』6日目 休み

 

 

今日は気分を切り替える為、武器屋に盾を購入しに向かった。

 

純鉄製の大型盾やミスリルの盾など様々なものが置いてあったが、勿論そんな物を買うお金なんてない。けれど、身を守るために盾には力を入れたかった。結果、自分の持てる範囲で一番大きな鉄縁の木製盾を購入した。

 

ちょっと重かったので厳つい店主に頼んで表面を少し削ってもらった。白磁という事で今回の調整費はタダになった。ありがたいことだ。

 

それと小ぶりの蟲に備えるため、万屋で安物のナイフを購入した。小さめの蟲ならこれくらいの方が取り回しが効いて良いだろう。

 

今日はそこそこ大きな買い物をしたため、貯金が底を尽きそうだ。また明日から下水道のクエストに励まなければ。

 

 

 

 

『二週目』7日目 依頼:「ドブ鼠五匹の討伐」達成。報酬 金貨三枚

 

 

一昨日報告した巨大大黒蟲が討伐対象としてクエストに表示されていた。討伐報酬は金貨六枚。白磁のクエストにしては中々に破格だ。

 

けれど自分一人ではとても太刀打ち出来そうも無かったので、そのクエストは見送りいつも通りドブ鼠の依頼を受けた。

初めて装備した盾だが、使い心地は驚くほど良い。身を守る物がある事で積極的に攻勢に出る事が出来た。これからは二匹同時に鼠を殺す事ができるだろう。

 

下水道から帰る途中に小型の蟲を見つけたので、安物ナイフの使い心地を試した。

 

結論から言えば、大黒蟲相手に小さい得物は有効であった。取り回しが効く分よく当たる。けれど、安物ナイフでは蟲相手には全く有効打を与えられなかった。

 

蟲の外殻は想像以上に硬く、あの程度のナイフでは傷をつけるので精一杯だったからだ。結局その蟲は壁と盾で挟んで潰した。黒い破片と粘液が盾について散々だった。

 

もう少し考えてから行動した方が良いのかも知れない。

 

 

 

 

『二週目』8日目 依頼:「ドブ鼠五匹の討伐」 達成 報酬 金貨三枚

 

 

今日、初めて同業者の死体を見かけた。

 

くすんだ金色の髪に歯抜けの皮鎧を纏った腐乱死体が鼠達に齧られていたのだ。その首には自分と同じ白磁のプレートが付いており、冒険者だとわかった。

 

自分も失敗したらこうなる、それを嫌という程思い知らされた。

 

それと同時に、自分が失敗したら仲間がこうなるという事も再認識した。

 

自分がどんなに致命的な失敗をしても、危ないのは自分だけ。けれど、パーティメンバーがいる場合はその限りではないのだ。

 

自分の命を守ることと、他人の命を守る事は同じではない。それは、前回(・・)の自分で痛い程理解したつもりだ。

 

こうして考えるのなら、俺はまだ他人の命を預かる覚悟が足りてないようだ。

 

幸い今は一人でもやれているし、パーティメンバーを集めるのは自身の心変わりを待ってからでも遅くは無いだろう。

 

少し気が滅入ってしまったようだ。防具と剣を磨いた後、さっさと寝ることにする。

 

追伸

 

下水道から帰る途中、大型の大黒蟲の討伐に向かうという四人組と遭遇した。

 

四人全員白磁等級であり、勝気な少女が戦士兼リーダーを務めていた。装備はそこそこ整っていたが、一人体調の悪そうな人–––––服装から見て神官だろうか–––––がいた。あの調子で大丈夫なのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

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ーーーー条件を達成しました。次の日より依頼(クエスト)『下水道の女神』を開始します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




TRPG要素+日記形式物を書いてみたかった。違和感あればコメント下さい。
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