ちょっと早いけどデリちゃんがいる。
ファミリーは船長であるドフラミンゴに依存している。
それは彼のカリスマ性や圧倒的な力を持っているからだろう。
そしてそこまでの力を持ってさえ、更なる高みを目指す強者の器。
だがそれが一番の理由ではない。
絶望の中に居た彼らが見出した闇の中に咲いた一輪の花が、彼だったのだ。
今の社会を恨み破壊と再生を目論んでいる。
それを成すには、どれだけ世界を壊して、そして自分を殺すのだろう。
彼らは依存の形で自分の拠り所を見つける反面、彼の力になりたいと願ったのだ。
異常なまでのどす黒い破壊欲と、スマイルの裏に隠された弱さや優しさ。
船長の二面性をファミリーは肯定している。
また時折覗く彼以外の何かの存在にも薄々気付いていた。
船長と同じようで、それ以上に悪の精神を持つ何か。
ファミリーは暗黙の内にそれを黙認し認めている。
形はどうであれ、船長は船長なのだから。
付き従うと決めてから、彼らはその身を船長に託し歩んできた。
_____船長に肯定し、時には否定をして。
ローというトチ狂った少年を若が庇った後、ファミリーは珍しく慌てた。
何と船長がそのまま倒れて気絶していたのである。
あの船長がだ。
ベビー5は彼が帰ってから疲弊していた様子を間近で見ていたので、直ぐに話した。
在るものは船長に頼り過ぎていたと思い、在るものは自分の弱さに唇を噛んだ。
そうでなければあの若が倒れることなどないのだ。
きっと一人旅も、自分たちを巻き込まぬよう動いていたのだろうと考えた。
実際はファミリーの仕事とは全く違うことをしていたのだが。
「取り敢えず若様を自室に運んで!」
【おれが運ぶ】
「コラさんは転ぶからダメ!!!」
目に見えてガーンとしているコラソンを尻目に、ベビー5は周囲の呆然としている男衆にテキパキと指示する。
だすやんはその様子に女の強さを見た。
続いてベビー5は事の元凶となったローの頭をひっぱ叩く。
いい音がした。
「あんたもあんたよ!若様が庇ったんだから後でちゃんとお礼言いなさいよ!!普通だったら殺してるんだから!」
「あ?」
「あ?じゃない、返事!!」
「は、はい」
ローは何故自分が殺されないのかと思ったが、ベビー5の言葉を聞いて納得した。
若様、つまり船長がわざわざ庇ったということは、庇うだけの有用性を少年に見出したということ。
ローは内心ガッツポーズをしながら、しかし噂に聞かなかったドフラミンゴという男の甘さに少しがっかりした。
極悪非道とは似つかない甘さ。
それは少年の求めるものとは大分違う。
ただそれでも強さを求めるには十分な場所だ。
ローは腹に渦巻く破壊の欲求に歯ぎしりしながら自分の白い肌に爪を立てた。
少年の寿命はそう長くないのだから、亀のように歩いている暇はない。
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燃えている。
ロシーや父上が磔にされ、
炎が揺れ自分の瞳に焼き付けろと言わんばかりに燃え盛る。悲鳴が鼓膜に刺さる。
火の粉が
やめてくれ。
父上の嘆き。
……やめてくれ。
ロシーが泣いている。
___やめてくれ!!
人間どもがそれを見て嘲笑う。
ああ……、ああ
_____ブッ殺してやる。
理不尽な世界を壊すんだ。
そうしてずっと生きてきた。
これは誰の考えだ?いや、もう誰だって構わない。
壊せれば、それでいいんだから。
「……あ"っ!」
手が痙攣した後、急激に体全体が動いた。正座した後一気に痺れが来るような感覚が全身に襲っている。
汗が酷い。水が飲みたい。
そう思って手を伸ばせば弟がいた。はて、おれは何をしていたん……あ、少年庇ってぶっ倒れたのか。
「っ………ロ、ロシー」
【だいじょうぶ?】
「フフ…、ああ、うん。大丈夫だ」
【うなされてたドフィ】
…そうか、あれは悪夢か。
でもあの共鳴したような感覚は一度経験したことがある。
昔磔にされておれが叫んでいた時に感じたようなそれと酷似している。ありゃあ何なんだろうか、不思議だ。
「…みず」
【もってくる】
そう言ってロシーはすっ転んでおれの書棚にぶつかった。
衝撃で本が舞う。
やめろ、これ以上兄上のSAN値を削らないでくれ。何もしなくていいから。
「コラソン、命令だ。大人しく下がってろ」
【やだ】
「うん可愛い……じゃなくておれの胃にこれ以上ダメージを与えるな。ジョーラかベビー5に代わってくれ」
【やだ】
やだじゃねェ!!かわいいなクソッ!!!
首を傾げながら紙を突き出す弟は実際見れば泣く子も黙る怖さなのに、おれからするとピカって言う黄色い珍獣レベルの可愛さに見える。
おれの弟がこんなにry
しかし胃痛はこれ以上勘弁なので、糸で操ってご退場頂いた。
偶に強情なんだからおれと似てんだなと思う。
もう水は自分で取ろう。
そう思ってフラつく足元に気を付けながら歩いた。どんだけ疲労が溜まっていたんだ。
丸一日はぐっすり眠るか。今後勝手な行動はなるべく控えよう、疲れる。
落ちた本を避けてバスルームに向かった。
蛇口から直は行儀が悪いが、喉が異様に渇いている。
そのまま水を飲もう、序でに顔も洗いたい。
下ろしてある髪を気にせず顔を洗っていればノックがした。二人居るうち一人は感じ慣れない気配だ。
おれが庇った子供かと目星を付けて扉を開ければ案の定だった。隣には腕を組んだベビー5。
浮気が発覚した夫婦の顔付だぞお前ら。
「若様具合悪いのに突然ごめんなさい」
「構わねェよ。どうした」
「あのね、ローが若様に言いたいことがあるって」
「何だ?」
ローというのはこの白い少年の名か。
手当てされた痕はベビー5と違ってかなり綺麗だ。自分でやったんだろうか、にしては手先が器用だな。
ローは口をもごもごさせながら少しの間逡巡した後、おれの方を向いてまた下を向いた。
何か言いたいようなので腰を下ろして、見やすいようにする。それでも子供の方が小さいので自分の図体のデカさに呆れそうだ。
「言ってみろ、ロー」
「そうよ、若様が待ってるじゃない!」
プリプリするベビー5を宥めるように頭を撫でつつ、白い少年をサングラス越しに見る。
何度見ても人工かと思うぐらいには白い。
普通ではないな。
「………ぁりがと」
「ア?」
「…あ、ありがとうって言ってんだ!!」
ツンデレか?ああいかん話が逸れた。
どうやら助けてもらった礼を言いに来たらしい。ベビー5が無理やり引っ張って来たみたいだが。
腐った目でツンデレとか誰得萌えだよ。
内心一人でツッコミながら気にするなと触ろうとしたら、手をひっぱ叩かれた。
イラッとしたのはしょうがない。ベビー5が怒ってローに怒鳴る前に、少年の首を掴んで壁に挟み込む形で叩き付けた。
「がっ……!」
「フフフ!ここに入るなら覚えときなロー。仲間、特に幹部に手ェ出す奴はぶっ殺される。不満があるってんならおれのとこに包丁でも何なり持って来な」
「……っ、……」
「…いけね、死んじまう」
いつもはここまで殺意が湧かないのに、しかも子供相手だぞ。魘された後だから少しおかしくなってるのか。
…やっぱり終わったら寝よう。
喉元を抑えて噎せているローにわざと足音を立たせて近づく。
ビビらない辺り度胸はデカイらしい。
中々良い素質を持ってそうだ。
「悪いな、大丈夫か?」
「……ゲホッ、俺に……近付くな!!」
眉を寄せれば、ローは自分が珀鉛病という病気なのだと明かした。
白い病気……あぁ、見覚えがあると思ったらあれだ、政府が消し去った奴か。
打倒天竜人前提で政府に入り込むことを模索していた最中見つけた記事、町の名は確かフレバンスだったか。
伝染病のため地図から消えた哀れな町と人々、そんな内容だった。
何かきな臭かったため調べたが、おれの勘は当たったらしかった。
珀鉛病は伝染病ではなく、鉛による中毒症状だった真実。
そもそもフレバンスは珀鉛という鉛が有名な町だった。
だが有害な鉛は積もりに積もってその場に住む人間を毒した。少しずつ、しかし確実に。
政府は珀鉛が中毒をいずれ引き起こすと知りながら、それを秘匿し続けた。
無論珀鉛病は起こり、政府は事実を秘匿したことをさらに隠蔽するため、伝染病だと発表した。
募った珀鉛病への恐怖と迫害。
遂にフレバンスは周辺諸国と戦争へと発展し、壊滅した。
調べた当時に胸糞悪さの余り気分が悪くなった。興味本位で調べなければよかったと思ったほどだ。
それに情報は持っているだけで政府に即刻狙われるようなビッグ過ぎるものだった。
恐喝といったものには安易に使えず、そのまま調べた情報は燃やした。
まだ生かしきれるほどおれたちのファミリーは強くないし、機会ではなかった。
改めてローを見るが白い。
船員は珀鉛病だと分かれば遠目に見るか追い出すだろう。迫害するほど軽薄な奴らではない。
あいつらも辛い目にあってきた奴らばかりだ。
「触るな……」
「若様に失礼な態度取らないで!」
ベビー5は珀鉛病を知らないのか。
まだファミリーには言ってないのかもしれないな。
それにしても触るな、か…。
強い拒絶の色……尋常じゃない人生だったんだろうな。
糸で少年を掴み引き寄せる。
笑いながら見れば何かされるのかと思ったのか、ローは強く目を瞑った。
フフと笑いつつ、帽子の上から頭を撫でる。
「クソガキだな本当」
「若様ずるい私も!!」
「…首絞まってる、ベビー5」
よじ登ってきたベビー5がギュウギュウ首を絞めてくる、いや抱きついているんだが。
一旦それを解いて右はロー、左はベビー5を撫でてやれば少女はご機嫌になったようだ。
対してローは呆然としたままだったが気を戻したのか、手をまた叩こうとした。
叩かれるのはこれ以上ごめんなのでその前に避ける。
野良犬のようにローは唸りながら叫んだ。
「珀鉛病は感染るんだぞ!!勝手に触るな!!!」
「フッフッフ!…中毒だろ」
「……なっ、知って…!?」
「おれをそこらのバカと一緒にするな」
そう言ってそのままローの帽子ごと頭の上からかき混ぜるように撫でる。少年は目が回ったのか尻餅をついた。
フッフッフ、ザマァねェな。
「ベビー5、ファミリーに伝えといてくれ。ローは正式に入れる。ここまで腐った目は早々いねェからな」
「いいの若様、さっき伝染病って言ってたけど…」
「中毒は感染んねェよ。一人で勝手に死ぬだけだ、気にするな」
その言葉に少しローの表情が悪くなったが、事実を言ったまでだ。
人は遅かれ早かれ死ぬ。こいつの場合早いだけだし、それを可哀想だと思う程まだこいつに情を持っちゃいない。
取り敢えず寝る前にこいつの意思を聞いておこう。
「ローお前は何がしたい、ここに来た理由は何だ」
「……おれは」
_____おれは、世界をぶっ壊したい!!
ローはそう言った。
まだ10代の子供が、だ。
おれは別としても、子供が言うようなセリフじゃない。しかしこの子供にはそう言って然るべき理不尽が起きたのだろう。
それも人々を守るべき、政府のせいで。
……胸糞悪いなァ。
前言撤回だ。この少年は気に入った。
世界を壊したいと言う腐った目の子供がこんなに愉快だとは思わなかった。
お前は、幸せになるべきだろうよ。だから___、
「世界を共にぶっ壊そうじゃねェか、ロー」
「……!うん!」
その時初めて子供のように笑った少年に哀れみを抱いた。感情を強く出せる瞬間が、こうも酷く歪んでいる。
世界は本当に不平等で、理不尽だ。
主人公(おれ)
身内と甘ちゃんと子供以外の人間はゴミ。ジョーカーと意識が混濁したけどそのことはまだ分かってない。腐った目の子供に同情心と破壊欲を煽られる。
モフモフ(ジョーカー)
主人公守り隊兼おとしゃん。悪夢で意識が混濁。主人公とローの雰囲気が良いので手は出さなかったけど、裏切ったら多分殺る。ウォーミングアップのかい無し。
ロシ
打倒兄上だけど大丈夫?絆され気味のわんこ。
腐った目の子供
甘ちゃんやないかと思った後の冷凍ビーム。効果は抜群だったが好感度上昇。世界ぶっ壊すぜ!