世界はあなたを愛してる   作:アビ田

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今回短め。次回収まりきらなかったロシーside。
当分先ですが、作品の表題変えるかもしれないので予めお伝えしておきます。


向かい合って反対方向

ローという少年が来てから2年の月日が経った。

 

 

少年は勉学・武術共に才能に秀でていた。

 

あっという間に力を付け、本人は将来おれの良き右腕になろうと努力を怠らない。

 

 

しかし子供には確実に死に至る病が今も尚、その体を蝕んでいる。

 

 

 

勉強中のローの元に欲しがっていた医療書を届けに行ったことがあったが、その目はどこまでも深淵に沈んでいたように思う。

 

腐った目がおれと似ていると奴自身に言ったことがある。

 

 

その時ローは嬉しそうに笑っていたが、実際は誇るべきではない。

 

 

おれのような人間はホイホイ居ていい存在じゃない。

 

いるだけで自然の摂理を壊しかねない。

 

 

じゃなければこのどす黒い破壊欲が、あるはずがないんだ。

 

 

「どうしたんだ、船長」

 

「……いや、なんでもねェよ」

 

 

そういやローはここ2年で少しは身長が伸びた。

 

おれにとっちゃそこまでの変化は感じられないが、顔の丸みが多少減って凛々しさが出たように思う。

 

 

2年、されど2年だ。

 

 

少年のタイムリミットは少ない。

 

 

珀鉛病の治療方法は未だ見つかっていない。調べている機関がまずないからだ。

 

政府が絡んでいるためしょうがないだろう。

 

 

国営がダメなら私営の機関をと探ったこともある、無駄に帰したが。

 

 

ともすれば最終手段は悪魔の実。事実ローの病気に丁度良い実の存在は既に分かっている。

 

 

“オペオペの実”だ。

 

 

 

確証にはまだ至らないが、その実を持っている連中がいるとこの間聞いた。

 

全員殺して奪えばそれでいいとは思うが、裏で生きるためには過激であり過ぎるのもいけない。

 

 

時に甘く時に厳しく。

 

 

自分を薬物に見立て相手を嵌め、自分のペースに持ち込む。

今はオペオペの実を持っている奴らとの、交渉の口火探しに忙しい。

 

 

 

突っ立ってるだけの存在は邪魔だろうと思い、おれは勉強するローを残し部屋を出た。

 

 

最近考えることが多過ぎていけない。

ローの病気のことで大体の自分の時間を消費しているせいで、溜まる破壊欲を発散できていないからだ。

 

 

そもそも殺したい壊したいと思っている時点で普通ではないのだろう。

 

 

でも溜め続けていれば無差別に何かを壊しているので、自分でもどうしようもない。

 

自室に戻り唸っていればジョーカーが現れた。

 

 

『新聞読んだか』

 

(___は?)

 

『最近読んでねェだろ』

 

(忙しいからな…)

 

 

取り敢えずローの病気のタイムリミットまでにはオペオペの実の取引は終わるだろう。

 

そう思いながらジョーカーに勝手に動かされている右腕は新聞を握り込んだ。

勢いでシワが無数にできる。

 

 

仕方なく読みはするが特に面白そうな記事はない___と思ったところである部分に目が止まった。

 

 

「政府公認の……海賊?」

 

 

思わずジョーカーを睨め付ける。お前何考えてるマジで。

 

…いや察してない、断じて察してない。

 

 

『王下七武海、持っておいて悪くはねェ地位だぜ』

 

 

……いらない。

 

 

顔に出ていたのか再度愉快そうに奴は笑う。

 

 

(…確かに天竜人どもに近づくには、政府に頭垂れんのが最も早い方法だと思っちゃいるが…だからって自分から好んで政府の犬になれってか?おれだって海賊だぜ、一応)

 

『フッフッフ、こっちに有利になるよう脅せばいいだけだ』

 

 

悪ガキのように笑う様は年齢の割に子供っぽい。ジョーカーの総合した歳なんて恐ろしくて考えたくはないが。

 

そもそも今のおつるさんより歳上なんだろうか、魂だけで歳を経る概念があるのかは不明だ。

 

 

(政府を揺するネタなんて早々ないだろ)

 

『それくらいは自分で思い付け』

 

(投げやりかよ)

 

 

ジョーカーはあくび一つすると姿を消した。寝に入った奴におれの思念の言葉は届かなかった。

 

 

問題が山積みで頭が痛い。

 

 

脅迫ならこちらの有利になり、かつ天竜人に近づく条件であるのが望ましいだろう。

 

二つを関連づけながら思案に耽っていれば部屋の外に気配。

 

 

「べへへー会議忘れてるぜドフィー」

 

「…ん?悪い、今行く」

 

 

思考にハマり過ぎるのは悪いクセか。

 

外で待っているトレーボルをこれ以上待たせないよう、足早におれは自室を出た。

 

 

 

 

 

-----

最高幹部の会議で一通り報告し合い、今後のファミリーの方針についていつも通り論議した後、談笑タイムに入っていた。

 

 

紅茶の茶葉はジョーラが仕入れたものらしいが、中々に風味が良い。

後味は少し強めだ。

 

 

メンバーが冗談を言い笑い合っている中、トレーボルがおれに話題を向けた。

 

どうやらオペオペの実のことについてらしい。

 

 

「んねードフィはオペオペの実を使って何する気ー?」

 

「さっき言ったろ。ローの珀鉛病の完治だ」

 

「本当にそれだけー?」

 

 

何が言いたい。そう言いかけた言葉は飲み込み先を促した。

 

思った以上に冷たい言葉が出そうになった自分に驚いた。

 

 

「ドフィは既に知ってるだろ、オペオペの実はある意味で最強の実だ。不老不死さえ叶う」

 

「…ああ、そりゃあな」

 

「本当は自分の不老不死のためにローを利用するつもりじゃないのかー?」

 

 

幾度も言ってきたが顔が近い。

 

そう思いながらスマイルを浮かべる。

 

 

「フフフ!お前の言うことは面白いな」

 

「でもそこがー?」

 

「いい…っておい」

 

 

おれの言葉に他の連中も混ざり笑い出した。

 

自分の心中を当てられ拗ねたように見えたのだろうか。しかし大分的は外れている。

 

 

笑いながら叩かれそうになる肩を避けていれば、弟の方に目が移った。何故か顔を青くし首元を抑えている。

どうしたマジで。

 

 

「…ロシー?」

 

 

近寄って見れば、白目を向きかけ呼吸をしていなかった。

 

ゾッとして声を荒げれば、弾かれたように弟は動いた。

 

 

「おい!!コラソンどうし…」

 

 

 

_____ゲホッッ!!

 

 

 

…どうやらロシーはおれのジョークを聞いて、変なとこに紅茶が入ってたらしい。

 

でも普通心配して来た兄の顔にぶちまけるか普通。

激おこだぞこの野郎。

 

 

「……ロシー」

 

【おもしろかったから】

 

「……ちょっと部屋に戻る」

 

 

そう言って弟の腕を取り部屋を出た。

会議は殆ど終わっていたので問題はない。

 

 

腕を取った時弟の目に若干怯えの色があったのは相変わらずか。でも叱る時は叱らないと埒があかない。

 

部屋に戻るとシャワーを浴びてくるから待ってろと告げ、ロシーを残しバスルームに行った。

 

髪から紅茶の香りがする。実に不快だ。

 

 

あくまでロシーを糸で縛らないのは、こちらが任意であることを示している。

 

 

逃げるならそれでいいが、誠意を見せてくれるなら残っていろという意味合い。

 

弟もドジだが頭は回る…正義一直線に走らなければ。

 

 

 

どうなっているだろうかと思いながら戻ってみれば、変わらずにロシーがいた。

 

バスローブ一枚で適当にタオルで髪を拭きながら弟に近づく。

 

地面には無数に水が飛び散って行った。

 

 

そういえば耳元に手が掠めた時にふと気付いたが、サングラスを外したままだった。

やけに目に刺すような痛みがあると思った。

 

ロシーの覗く金髪が目に痛い。

 

 

何をしているのかと痛む目を抑えながら見れば、弟は棚の上を物色していた。

声を掛ければ大きな背を大げさに揺らす。

 

久し振りにやらかしてるのかと思えば、違った。

 

 

持っているのは写真立てだ。……家族写真の。

 

 

「拾ったんだ。おれたちが昔住んでた場所でな」

 

 

ロシーの背後から目を細めてそれを見る。

もう随分昔に瓦礫となった家の中から見つけたものだ。

 

 

写真は残念ながら父上と母上の部分が破損していたが、弟とおれの部分だけは残っていた。

 

ふと弟の顔を忘れそうになる度に見ていた写真。

 

 

記憶の風化とは存外簡単なものだ。

例えどれだけ想っていようとも避けられない。

 

 

だが人間の思いは不思議なもので、離れていれば離れているほど強くなるものもある。

 

 

特におれがそうだった。

 

自分の場合発散される感情が限定されているせいもある。

 

 

だがその歪んだ愛情を理解されるかといえば、殆どが拒絶されるだろう。

 

そう……ロシーのように。

 

 

「なぁ、ロシー」

 

 

呼び掛ければ、弟はゆっくり振り返る。

 

目に浮かぶのは強い、拒絶の眼差しだ。

 

 

【ドフィは何がしたいの】

 

「おれか?フフ、そうだなぁ…」

 

 

子供の頃なら全部お前のためだと言えただろう。でもおれにはジョーカーの言う通り仲間ができた。

 

親友と言うべき相棒も、可愛げのない子供も拾って随分と賑やかになったもんだと思う。

 

 

だけど弟を愛しているのは変わらない。

 

 

……変わらないけど、伝わらない。

 

 

 

喋ってくれなきゃ人間の気持ちなんて分からない。幾度思ったろうか。

筆談越しじゃ足らないんだよ、きっとおれたちの溝は。

 

 

「壊して、おれたちが生きやすいように直す」

 

 

子供や甘い奴らが自分の理想通りに生きられるように、また奴隷の存在が無くなった世界を、この目で見てみたいと思うようになった。

 

 

 

破壊欲と共に募るこの思いは矛盾してるが、確かに事実だ。

 

 

「…ロシー」

 

【おれもうねる】

 

 

もうこれでおしまいだと言うように、おれの顔に紙を叩きつけてコラソンは出て行こうとする。

 

その姿が余りにも昔おれを置いて逃げて行く姿と重なったから、つい思ってもみなかった言葉が漏れた。

 

 

「逃げるな」

 

 

入り口のところでロシーは足を大きく止める。

 

 

【にげてない】

 

「ロシ…」

 

 

おれの言葉を聞く前に、紙を投げ捨て弟は出て行った。

 

 

 

 

【にげてるのはドフィのほうだ】

 

 

 

頭が酷く痛くなった。

 

 

お前がおれを止めようとスパイに来たように、おれだって離れた時間を埋めようと、感情の溝を埋めようと努めている。

 

 

 

「……おれだって向かい合おうとしてんだ」

 

 

 

 

 

なぁロシー……、どうしておれたちはこんなにも近い場所にいるのに、お互いを分かり合えないんだろうな。

 

本当に、不思議だな。

 

 

 

 

そう思いながら昇る陽を見つめた。刺すような痛みに自然と涙が溢れる。

 

 

 

「いてェな………」

 

 

 

目も……心も。




主人公(おれ)
家族大好き打倒天竜人。考えること多いし色々大変。行き過ぎたブラコン。ロシーと意思疎通が出来ない。

ジョーカー(モフモフ)
主人公守り隊兼おとしゃん。……。

ロシ
色々行き違ってる。兄上止めるぞ〜!
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