今後なるべく気を付けようと思いますが、もし誤字等ございましたら遠慮なくご指摘下さい。
心なしか夜間モードにして読むとより鬱暗くなる気が…しますな。
法外な金を積んだ一隻のド派手な船は悠々と大海原を進んで行く。
フラミンゴを模した船首は嫌でも目立つ。紅鳥が着けたサングラスはそれを助長させていた。
そこを襲う砲弾。
着弾を許す前に船長である金髪の男は不敵に笑い、糸を船の四方に張り巡らせる。
そしてその攻撃を敵側___海軍側にお返しした。
真ん中に大きく穴を開けた船は沈没して行く。
仲間の救助に当たる海兵を見ながら、ドフラミンゴは愉快そうに笑った。
彼を追っていた海軍中将のおつるはそれを見、苦虫を噛み潰したように溜息を吐く。
またあの悪ガキを逃しちまったと、こめかみに手を当てた。
随分前にまだ少年の面影を残しながら、突如この北の海に現れたルーキー。
今は一介の船長として悪さばかりしている。
本当に困ったもんだとおつるは思った。
だが彼女は知っている、恐ろしいまでの悪を持つ男の優しさを。
歪んでいるそれは一見すると分かりづらい。
彼女の知り合いのガープが太陽のようなのだとすれば、男の優しさは月光のように淡く、しかし優しく人々を照らす。
センゴクの部下が現在情報を流している今、彼女は作戦を立て男の船を追っている。
部下の男は船長の実の弟でもある。
センゴク自身は子供のように思っている部下を心配しているようだが、彼女はさほど心配していない。
むしろそれを利用し、とんでもないことを悪ガキが仕出かすのではないかと気が気ではない。
まさかあの身内に甘過ぎる男が、弟をその手で殺すなどあり得ないだろう。
信頼とまではいかないものの、それなりに長年追ってきた。
他よりは男を理解しているつもりだ。
しかし悪は悪。
正義を掲げる海軍として、その手を緩めるつもりは毛頭ない。
怪我をした海兵の具合を見ながら、彼女は逃げ去って行く派手な船に目を細めた。
中将な上相当なベテランである彼女をもってしても、捕まらない鳥。
それを捕まえるのは自分か、はたまた新しい世代になるのやらと思いながら、おつるは大海原を見つめるのだった。
「プルルルル」
波の音と水鳥の鳴き声しか聞こえない船に響いた音。
何だと思い彼女が出れば、何故か異様に焦っているセンゴクからだった。何か嫌な予感がする。
躊躇する手を一旦握り、息を吐いて出た。
「_____何、ロシナンテが…!?」
辺りには穏やかだった波が荒立ち、黒い雲がこんこんと育っていった。
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その日も海軍に追われながら仕事を終えた、ドンキホーテ海賊団の船が港に戻っていた。
取引の品を下ろすよう指示しながら、ドフラミンゴは次の取引先について数人の幹部と話し合っていた時だった。
「若様!!若様大変!!!」
「なんだベビー5、話が終わってからで…」
しかし言い終える前に、ベビー5の続きの言葉を聞いて止まった。
「コラさんとローがいないの!!それとコラさんのハンモックにこれが……」
「……見せろ」
いやな汗が頰を伝う。
シャツで乱雑に拭いそれを見れば、確かに弟の字で【ローのビョーキをなおしてくる】と、簡潔に書かれていた。
相変わらず漢字書けないなと、逃げるように思考が動く。
激しい耳鳴りがする。
頭を抑え、急に蹲った船長に辺りの人間は驚いた。
また疲労でも溜まっているのかと思い、ベビー5が声をかけようとしたところで男の異変に気付いた。
「若様大丈夫?若様…?」
側にいたグラディウスも一人青くなりながらオロオロしている。
「わ、若……俺が至らないばっかりに……」
「……いや、お前はしっかり働いてくれてるよ。フフフ、心配かけちまって悪いなァ」
そう言ってドフラミンゴは立ち上がり、再び話に戻った。
「本当に若様大丈夫かな…?」
ベビー5はそう思いながら、未だ顔色の優れない船長を見つめる。
(もう、コラさんたら若様に迷惑かけてばっかりなんだから!)
そう思いながら頰を膨らませて、何も知らずにこちらに来たバッファローの腹にダイブした。
「バカーーー!!」
「な、急に何だすやん!?」
コラさんのバカバカ!!一緒に行ったローもバカバカ!!大変な思いするのは若様なのに!
自分のうちに溢れ出る感情に唇を噛みながら、ベビー5は幼子のように泣くのだった。
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おつるさんの船に追われながら仕事を終え、枕に現在突っ伏している。
ロシーがやらかすのはいつものことだ。
だがまさかドジ以外でやらかすとは思いもしなかった。
ローの取引も大詰めな今に動くか普通。
やりとりをしてるのはおれだから知らないんだろうが、だからって今はないだろ。
ロシーの正義感は知ってる。真っ直ぐで、真っ直ぐ過ぎて危なっかしいものだ。
それがローに向いているのも知っていた。
何がきっかけかは知らないが、コラソンはローに時折気遣うような素振りを見せていたんだ。
兄のおれだから気付くような、そんな些細なものだったけれど。
それに前の一件でさらに大きくなった、弟との精神的な距離は感じていた。
おれが弟を試すようなことをしたのか、逃げるなと言ったのが気に障ったのか、よく分かっていない。口にすれば早いのだが、ロシーは喋れない。
今回の行動も予期せぬ、だ。というかこれが読めたらやばいだろ。分かりっこない。
…そう、分からなくて当然だ。だから焦るな、考えろ。
ロシーがこのままローを連れて戻ってこない可能性はあり得る。
だが任務中の身のあいつが、スパイを放棄して勝手に行動しているのは確実だ。
海軍側も今混乱の中にあるだろう。
そして必然的に考えられるのは、こちらの情報があちらに流れなくなったということ。
危険性が大いに減ったのはいいが、弟の失踪=海軍がこちらを追えなくなるということだ。
仲間も勘付くだろう、ただでさえここ最近海軍に追われる回数が増えていたのだ。
コラソンはスパイではないか、と。
こうなってしまえばもう流石に手に負えない。
おれも船長だ。裏切り者は殺さねばならない、海賊団になる前からあるこのファミリーの掟だ。
別におれが殺さないと言えば済む話だと思うだろうが、上の立場というのはそう簡単にいかない。
軽率な行動はファミリー内の信頼を裏切ることにもなり得る。
弟と同様に大切なこいつらを傷付けたくはないし、傷付けるつもりもない。
どっちも傷付かずに、なるべく被害の少ない方法。
殺害と見せかけ逃すのが一番か。
幸い人を処する時は銃を使うクセがある。糸で殺すより銃殺の方が偽装には適している。
麻酔銃に改造して海軍に弟の死体を見つけさせよう。
脈と血を細工しておけば問題ない。
…それより自分に撃てるだろうか。ファミリーの誰かに任せれば確実に殺されるだろう。
他に方法はあるが、この方法が一番だ。
おれが撃たなければロシーが死ぬ。
本当に…何でこんな時に動いちまうんだよロシー…。七武海の案も前向きに考えていたんだ。
政府と関係を持てば、お前も万が一の時に逃げやすいと思った。
政府公認の海賊。正しく海軍のお前に会えるいいこじつけになるだろうに。
「………いや、おれが甘かったのか…」
寝返りを打ち天井を見上げる。
窓辺から夕焼けが部屋を照らした。
白黒付けなければならない、弟の処遇について。
ヴェルゴの言っていた通り、弟は害をなす存在だ。海兵と海賊なのだから当たり前なんだろうが。
弟はきっとおれに今、牙を剥いている。
弟に何かきっかけがあったに違いない。でなきゃこんな急にことを進めるとは思わない。
あちらはおそらく決着をつける気だ。
海賊ドフラミンゴを、海兵ロシナンテとして捕まえようとしているんだ。
あいつは情に流されやすいが、やると決めたら曲げないやつだ。
おれだったらこちら側に取り組もうとするだろう。そういうところ、似てないないよなァ。
「フッフッフ、結局……こっちにはなびかなかったな」
おれに冷たい目を向けていた、あの濃い紅目。
しかし正義に燃える目が羨ましくもあった。
父上や母上と同じ優しく、地平線に沈む夕日のような紅を持っていた目。
おれとは全部正反対だった。
「………ロシー」
分かってたんだ。分かってたんだよ…。
でも離れた分共にいたかったのだと自覚してから、お前に歩み寄ろうと、お前に理解されようと笑いかけた。
それさえ無理なら、嫌われてもいいから側にいたい。そんな歪んだ考えも脳裏にはあった。
それにおれは好きだった、あいつの正義の目が。
両親と似た綺麗な瞳が海賊コラソンとして過ごす中で、多少なりとも濁っていくことに罪悪感を覚えた。
お前の色を失うなら…遠い距離のままでいい。
そう思っちまうぐらい、おれはお前のことを考えてたつもりなんだ。
窓に映る紅色。耳元であいつが囁く。
『撃てねぇのならおれが撃とうか』
「……そういやあんた、言ってたよな」
『何がだ』
「弟を殺したって、言ってたろ昔。何とも思わなかったのか」
『…フッフッフ!忘れちまったなァ、そんな昔のこと』
奴は数瞬笑みを消して、再び口端を吊り上げた。
運命ってのは変わらねぇもんだと、そう言う。
変える気があれば奴は簡単に変えられるはずなんだ。
それを何故変える気もせず、隠居のように過ごしているのか。おれからすれば分からない。
「変えられるだろ、あんたなら。未来の趨勢を知ってるなら」
ポツリと本音を零せば、ジョーカーはおれの目をじっと見た。
『…人生なんてのは数え切れない選択によって道が分かれる。おれが進んだ道は無数の中の一つの人生に過ぎねェ。変えるにしてもルーレットに身を任せて進むような軽率な真似しねぇよ。下手に手出しするべきじゃない』
「……慎重だよな…おれと比べて」
『勝手にマリージョアの事件に首突っ込むくらいだからなァ』
いいじゃないかと言いかけたところで『次仕出かしたら…』と続いたワードに絶句した。
聞かなかったことにする、最早得意技になりつつある。
やらかすのは別に構わないが、限度をわきまえろと、総合するとそんな感じだ。
想定外の斜め上を行く行動らしいが、好きに生きさせろと思う。
『お前の人生に手を出すときはそうだなァ…』
そう言って左胸に手が伸びたと思ったら、当然だがすり抜けた。
丁度止まった場所は心臓だ。
少し目を見開けば、ジョーカーは楽しそうに笑う。
「……おれの生死か」
『譲歩はしてやってるさ。だがロシーはお前を裏切ったよなァ、その裏切りに今感情を揺さぶられてる』
「………」
殺す気かと、内で怒気を混じえて言えば否と言われる。
お前が生かしたいのならそれでいいと言う奴の目は、確かに本気だ。
だけれど何だろう、何か違和感がある。
隠された何かを感じる。ジョーカーは何を隠している?
「何か…あんのか?」
『何もねぇよ、ロシーは殺さねェ。殺したらお前壊れそうだしな』
壊れる…か。たしかに絶対ないとは言えない。
家族愛を冠した依存のベクトルは概ね全てロシーに向かっている。
自分でも自覚している辺り、末期だ。
『…ローのこと忘れてねェか』
「…あ、ローは大丈夫だろ。あいつは確実に治すつもりだ。……本音を言えば、幸せになれるならそれ以上は望まねェよ」
『フフ、右腕はいいっていう風に聞こえんなぁ』
「別にいいぜ?あいつの望むようにさせるさ」
そう言えばジョーカーの動きが止まった。
すると突然笑い出す、触れないことを分かってるので人の腕を勝手に操り出す。
自分で頭をぐしゃぐしゃにしている様はさぞ滑稽だろう。やめろよ動かすな。
頭の中で文句を言っていれば、テメェはやっぱりおれとは違うと、少し辛辣なことを言われる。
突然何だというんだ。別に気に障ることを言った覚えはないんだが。
『おれはローに固執したからな』
「……初めて聞いた」
『今言ったからな』
だからローを見る目が怖かったのか。
だがその見る目が殺意だったり愛情だったり、ごちゃ混ぜになっていたのはこいつの歪みのせいか。
…意外におれより面倒な性格してそうだな。
ジョーカーと話していれば、今まで赤一色だった空が紫を混ぜた闇に染まっていた。
ロシーの言う通り、おれは確かに逃げていたんだろう。
弟ばかりを見て、海兵であるあいつから逃げていたんだ。
いつかは決別しなければならない運命、それに目を背けて少しでも弟の側にいようとした。
甘い、中途半端な部分は消し去らなきゃな。
ロシーがいたままじゃきっとおれは中途半端なままだろう。
ヴェルゴは薄々、おれの矛盾を理解してたんだろうか。
大丈夫だ。ロシーが生きていれば、それで十分だ。おれはおれの目的のために歩いて行ける。
仲間も、意志も、十分なほどある。
残るはおれの覚悟と決意。それだけだ。
この手でロシーと決着をつける時、甘いおれを殺そう。
ロシーは決めたんだ、おれも本気でお前と、海兵ロシナンテと向き合ってやる。
「いっで!!」
白くなるほど握りしめていた右手の腕に激痛が走った。
何だと思えばジョーカーの操っていた左手の爪が食い込んでいる。というか血が滴っている。
(テメェ何すんだ馬鹿野郎!!!)
『無茶すんな。お前はお前らしくていいんだよ』
は?と、小さく声が漏れた。再度同じ言葉を言われ爪が刺さる。
(……無茶してねぇよ)
『……ッチ、ガキが』
そう言って奴は手の支配を解き、ため息を大きく吐いて刈り上げられた髪をかいた。
おれが腕の怪我を治療してる間にその姿は消えていた。
「………変な奴」
_____月に照らされた男の瞳は闇に吸い込まれ、暗い海の底を醸していた。
主人公(おれ)
家族大好き打倒天竜人。色々覚悟を決めたブラコン。ストレス過多で精神異常なりかけに気付いてない。頑張れ。
ジョーカー(モフモフ)
主人公守り隊兼おとしゃん。あれ以外とローどうでもいい…?主人公の精神疲労に気付いてる、無茶すんな。