漸くオチが決まったので、突っ走ります。にしても暗い…。
人を狙って撃つ時に必要なものは技術か?それとも感情か?
違う、覚悟だ。
照準を人間の頭に向けろ、一呼吸で全て最高のコンディションに持ち込んで撃て。
近距離で殺すことが多いため、じっくり狙う時間はない。確実に、速やかに殺す。
所詮殺すことに長けた技術だ。生かすのに長けてはいない。
だから物に細工をする。
弾丸は回転数を少なくするため重さを従来より減らした。先端も見た目じゃわからないが特殊形状にしてある。
撃たれても浅い所で止まる。
次に麻酔の元。多量に摂取することで誘発するものだ。大量な程脈の停止時間が長くなる。大体一発に1分程度。
一発じゃない。感情のままに撃つようにみせかけろ。何発もだ。
最後に血液。おれとロシーの血液のタイプは一緒だ。弾丸に内包された血が着弾と共に外に飛び散る。
万が一調べられても気付かれまい。
仕込んだ分と実際に流れ出る分で致死量に見せかけられる。
準備は出来ている。
後は、静寂な心だ。
ロシーとローがファミリーから失踪して半年後。
いよいよオペオペの実の取引が決まった。
弟には少し前にオペオペの実が見つかったと報告してある。
ファミリー内でも既にコラソンの裏切りの疑惑が浮上している。
おれが言葉を濁しているためまだ保っているが、時間の問題だ。
ロシーにオペオペの実を食わせる。そう言えば奴は恐らくローに食わすだろう。
能力的に最適なのはローだ。器用な少年なら苦なく自分で治せるはずだ。
ロシーは苦手そうな気がするしな。それに最たる根拠はあいつが能力者であるだろうということだ。
数年いたんだ、疑わしいシーンはいくつもあった。
能力の内容までは把握出来ていないが、八割二分そうだと見ていいだろう。
こういう時の勘はよく当たる。
銃を手持ち無沙汰に弄る。
取引の後コラソンに会い、オペオペの実を渡す。
まだ疑いは確実な証拠が出ていないため、おれはあいつをファミリーに戻そうとする。
あいつにおれを失望させるなと、思わせるんだ。
ロシーなら確実にその機を狙っておれを捕まえようとするはずだ。そこがチャンス。
おれたちを、ファミリーを裏切ったと粛清する。きっとその時におつるさんが来るだろう。あの人、おれを捕まえようと特に最近躍起になってるからな。
絶対ロシーを見つけてくれるだろう。
おつるさんだったら尚更。
『昔はデリンジャーぐらい小さかったのによ』
「…急になんだよ」
ジョーカーはここ最近何かを確かめるようにおれの手を勝手に動かす。
というか気付くのが遅れたが、部分的に体を乗っ取られていることを見逃していた。意識すれば奴の支配は解けるものの、気を抜いていたら勝手に動かされる。
糸で操られている人間はこんな感じなのだろうか、だとしたら大分悪趣味な能力を持ったもんだと思う。
それぐらいには慣れない。
『フッフッフ』
「……髪が乱れるだろ」
ぐしゃぐしゃと撫でられた。犬じゃないんだからよ。
せっかく午後の取引のためにセットしていた髪がお粗末なことになってしまった。
口を尖らせていればさらに笑われた。もういいと言ってその場を立つ。
きっとおれの精神的疲労を緩和させようとしてるんだろ。そこまでヤワじゃねェさ。
『お前は強くねェよ』
「ほんと今日気分害することしか言わねぇなあんた…」
素材が丈夫でも、器が小さけりゃ水は溢れるんだよと、そう言う。
確かにおれはジョーカーと比べれば器が小さい…というかここでは精神に例えてんのか。
精神強度なんてまちまちだ。
でも弱いなりに生きている。それでいいだろう。
「行ってくる」
『またこの間みたいにベビー5聞いてたら面白ェな』
(……やめろ、思い出させるな)
この間「よし、ロシーと本気で向き合ったる!」そう思いながら揚々と部屋を出たら、途中から会話を聞いていたらしいベビー5がガチ泣きしていた。
なんだと聞けば若様おかしくなっちゃったと、そう言われた。
一瞬白けたが、直ぐに気付いた。というかドジった、ロシーじゃねェのに。
ずっとジョーカーと会話していたがあまりに感情的になりすぎて、一部声に出ていた。
弟に依存しているブラコンがとうとう頭イかれた図の出来上がりだ。
その時はひたすら謝って少女の気分を直そうとした。しかし逆効果だったのか余計泣かれた。
もう思い出したくない、ファミリーにベビー5を泣かせたと思われたんだから。状況が状況だけに真実を言えず肯定しちまったおれもおれなんだが…。
ま、今回もうっかりしていたがそう立て続けに変人とは思われ……
「わ、若…!?」
「………」
目の前にはグラディウス 。手には仕事の報告書を持っている。真面目でお前は優秀な部下だよと思ったが、頭が真っ白になった。
とりあえず今度から絶対口に出さないようにしよう。
「若様大丈夫ですか!?胃痛薬持ってきますね!!」
「……お、おう」
最早デキ過ぎておれの出る幕がない。数奇な人生を送らなければ、奴はきっと上司に好かれる良い部下になっていたろうに。
深い溜息を吐きつつ、おれは先のことにまた思考を巡らせた。
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オペオペの実の取引の日。
普段はファミリーの前では温厚な男が青筋を立て、甲板に立っていた。
雪の中濡れようとも気にしない。
風に揺れピンクのコートが踊った。
「若様、寒いから中に入ろう?」
「……」
「若様?」
船長のスラックスをぐいぐいと少女が引っ張る。
それに反応することなくただ前をドフラミンゴは睨め付けていた。
ベビー5はこれは無理だと結論づけ、少し後方に立っていたグラディウスの元へ歩み寄る。
「やっぱりダメか」
「うん。若様風邪引いちゃうわ」
こうなった要因はオペオペの実の取り引きにあった。
法外な金でオペオペの実の取り引きを約束していた相手、ディエス・バレルズ海賊団。
それがつい先刻入った情報により、船長の機嫌が一気に急降下したのである。
「取り引きの相手がこちらではなく、海軍と取り引きを行おうとしていたんだ。しかも俺たちを序でに捕まえようと画策してたんだ」
「ほんと酷いわ!ボッコボコよ、ボッコボコ!!」
そう言いベビー5は感情的なまま自分の腕を銃に変え、剣のように振るう。
使い方が違うと静かな声色で話すグラディウスも、内心殺す・報復のワードが延々飛び交っている。
そんなシュールな光景になりつつある甲板に、電伝虫の音が鳴り響いた。
それを持ったバッファローは船長の元へ駆け寄る。
「若様!ヴェルゴさんから電話だすやん!」
「………」
ドフラミンゴの長い手が受話器を掴み、もう片方の手はこの場から去れと促す。
一人になった所で、鳴り続ける受話器を取った。
「…おれだ」
《…ああ、ドフィか。漸く出た。そっちは大丈夫か》
「………」
男の無言に、ヴェルゴは肯定の意味と取り電話を続ける。
《今取り引き場所に船で俺も向かっている。海軍が動いている…あまり突飛な行動はしないでくれ》
「……フッフッフ!……なぁヴェルゴ」
何だと言いかけた所で、ドフラミンゴの何か抑えるような声が聞こえた。
「殺すのは突飛か、なァ?こんなにムカつくのは久し振りだ。とことん邪魔だ、おれの計画を邪魔する奴は」
___だから、バレルズの野郎を全員ぶっ殺してもいいよな。
地獄の底から出たような声。
取り引き相手と上手くいかない場合は報復することもある。しかし全員殺すのは彼らしくないとヴェルゴは感じた。
しかしそれ程に怒りを覚えているのだと、電話越しに伝わる様子に理解した。
周囲に分からないほど怒りの感情を抑えていることは、滅多になかった。それに船長が無理をしているのだと理解する。
《そんなこと、俺に聞かなくても君の好きなようにしてくれドフィ。君がどんな道を行こうとも、俺は君に全てを委ねて着いて行くさ》
「………っ」
《ドフィ?》
「……ありがとう」
内に暴れ回るドス黒い感情が、ヴェルゴの一言により鎮まった気がした。
そうだ、おれは船長だった。
思考が冷静になって行く中で、今すべき最善を割り出す。
結局自分は詰めが甘いのだと、いやに男は理解した。
「…お前は取り敢えずそのまま任務を続けろ。何かあった時は機を窺いつつ、連絡してくれ」
《……分かった。ただ無理はしないでくれ》
「フフ、分かったよ相棒」
ガシャン。
電伝虫を持ったまま、男は視界いっぱいに大海原を映す。
起こったことは仕方がない。取り返しがつかないのだから。だから今はこれ以上悪化させない手を考える他ないと、深呼吸する。
まず取り引きだ。
もう交渉が決裂しているのは分かっている。
だがあちらの裏切りをこっちが知っているとは、知らないだろう。
知っていても、その上海軍が待ち伏せしていようと奪うと決めたものは、この手で奪う。オペオペ実は必ず奪取する。
それとバレルズ海賊団の奴らだ。恐らく取り引き場所のアジトには海軍の奴らが隠れているはずだ。
奪えたとしても、殺す余裕があるかは分からない。故に殺すのは状況次第で決める。殺せなくとも後で全員晒し首にしてやる。
そして問題は他にもあると、手の甲を口元に寄せる。
バレルズの取引相手が海軍となれば、コラソンが知っている可能性も高い。
オペオペの実の取り引き場所も相手も既に知っているとすれば、おれたちの取り引きは鵜呑みにしているだろう。そりゃあそうだ。
わざわざおれとしなくても、海軍に頼ればいいだけの話だ。あいつは海兵なのだから。
クソと、小さく声が漏れた。
幾ら考えても結局オペオペの実を奪わなければ、弟との取り引きもローの治療も始まらない。踏んだり蹴ったりだ。
先ずは作戦の立て直しだと、薄っすらと甲板に積もる雪を踏みつけながら、男は部屋に戻った。
一方その頃、ミニオン島にコラソンは小舟で向かっていた。
隣にいるローの息は酷く荒い。珀鉛病が半年の内に悪化した所為である。
「…悪ィな、ロー…。俺が連れ回したせいで病気悪化しちまったし、全然治療法見つけてやれなくて…」
いつも太陽のように笑うコラソン。ローは苦しい痛みに耐えながら、じっとその顔を見つめる。
心配そうにこちらを覗き見る男の表情を見て、辛そうに顔を歪めた。
(_____そんな顔しないでよコラさん。おれ…あんたと一緒にいられてよかった。俺の病気のせいで酷い事言う奴ばっかりだったのに、あんたは殴って怒ってくれたじゃないか。それだけで……、それだけで俺はすげぇ救われたんだ…)
声すらまともに出せない。これじゃ前と逆じゃないかと、苦笑いした。
「ど、どうした!?痛いのか!?」
コラソンは急に笑ったローにあたふたし始めた。本当にドフラミンゴと違って表情豊かな奴だと思った。
少年が咳き込めば直ぐに心配して頭のタオルを替えようとして転けるし、料理をしようとして船を燃やしかける。
流石に懲りたのか、調理済みかそのまま食べられる食事を出すようになったけど、ドジが多過ぎる。
ただ水に落ちないのだけは徹底していた。やっぱり能力者としてそこは気を付けているんだと感じた。
それに、もしもの時自分じゃどうにも出来ない。
救おうと思う辺り自分は本当にコラソン___コラさんに懐いたのだと思った。
最初は殺そうと思っていたのに、優しさに触れて、自分のドス黒いものが次第に溶けていった。
一緒に寝て、病院を回っては珀鉛病だと周囲に白い目で見られて、時には殺されかけた。
メシを食って、夜はコラさんが創作話を面白可笑しく語って、そして一緒に寝た。
___温かい。
ファミリーの中で隠されていた太陽は、ローと共に旅する中でその真価をローに魅せた。
故にだからと、思ってしまう。
コラソンはローに対しては酷く温かいものの、ファミリーに対してはどこか冷えたものを持っていた。今になってそれは意識してつくっていたのだと思うけれど、船長に向けていたのは心の底から来るものだった。
冷たい。今次々と少年の頰に落ちては消える雪のように冷えていて、でも熱い何かがあった。
それはきっとドフラミンゴを止めようという気持ちだったのかなと、ローは感じた。
顔に出やすいコラさんの感情全てが分かるわけじゃないけれど、その感情だけはローにしっかりと分かるほど出ていた。
きっとそれは、気を許した自分の前だからだろうと少年は考えている。
「コラ…さん」
「ど、どど、どうしたロー!!」
すってーんとまた転ける。慌てんなと小さく呟いた。
「……コラさんは、ドフラミンゴを…殺す気なのか…?それとも、捕まえるのか?」
「…!……それは…」
一瞬ぐっと、堪えるように口を噤む。どこかその仕草に既視感を覚えれば、不意にそれがドフラミンゴと似ているのだと感じた。
「…おれは、海兵だ」
「…知ってる」
「ロー、お前を助けるために勝手に行動して、センゴクさんにすげぇ迷惑掛けちまってるけど、でも…これだけは譲れない」
「……」
「俺は…ドフィを_____海賊ドンキホーテ・ドフラミンゴを捕まえる、海兵ドンキホーテ・ロシナンテだ」
俺は弟だから兄を止めなければならないと、ルビーに輝く瞳が煌めいた。
綺麗な色だと思った。ドフラミンゴのとは色の違う瞳。
その瞳には覚悟や決意が浮かんでいた。それを見、ローはきっとコラさんなら兄を殺さないだろうと、確信を持った。
「…ドフラミンゴは、コラさんを殺そうとするのかな」
「……大丈夫だ俺は。だって兄弟なんだぜ?きっと…殺さねェよ」
静かになった船に波の音が響く。天候のせいか普段より荒い波に、大きく船が揺れる。
コラソンは空気を変えようとローの頭をクシャリと撫でた。掌から伝わった熱に、うかうかしてられないなと焦る気持ちが募る。
「…コラさん」
「安心しろ!絶対オペオペの実は取ってきてやるから!!ローの病気は絶対俺が治すんだ!」
「…絶対、戻ってこいよ。俺を…一人にすんなよ」
「…ロー………何上から目線で言ってんだ!」
言葉とは裏腹に嬉しそうに抱きつくコラソン。しかし快調ではないローが大きく咳き込み、ドジったと元の場所に戻し、ズリ落ちた毛布を掛けた。
船は着実にオペオペの実の取り引きの場所に向かっている。
コラソンはその実を取り引き先の海軍や、バレルズ海賊団に騙され必ず現れるであろうドフラミンゴよりも先に奪おうとしている。
危険なのはきっと本人も分かりきっている。それでも確実にローを治すために動いている。
彼は海兵だというのに、ローの嫌いな海軍に所属しているというのに、この男は……この恩人は、とんでもなく甘い。
しかしその甘さに、ローは自分を取り戻せたのだ。
ドフラミンゴも甘かった。だが、それはいつも複数に向かうものだった。それは海賊王としての器から起因しているのだろう。
その愛もいいものだった。黒い自分を必要として、同じようにローの病気を治そうとしていた。
でも、ローだけをこんなにも愛してくれたのはコラソンだけだった。
彼は黒い部分だけじゃない、ロー自身を見て愛してくれたのだと少年は思っている。
家族を失い、全てを恨んだ少年に愛情を注いだ存在。
大きく温かい背は父親のようであり、兄のようだ。
もし治ったら、その隣にいようと思った。一緒に着いて行こうと決めた。
治らなくても、側にコラさんがいてくれたら、俺はきっとラミたちの元に笑って行けるから。
そう___だから、その後は、真っ黒な道の上にいる男に笑いかけて欲しい。
きっとコラさんがあいつに笑いかければ、それだけで救われそうな気がしたから。
「だから…コラさん、ドフラミンゴを……愛してあげて…」
少年の掠れた小さな言葉は波の音にかき消され、向けた相手に聞こえることはなかった。
雪は止むことなく、全てを飲み込むように降り続いている。
主人公(おれ)
打倒天竜人、身内には甘い重度のブラコン。計画が狂って焦ってる。バレルズに死亡フラグ立てる。色々頑張れ。
ジョーカー(モフモフ)
主人公守り隊兼おとしゃん。一線は引いてる。主人公の詰めの甘さに溜息。
ロシ(コラソン)
兄上止めたるで!!ローの病気も治したるでぇ!!突っ走るドジっ子。
ロー
コラさん大好き。諦めの色が強い。主人公も愛してあげて。