世界はあなたを愛してる   作:アビ田

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※前半痛い描写あります、ご注意。


やまない雪

ミニオン島、バレルズ海賊団のアジトにて。

 

 

アジトは現在大いに荒れていた。

 

海軍と取引しようとしていたオペオペの実が盗まれたのだ。現在盗んだ人物の行方を捜すため、船員は躍起になっている。

 

 

そして取引と見せかけ捕まえようとしていたドンキホーテ海賊団。

 

海軍が戦場で戦っていると思っていたが、既にドンキホーテのメンバーが一部島に侵入していた。

 

 

船長のバレルズは青筋を立て壁を殴った。

 

 

「海軍の奴らは何をやっているんだ!!」

 

「そ、それが一部のドンキホーテの奴らが別方向から侵入していたようで…」

 

「何!?何故奴らは捕えられていない!!」

 

「か、海上で逆に足止めを食らっているそうです…」

 

「あの無能どもめ!!クソッ!!」

 

 

 

その様子を隠れて見ていたバレルズの息子、ドレークは先日殴られた腹を抑えながらどこか冷めた目で見つめていた。

 

 

 

(_____もう、こんな場所に居たくない)

 

 

 

そう思いながら部屋を後にし、冷たい廊下を歩いた。

ふと白いものが視界の端に映り、窓を見つめる。

 

 

 

「…やまないなぁ、雪……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方数刻前、ドンキホーテ海賊団の船内にて。

 

 

「今から言うメンバーはおれと小舟で海軍隻の無い別方向から島に侵入する。その他は船で待機、また囮として来た海軍どもを蹴散らしてくれ」

 

「若様どうして別れて行くの?」

 

「海軍の相手してる隙にあいつらが逃げたら終いだ。だから二手に分かれて意表を突く」

 

 

船は頼むなと、足元にいたベビー5の頭を撫でる。

 

ベビー5は私頼られてる…!?と顔を赤くした。

 

 

「べへへードフィがベビー5のことたらしてるね〜」

 

 

臨戦状態だった船内に一気に笑いの渦が起こる。

若干死んだ目をしつつ、ドフラミンゴは遠方に映る島を見つめた。

 

その時スラックスが引っ張られ下を向く。

 

 

「若様、気を付けてね」

 

「フフ…あぁ」

 

 

 

船長は笑った。少女はその笑みに、自分も頑張らなきゃと気を引き締めた。

 

 

 

 

 

 

 

-----

 

舞う赤。肉の切れる音。発砲音。

 

悲鳴。怒号。血の匂い。

 

 

 

悍しいほどの血の匂い。

 

 

 

バレルズ海賊団のアジトは地獄絵図になっていた。

 

どこもかしこも破壊されて行く。人間がいた場所には肉塊と鮮血。

建物の壊れた隙間からは雪が入り、紅く色付いた。

 

 

ドフラミンゴはただオペオペの実の奪取のみを考えていた。そうでなければドス黒い破壊欲に心が飲み込まれる気がした。

 

 

 

_____壊せ

 

(煩い)

 

_____壊せ

 

(黙れ)

 

 

 

ずっと囁かれる同じ言葉に舌打ちした。気を紛らわしたい。しかしいつもこんな時に話相手になってくれるあいつがいない。

数日見ていないのだ。そういえばここ半年、その姿を見ることが以前と比べ減ったように思う。

 

どうしたというのか。

 

 

(___ジョーカー)

 

 

呼んでもやはり、返事はない。

 

 

 

そう思っていれば、唐突に悲鳴が聞こえた。

何かと思えば、腕の切れた男がいた。いつのまにか船長の元まで来ていたらしい。無心を努め過ぎて意識が散漫になっていた。

 

 

「フフフ……よぉ、X・バレルズ」

 

「ドンキホーテ・ドフラミンゴ…!!」

 

「そんな顔すんなよ。ほら、くっ付けてやるからよ」

 

 

そう言い、バレルズの取れた腕を逆向きに押し込んだ。

 

 

切断面にめり込む指。

ぐちゅりぐちゅりと不協和音を奏でる。

 

 

「があ゛ああぁぁぁぁ!!」

 

「うるせェな」

 

 

糸で口元を縫う。漏れ損なった悲鳴が男の口内で木霊のように反響する。

 

ドフラミンゴは冷めた目でそれを見つめた。

こんな奴に少しとはいえ踊らされた自分が情けない。

 

 

「さぁオペオペの実の場所はどこだ。もう海軍に売っちまったか?答えろ」

 

「……若、口縫合してます」

 

 

後ろに控えていたグラディウスに船長はあ、と間抜けな声を出す。

珍しい顔にグラディウスは心の中で密かにシャッターを切った。

 

 

いけねェと男は能力を解きながら、血濡れたソファに座る。

そのまま靴で倒れこむバレルズの顔を上げた。

 

 

「言えねぇならまぁ、こっちにも色々方法がある。利口になれよ、船長さんよォ」

 

「……」

 

 

バレルズは青筋を浮かべる男を仰ぎ見た。浮かべるスマイルは前に見たものと違う。恐ろしいほどの殺意に満ちている。

 

 

だがオペオペの実は無い。そう言えば確実に殺されるだろう。

 

何故こうなってしまったのだと舌打ちしたい気持ちになる。海軍を辞めて海賊になり、それなりにいい所まで来たはずだった。

 

 

金、金。金が欲しい。金だ金。

 

 

故に、同じく北の海で自分以上に名を馳せているドンキホーテ・ドフラミンゴという男が邪魔だった。

 

 

自分より若いクセに、自分以上に強く、金を持っている。

そんな男がある時こちらに取引を持ち掛けた。こちらが持つオペオペの実が欲しいという内容だった。

 

 

チャンスだと、そう思った。

 

目の仇な男を消す良い機会だ。奴が消えればもっと自分に金が入る。

そう思い計画を立てて来たはずだった。

 

 

なのに今、自分はどこにいる?床に這い蹲り腕を切られて悲鳴を上げているではないか。

 

何という侮辱、何という惨めさ。殺意が湧く。しかしどうする術もない。

 

 

そう思ったところでひやりと頭に冷たい感触がした。

何だと思い顔を上げれば銃口が向けられている。

 

 

「ヒッ…やめろ、殺さないでくれ!!」

 

「オペオペの実はどこだ」

 

「殺さな……」

 

 

男の頭に強い衝撃が走る。思い切り足で踏まれたのだ。

 

 

「オペオペの実はどこだ」

 

 

何故こんなにもオペオペの実に執着するのか。そんなにお前も金が欲しいのか?

 

バレルズの頭にはそんな考えが過ぎった。

 

 

結局こいつも、おれと同じ汚い人間なんだ。

 

 

「……盗まれ…た」

 

「………」

 

 

鈍い音が部屋に響く。

男の体は壁に叩きつけられた。

 

グラディウスは船長から漏れる殺気に、銃を持つ手が震えた。

部屋には男の冷めた声が響く。

 

 

「…こういう世界ではよ、取引相手を裏切るのは以ての外だ。それをテメェは見事にやってのけた」

 

 

壁に頭を打ち付け唸るバレルズの元に、足音が近づく。

 

 

「いけねぇよなァ。海軍と組んで、なァ?フフ、フフフ」

 

 

空気がビリビリと震える。覇王色が少し漏れ出ている。

しかしここで放てば、実の在り処を知れなくなる。そう思いドフラミンゴは口を引き結んだ。

 

 

「最後のチャンスだ。在りどころを言え。でなければ殺す」

 

 

バレルズの額に銃口を当てる。死のカウントダウンだ。

 

恐怖にバレルズは魚のように口を何度も開けた。

 

 

「___ここにはもう無い。……盗まれ…た」

 

「……そうか、死ね」

 

 

ゆっくりと男のしなやかな指が動く。引き金に力が込められて_____

 

 

 

 

 

_____バン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし当たったかと思われた銃弾は、バレルズのいた斜め上に逸れた。

 

 

それと同時にドフラミンゴの肢体はソファにつんのめるように倒れる。

グラディウスは現状を起こした犯人にすぐさま照準を合わせた。

 

 

「……っ、殺さないでくれ!!」

 

 

飛び出したのは少年……いや、青年だった。

伏していた男の前に立ち、両手をいっぱいに広げた。

 

 

バレルズは息を呑み、グラディウスはブチ切れたまま引き金を引こうとした。

 

しかし体が動かない。この感触は……糸だ。

 

 

「若!!何故止めるんですか!!」

 

「……おれは大丈夫だ。冷静になれ」

 

 

俺たちの船長がこれしきで蚊ほどの傷にもならない。だが邪魔をされたのは確かだ。そう思いながら唸るグラディウス。

 

ドフラミンゴは部下を手を止めた糸を解きながら、前に立ち塞がった青年を見やる。

 

 

「顎に十字傷……お前そいつの息子のX・ドレークか」

 

「…!…そうだ。俺の父だこいつは……一応」

 

 

その言葉に何か察したのか、観察するようにドレークの体を見る。

 

タックルした際に乱れた服。腹には包帯が巻かれ、辛うじて見えた肌には青痣が浮かんでいる。

まるで殴られたような痕だ。

 

それに青年が言った一応というワード、そして少年のような弱々しさ。

 

 

___こいつ、虐待されてるのか?

 

 

察したものの今口にすることでもない。

苛立つ気持ちを抑えながら、口を開く。

 

 

「いいのか、そんな父親生かしておいて。…邪魔をするならテメェも殺すぞ」

 

「……俺は退かない。撃つなら撃て」

 

 

ドレークの体は震えている。恐怖が足を竦めた。

 

 

だがは退こうとは思わなかった。こんな堕ちてしまった父親でも、彼にとって憧れた父親であることに変わりない。

 

 

 

青年は、本当はこの混乱に乗じて逃げようとしていた。

 

しかし偶然走っていた時に聞こえてしまった父の呻き声。

 

 

 

あいつが苦しんでいる。

 

 

(_____そんなものがどうした。毎日毎日、俺を殴っていたじゃないか。俺の方が痛かったんだ)

 

 

情けない命乞いが聞こえる。

 

 

(_____海賊になってとことん落ちて、惨めな声さえ出して。俺が止めてと言っても殴り続けたクセに)

 

 

何かがぶつかる音がする。

 

 

(_____なのに、どうして忘れられない。どうして、どうして………正義を背負ったあの後ろ姿が忘れられないんだ…!!)

 

 

 

 

引き金を引く音がした。

 

 

 

 

 

(_____やめてくれ!!)

 

 

 

 

 

(こんな奴でも…こんな父親でも、俺の父親だった。俺の憧れた父親だった)

 

 

先程まで父親の目の前にあった銃口が、今度はドレークの額に当たる。

 

 

怖い。しかし青年の内に宿る正義がそれを許さない。

 

 

 

 

 

(_____俺は、こんな父親でも守りたいと思ったんだ)

 

 

 

 

 

その瞬間、青年は心を決めた。恐怖を抱く存在の前に立ち塞がろうと音を立てて震える歯を、強く噛み締めた。

 

 

 

 

 

そして不意に額に当たっていた冷たい感触が消えた。

何かと思い目を開ければ、銃は既にドフラミンゴの懐にしまわれている。

 

思わずドレークは口を開いた。

 

 

「殺さない…のか」

 

「殺して欲しいか?」

 

 

勢いよく首を振る。死ぬなんて嫌だ。

 

それを見たドフラミンゴはフッと笑い、グラディウスの肩に手を置いた。

 

 

「若、いいんですか?」

 

「よくねぇな…だが殺すのはやめだ。死なない程度で吐かせろ」

 

「了解です。若がそうおっしゃるなら」

 

 

バレルズを船に連れて行けと支持し、ドフラミンゴはドレークを再度見た。

その目には柔らかい色が浮かんでいる。

 

 

例えるならそれは、夜の海を照らす月のようなもの。

 

 

思わずドレークが息を呑んだところで、電話が鳴った。

ドフラミンゴは何だと舌打ちをしつつそれを取る。

 

 

《若様大変!!ヴェルゴさんから!!》

 

「……なんだ、どうした」

 

《ヴェルゴさんね、今戦ってる軍数隻に乗ってきたらしいの。島に偵察部隊として巡回してたら、コラさんを見つけたって!!》

 

「……!コラソンが!?」

 

 

男の受話器を持つ手に自然と力が入る。嫌な予感がした。

 

 

《コラさんがオペオペの実を盗んだらしいの!!それで手に入れたことを海軍と連絡しているのを聞いたって……コラさん海兵だったの!!今ヴェルゴさんが捕まえてるって》

 

「………」

 

「若、大丈夫ですか?」

 

「……あ、あぁ」

 

 

そう言い、ドフラミンゴは眉間に手を当てた。

寄った皺を解すように揉み、深い溜息を吐く。

 

グラディウスはその様子を見ながら、心配そうに見つめる。

 

コラソンはやはり海兵だった。危惧されていた問題が、現実のものとなった。

ファミリーの中には今すぐに行動しよういう者もいた。グラディウスもその一人だ。

 

 

弟を誰よりも愛してやまない船長がどう決断するのか。固唾を飲んで見守る。

 

 

愛情の深さは理解している。きっと殺しはしないのだろう。

仲間に付けるか、逃すのか………そう思っていた所に聞こえた船長の低い声。

 

 

 

 

 

 

_____裏切り者は粛清する。たとえ、弟であろうと。

 

 

 

 

 

そう言った男が握っている受話器の手は、白くなる程握られていた。




主人公(おれ)
身内に甘い打倒天竜人。どんどん発生する予期せぬ事態に胃が……。モフモフ…(しゅん)。ドレークの姿に心打たれた。覚悟のよーいドン!

ジョーカー(モフモフ)
しーん。
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