バレルズを吐かせる必要は無くなった。
やはりおれはガキに弱いと、そう思った。ドレークという青年が実父から暴力を受けていたのは確実だ。
しかしその親の前で手を広げて、おれたちに立ち塞がった。
その目はただ親だから守りたいだとか、そんなものじゃない。
一人の人間を守ろうとする、正義の目だ。
善人悪人、老若男女関係ない。全ての人間を等しく守ろうとする目。ロシーと同じ、綺麗な目だった。
その目を壊したくはない。強くそう思った。故に銃を下ろした。
今回だけだ。今回だけバレルズのクソ野郎を見逃す。
目の前の正義を持つ青年に感謝しろと、心の中で呟いた。
おれは奴とその息子を残し、アジトで暴れている他のメンバーを集めた。
しかし何故今かと思う。何故、何故今動いたんだ。コラソン……ロシー…。
…考えが甘かった。
あいつは海軍と手を組んでいると考え、ロシー本人が手を出すとは思ってもみなかった。あいつは海軍さえ出し抜いて自分で奪おうと動いたんだ。
誰のために?そんなもの決まってる、ローのためだ。
そうだよな…だってローを連れて治しに行っちまうくらいだもんな。
海軍を通して治すのが待てなかったのか、はたまた珀鉛病だからと、海軍に治療を断られたのか。
でも多分おれが治すとか言って、躍起になってるんだろうな。
あいつは向こう見ずに突っ走るタイプだから、正義感持って、すっ転んでもオペオペの実をしっかり持って……この雪の中を走ってるんだ。
よくこんな危険な場所に一人で侵入したな。馬鹿野郎とも言いたいが、よく手に入れられたもんだと思う。おれの弟はすごいんだぜ。
でもかなり撃たれていたとヴェルゴから先程連絡が来て知った。隙を突いて逃げられたとも。
海軍を壊滅し終えたメンバーも集まっている。全員揃って、お前の元に行かなきゃならねェ。殺さなきゃならない。
麻酔の量に、撃たれて出る自身の出血に、あいつは保つだろうか。もうかなり出血している筈だ。
雪の中今お前は……ロシナンテは戦っているんだ。ローのために戦ってるんだ。
おれを捕まえるのも恐らくこの場所か、そうとなるとうかうかしてはいられない。おつるさんはまだ来ていないが、近海にいて可笑しくない。
ファミリーとロシー。両方のために速やかに終わらせなければ、撃たなければ。
心がギシギシと痛む。
苦しい。循環機能の無い水槽に押し込められている魚みたいだ。
逃げ場はない。逃げてはならない。ここで逃げたらロシーはどうなる。ファミリーの信頼はどうなる。
ロシーを助けるために撃つ。おれを求めてくれたファミリーを裏切るな。
船長だろ、しっかりしろ。
「ハァー……」
深く息を吐けば、白く染まる。
雪が冷たい。だがそれが今の熱い体温には丁度よかった。
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ドフラミンゴたちの魔の手が近づく中、コラソンはオペオペの実を持ち帰り、ローの場所に辿り着いていた。
ローは帰って来たと安堵の息が漏れたのも束の間、コラソンの出血の多さに悲鳴が出そうになった。
「コ、コラさん……まさかドフラミンゴに撃たれたのか!?しかもめっちゃ殴られた痕が……」
「いちち……いや、撃たれたのはアジトの奴らだ。ドフィじゃねェ。殴ったのは知り合いの奴だったけどな…クソ、ヴェルゴの野郎……」
コラソンは撃たれつつもアジトの追っ手を振りきっていた。
そしてローの元に戻る前にセンゴクさんに連絡をと思った所で、巡回していたヴェルゴに見つかった。
元々この場所に取引に来ていた海軍隻を指揮する人物は、ドンキホーテ海賊団とバレルズ海賊団を捕まえようとしていたとセンゴクから聞いていた。
んな無茶なと、当初ロシナンテは思った。
センゴクもそいつは昇進に欲が出過ぎているのだとため息をついていたのだ。
しかしこれはチャンスでもあるとセンゴクは判断した。
キレたドフラミンゴがバレルズのアジトを壊滅させるだろう。残党は捕まえるとして、ここで一つの勢力が潰れる。
後はドンキホーテ海賊団のみだ。
ここで近海に密かに近付けていたおつるをぶつける。
向こうの勢力も少しは削がれている筈だ。壊滅までとは行かずとも、大きな傷は付けられるだろう。
目の上のたんこぶだったルーキーも少しは大人しくなるであろうし、潜入していたコラソン___ロシナンテ中佐を回収する良い機会だ。
向こうからも調べていた情報は集まったと聞いていた。
だが状況は良くない。オペオペの実をロシナンテが奪ったはいいものの、連絡の途中で電話が切れた。
嫌な予感がする。センゴクはそう思い、直ぐさまおつるにミリオン島に接近するよう命令した。
そしてロシナンテ自身も焦っている。
ヴェルゴにサンドバッグ状態にされ、避けようとしたら積もっていた雪に足を取られ崖から転落した。
おかげでヴェルゴから逃げられた。
ドジったラッキーと普段なら思うが、怪我があった分喜べなかった。
イテェと呟きつつローの元に戻り、オペオペの実を握りしめる。
(漸く治せる。ローの病気を…!)
そしてそのまま少年の口に突っ込んだ。
「!?」
「噛め!!」
吐きそうになるローの口を抑えて、喉が動くのを見守った。
ごぐんと動き、安堵の息を吐く。
「何すんだよコラさん!!クッソまずいじゃねェか!!!」
「よく頑張った!」
親指をぐっと立て笑う男と今にも死にそうな子供が激昂する様子は、どこかコントじみていた。
ローは手をグーパーさせた。しかし肌は白いままだ。
「…あれ、でも治ってねーぞ。何でだ…?」
「そりゃあ能力は使うもんだからな。多分治すんだろ、能力で。最初から治ったら驚くぜ俺も」
「………でぇい!!」
…シーン。
居た堪れずローはコラソンを睨め付けた。
「治んねーよ!!どうやって使うんだよ!!」
「んー?こう……バッ、どかーん!だな」
「………」
ドフラミンゴはどこだ、そう思った。それ程までにコラソンの教え方が壊滅的だ。
弟は苦手そうだが、兄はきっと的確に教えてくれる。そんな気がしてのドフラミンゴだった。
しかし今はその船長が弟を制裁するために向かっているのだと、コラソンから聞いた。
どうやらドジって彼が海兵であるのがバレたらしい。このドジっ子めとため息を吐きたくなった。
そう考えていれば、体がぐらりと倒れる。
「っ……」
「ロー!?」
やはり珀鉛病は治っていない。どうにかして治さねばならないと高熱で歪んでいく頭の端で思う。
しかし体が怠い。思うように四肢が動かなくなってきている。
このままじゃ自分も…それにコラさんも治せない。
俺のためにこんなに傷ついた人を治せないなんて……嫌だ!!
ローはそう思い必死に肢体を起こそうとした。ロシナンテはそれを見て、きっとこいつなら、このクソガキなら大丈夫だと、熱い息を吐いた。
血が流れ過ぎて、タフな彼でももう限界が近付いている。
薄々感じていた。
恐らく電話口で異変を察したセンゴクがおつるを島に接近するよう命令していても、到着する頃には自分は死んでいる可能性が高いことも。
オペオペの実を勝手に食わせた事は怒られるだろうなァと、眉をハの字にした。
ローは助かる。だから最後に、やり残したことをしなきゃならない。
未だ白い少年を見つめる。
「…ロー、お前にこれを託す。逃げ切って…海兵に渡してくれ」
「…?」
そう言い渡されたのは小さい何か。小型の機械だ。
「おれがスパイしながら同時に調べていた、ある国の情報だ…。俺からと伝えてくれ、分かる人には…分かる」
「…!?コラさんは、コラさんも一緒に行くんだろ!!一緒に逃げて……」
「…ロー」
強い、優しい笑み。でも今にも消えそうな、そんな笑み。
「……つ、コラさん!!!」
「……」
ロシナンテはローの首根っこを掴み、後ろにあった宝箱の中に押し込んだ。
そこに能力をかける。それは静かになる魔法。
「
そう言い、ローの頭を撫でた。ローが出す音は全て周囲に聞こえなくなる術だと告げる。
少年の目は不安に揺れた。
「大丈夫だ。隣町で落ち合おう。おれがドフィたちの気を引いて逃げるから、誰もいなくなったら出て来い。海軍の奴も来るから、そいつに事情を伝えて連れてってもらえ」
「_____!!」
コラさんと、ローの口が動く。それに飛びっきりの笑顔で笑って、ピースをした。
「愛してるぜロー!!」
俺は大丈夫だと続ける。
その笑顔にローは仰天しながら、閉じられる箱の中で思った。
不恰好な笑み。でも飛び切りのコラさんスマイル。
強くて優しいその笑顔に、コラさんなら大丈夫だと笑った。
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雪が舞う。
ピンクのコートに落ち、肩に積もる。
黒いコートに落ち、紅く染まる。
向かい合うは、二つの銃口と兄弟。
真っ直ぐに体は向かい合う。しかしその心は真反対だ。
ドフラミンゴたちは裏切り者のコラソンたちの元に到着した。
逃げようとしていたバレルズ一味が運び出していたであろう財宝の横に、大量の血を流してコラソンは倒れていた。
船長の顔は能面が如く動かない。ただ口元を引き結んで、久しく会った弟の顔をじっと見つめる。
「オペオペの実はどうした、コラソン」
「……ローに食わして…逃した。じきに来る海軍が見つけるだろう」
「!……」
声がと、そう小さく呟かれた声。それにロシナンテは兄のサングラスを見た。その瞳は隠され窺い知ることは出来ない。
「俺は、ナギナギの実の能力者。マリンコード01746……海兵ロシナンテ中佐だ…!」
「……フフフ!やっぱり……能力者だったか」
「…!気付いてたのか!!」
何年共にいたと思っていると告げると、男は銃口を向ける。
同時にロシナンテも向けたため、お互いが向け合う形になった。
「ローを勝手に連れて行った時は驚いたが……残念だ、コラソン___ロシナンテ。おれを、ファミリーを裏切っていたなんてなァ」
「……ドフィお前は……」
「アァ?」
眉を訝しめる。ロシナンテは言葉を続けた。
「ドフィお前は……どうしてそこまでしてオペオペの実に執着するんだ。ローを利用してお前は……いや、それだけじゃねェ。なんでそんなにこの世界を壊して、自分の思うように作り直したがるんだ」
「………お前に、おれの何が分かる」
「…分かんねェよ。分かんないけどそれでも俺は……それでも、あんたを止めるためにここまで来たんだ」
「……おれを理解さえしようとせずに、おれを止めようだって?フ……フフ、順番がおかしくねぇかァ?少なくともおれはお前を分かろうとした。お前と離れた時間を埋めようとした。ロシーお前を……愛してた」
「お前の愛は歪んでいる!」
「…んなもん、とっくの昔から知ってるさ」
引き金に手を掛ける音が、静かな周囲に嫌に響く。
それと同時に男の今までに塞き止めていた感情が、遂に壊れた。
「人の性質なんてのはそう簡単に変わらねェ、それが生まれ持ってのものなら尚更だ!お前は優しい子供だった!!だがおれは……歪んでいた。それをずっと抱えて生きてきた。
お前に、この苦しみの何が分かる。このドス黒い感情の何が分かる…」
「……だったら、変わろうと努力すればよかっただろ。ただそれだけのことだ。それをせずに、お前はどれだけの無垢の民を傷つけてきたんだ!!」
「フッフッフ!それができりゃあどれだけ楽だったか!生きるだけで地獄だったあの時から、ずっとおれは変わってねェ。おれはでも、変わらねぇよ、ロシー…」
「……」
「天竜人の奴らを地に引き摺り下ろして、今の世を成す政府も世界も全てぶっ壊して…直す」
「お前の破壊の先にあるのはただの地獄だ!!!」
「黙れ!!!」
二人の怒号が反響し合う。ファミリーのメンバーは二人の様子を固唾を飲んで見守る。
ドフラミンゴの引き金に更に力が込められる。
「…お前は、おれを否定するのか。おれの考えも…おれ自身も否定するのか」
「……破壊の申し子のようなお前に、間違っても俺は賛同しない。俺は俺の理想のために生きる。お前の理想と俺の理想は違う。お前の理想の隣に居るなんて……反吐が出る!!」
「……それが、お前の答えか」
「あぁ。そんなお前に…ローは渡さない。お前のいいようにもさせない。あいつはお前とは違う……!!あいつは自由だ!!!」
ギリと、歯を食いしばる音がした。続く発砲音。
何度も何度も、何度も何度も。
「もういい……黙ってくれ…」
小さく漏れた男の声は、銃声の音にかき消された。
そうして何発も銃弾を受けたロシナンテの体は宝箱の上に倒れる。
静まり返る周囲。
そこに誰にも聞こえない声が、宝箱の内で木霊する。
喉が潰れても泣き叫ぶ声。
______コラ゛ざん゛!!!!
白が何もかも覆い尽くすように、ただしんしんと降っている。
主人公(おれ)
身内大好き打倒天竜人。冷静に努めようとしたものの弟の言葉で、感情プッツン。ガチに銃をぶっ放す。泣きたいけど泣けない。頑張れ。
ロシー(コラソン)
兄上止めたるでぇぇぇぇ!!突っ走ったドジっ子。
ロー
コラ゛ざん゛!!!!!大泣き。打倒主人公フラグ。
ジョーカー(モフモフ)
しーん…?
*主人公イメージ絵描いてみました。イメージ崩したくない方は閲覧非推奨。最早誰状態。
【挿絵表示】
今更ですが自分の中のイメージでおとしゃんは、シリアスモード以外ちみキャラです。