あと、字下げ機能を初めて使ってみました。一回押したら全部下がったよ…バァニィー…。
目を覚ませば、おれは雪の中に突っ立っていた。
手には銃が握られ、顔に勢いの増した雪が当たる。精神の中で起きた先ほどまでの出来事に深く息を吐きながら、辺りを見渡す。
ジョーカーはいないが、混ざったわけじゃない。あのまま精神の中で眠るようにして消えた。
一瞬驚いて顔を歪めたが、消えねェよと悪態を吐いた姿は何か決意したようなものだった。
きっと戻るだろうと息を吐き、自分も眠りに誘われるように目を瞑れば意識が浮上した。
雪の音が辺りの音を消し、静寂のみが場を支配している。
何のことはない。弟はまだ倒れているし、肢体の上の雪の積もり具合から見ても、さほど時間が経った訳ではなさそうだ。
麻酔はそろそろ切れる。グラディウス辺りが死体の確認をと、脈を見ると思っていたが、徒労に帰したな…まぁいい。
弟に近付き様子を窺えば、辛うじてか細い呼吸音が聞こえた。
雪を払い糸で分身を作り出す。
まだ生きている。生きているからこそ急がねばならない。
ロシーのタフさは異常だ。
ドジっ子で培われたのかは知らないが、おれよりタフだと思う。
だからといってうかうかとはしていられない。
もう直ぐ出来ようという所で、スーツを引っ張られた感触がした。
何だと思いその先を見れば、ロシーが虚ろな目でおれを見ている。
「ロシー大丈夫だ、大丈夫だよ」
そう言って優しく髪を梳いてやる。相変わらずクセっ毛だ。昔よりもごわごわした感触に、こいつも大きくなったのだなと改めて思う。
そうしていれば兄上と、まるでガキの頃のようにおれを呼ぶ。
もしかしたら昔のことを思い出しているのではと思った。
意識の混濁が激しいのだろう。早く影騎糸におつるさんの所へ運ばせねェと。
「…いたい……あにう…え、おんぶ」
「分かった、少し待って…」
「あに……う、え……」
尚もぐいっと、力など殆ど入っていない手でおれの裾を引っ張る。
天使からおぶってくれないの?と途切れ途切れに言われ、もうだめだった。そうだ、おれは重度のブラコンだった。
「……分かった、分かったから。おれがおぶるよ」
「……あに……う」
先程まで服の裾を握っていた手は力を無くし、雪の上に落ちる。気絶したロシーの呼吸は荒い、限界が近いんだろう。一瞬肌の白さが、死後硬直して固まっていた母上の姿と重なって、背筋に寒気が走った。
早くしないと……落ち着け、落ち着いて行動しろ。
雪を踏みつけ歩いて行く。昔はおれより小さくて軽かったクセに、今じゃクッソ重い。
筋肉付けすぎだろと思う反面、逞しくなった姿に嬉しくもあった。
そうか…もう、子供じゃねェんだ。こいつは自分の道を歩いて行っている。
過去に囚われて動けずにいたのは、案外おれの方だったのかもな…。
昔母上から教えてもらった歌を歌いながら、歩く。
泣く子には幸せなど来ない、笑う子に幸せは来るのだと。要すればそんな内容の歌詞。
そういやこいつの笑顔は昔壊滅的だったなと思い出す。笑いそうになったが耐えた。振動は傷に触るだろう。
飛ばずに歩いているのもそのためだ。
しかしこのまま行けばおれはおつるさんに捕まるな。果たしてどうしたもんか…。
流石にこれを狙ったわけじゃあるまい、ロシーも。たとえ言葉を向けた相手が夢の中のおれだとしても、兄上がいいと言ってくれたんだ。それに応えない兄など兄失格だし、やはりおれは弟に甘過ぎる。
前にもそのことでジョーカーから指摘されたが、変えたいとは思わない。
斜面を下る中、覗いた木々の隙間から見えた海の地平線。その方角から散々見慣れている旗が、追い風に吹かれたなびいている。
おつるさんの船だ。
対して港にあるのはおれの船。積荷を積んでいる最中だったのか、奴らが慌てている。ため息を吐いて電伝虫を持った。
取ったのはバッファロー。切羽詰まった声が聞こえる。
《若様大変だすやん!!さっき沈めた船とは別の海軍の船が接近してるだすやん!!!》
「落ち着け。積荷はいいからさっさと逃げろ。指揮はトレーボルに任せる」
《若様はどうするだすやん!?》
バッファローの一言で向こう側の騒ぐ声がさらに大きくなる。
落ち着けと言おうとした所で、グラディウスの冷静な声が電話越しに聞こえた。
《若はバレルズの残党を駆逐してからお戻りになる》
そういうことかと、船員はどうやら一先ず納得したようだ。
だが何故そんな嘘をと思った所で、グラディウスが出た。
「お前、何でそんなことを…」
《……若のやり残したことがあるのなら、それが終わってからで俺たちは構いません》
「……!まさか」
《俺たちはどんな道でも、船長の貴方に着いて行きます。だからきちんとケジメを付けた後、絶対に戻って来てください》
「……あぁ、分かった」
電話を切る。目を閉じ、熱くなる心を抑えようと空を見た。
グラディウスは銃を扱う。奴と比べればそれこそ己の技量など、アマとプロの差だ。アマのおれが細工をした所でバレるに決まっていたか。
いや、寧ろ騙すような真似をしたことを謝らなければ。
それでも奴らはただ、船長のおれを信頼してくれている。
だったらそれに応えよう。前に立つ存在として、奴らを導くんだ。
_____本当に、いい仲間を持ったもんだ。
見えていた船は港から逃げるように動き始めた。おれは空を飛んで追えるため問題ないと判断したのだろう。
一人だが例え海軍から砲弾を浴びせられても、逃げる事ぐらいなら余裕だ。
ただ今回はおつるさんなだけ、簡単にはいかなさそうだが。
ロシーを近くに置いて逃げる。それでいい。
一生の別れじゃない。こいつならこんな怪我余裕で治す。死なない、大丈夫だ。頭に過ぎる骸の幻想など、吐いて捨ててしまえ。
だから次に会う時は、海軍の中佐と海賊の船長だ。
お前の正義を、おれは遠くから見ていてやる。
だからおれを追うのもいいが、ちゃんと素敵な相手でも見つけて幸せになれよ。
もうすぐ海が見える。思った以上に疲れた。
しかし軽い治療はしてあるが…問題は血液か。まぁストックなら幾らでもあちらにあるだろう。
「……ロシナンテ、生きろよ」
肢体を港の側に横たわらせて、雪を降らせる雲に糸を掛ける。
_____別々の道。
きっと運命は変わりはしない。それでもおれたちは歩んで行くんだ。今までも、そしてこれからも。
体が宙に浮く。
振り返らない。あいつの笑顔がおれに向けられる事は一生ないだろう。
だがそれでいい。あいつの笑顔はおれのものじゃない。ローや…もっと他の人間のためにあるものだ。
だからお前の太陽の笑顔は、他を照らしていてくれ。
月と太陽。
おれたちはきっとそんな関係だ。
「愛してるぜ、ロシー」
そこで乾いた発砲音がした。
おれの身体は揺れ、全てを飲み込む暗い海に落ちて行く。
左目が熱い。頭の中もどんどん熱くなっていく。
多分……撃たれた。
どこからだと、ぼやけていく思考の中で見れば、銃を持った片腕の無いバレルズが笑っていた。
小舟が近くにある。逃げようとしていたのか。
そのすぐ側には痣だらけで、顔の原型が分からないほど殴り尽くされた男の_____恐らく奴の息子の姿。青あざどころか、黒く変色しているようにも見える。
…見聞色、もっと上手く扱えるようにならないといけねェな。
「しね」
意識が薄れる中、数キロメートル先にいる奴の残っていた腕を飛ばす。
だがそこまでで、おれの体は海に落ちた。
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ミニオン島の近海にて。
センゴクから大至急ミニオン島に向かうよう命令されたおつるは焦っていた。
電話はロシナンテが危ないという内容。
嫌な予感はしていた。
長年経験の中で培われた彼女の勘は、確かなものだ。サイレンが頭の中で、嫌な音を鳴らしながら回っている。
島を睨め付けながら見やる。もう既にこちらの船が近付いていると気付いたドンキホーテの船には逃げられている。
砲弾の射程外の距離だったため、どうすることもできなかった。
しかし優先順位はロシナンテ中佐と彼が掴んだ情報にある。奴らを追うのはまたの機会だと、船を進ませた。
頭に過るのは二人の兄弟の姿。
あの子は弟を殺してしまったのだろうか。
追いかけ続ける彼女が何度も目にしたのは、船長でありつつ兄としてコラソンを見つめていた姿。
穏やかな海でも、人を殺す荒波にもなる男。その彼が弟に向けていたのは慈悲深い海の色。
そんな船長が弟を果たして本当に殺しているだろうか。
センゴク自身は子のように思っている部下の生存に対し、限りなく低いと考えているのか、電話越しの声は何か堪えるようなものだったが、彼女はそのことに関して言えば心配はないだろうと考えている。
ならばこの拭い切れない不安は何だろうかと、首を傾げる。
思考に耽っていれば、望遠鏡を握っていた海兵の一人が叫んだ。
「港に人の姿があります!!!一人……いや、二人です!!あれは……」
そして呼ばれた男の名前。何故まだ残っているのか、逃げた船に乗っていたのではないのか。
一気に増す不穏な色。
彼女の頰に汗が伝う。望遠鏡を持ち自身も見れば、映るのは視界が悪い中捉えられた姿。
地面に横にしたのは恐らく_____ロシナンテだ。
身体中血の色に濡れ、ピクリとも動かない。雪の白さと肌の白さが混ざって、遠くからでは二つの境界が分からなくなるほど生気の色が感じられない。
対して船長は渡り鳥のように空中を移動する。流石に逃すわけにはいかない。
射程距離にあるため砲弾の用意をと思った所で、唐突にその体が落下し始めた。
「!!」
急いで沈んだ体を回収するよう命令し、おつるはロシナンテの元へ向かった。
何があったかはまだ分からない。
しかし距離的に生きた状態で男を助けるのは困難だろう。彼女も能力者である以上、海の恐怖はよく知っている。
バカな子だねと小さく呟き、おつるは空を仰ぎ見た。
綺麗な夕月が、その姿を現していた。
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ゴポリ。
ゴポ。
ゴポポ。
_____死ぬのか。
海に沈みながら、ドフラミンゴは思った。
自分の血で染め上げていく海の色は、混ざって異様な色を醸す。
まだ何もしていない。天竜人も、世界を壊して直してもいない。
何も出来ていない、まだ死ねない。
そう思うものの、重い体は言うことを聞かない。悪魔の実を食べたこともないのに呪われていた体。
能力者は、海に愛されているのだと聞いたことがる。
殺したいほど愛しているのかと思うと愉快な気分になる。
不思議と心が落ち着くのだと、死を前に何を言っているのかと思うが、男は確かにそう感じたのだ。
大いなる海。例えればそれは母であり、その愛情を男は感じ取ったのだ。
(_____母上)
ゴポリと開けた口から空気が漏れる。やはり心地いい。
男が母の腕に抱かれた時間は少なかった。
2歳下の弟ばかりがその腕の中でいつも抱かれて眠っていた。
“ドフィ、いいお兄ちゃんになってね”
“うん、母上!”
お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃんだから、お兄ちゃん、お兄ちゃんだから。
ぼくは_____おにいちゃんだから。
そうして過ごした。精神は子供ではなかったものの、体に年齢が引きずられていた少年は、そのまま愛情不足で育った。
確かに愛されていた、それでもドジな弟としっかり者の兄。
弟が構われ易いのは当然であった。
それを両親から心配されていたのも、少年自身分かっていた。
しかし自分は大人だから、お兄ちゃんだからと、ずっと抑え込んでいた甘えたい欲求。誰よりもそれを求めていたはずなのに、ずっと仕舞い続けていた。
その心を埋めてきたのはジョーカーなのだろうと男は思う。
親でもない彼は愛し続けてくれた。
それは分かりやすい愛じゃない。静かで、見えにくい愛情。
まるで今の海のようだ。冷たい色をして、温かいのだ。
目を細める。沈んで行く内に暗い色が増えていく。
しかしやはり、それでも男には愛情が足りなかった。母の愛、それが未だ成人しきらない隠された内の子供っぽさなのだろう。
手を伸ばす。
(_____おれはまだ、死ぬわけにはいかない)
ゴポリとまた息を吐いて、無理やり肢体を動かそうとする。
(大いなる海だァ?笑わせる……愛してくれるんだったら、殺すんじゃねェよバカ野郎)
そう思っていれば、不意に腕を誰かに掴まれた気がした。
目を開ければ、歪んだ顔。いや、歪められた顔。
_____X・ドレーク……!!
口だけ動いていたため分からなかったものの、死ぬなと動いていた。
燃え盛る正義の瞳に、男は大きく息を零して、穏やかな気持ちのまま意識を失った。
主人公(おれ)
身内に甘い打倒天竜人。ロシーと決別の後に撃たれる。頑張るけど頑張れ。月に魅入られ、海に愛されてる。人生ハードモード。
ジョーカー(モフモフ)
主人公守り隊兼おとしゃん。共に進むことを決めたけど、疲れたのでスヤァ中。
ドレーク
ボロクソ殴った改心しないおとんを殴って助けに行く。最早おとんじゃない!!テメェは!!!