世界はあなたを愛してる   作:アビ田

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主人公とモフモフはお互い基本不干渉だけどボロ出る時が少なからずある。
幼少期のヴェルゴさんぐぅかわいい。


治療とパァン

ぼくが8歳になった頃だった。父上が引っ越す旨を家族に伝えた。

 

母上は父上の意見を肯定したし、ロシーも引っ越すことは理解しているのか、ピクニックに行くような笑顔を浮かべていた。

 

 

ぼくも父上がそう望むならと、聞かれた時に頷いた。

 

元々自分たちは神ではなく人間だというような人だったし、ぼくやロシーが奴隷を持つことに良い顔をしなかった。

 

それを理解していたからぼくも奴隷をせがむことはなかったし、ロシーは尚更欲しがらなかった。

 

 

 

でも、それまでである。

 

他の天竜人に対して奴隷制度について何かを言うわけでもなく、そもそも彼らが奴隷を持っていることを指摘しなかった。

 

ただ自分たちだけを見ている甘い考え。

視野の狭さに我が父ながら頭が痛くなったが、ぼくも反論することはなかった。

 

だって甘くても、彼はぼくとロシーの父上なんだから。

 

 

さて、ぼくたちは天竜人の位を破棄するときちんと言われていないが、甘い父上は今後をしっかりお考えになっているのか。かなり心配なところだ。

 

 

「父上、一つ進言して宜しいでしょうか」

 

「…ドフィ、家族なのだからそんなに畏まって喋らなくてよいと…」

 

「いいのです父上、父上はぼくの父上なのですから。敬愛すべき相手に相違ないのです」

 

 

オロオロする父上を軽く流しつつ、憂慮ごとについて話した。

 

 

「父上はお分かりですか。お考えになっていますか、今後のことを」

 

「ああ、大丈夫だよ。私たちはここを去って、幸せに、静かに暮らすんだ」

 

 

…ッチ。完璧に分かってないな。家族は別だけど天竜人は民の税金を貪って生きてる虫だ。

 

世の中というのは不便で、その害虫を守る法律が敷かれている。

そんなぬるま湯に浸かっている虫が柵の中から出てみろ、速攻で獣に喰われて死ぬ。

 

それに更に心配なのは病弱な母上の体とロシーだ。

 

せめてロシーの一定の教育が終わるまでとはと言ったが、父上は頑なだ。止める術はどうやらないらしい。

その頑固さをほぐして頭を柔軟にして欲しいけど、無理そうだ。

 

まぁあの甘ちゃんっぷりだから、こうなることも薄々は考えていた。

 

出来る限りの知識と武術を学んだつもりだ。コソ泥をしても余裕でやり返す程度の力はある。最低でもロシーは守れるように鍛えてきたんだ。

 

 

だから暗い顔はよそう、ぼくが家族を守るんだ。

 

 

「フッフッフ」

 

 

笑って支度をしていれば、“おれ”が現れた。寝ていたようではないけれど、姿を見せていなかった。

 

複雑そうな、誰かを殺しそうな顔をしてぼくを見つめている。

 

 

『一を取るか二を取るか…お前は三を選ぶんだな』

 

(そうだ。ぼくは家族を選んで、他を捨てる。そういうやつだ)

 

『フフ、半分違ェよ。今ここで一を殺しておいた方が、行く行くのためだぜ?』

 

 

…一瞬、背筋がゾッとした。

 

 

“おれ”は何を言ってるんだ?多分…いや、確実だろう。

不干渉の彼が殺せと言っているのは……父上か。

 

ひしひしと感じてはいるけど、ぼくの些かじゃない歪んだ家族への執着よりも、時折見せる“おれ”の薄暗い部分の方がとても怖い。

 

まぁ牢屋に入っていたというのだからそういうことなんだろうけど。生涯牢屋と言っていたから終身刑か、何やらかしたんだよ本当。

 

こういう時に気になる彼の詳細な過去、お互い不干渉を貫くのは中々難しいものだ。

 

 

(珍しいな、“おれ”が干渉するなんて)

 

『お前が甘ェから言ってんだよ。今の内にあの野郎は殺した方がいい』

 

 

ロシーが大事なら尚更なと、毒にも似た甘い誘いを彼は囁く。

 

この滲み出るカリスマ的発言、人を誑かすの絶対上手いよな。だからといって自分自身に仕掛けるのもどうかと思うけど。

 

 

(…寝言は寝てから言え)

 

 

“おれ”が先程寝ていたわけではないけどそう言って、ぼくは奴から視線を外した。

 

荷物を整理する間も、ずっと息を弾ませるような笑い声が響いていた。

 

 

 

 

 

-----

下界に降りてから、まず家を燃やされた。

 

 

行き先はまさかの世界政府非同盟国だった。同盟国であれば、いくら天竜人をやめたとしても元が付くのだ。

少しは政府の力に甘んじられただろう。しかし治外法権上等な場所、もしもの頼みは消えた。

 

 

 

ぼくが別の場所に隠していた金を使って家族全員で当分は暮らしていたが、周囲の人間の迫害と暴力は凄まじいものだった。

 

食料を買おうと街へ出れば暴力、子供に容赦ない。ロシーを行かせなくて本当によかった。

 

父上はこの現状に疲れてぼくやロシーに謝るばかりだ。

この状況から逃れようと何とか手を尽くしているようだが良い風向きは見られない。

 

ぼくの考えをきちんと受け止めたけれど考えなかった父上。愚かだ。でもその甘さは尊いものだろう。

 

 

この頃には嫌にも考えるようになった。天竜人や下界の人間は大差ない。全部一括りに汚れを持つ人間だと。

 

だが父上や母上、ロシーは人間じゃない、尊い存在だ。対してぼくは人間だ。

 

天竜人として生まれただけの、人間。ゴミを漁りながらそう思う。

 

 

行くと言って聞かないロシーは、最近容体が優れない母上のために食べ物を探そうと必死になっている。

ほら、弟がこんなに天使。

 

弟がこんなに天使だえとうっかり喋ったら、聞いていた“おれ”がツッコんできた。だからだえはやめろだと?どうせそっちだって子供の頃は使ってたんだろ。

 

口に出さなかったけれど勘の良い“おれ”は眉根を上げて睨め付けてきた。ロシーがこの顔を見たらきっと泣くだろう。

 

 

『お前はムカつかねぇのか、今の現状に』

 

 

唐突に聞かれた、その言葉。ぼくは辺りにロシー以外の人がいないことを確認しながら、会話に応じる。

 

 

(ムカつくよ。父上は役に立たないし、母上の病状は悪いし、ロシーはまだ弱い)

 

『フッフ、だな。逃げねェのか』

 

(逃げる?)

 

『そうだ、一人が嫌ならロシーでも連れて逃げりゃいい。それぐらい出来る器用さをお前は既に持ってる』

 

 

多分…出来るだろう、それくらいなら。“おれ”は分かってて言ってる。

 

母上がもう長くないだろうことも、父上が役に立たない邪魔になるだけの存在になっていることも…そしてそれを全部理解した上で、ぼくが家族全員の手を離さないよう頑張っていることも。

 

奴の言う通り、ぼくは“おれ”よりも随分と甘ちゃんだ。

 

 

(でも、ぼくはまだ子供だから、縋って何が悪い?ぼくには家族しかいない。家族が無くなったらぼくは……)

 

 

癇癪をぶつける。

子供として過ごす内に、精神年齢はいくらか身体に引っ張られるようになった。

 

 

『ガキらしくねぇが、一応お前もガキなん……』

 

(?)

 

 

“おれ”は途中で会話をやめると、ある場所を一点に見つめた。

 

何だろうと思えば、棒やら凶器になりそうなものを持った大人たちが立っていた。

視線はぼくよりも奴らの近くにいたロシーに向かっている。やばい。

 

瞬間的に駆けて、大声で弟の名前を呼んだ。ゴミ漁りに熱中していたロシーはビクリと肩を動かすと、ぼくの方を見て、指差す方に視線を移した。

 

 

間に合うだろうか、ギリギリだ。ビビってロシーは動けなくなっている。

 

だめだ、ロシー、ぼくの弟…ぼくのロシーが傷つくことがあったら……。

 

 

 

「殺す、絶対に。テメェらを」

 

 

ボソリと呟いて、どうにか間に合ったロシーの手を引き、駆け出した。転ばないように注意しながら走る。

 

ゴミの山を抜けて街の方へ向かえば、予め先回りしていたのか他の連中がぼくらを遮るようにし立っていた。

 

ニタニタと笑って、殺意の目を向ける。

薄汚い目でぼくのロシーを見てんじゃねェ。目ン玉抉り出すぞ。

 

 

咄嗟に大人が一人ギリギリ入れるであろう狭い路地に入った。舌打ちや怒鳴り声が聞こえるが無視して走る。

 

でも土地勘が無い分、こちらに分が悪いのは明白だ。

 

何とか一息つけるところを見つけなければ、そう思ったところでロシーが転んだ。かなり血が出ている。

 

 

「兄上……痛いよ……」

 

「…っ」

 

 

どうするか、ロシーは走れそうにないし、かといっておぶって逃げるほどの体力もぼくにはない。

 

最善はロシーを隠してぼくが囮になることだろうと即決し、丁度ロシーが隠れられそうな隙間を見つけて押し込んだ。

 

大丈夫、頭に血が上ってる動物はそう簡単に頭を使えない。目の前の獲物に夢中になる。

 

 

「ロシー良い子だ。声を出すな、目を瞑って暗くなるまで待ってろ。そうすりゃ大丈夫だ。ここら辺は真っ暗になるから簡単に見つからない。絶対に迎えに来る」

 

「兄上…やだ、兄上ぇ…」

 

「おれを信じろ」

 

 

一瞬ビクついて、涙を堪えるように漸く首を縦に振った弟に約束だぞと言い、その場を去った。

大人の足音がする方にわざと向かい足音を荒立たせる。

 

 

「天竜人のガキはこっちだ!!」

 

「追え!!ぶっ殺せ!!」

 

 

うるせェ。本当に、腹が煮えたぎるような感覚に陥る。ぼくは走った。

 

 

家族を…ロシーを守るんだ。

 

 

 

けれどぼくはその時、偶然こちらの様子を見ていた少年に気付かなかった。

 

 

 

 

 

-----

夕日も沈んで、大人の理不尽な暴力は漸くやんだ。

 

 

腹と足、あと腕と顔……身体中に青痣やら切り傷が出来た。満身創痍とはこのことか。

 

隣にいる“おれ”はものすごい形相をしているので無視している。投げかけて来る言葉も恐ろしいので割愛する。

 

 

それよりも今はロシーだ。

 

ぼく一身に暴力の雨が降るようにしていたんだ。きっと大丈夫なはず。周囲の気配が無いのを探りながら、弟がいる場所へと向かった。ロシー待ってろよ。

 

そして戻ってみれば、そこにはパンを食べている弟と、鉄パイプをこちらに向け殴りかかってきた少年がいた。

 

避けて腹に一発決めようとしたが避けられた。そこらの大人よりは動けるらしい。

 

 

「テメェ誰だ。何故おれの弟の側にいる。ロシーもこっちに来い」

 

「あ、兄上…あの、えっと…」

 

 

おどおどする弟の足を見れば、そこには包帯が巻かれていた。確か転んで怪我をした場所だ。

 

あれ?ということは……ん?

 

 

「すまない、敵かと思った。お前がこいつの兄か?」

 

「……あぁ」

 

 

どうやら、弟を治療したのもパンを与えたのもこいつらしい。でも恐らくこいつはぼくが何者かを知っているだろう。裏をかいて嵌めるつもりかもしれない。

 

そう思いぼくは警戒を強める。

その気配を察したのか、目の前の少年は眉を寄せて口を開いた。

 

 

「俺をそこらの奴と一緒にするな。それにお前とこいつが天竜人だろうが、どうでもいい」

 

「……何が目的だ、金か?それとも…」

 

「何度も言わせるな。俺はここらを拠点としてるマフィアの構成員だ」

 

「ガキなのにか…?」

 

「お前もだろ」

 

 

変わった奴だと思った。髪型もおかっぱだし、サングラスを掛けているし…いや、ぼくは目が日光に弱い正当な理由があるけど。

 

それにさっきから気になってるけれどその顔についてる食いかけのパンはなんだ…。

 

 

「…頰にパンが付いてるぞ」

 

「…あ、本当だ。食うか?」

 

「いや、いらん」

 

 

万が一にでも毒が入ってたらどうする……というかロシナンテ!!お前も少しは警戒をしろ!!

 

そうつい口に出したらロシーに怯えられた。ちょっと当分立ち直れないかもしれない。

 

 

「弟を置いて行ったのはいい判断だとは思えないな」

 

「無事だったんだからいいだろ」

 

「…傷だらけじゃないか。それに俺が見つけた。もし俺が敵だったらここにあったのは死体だったぞ」

 

「…そん時は、テメェをぶっ殺す。それだけだ」

 

 

怒気を混じえて言えば、息を飲む音がした。でもまぁ、弟が世話になったのは確かだ。

 

 

「ありがとな、弟の治療と食事を与えてくれて、感謝する」

 

「…いいよ。次いでだ、君の治療もしよう」

 

 

頭を下げて言えば、躊躇する声で言われた。

乗りかかった船だ。ここはお世話になるとしよう。

 

 

「おれの名前はドフラミンゴ。お前は何て言うんだ?」

 

「…ヴェルゴだ」

 

 

治療を受けながらそう一言二言会話して、ぼくとヴェルゴは別れた。

 

お礼に恐らく裏の奴等であろう連中が溜まっている場所をいくつか教えた。生きる為にこういった情報は多く持っているのに越したことはない。

 

役に立たないならば少ない金品を差し出すことも吝かでは無かったが、ヴェルゴは十分だと言って去って行った。どうやらビンゴな情報だったらしい。

 

 

ぼくは背中でスヤスヤと寝ている弟を見て微笑みながら、真っ暗な夜道を歩いた。

 

耳元で『相棒…』と、何か懐かしむような声が聞こえたが、今は触れないことにした。

早く家に帰って寝たい。その気持ちだけが強くぼくを支配していた。

 

 

 

 

 

帰れば冷たくなった母上が、優しそうに微笑んで眠っていた。

 

 

 

 

 

ああ…そうか、おやすみ………母上。




主人公(ぼく≧おれ)
だんだん気性が荒くなりつつある。狡猾に生きるけどまだ甘ちゃん。家族大事。

モフモフ
基本主人公守り隊。

ロシ
兄上が最近ちょっと怖い。でも好き!

ヴェルゴ
主人公の利用価値の有無を検討中。その内ドフィ教入信。
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