世界はあなたを愛してる   作:アビ田

20 / 44
次回おつるさん・ロシ・ロー目線のお話。ちょっと閑話も。


天夜叉

 _____フィ、___ドフィ

 

 

 

 声がした。

 柔らかい、温かな声。母上の声だ。

 

 ぼくは眠かった目を擦りながら、後ろを見た。

 

 

「ドフィ、こんな所で寝てちゃダメよ」

 

「母上…ごめんなさい」

 

 

 頭を撫でられる。その感触が酷く優しくて、泣きそうになった。

 でも涙が出ない。

 

 

「…?ドフィどうしたの、どこか痛いの?」

 

「母上……泣けない。ぼく……泣けない……」

 

「……ドフィは頑張り屋さんだから、きっと疲れちゃったのね」

 

 

 ふふと笑って、抱っこされた。ぼくの心臓の音に合わせて、あやすように背中をゆっくり叩かれる。

 

 

 温かい。

 こんなに穏やかな気持ちになったのは久し振りだ。

 

 

 それより自分はいつから泣けなくなったのだっけ。赤ん坊の頃は泣けて……そうだ、磔にされて地獄を見た時に泣いて……それ以来一度も泣いていないんだ。

 

 うっかり陽の下に裸眼を晒して反射的に涙が出た事はあったけれど、アレは別だ。

 

 ぼくの涙は枯れてしまったのか。それか涙腺がバカになってしまったんだろう。

 

 

 母上はそのまま本に埋もれていたぼくを抱いて、歩き出した。

 どこへ行くのと尋ねれば、どうやら父上の所らしい。

 

 

「あなた、ドフィが迷い込んで来ちゃったわ」

 

 

 迷い込む?天然な母上だからたまに素っ頓狂な事を言っていたのは覚えているけど、にしても余りにも吹っ飛んでいる。

 

 

「…ドフィ、おいで」

 

「父上……?」

 

 

 あれ、父上はロシーと海軍に行ったんじゃ。…いや待て、ぼくはファミリーに入って船長に…。

 

 情報がちぐはぐしている。

 そもそも何故こんな豪勢な家に居る?とっくの昔にマリージョアは去った筈だ。

 

 

 _____そうだ、あの憎い天竜人の奴らのせいで、おれたち家族は地獄を見た。あいつらをぶっ殺すんだ。

 

 ふつふつと湧いたドス黒い感情、しかし父上の優しい声が聞こえて、その感情は煙が消えるように姿を潜めた。

 

 

「…会ってこんなことを言うのは間違っているかもしれない。でもまず、謝らせてくれ…ドフィ」

 

「…?父上は何も悪くない。おれが弱かったから家族を守れなかったんだ」

 

「……違う、違うんだ…。お前をあの時、ひとりぼっちにして悪かった…」

 

 

 あの時とは、おれを置いて行った時だろうか。そんなこと気にしなくていい。

 傷つけることしか出来ないおれから逃げたことは正しい。

 

 そう言えば悲しそうな顔をされた。笑ってくれ父上、ロシーと面影が似てるんだ。

 

 

 ____ロシー…?………!!!

 

 

 

「ロシーは!!ロシナンテはどこだ!?」

 

「落ち着きなさい。あの子は来ていないよ」

 

「……さっきから二人共変なことばかり言うけど、どうしたんだ?」

 

 

 母上はクスリと笑って、またおれの頭をくしゃりと撫でた。父上は全くお前はと、ため息を吐く。

 

 

「ドフィ、貴方撃たれちゃったのよ」

 

「撃たれ……あ」

 

 

 左目に意識が集まったら、途端に視界が暗くなった。ドロリと目玉が取れる。

 

 慌てて自分の左目があった部分を触れば、指がズプッと入ってねちゃりとした感触、でも不思議と痛くなかった。母上は地面に落ちた目玉を、ハンカチに包んでそっと拾った。

 

 

「コップに飾っておこうかしら?」

 

「……流石にやめなさい」

 

 

 のほほんと言う母上に、父上は顔を青くして答える。飾る時はホルマリン漬けにするといいなんて思うおれも、少しおかしいけれど。

 

 

「ドフィのこれはもうそっちには行けないけど、でもまだ貴方自身は戻れるわ」

 

「来るのはもっと大往生してからにしなさい」

 

 

 戻る?おれの居場所はここ………

 

 

 

 いや、違う。おれにはまだまだやることがある。

 そうだ、おれは撃たれて意識を失って……ということはここは………だから痛みもないのか。

 

 

「おれ死んだのか?ロシーがいないってことは、あいつは生きてるのか…よかった」

 

「よくないわよ!」

 

 

 頰を抓られた。ぎゃあと驚けば、すぐ近くに泣きそうな母上の顔。

 

 

「ドフィはまだこっちに来ちゃダメよ!貴方を愛して待っている人がいっぱいいるのよ」

 

「そうだ。夢がまだ残ってるんだろう」

 

「……母上と父上は、おれの悪魔みたいな考えを否定しないのか?」

 

 

 その言葉に二人は複雑そうな顔をする。でもと言葉が続き「お前の考えは世間一般から見れば間違っているかもしれない、それでも強い優しさがそこにはある」と、言われた。

 

 おれは自分本意なやつかと思っていたけれど、少し報われた気がした。

 

 ズズと、体が沈む感覚がする。意識が遠のいて行く。

 

 

「ドフィ、いってらっしゃい」

 

「無茶するんじゃないぞ」

 

「…父上、母上………」

 

 

 

 

 

 _____愛してる。

 

 

 

 

 そう言って、おれの意識は遂に無くなった。

 最後に二人の泣き顔が見えた気がした。でも笑って、手を振るその姿に胸が痛くなった。

 

 おれは死んだら天国に行けるのか、地獄に行くのかは分からないけれど、温かい幻に涙が出た。

 

 

 そして自分は漸く泣いていると理解した時、あいつの声がした。

 

 

『こんなとこで死ぬ気か、クソガキ』

 

(ジョーカー、おれ泣いてる。泣けてる)

 

『いいから早く目を覚ませ。折角一緒に生きてやろうと思ったのに、早々殺す気か』

 

(…ごめん)

 

 

 意識がどんどん目覚めようとしている。しかし左目の感覚が無い。失明したのだろう、いやはや困った。

 苦笑いして見えないなと言えば、男はニヤリと笑う。

 

 

『おれがお前の目になってやろうか』

 

(……目?)

 

『見えねェのなら、おれがお前の目になって支えてやる。フフフ、いい案だろ?』

 

 

 いいかもなと呟けば、よしきたと言われた。本当にこいつが隣にいると飽きない。

 やっぱりおれの人生には奴が欠かせないな。

 

 

 

 もう少しで目覚めるだろう。やることはたくさんある。進むと決めた道は死ぬまで貫く。

 一旦死にかけたが戻ってこれたんだ。尚更だ。

 

 

『あと次情けねェ醜態晒したら殺す』

 

 

 

 

 ……やっぱり怒ってた。目覚めたくない。

 

 

 

 そう言いつつも、おれは不器用な奴の愛情に笑うのだった。

 

 

 

 

 

 -----

 激しい倦怠感と頭の鈍い痛みで意識が浮上した。

 激しく咳き込めば、目の前に見覚えのあるサングラスが……

 

 

「どわあっ」

 

『やっと起きやがったかクソガキ』

 

 

 ジョーカーだった。お前起きてたのか、というか何か夢見てたような……思い出せねェ。

 というか何で左見えねェんだ?

 

 探っていれば、布で覆われている。どういうこっちゃ。

 頭がまだ混乱してる、というか焼けるように頭が痛い。

 

 

「何だここ船か?うわ揺れる……気持ち悪……」

 

『テメェは重傷なんだから寝てろ。おつるの船だ』

 

「おつるさん……?……あっ、ロシー!!」

 

 

 Bダッシュで走ろうとして、何故か力が入らず布団から起き上がった体は、そのままゆっくり倒れた。

 

 地面とキスするなんて死んでも嫌なので手を前に出す。肩から派手な音を立てて落ちる。衝撃で揺れた脳が更に吐き気を訴えた。

 

 何とか立とうとして、ジャラリという音………海楼石かよ!!

 

 

「っ………い、って……」

 

『テメェ動いてんじゃねェ殺すぞ』

 

 

 死にかけの男に殺すとかなんつードSだよ……ん?死にかけ?………あ、おれ確か撃たれてX・ドレークに助けられたのか。

 拘束された手足をそのまま動かし、宛ら芋虫のように床を這っていたら思い切り扉が開いた。

 

 

「騒がしいよ、ドフラミンゴ」

 

「……アナタ誰デスカ」

 

「何すっとぼけてんだい、さっきまで人の名前言ってた奴が」

 

 

 クソ、バレてた。舌打ちをすれば睨め付けられる。どうやら前の部屋で見張ってたのがおつるさんらしい。

 ロシーはと言えば、脛を抓られた。頭じゃないだけマシだが、痛い。

 

 

「あんたの生命力はアレだね、ゴキブリ並みだね」

 

「うわ、すげェ酷いこと言われてる」

 

「怪我人に無理させるようで悪いが…少し付き合ってくれるかい」

 

 

 何だよ怖ェな…。

 というよりおれが海に沈んでからどれだけ経った。聞きたいことは多いんだが。

 

 

「あんたはバレルズの息子に助けられたんだよ。あっちも治療中だ。あんたに比べればよっぽど重傷だよ」

 

「おれ頭撃たれたのにか…?」

 

「何言ってんだい、そんなピンピンしてるクセに。…左目はしょうがないだろうが、弾は貫通してたんだ。スキャンして脳も調べたが、奇跡的に損傷してなかった。とんだ悪運持ちだね、あんたは…」

 

「マジか」

 

「唯あんまり暴れるんじゃないよ、傷は塞がり切ってないんだ」

 

「…分かった」

 

 

 …正直言って人生の運使い果たした気がする。こんなハードモードな世界で運使い果たすとか、どんだけ将来危ないんだよ。絶望的だな。

 

 というか自分はどうでもいい。ロシーの状態が心配だ。

 聞けば、案の定おつるさんの用事もそのことについてらしい。

 

 

「あの子に合う血液が残念なことに少ない。今緊急治療中だけど、予想以上に出血が多くてねぇ…ストックがないんだよ。もう少しで終わるってのにね…」

 

「……」

 

 

 何だそんなことかと思い近くにいた海兵の剣を、歩く為自由になっていた足で奪って、そのまま咥えた。

 

 一瞬のことに彼方も驚いているらしい。

 要は血だろ?おれの血液も治療中に調べたのか、そりゃあ優秀なこった。

 

 手首をかっ切ろうとしたら体が勝手に壁にぶつかった。結構思いっきりいった。イテェ。やった張本人を睨もうとすれば、おれ以上に青筋を浮かべて笑っており、ヘビに睨まれたカエルになった。

 

 

『殺す』

 

(え、何でそんな怖いワード言うんだよ)

 

『…やっぱ頭のネジいくつか飛んだんじゃねェのか』

 

 

 どうやら直ったと思っていたが、壊れた精神はそのままらしい。そうじゃなきゃ勝手に操られないか。いや、単に弱ってるだけかもしれない。

 

 ロシーのことになると向こう見ずになるの本当駄目だな。

 

 というか結構クサい言葉言って別れようしたのに撃たれたおれって何だよ、クソ恥ずかしいじゃねェか。

 

 

「……ドフラミンゴ」

 

「あァ?何だ」

 

 

 ありがとねと、小さい声で言われた。

 何だというんだ。あんなにいつも船の上じゃあ鬼面みてぇな面してたのに。……イテ。

 

 

 今度は容赦なく脛を蹴られた。痛みに蹲っていたら物凄く優しく頭を撫でられた。

 

 流石に負傷部位を乱暴にはしないか、というか考えを読まれてる気がする。

 流石おつるさん。

 

 

「ロシナンテを助けようとしたんだろ。あんたが撃った銃創部位だけどねぇ…浅いんだよ、異様に。それと麻酔の痕跡があった」

 

「フッフッフ!おれは裏切り者を殺そうとしてたんだぜ?何言っ…」

 

「これでもかい?」

 

 

 おつるさんの手に持っているのはおれの使用した銃。あ、絶対に調べ終わってるわ。

 

 唸っていれば、大丈夫かいと言われる。

 大丈夫だ、気にすんな。

 

 

 そのまま治療室前まで来て、正規の方法で血を抜かれた。

 流石に手首からはバカが過ぎたな。アグレッシブ過ぎる自傷かよ。

 

 にしてもおれがいることにギョッとする奴が多い。どうせ死んでるか、まだくたばってると思ってたんだろ。そう簡単に死んで堪るかバカ野郎。

 

 いやでも…確かに害虫並みのしぶとさだな。

 

 

 

 その後貧血状態なのか、フラフラしながら帰った。酔っ払ってもこうはならない。途中ロシナンテのように転けそうになって、おつるさんが支えてくれた。

 

 せめて海楼石が無ければ歩くぐらいわけなかったが、おれはドンキホーテ海賊団の船長だ。取ってもらえるわけがない。

 

 多分このまま牢獄行きだろう。まさかジョーカーと同じ道を歩む事になるとは…。

 

 まぁ自分の進む道は牢獄か、途中で死ぬかの二択だろうとタカを括っていたからそこまで落ち込まねェけど。

 

 

 でもまだ、目的を果たせていない。

 

 

 

「噛むのはおよし、行儀悪いよ」

 

「……あ、いけね」

 

 

 ストレスだろうか。爪をかなり噛んでいた。血が出ている。

 

 見兼ねたのかおつるさんが包帯を持って来た。ぐるぐる巻きにされながらその様子をじっと見つめる。

 

 

「あんたは…どうしてロシナンテを助けたんだい?あの子は海兵で、お前は海賊だ」

 

「どうして?んなもん簡単だろ、弟だからだ」

 

「…それだけかい?」

 

「…他に理由なんてないだろ。助けたくないなら、血だってやらねェよ。ただでさえおれも流し過ぎたんだ」

 

「……ハァ、真剣になったあたしが馬鹿だったよ」

 

 

 おつるさんにしろジョーカーにしろ、この場にはおれに厳しい奴しかいないのか。ジョーカーだって黙っているが目が怖い。怪我したことにそこまで怒るかよ。

 

 まぁでもおれがあいつの立場で、怪我したのがロシーだったら怪我させた奴にああいう顔すんだろうな……いや待て逆じゃねぇか。

 

 

(……もう怪我しねェから)

 

『………』

 

(……ドフィ)

 

 

 そう呼べばバッと顔を上げた。サングラス越しに見えた奴の左目は無い。え、怖…。

 

 

(左目どうしたんだ?)

 

『…覚えてねェのかよ。包帯取った時にでも鏡見てみろ。おれはもう疲れた、寝る』

 

 

 多分おれが意識のない間ずっと起きてたんだろう。

 海に落ちてから丸1日は経っているらしい。でも不思議ともうロシーは大丈夫だと、自分の勘が言っている。

 

 おれの現状が危ういだけだ…。マジでどうしよ。

 

 

 その時唐突になった電話。何だと思えばおつるさんが取った。

 センゴクさんという人らしい。

 

 へぇロシナンテの恩人…………ア゛ッ!?

 

 

 ガン見していれば、電伝虫がおれの方を向いた。目付きが異様に怖い。つーかセンゴクって海軍トップじゃねぇか!?

 

 ロシナンテ!お前エラい人に助けられたんだな!!

 

 

 一人で何故かテンションが上がっていれば、肩を叩かれる。

 電話に出ろとのことらしい。

 

 出たら出たで、開口一番海のクズ呼ばわり。あと今まで散々やらかしたことへの説教。

 SAN値はもうない。

 

 爪を噛もうとしたらおつるさんに一喝と共に止められたので、諦めて大人しくする。

 もう既に嫌だが、一応父上とロシーを救ってくれたことへお礼を言った。

 

 

 電話先は静まり返る。どうしたんだと思ったら堪えるような声が聞こえた。

 

 

 《……ロシナンテを……救ってくれて………ありがとう……》

 

 

 殺そうとした奴に言う言葉じゃない。第一おれのせいでロシーは人生を棒にしたんだ。

 

 とことん自分のネガティブさに呆れる。

 だから精神崩壊まで追い込んでたんだよ、我ながら情けない。

 

 ロシーはでも、もう苦しまないのだろう。おれは捕まるし、あいつは自分の正義を貫く生き方が出来る。

 

 

「センゴク…いや、センゴクさんか?おれが言うのもおかしいが、あいつを頼むな。ドジっ子だから」

 

 《……》

 

「あいつ文書盗むのもドジして失敗するような奴だし、でも誰よりも正義を持ってる」

 

 

 頬が緩んだ。仲間が待っているというのにロシーがこれ以上苦しまねェのならと、どこか自己完結している自分がいる。

 

 多分穏やかなのは腹に渦巻く破壊欲が薄まったせいだ。

 こんなんじゃいけないのにと思うのに、今はやけに怒りが湧かない。不思議だ。

 

 

 《……お前に一つ打診したいことがある》

 

「何だ?」

 

 

 

 

 

 _____七武海に加盟する気はないか。

 

 

 

 

 

 そう、言われた。

 

 

 

 思わず「は?」と声が漏れたが、真剣らしい。何故おれなのか。

 

 第一七武海自体海賊の凶悪化に伴い、海軍の戦力拡大を目的として設立されたもんだ。話を聞けば、どうやら少し前からおつるさんが、センゴクに推薦していたらしい。

 

 

 おれのファミリーはある程度モラルを守っちゃいるが…。

 それにしてもやはり何故おれなんだ。利用しやすいとでも思ってんのか、殺すぞ。

 

 しかしこれを受けなければ、確実に牢屋行きだ。その為に飲まされる条件は、相当あちらに優位なものだ。

 

 

 今交渉を持ち出すのは明らかにセコいだろ。

 こっちは満身創痍なんだぞ。ろくに思考が回りゃしねェ。

 

 もういい、そっちが狡猾な手口を使うならこっちも奥の手を使ってやる。

 マジで、疲れてんだよ畜生…。

 

 

 

(助けてジョーカーえもん)

 

『………』

 

 

 お、出て来た。ものすごい渋い顔だ。

 

 

(対処しきれない……ねむい)

 

『…ったく、退け』

 

 

 そのまま意識を預ければ、おれと代わって交渉をし始めた。

 

 …というか脅迫している。何だコイツ、カリスマ性+AAAかよ。ちゃっかりヴェルゴの身柄の譲渡も入れている。

 抜け目ないな。

 

 眠さにぼんやりと聞いていたが、最終的にこちらのいいように条件を取り付けていた。

 

 おつるさんが終始驚いた目をしていたし、センゴクさんには再度海のクズ認定された。

 ジョーカーお前………。

 

 そんなわけで解放される手はずになったが、国宝ってなんだよ、おれ知らねぇぞ。

 

 

(ほら代われ、これ以上は面倒みねぇぞ)

 

『………ねむい』

 

(お前なぁ…)

 

 

 めっちゃため息を吐かれた。瞳の奥が慈愛の目満載だったのでそれに甘える。帰るまで飛んで行ってもらおう。

 しかしおつるさんに呼び掛けられたので、一旦戻ってもらった。

 

 

「…いいのかい、ロシナンテが目覚めるまで居なくて」

 

「いいさ、もう決別の覚悟は出来てる。じゃあな、おつるさん。…あ、あとX・ドレークが起きたら言っといてくれ、ありがとうって言ってたって」

 

「…!戻ったのかい」

 

「………おれはおれだ」

 

 

 いつものスマイルを浮かべて、戻った。あいつは振り返らずそのまま飛んで行く。

 ジョーカーの存在を匂わせたのはまずかったか?

 

 …いや、おつるさんは全部気付いてそうだし構わないか。

 

 

 

 

 

 

 

 _____その夜。

 

 

 

 

 

 そういえばと思い出した。センゴクさんが言っていた言葉。

 

 自分に天夜叉という厨ニ感満載の二つ名が付いていたのだ。

 聞いた瞬間ガチでキレかけた。

 

 しかしこう見ると確かに、天を駆ける夜叉は言い得て妙か…。

 

 

『……天夜叉』

 

「寝てねェのかよ」

 

『寝るにはもったいない夜だろ』

 

 

 ジョーカーがこっちを振り向いた。月に輝く金髪から覗いた左目。

 

 

 ____紅い。

 

 

 そこで一気に夢での出来事を思い出した。

 三途の河の先に行っていた気がする。幻だろうが、夢の中の父上と母上は優しかった。

 

 そして最後に聞こえた声は___ジョーカーの声だ。

 

 本当におれの目になったのか、どういう原理だよ………。

 

 

『あったけェ』

 

「おれは寒ィ、コート失くしやがって……」

 

『しょうがねぇだろ、海の中に落ちちまったんだから』

 

「………」

 

 

 青筋が浮かんだのでこれ以上この話題には触れないようにしよう。

 多分これ一生の地雷になるぞ。

 

 いやでも本当……おれ支えられてなきゃ直ぐ死にそうだ。

 

 

 

 

 

『ありがとうな』

 

「ア?」

 

 

 

 風圧で聞こえなかったのか。二度は言わない。

 おいなんだと荒げる声を無視しながら、本当に寝ようと目を瞑った。

 

 

 

 

 

 背後に輝く月が、やけに美しく感じた。




主人公(おれ)
身内には甘い打倒天竜人。三途の川から帰還。内の破壊欲が薄れてるけど、目的は変わらない。七武海加入決定。色んなフラグが他所で乱立中なのを知らない。

ジョーカー(モフモフ)
主人公守り隊兼おとしゃん。守れなかった自分に憤ってる、故の青筋。カリスマ性+AAA。頼まれれば動くけど一線は今後も引く。

おつるさん
主人公見守り隊。元々センゴクに主人公の七武海加入を打診してた人。主人公の多重人格の疑いが強まる(違うけど)。

おかき(センゴクさん)
ロシナンテ…(号泣)今回の件で利用できると思ったらジョーカーに足元を掬われた。やっぱ海のクズ…。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。