創作において出る考えは少なからずその人本人のもので、その行為って結構恥ずかしいよねって言われて、顔真っ赤になった。恥ずかしいなんて思ってもみなかった。でも自覚した今、大分「うおわああぁ」ってなってる。
生まれ持っての性質悪。
男はそれに逆らうように生きてきた。破壊欲とそれに歪められた正義感の間に精神を侵されながら、己の望みを叶えようと進んで来たのである。
変えようとも変えられなかった。しかし時が経つに連れ、破壊欲は増すばかり。許容量を超えた精神は瓦解したのだ。
ここまでは既に本人も理解している。
しかし壊れたものとはそう簡単に直らないものだ。
小さな容器が壊れたならば、接着する事によりあっという間に直るだろう。
だが巨大なものが壊れたらどうだろうか。
それに壊れれば永遠に直らないものもある。
男の内は壊れたまま、少しずつ残った本体にヒビが浸透している。そこから抜け出し後ろに戻ろうとするならば、散らばった破片で傷が付く。
進むしかない。進んだまま、壊れ行く運命である。
その運命に抗う時間があるのならば、男は自分の道を突き進むだろう。例えその未来が、周りから見れば愚かであろうとも。
どこまでも現実的で、しかしどこまでもバカ野郎だ。
「何だよジョーカー…ジロジロ見て」
『…何でもねェよ』
男の側に立つ幽霊は、その先を既に推測している。いずれ男は願いの先で命を失うだろう。
男の身を粉にする様は、ある意味で自傷を正当化している。
阻止しようとしても、恐らくガキは拒絶するのだろう。ただ寄り添うしかあるまい。
そしてその運命にジョーカー自身も良いものだと感じ始めている。
それは己の最期が一人であった所為かは分からない。
しかし孤独に死ぬのならば、途中で欠けて死ぬよりも共に死にたいと思う。
それを言葉にする事はない。柄ではないし、お互いの距離感はそのようであるべきなのだ。
依存のような、歪んでいる関係。ジョーカーもそれは自覚している。しかし恐らくこの歪さを、ガキ本人は当たり前として捉えている。
男は他者から依存されやすい。それはカリスマ性と男の歪さを伴ってさらに歪める。一歩引いて見てみればなんと危ういことか。
だからこそ…だからこそ今この時、別のエンドを見つけなければならない。
共に死ぬのも良い、だがそれは果たして理想と掲げてよいものか。いや、明確に男が死を意識するようになったからこそ、二人ぼっちの死を良しとするわけにはいかない。
せめて幸福の中で死ぬべきだ。天竜人の転落も明確に道筋が見えてきた。
ガキならやってのけるという確信もある。慢心じゃない。甘い所も含めての合格点をやれるとジョーカーは判断した。
ならばもうここで止まるべきだ。これ以上進めば死ぬ。政府の失墜など…世界をぶち壊して直すなど、それこそ普通ならば一代で為せる事ではない。
天竜人が消えればそれは自然と進む。世界は無理をせずとも男の理想へと完璧ではないが、推移して行く。
しかしその推移を無理にでも進めようとする所がらしいといえばらしい。
だが愚行だ、己の幸福を鑑みず進み続けている。
他人の感情をもう少し慮れ。男が精神衰弱を起こす都度思う。
進もうとするのは海賊王たる器であるが故だ。為せるからこそ進もうとする。
言ってみればそれは崇高なものだが、過ぎればバカとも言える。
支える仲間もいるが、その前に精神が持たなければ本当に阿呆の一言なのだ、ジョーカーからしてみれば。
もっと利口になれと罵りたいが、しかしそれを言えない程には懐柔されている。
言えぬのならば、裏で動くしかあるまい。そう考え企んできたが、しかしそれも一筋縄では行きそうにない。
話し合いの様を見ているが、己の計画は上手くいかなそうだと感じた。
国との話し合いはスムーズに進んでいるが、国民というのは単純なもので力のある方に今後の国の指揮を望んでいる。
年若い王女と、力も権力も持つ男。
また面倒なのは政治を行う年寄り共が、王女の即位に異を唱え始めた事だろう。
その波紋は国王が死んだ不安を飲み込み、国民は疑問を抱き始める。
___余りにも若過ぎる。
___リク国王は素晴らしい方だったが、果たして娘君も同じ器を持つかどうか…。
___やはり【英雄】に国を指導して頂きたい。
人間の弱さ。それが顕著に現れた国は次期国王をドンキホーテ・ドフラミンゴにという者と、リク国王の娘であるヴィオラ王女にという意見に分かれた。
男の方がしかも優勢である。これには思ってもみなかったのか、男は去るにも去れなくなった停泊中の船内で項垂れた。
「違う…おれの考えじゃ………ヴィオラ王女が…………」
『フフフ、面白ェ事になってんじゃねェか』
「………」
一睨みし、酒を浴びるように飲む船長。度を越して控えていた樽飲みまでしている。荒れ過ぎだ。
ジョーカーからしてみれば好機であるが、男からしてみれば目的の障害になっているため相当イラただしいのだろう。
元々ジョーカーの企みは男をドレスローザの王にすることであり、その隣にヴィオラ王女を据える事だった。
嘗て己が愛した女。邪魔になれば殺す所存ではあるが、しかし思う所もあった。
ガキ以外に感情が希薄になっていはいたが、やはり愛とは恐ろしい、そう思った。精神が昔よりも、男に影響され甘くなったならば尚更だ。
故に変に情に絆される事を恐れ、男の代わりに出る事を予め拒んでおいたのだ。
しかし様子見していたジョーカーは、二つ見誤っていた。
一つ、男自身が恋愛感情を抱いていない事。
抱いていないというより、恋愛感情を持たない欠陥人間だった。
その感情は成長過程で育たなかった感情の一つだ。
今まで女の気配が無い事に疑問を抱いていたが、理解した瞬間ゾッとした。計画の前提から意味をなさなくなったのだ。
二つ目はヴィオラ王女。
前回のように仲間にせず良好な関係をと思っていたが、何といつの間にか憎しみの目を向けられているではないか。
この世界線におけるヴィオラ王女はギロギロの実を食べていなかったが、会議などを通してかなり観察眼に優れた女だと知れた。
故にガキと話す内にその身に宿る圧倒的な性質悪を感じてしまったのだろう。男のもう片方の穏やかな感情は基本身内にしか向けられないのだ。
それと国民が男を支持し始めたのも悪かった。
父や姉を失った女からしてみれば、その様は国を奪われるという思考回路に陥っても致し方ない。
また男本人には自覚が無いが、言葉足りない発言が誤解を生んだのは確実だ。
最初の話し合いの後、男の性質悪を悟ったヴィオラが尋ねた言葉。
「貴方はまさか…奴らと組んでいたの?」
普通ならば国を襲った敵と思うだろうに、変な所でヌケを発揮させる男は組むの相手を、海軍だと捉えた。
ジョーカーが指摘した所で既に男が肯定の発言をした後。
誤解の渦はもう留まることを知らない。
そして敵の壊滅後から二週間後、隙を突き男の寝所を刃物を持って女が襲った事により、完璧にジョーカーの企みは失敗したのである。
やはり運命とは変わらないものなのだ。いや、より悪い方向に向かっている。
キュロスの件に関しても、男の甘さを考えれば最善はあれしかなかったろう。
殺すは殺すでいずれシュガーの能力が解ける可能性を考えれば、恐ろしいものがある。男の精神ダメージに即で直結しうる。
そして一番の憂慮ごとはあの夢に関する能力者の存在。
黒幕にしては呆気なく殺された敵、あの勢力を統率していたにしては違和感しか抱かない。
己の勘は告げている、奴はまだ生きていると。
死んでいるはずなのに男以上に考えている幽霊は、唸りながら月を睨めつけるのだった。
『クソ面倒臭ェ…』
しかしガキのためならばと思う自分に、とんだ親バカだと呆れたくなった。
-----
ドレスローザから離れるに離れられなくなった今、ファミリーはバカンス気分なのかのんびりしている。
一部はアジトに戻り仕事をしているが、仕事の方も今は大きいものをしていない。
自分も計画を進めにくいこの状況に苛立っていた。
現状から脱却すべく、国民にいかに王女が王たる器に相応しいかを訴える文を考えていたほどだ。その紙は即破ったが、相当精神的に来ていると感じた。
今も二日酔いがえげつない。
女王は若いが、国を指導する能力はまだ未熟ではあるが持っている。
しかし最近殺意を向けられていた。理由は分かっているので省く。面倒なのはおれの発言を無視し始めた事だ。
そのため弁明も聞いてもらえていない。更に酒が進む原因だった。
その夜も寝ていた。後から聞いたがファミリーに護衛も付けずに来た王女の覚悟は素晴らしいと思うが、度胸を発揮する場所が違う。
誤解も解けぬままだった状態をもっと早くに改善しておくべきだったろう。酒に溺れて寝ていた状態で襲われても仕方ない。
咄嗟に止められたのはやはり長年の経験からかと思いながら、その手をひねり上げるようにした。
「……よくも、よくもお父上を…!!」
「だから…話をき「黙りなさい!!!」……」
ずっとこの調子だ。家族を愛していたからこそ、ここまで彼女は強いのだろう。
だが少し向こう見ずだぞ。
何でおれはこうも人と意思疎通が出来ないんだよ。分かる奴には言葉にせずとも伝わるのに。
波長が合う合わないは割と重要な事なのだろう。合う人間には言葉少なく済むからいいものの、合わない人間には伝える苦労が増す。
だから頼む話を聞いてくれ。ヒステリックに包丁を刺すな。ベットがボロボロになるだろ。
ジョーカー助けろよ…いやヴィオラ王女とは関わりたくないって言ってたか。クソどうすりゃいいだ。
『一先ず糸で拘束しろ』
(過激なプレイは好かねェぞおれ)
『さっさとしろ…いや待て…』
(ア?…ちょ、刺さる刺さる)
あ、伸ばしてた前髪が切れた。流石に淑女に乱暴な扱いするなんて嫌なんだよ。一応国王に頼むと言われたんだし、傷つけるわけにはいかない。
格闘する中ジョーカーはニヤリと笑った。さも好機到来と言わんばかりの笑み。
ムカつく。テメェのその面ぶん殴ってやりたいぐらいには今の状況辛い。
『フフフ!何で気付かなかっただろうなァ…おれとした事が……』
(早く言えジョーカー!!)
『ファミリーがそう簡単に通すはずないもんなァ普通……詰まりそういう事だろ』
(何!?意味が……)
あ、首に刺さる!!ちょっと待っ、ちょっ待っ………
『密会だと思われてんだろ』
_____え?
-----
ファミリーの奴らは聡い奴が多い。おれの感情の機微に気付いて行動してくれるのは非常にありがたいと思っている。
ただ…ただ言わせて欲しいのは、聡過ぎて偶に思考が行き過ぎてしまう事だ。
ヴィオラ王女が船に来た時に入るのを許可した奴や、途中でその姿を船内で見掛けても止めなかった奴が誰でも咎めはしないが、そいつの思考回路としてはこうだろう。
一人で訪問+夜+船長室=密会
咎めはしねェ、咎めはしねェけど…いつおれが関係を持ったと言った。思考が二重跳び抜かして五十跳び過ぎんだろ。
「ハァ……」
ため息が溢れる。流石に相手より自分の身の方が大切なので糸で拘束してしまったが、王女の目が怖い。
そも国の乗っ取りなどしないし、王女の両親を殺してもいない。
自分が救助に遅れたことを言及するならおれが殺したと言っても過言じゃないが、悪意を持って国を救ったわけじゃない。
結局は家族への歪んだ愛が影響して動いたに過ぎないけれど、それ以上にこの国を救えてよかったと思ったのだ。
まぁ面倒な国のいざこざに巻き込まれて動けなくなっているが。
案外これをセンゴクは狙ったんじゃないかと思うと、青筋が浮かぶ。
ロシーは国が救われた事に喜んでいたらしいので、それで全部良いと思っちまうが…。
取り敢えず今はベットの上で向き合うような形で座っている。所々刃物の先が擦れた肌は切れ、バスローブが斑点のように血の色に染まっている。
「お父さま……お姉さま…………」
「………」
話し合いで何度も見た姿は凛々しい雰囲気を持っていたが、今はどうだろう。
涙を必死に堪える様は迷子になっている幼子のようだ。そりゃあそうだ、ヴィオラ王女の母は既に他界していると聞いているし、王も姉も亡くなってしまった。
王の親衛隊の多くも戦いの中殉死した。亡くなった王に対し、国民は哀悼を見せていた。
一部は国民を守れなかった王だろうと罵る輩もいたが、本当にそれはごく一部で、ほぼ全員が眠る二つの十字架の前で安らかにと祈った。
王は強く気高いお方だったのだろう。ほんの少し会っただけだが、灯火の消えかけた瞳でも強い意志を感じた。
瞳はその人間の本質を表すという。おれが見た王の瞳は強く透き通るような色だった。
しかし状況が悪かった。海軍の情報漏洩、敵との相性、ファミリーの到着の遅延……上げればキリがない。だが亡くなってしまった魂は戻って来ない。悔やむ時間があるのなら、二度と起こさないと唇を噛んで前を向かなければ始まらない。
自分の魂に刻み付けて、痛みを決意に変えなければならない。
前を向け、前を。後ろを向いたら屍しかない。
それと唯一血の繋がる姉の娘___レベッカも行方を眩ませてしまったと聞いた。
探させてはいるが、未だ見つかっていない。
故に今彼女は一人だ。悲しみに暮れる事さえ許されず、国と向き合う事を強制されている。
強い女性だが、おれの所為で国民から彼女を否定する言葉が浜辺に打ち上げる波のように留まる事を知らない。
支えてくれる人間も居ない。
重過ぎる重圧にそれでも戦おうとしている王女。
邪魔なおれはとっとと去るべきだろうが、ここで消えれば更に他国との状勢問題や戦果の爪痕を残す国の対処が彼女に待ち構える。
流石に今の状態では無理だ。それにドレスローザの転覆を目論む第二、第三の勢力が出て来ている。
明らかにそれもおかしいのだ。薄っすらとあの豚ども……天竜人の仕業ではないかと思ってはいるが、一応調べさせてはいる。
おれも引くに引けない。途中で
その魔の手とおれがドレスローザに関わった時期が運悪く重なってしまった。
元々周辺諸国がお手手繋いで攻めて来るだけで済んだのに、余計なものが国を狙って来ている。
勿論全員殺す。にしてもおれを狙うなら国を狙う必要無ェだろ。テメェらの脳味噌はお飾りか。
思考が逸れて殺気がつい漏れちまったためか、ヴィオラ王女が怯えた。
それでも目はきちんとおれを見ている。恐怖と怒りが混じった目に、罪悪感を覚えつつ精神を落ち着かせようと息を吐いた。
当初の予定では、王女に国の統治を任せて仲良く二重統治…だったが無理だろう。
彼女の精神状態が酷く不安定であるし、おれの話を全く聞かない上に信じて頂けない。
おれが国王になれば話は早いだろうが、王に彼女を頼むと言われたんだからそういうわけにもいかない。
どうすりゃいいんだ…。
『お前勘違いしてないか』
(…何だよ。今真剣に悩んでんだよ)
『国王はお前が王になった上で娘を任せるって言ったんだぞ。つまり
「……はぁ!?」
しまった、うっかり声に出ちまった。余計怯えられたよ…ジョーカーこの野郎。
(……冗談はあんたのセンスだけにしてくれ)
『ぶっ殺すぞ。……お前も薄々分かってんだろ』
(………)
…ああそうだよ、王に言われた時はそこまで深く考えられる精神状態じゃなかったから流しちまったが、後から考えればそういう意味かと思いはしたよ。
でもまさかこんな欠陥人間に娘託すわけ無いだろ。恋愛感情なんて分かんねェよ。何だよ恋って。
それに王女が一番可哀想だ。好きでもない相手とくっつけられて…そういう風潮王政にはあるよな、政略結婚だったり。
それにおれは女作る気なんてないぞ。豚どもの駆逐と世界再建で人生費やす予定だし。
…いや待て?…………そうかこいつ、おれとヴィオラ王女を…!
(…あんたの思い通りにはいかねェよ)
『……!……フフフ、大人しくここで押し倒しとけ』
(やだね)
出たよ、ジャイアニズム。絶対その部分だけは見習わないからな。おれはセニョールピンクのように紳士に振る舞うぞ。絶対に昼ドラに出そうな暴力夫にはならない。
おれは自由に生きるし、絶対今のこの殺伐加減では甘い雰囲気になれる訳がない、なる気も勿論ないが。
(おれは…このままでいいんだよ)
『……』
奴は何も喋らず笑って消えた。見られているかもしれないがまぁいい。今回はお互いどっちも引けない。
中庸を後々見つけるしかあるまい。ジョーカーと喧騒し合う機会はまた別で取る。
今はヴィオラ王女だ。
「…王女、貴女は今何がしたい」
「あんたを、殺してやりたい…」
「国の事を考えられない程か、それでいいのか」
「…っ、分かってるわ…分かってるわよ……でも、でも………」
憎しみと王女としての責任、そして悲しみ。
様々な感情が入り混じっている。こんな状態では国の指揮など到底無理だ。
おれとしても不安定な彼女を放って置けないし、国を任せられはしない。ここまで関わってしまったのだ、もう腹を決めるしかあるまい。
「…おれを殺したいか」
「ころし……たい゛っ……」
己が家族へ歪んだ愛情を向けられないからこそ、その憎しみは誰よりも分かる。
壊れてしまう…だろうな。ぶつける先がない殺意はいずれ自分自身を壊す。
経験者は語る。おれを反面教師にして生きていけとも思うが、難しいだろう。
だが今は、の話だ。
彼女はいつか自分で立ち上がれるだろう。それまでに傷を癒す必要がある。
必要なのは感情をぶつける場所か。それと面倒な敵から遠く離れず守れる場所。
……あぁ、もう腹を決めろ。
「…だったら仲間になれ」
「…ふざけないで」
「いつでも殺しに来い。それともお前の憎しみはそれまでか?」
「っ、貴方の所為じゃない!!」
そうだ、感情をぶつけろ。自分を取り戻せるまでにどれ程時間がかかるか分からないが、国を治めている間は相手をしてやる。
所詮仮の王だ。同じ場所にいてくれれば彼女の安全も十分確保出来る。
リク王との約束を守るには…ジョーカーの思惑を除いてこれぐらいの方法しか思い付かない。
その間周辺国家の平和協定、バカな組織の殲滅。
徹底的にやってやる。ここまで来たんだ、後戻りは出来ない。
「…さい、底………」
「フフフ…聞き慣れてる」
差し出した手を、しかし彼女は震える手で取った。
あちらはおれが敵と組んで、国を乗っ取ったとでも思ってるんだろう。そのために彼女の家族を殺したと。
今は何と思っているか知る由はないが、概ねそれ以外の選択肢は無いと、思っているんだろうな。
確かに選択肢が無いと意図的に思わせているし、悪いが今の最善は仲間、つまり目の届く範囲に置いておくことしか思い付かない。
感情よりも合理性を考えねばならない状況だ。感情という小よりも国民という大を取らねばならない。
おれは完璧な超人じゃない。所詮人間、何でも出来るわけじゃない。
それでも進むのだ。理想のために、地獄に足突っ込んで生きてるんだよ。
それがおれの人生だ。
-----
『お前も合理性を少しは学んだんだな』
「……やっぱ起きてたのかよ」
部下に王女を送り届けさせた後、部屋でようやく一息吐いた。
明日はファミリーへの報告と…あぁ勿論密会の誤解を上手く訂正して、その後会議で仮の王として指揮する旨を話す。王女が精神的に成熟するまでの期限付きだ。
王女の殺す云々の感情はファミリーから反感買うかもな…いや、流石に彼女もそうなれば動けないか。
案外正解だったな、仲間にしたのは。…相変わらず話は聞かれなさそうだが。
今のおれからすれば、彼女は大人より子供に見える。精神が不安定過ぎてこちらが心配になるというものだ。
「違ェよ、ジョーカー」
『あ?』
リアリストを気取っちゃいるが、おれも簡単になりきれるわけじゃねェよ。
でももう、分かったんだ。
「どうせおれの感情を理解してくれない奴は、とことん理解してくれないだろ。ロシー……みたいに」
『……お前』
「だから、いいんだ。これ以上彼女と話し合っても無駄だし、おれの精神衛生上良くない」
『………』
奴は暫く沈黙した後、味をしめているのか人の腕を動かして頭を撫でた。
割と乱暴なそれに心が酷く落ち着く。
そしてポツリと、『おれはお前の事を一番に考えている』と言われた。
んなもん分かってるよ、ジジイめ。
冷たい雨が降る中で他人を守るために傘を差すおれはびしょ濡れだけれど、それを防ぐように奴がピンクのド派手なコートで水滴を遮るんだ。絵面的におれは子供だな。
無くなったら、それが無くなったらいよいよ壊れて死にそうだ。おれの依る場所。
縋るもの、縋るもの。人にはそれが必要なんだ。縋って生きて漸く歩める、嫉妬でも憎しみでも何でもだ。
おれの父上は、父上だから違う。ジョーカーじゃない。
例えれば多分爺さんだ。言えば殺されそうなので言わないが。
人間は歪んでいる。それを含めて『生』を求めるんだ。
だから…おれは歪みを肯定して生きるよ。
人間は弱い。弱くて、脆い。
それを抱えて上手く生きる方法が、おれには分からない。歪んだまま……進んでるな。
「大変だぁ」
『ア?』
「フフフ、大変なんだよ」
それでも壊れながら進んで生きようじゃないか。
だっておれも歪んでるんだから。
主人公
身内に甘い打倒天竜人。恋愛感情死亡。時折抜けてる。精神弱めで頑張る。仮初めの国王(響きいいな)。
ジョーカー(モフモフ)
主人公守り隊兼おとしゃん。「オラくっつけ作戦」失敗。苦労人。
ヴィオラ
主人公に殺意120%。