世界はあなたを愛してる   作:アビ田

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原作ではローは大分辛辣な言葉を言ってたけど、ベビー5とか子ローと接してた時の顔とか見てると家族への優しさがあったはず…。主人公見る目はおとしゃん…ビックダディ…
そんな感じのものすごく少ない若クラが書く小説…始まるよ(煩い)!


サングラス越しの慈愛

母上が死んでから、父上は更にいるだけの置物になっている。

 

そんな状態でも他の天竜人に助けを求めているが、この間とうとう愛想をつかされてしまった。

 

 

父上の様子を見ていたぼくに囁くように“おれ”は憎いかと聞いてきた。憎いといえば憎い。

 

だって父上の行動さえなければぼくたちは今でも幸せにマリージョアで暮らせていたんだろうから。

 

家族が居れば場所はどこでもよかったんだよ、父上。

 

 

少しの疑問と他者が被る不遇を飲み込んで黙っていれば、こんなことにはならなかった。

 

でもぼくは責めないよ。だって父上はぼくの家族であり父だ。

父上の行動は天という地位にしがみつく肥えた豚どもよりよっぽど崇高なものだ。

 

 

優しい、愚かな父上。ぼくは貴方を敬愛しているよ。

 

 

 

次に母上。ぼくの母上。ぼくとロシーの母上。そこらの雑草とは比べるのもおこがましい。

母上は空に咲いているままが一番良かったんだろう。

 

 

弱くて脆かった人。ぼくとロシーを何よりも愛してくれた人。どうか天国で安らかにあれ。

 

 

 

そしてロシー。ぼくの弟、ぼくのロシー。母上と同じ弱くて泣き虫で、すぐに怪我をしてくるドジっ子。

 

お前はぼくの天使だ。お前がいるからぼくは強くあれる。お前を守るためにぼくは強さを求められる。

 

何に代えても、何を犠牲にしようともぼくがお前を守ろう。

 

 

お前を汚す輩がいるなら、例えそれが神であろうが兄のぼくが全員殺してやろう。

 

 

 

灼熱の中でぼくはそう思った。

 

 

磔にされ、火炙りになり、無数の矢がぼくらを襲う。人間ダーツかとツッコむ暇はない。

 

 

ロシーは大泣きし、父上は図体が大きい分何度も矢に当たりながら、自分を犠牲にして必死にぼくたちを守ろうとしている。

 

 

ぼくは汚らわしい人間だ。でも父上や母上、ロシーは違う。

 

お前ら人間どもとは違う存在だ。純潔でそれこそまさに神といっていい。

そんな彼らを汚すお前らを、()()は許さない。

 

 

母上を死に追いやったテメェら愚民を、一族郎党全員皆殺しにしてやる。

死よりも辛い罰を与えてやる。

 

 

父上を鼻で笑った天竜人の豚どもを全員殺してやる。

 

お前らがおれたちをこの地に追いやったのももう察してるんだ。テメェらの肉を畜生の餌にしてやる。

 

 

有り体に言えば、ぼくら家族は甘過ぎた。その顛末がこの現状なのだろう。

 

それでも彼らの理想が叶えられない現実の窮屈さに嫌気がした。この世の全てに絶望した。

 

 

「あにうえ…あにうえぇ…」

 

 

ロシー、ロシー…ロシーロシーロシー……泣くな。頼む、泣くな…。

 

 

 

「ゆる…さない、ゆるさない…ゆるせねェ許せねェ許せねェ許せねェ…!!」

 

 

涙が溢れた。この世に生まれてからずっと出なかった涙が初めて溢れた。

赤ん坊の頃は別としても、平素で泣いたことなど無かった。

 

 

熱い、身を焦がすようなどす黒い感情が腹に溜まっている。

 

()()()()に手を出したらどうなるか、その身を以て教えてやる。愚民共め、汚らしい人間め。

 

 

 

 

 

「お前らを一人残らず、殺しに行くからなァ!!!」

 

 

 

大声で叫び、ここでぼくの意識は闇に落ちた。

 

 

 

 

 

*****

【sideロシー】

 

ぼくの兄上は、小さい頃からよく遊んでくれた。

 

ぼくは外で遊ぶとケガばかりするから、いつも人形で遊んだり、絵本を読んでいた。

 

 

兄上は体を動かすのが得意だったし、本もぼくなんかよりずっと難しいものを読んでいた。

 

でもいつだってぼくが兄上に「遊んで」と言えば、兄上はアイスが溶けるような顔で笑って、ぼくの手を握った。

 

兄上は強くて物知りでカッコよくて、ぼくの憧れだ。

 

 

 

でも時折、そんな兄上が怖かった。

 

弱虫なぼくが他の子供たちにからかわれた時に、颯爽と登場した兄上。

ヒーローみたいに現れた兄上にぼくはドキドキして、カッコいいと思った。

 

でもその時、一瞬寒気がした。

 

 

兄上は笑っていた。でもいつもの自然な笑みじゃなくて、張り付けたみたいに笑っていた。

 

目は見えなかったけど、きっと見えていたら泣いてしまったかもしれない。それぐらいその時の兄上は怖かった。

 

それでもぼくは兄上が大好きだった。

 

 

ぼくの自慢の兄上で、いつかぼくも兄上みたいになりたかった。

 

 

 

引っ越していくらか経った頃、母上が死んでしまった。

 

ぼくがわんわん泣いていれば、兄上も辛いはずなのに泣かないでずっとぼくを慰めてくれた。

兄上の手付きは母上のそれと似ていて、ぼくはすごく安心した。

 

だからその日兄上がぼくを守ろうとした時に見せた怖いものも、きっと気のせいだったのだろうと思った。

 

 

 

 

そして父上や兄上、ぼくは捕まった。

 

 

痛かった。怖かった。もう死にたかった。

 

ぼくは無意識に兄上と言い続けた。兄上は大丈夫?兄上、兄上…。

 

その時辺りをつんざくようにして発された怒号に体が強張った。

ああ、この感じは…怖い兄上だ。

 

 

 

「お前らを一人残らず、殺しに行くからなァ!!!」

 

 

兄上がそういうのと同時に、ぼくの体から力が抜けた。

衝撃で少し外れた目隠しを首を振って取った。

 

ぼくたちは物凄く高い所に磔られていて、ぼくはまた泣きそうになった。

 

でも何とか堪えて兄上を見れば、体がブランとしていた。父上も同じようになっていたし、辺りを見渡せば全員が地面に倒れていた。

 

 

沸き起こる得体の知れない恐怖にとうとう泣きそうになれば、兄上の指がぴくりと動いた。

次いでぼくの体は落下して、来る衝撃に目を瞑った…けど来なかった。

 

 

「……?」

 

 

恐る恐る目を開ければ、兄上がぼくをキャッチしていた。

 

兄上はそのままぼくを落とすと、手に絡まっていたロープを払い落とした。

 

呆然と立っていたぼくを見かねたのか、手を伸ばして同じようにぼくのロープも取ってくれる。その手付きは少し乱雑だった。

 

 

怖い。

 

 

大声で殺すと叫んだ兄上が怖い。

 

父上や兄上がぐったりと動かなかった光景が目から離れなくて怖い。

 

沢山の人がぼくたちに死ね!!殺してやる!と言っていたのが怖い。

 

 

怖い、こわいよ、こわい。

 

 

 

「フフフ、大丈夫だ。ロシー、ロシナンテ。おれが付いてる」

 

「やだっ…!来ないでっ…!!」

 

「ロシー」

 

 

兄上が一歩一歩近づいてくる。

 

どうして笑っているの?兄上は怖くないの?ぼくは怖いよ、怖い。

もう怖いのはいやだ…母上に…会いたいよ。

 

 

「ロシー!!」

 

 

大声で兄上は叫んで、また指を動かそうとした。

 

何をしようとしているのか分からなかったけど、先程ぼくを助けた指の動きとは違って、今度の動きは強い恐怖を覚えた。

 

 

もしかしたら兄上は悪魔に魂を売ってしまったのかもしれない。

兄上でなくなったのかもしれない。

 

 

だって…だって兄上は…、いつもぼくに優しい笑顔を見せていて、たまに他人に張り付いた笑顔をすることもあったけど、兄上の笑顔は優しかった。

 

 

でも今の兄上の笑顔は、笑っているのに、笑っていなかった。

 

 

 

ぼくは怖くなって、兄上から逃げ出した。

 

 

 

 

 

-----

意識を失った後、ぼくは水の上に浮かんでいるような、そんな浮遊感の中ずっと漂っていた。

 

 

そう言えば意識を失う前も不思議な感覚だった。自分と他の誰かの意識が混じっているような感覚。

 

まぁ今は現状把握が一番大切だと思い周囲を探った。

 

 

下に見えるのは大勢の人間が倒れている光景と、音を立てるように燃え盛る炎。

 

これは俗に言う幽体離脱だろうか、そう思って自分の体を探せば、何と勝手に動いているではないか。

 

 

『え』

 

 

ぼくの体は勝手に動いている挙句、ロシーと会話している。

というかめちゃくちゃぼくの天使が怯えている。

 

空気は不穏で、そいつはロシーをまるで殺そうとしているように殺気を放っている。ロシーは恐怖で気づいていないみたいだけど、かなりやばい。

 

 

『やめろ!!ロシーに手を出すな!!』

 

 

大声で叫んで、ぼくは自分の体と逃げていくロシーの間に割り込むように立った。

 

ロシーにはきっとぼくが見えていないけど、元々体の主であるぼくなら勝手に体を動かしているやつに見えるはずだ、あくまで予想でしかないけど。

 

見えなかった時は、もう気力で体を奪い返すしかない。

 

 

「フッフッフ、殺し損ねちまったなァ」

 

『…!』

 

 

正面から見たそいつの笑顔は、見たことがあった。それも常日頃見ているスマイル。

 

 

 

 

それは…“おれ”だった。

 

 

『どうして…何で…。ロシーは、お前の弟でもあるんだろ…!』

 

「お前の弟だ。おれの弟じゃない。それにおれの弟もとっくの昔におれが殺した。勿論、父であるあの野郎もな」

 

『……え』

 

 

手の震えが止まらない。

 

“おれ”は、何を言っているんだ…?自分で殺した?家族を?何故……?

 

 

 

いや、これはきっと分かり合えない部分だ。家族しか求められないぼくと彼は、最初から違ったんだ。

 

それを分かっていたからこそ、“おれ”はぼくに自分の道を歩めと言ったんだ。

 

 

でも…でもそれなら尚更おかしいじゃないか!何で!どうしてぼくに関わるんだ!!!

 

 

『どうしてぼくの人生に関わるんだ!!関わらないって、約束…したのに……ロシー……酷いよ…』

 

「……お前の人生は父のせいで惨めなものになった。そのせいで母上も死んだ。お前の弟は、お前を裏切り続ける」

 

『煩い!!お前の父上や弟じゃないからって、そんなこと言うな!例えそれが事実だったとしても、ぼくはどんな形であれ家族を愛してるんだ!!なのになんで壊そうとするんだ!!!』

 

 

 

ぼくと“おれ”の隙間を縫うように、風が吹いた。そのうねりに乗り炎の勢いは大きく増した。

辺りには倒れている人間を除いてぼくたち以外に誰もない。

 

 

その時燃え盛る炎に搔き消えてしまいそうな小さな声が聞こえた。

 

 

「…お前がいつか言ったな。お前がおれで、おれがお前だと」

 

『…それがなんだよ』

 

「この世でおれには、お前しかいない」

 

 

「あ」と小さく声が漏れた。その声は紛れもなくぼくの声で、いつのまにか体が戻っていた。

ぼくは目の前にいた彼を見上げた。

 

 

『お前には家族もいる。その内友人も敵も、仲間もできる。そうすりゃおれはお前にとっちゃ小さいものになって、消えてくだろうよ』

 

「そんなことない!!ぼくの一番は…」

 

『言い切れるのか?えぇ、おい?絶対に自分が一番だと、おれが一番だと言い続けられんのか?』

 

 

 

彼は…、“おれ”はきっと寂しい人間だ。だってずっと牢屋にいたんだ。

それにきっとその前も、寂しい人生だったのだろう。分からないけど、何となくそう思った。

 

強い執着心と、捻れた愛情。

 

やっぱり違うけど、でも彼はぼくで、ぼくは彼なんだ。そう思った。

 

 

だったら彼が信じられる言葉を言おう。ぼくの覚悟を、誠意を見せなくちゃいけない。

 

それが同じ傘の中にいるもの同士の礼儀というやつだ。

 

 

目を瞑って開く。

それを何度か繰り返して、彼のサングラスの奥にある瞳を見つめた。

 

 

 

「ぼくがお前を一人にした時は、ぼくを殺して、ぼくの大切なものを全て壊し尽くしていい。この言葉さえも信じられないのなら、今ここでぼくを殺せ」

 

『……』

 

 

ぼんやりとした意識の中で見た、ぼくの体を使って彼が糸を出し、ロシーとぼくの体の縄を切った光景。

あれは恐らく、悪魔の実の能力だ。

 

本の中で読んだだけのそれに彼は笑い、自分の持っていた能力について話したことがある。

何故ぼくの体で使えたのかは分からない。

 

でも彼は簡単にぼくを殺すことが出来る。

主導権を握っているのは“おれ”だ。

 

もし彼の害になるなら、その時はぼくを殺して構わない。

 

 

ぼくの誠意、それはぼくの命。

 

 

『フ……フフ、フッフッフ!!お前馬鹿か』

 

 

ぼくの真剣な目を嘲るようにして、その巨躯をぼくに近付けた。猫背でも見上げなければ彼の顔は見えない。

 

 

「な、何で笑うんだ!ぼくは真剣に誠意を…」

 

『おれがお前を殺せば、おれも死ぬだろ。お互い精神が繋がってる感覚があるのは分かってんだろ』

 

「…あ、………いや、じゃあ体を乗っ取れば…」

 

『今回は状況が危ねェ上にお前が気絶したから入っただけだ』

 

「へぇ……ん?お前ぼくの体に普通に入れるのか?」

 

『フフフ、みてぇだな』

 

 

 

毒気を抜かれた会話を多少交わして、ぼくは尻餅をついた。

 

どうやら精神に少し余裕ができたものの、体は限界らしい。

油断したらまた意識を飛ばしそうだ。

 

 

『おいおい寝るなよ。殺されても知らねぇぞ』

 

「……うごけない。ねむい」

 

『ったく、面倒臭ェガキだな……ほら、退け』

 

 

ぼくは目を閉じて、自分の意識を彼に預けた。すると浮遊感が次いで来る。

 

下を見ればぼくの体が呆れたような顔をしていた。

 

 

…何だかむず痒い。

 

 

まだ天竜人だった時に、書庫に入り浸っていたぼくはよくそのまま寝てしまった。

どこにもいないぼくを心配して時には父上がおぶって、時には母上が抱いてくれた。

 

 

今のこの感覚は、それに酷く似ている。親の腕の中にいるような、そんな温かさ。

 

 

『…いいの?』

 

「ア?何がだ?」

 

『…ぼくを、殺さなくて』

 

 

伝えたいことはぼくを信用してくれるのかということだったのに、眠いせいで同じ言葉を言ってしまった。

 

一瞬“おれ”は眉間に皺を寄せたけど、それでも本来言いたかったことは伝わったのか、短く「あぁ」と言った。

 

 

「逆に甘ちゃんなお前にどうこう思ってた自分が馬鹿馬鹿しくなった」

 

『ひどい』

 

「それに」

 

『…?』

 

「ガキのお守りぐらい、手前でしねェとダメだろ」

 

『…??』

 

 

ぼくがさらに疑問符を浮かべていれば、彼がため息をついてぼくの顔を見た。

 

ここでいう手前とは自分=“おれ”のことらしい。

 

詰まりぼくの面倒は彼が見ると………分かりづらいにも程がある。

それにぼくは転生してるんだし心はガキじゃない…年齢が体にいくらが引きずられてるとはいえ………多分。

 

 

『ねぇ、“おれ“』

 

「……“ジョーカー”でいい。前から思ってたが話す時に混ざって面倒だ」

 

『……厨二?』

 

 

めっちゃ睨まれた。

多分人生で一二を争うレベルの睨まれ。だ、だって厨二っぽいじゃん、“ジョーカー”って。

 

でも怖いのでそう呼ぶことにする、ジョーカージョーカー、…OK分かった(白目)。

 

 

『ジョーカー、ぼくちょっと寝るけど…父上の縄も取って…あげて』

 

「……」

 

『おねがい』

 

「……今回だけだ」

 

 

今のぼくじゃ父上を疲労のせいで助ける気力も残ってない。

 

でもジョーカーの能力なら簡単に助けられるはずだ、ぼくの体にある疲労云々を抜いても。

 

例えぼくがもし彼の能力を拝借できたとしても、上手く能力を駆使できるかも分からない。

 

 

それに彼は父上が嫌いだ。…いや、多分ずっと殺そうとしていたのだろう。

 

ぼくが父上の話をする時、父上自身が近くにいた時、ジョーカーの目には憎しみと殺意、そしてほんの少し、悲哀の色があったように思う。

 

その真意までは分からない。

 

でも総合して殺意が優っていたのは確かだ。

 

今考えるとぼくを思ってのことだったのかな。あくまで予想の範疇を出ないけど。

…自分で考えておいて恥ずかしいな。

 

 

火の上がっている位置に父上はいる。未だ気絶して磔にされたままだけど、生きている。

 

母上を失った時の悲しみと、向ける先の分からなかった怒り。

それをもう味わいたくない、父上を助けたら、すぐにロシーの後を追わなきゃいけない。

 

 

ロシーはドジだから、ぼくが守らなきゃ。

 

…でも…今だけは少し、ぼくの微睡みを許して欲しい。

 

 

 

 

 

「おやすみ」

 

 

 

意識が沈む中、そんな柔らかな声が聞こえた。




主人公(ぼく≧おれ)
色々いっぱいいっぱい。人間嫌いがカンスト。家族大事。ロシィィィィな彼はブラコン(重度)。
モフモフからパパ味を受信。間違っても父上とは言わないぞ。

モフモフ(ジョーカー)
自分の面倒な執着心に返って冷静になる。主人公守り隊。おとしゃん。

ロシー
モフモフin主人公に恐怖、トラウマ化。兄上来ないで怖い。

父上
はよ、助けて差し上げて。
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