世界はあなたを愛してる   作:アビ田

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聖書の製造元からの一言

「わたすが作ったえ」


第四章「辰」
バランスボールからひっくり返って


 朝が来る。目覚ましは無くとも普通に起きれるが、毎日誰かが起こしにくる。

 

 

「おはようドフィ、貴方って意外に激しいのね」

 

「………」

 

 

 同じベッドの上、俺の隣で横になっているヴァイ……

 

 

 

 思わず起き上がって見たが特にお互いの寝間着も乱れていない。揶揄うにしてもお遊びが過ぎるぞヴァイオレット…。

 

 もう大分続いている時折枕を共にするこの関係も、今ではもう慣れた。

 

 当初は一時のテンションに身を任せ、ろくに考えもせず行動した事を後々orz状態で後悔していたが、もう流石に諦めがついた。精神状態も悪かったんだ、仕方あるまい。

 

 寧ろ昔家族と寒さを凌ぐように共に丸くなって寝ていたことを思い出し、安眠出来る。

 

 

「ったく…おれで遊ぶな」

 

「……」

 

 

 え、何でそんなショック受けた顔してんだ?う、嘘だよな?嘘だと言ってくれよジョーカー。

 まぁ寝てるから反応はないが。普通爺さんて早起きじゃないのか?そう思っていれば、彼女が唐突に吹いた。

 

 

「ふ、ふふふ…冗談よ」

 

「…この野郎」

 

 

 お返しに横腹を擽ってやったら更に笑い出した。若干楽しくなりそのまま戯れるようにしていればノック音。しかも許可無しで部屋に入って来た人物。

 

 

「若様おは………」

 

「「あ」」

 

 

 侵入者はシュガーだった。固まった様子に心配していれば、ニッコリと笑った。ありゃあキレてる笑みだ。

 だが女性の情云々ではなく、もっと子供っぽい感情。

 

 

「ずるいヴァイオレット!若様と遊んでもらって!!」

 

 

 そのまま突進して来た少女はベットにダイブした。

 

 

「フフフ、おはようシュガー」

 

「おはよー若様!」

 

 

 ああ本当マジで可愛い。実年齢は最近20を超えたらしいが、そんな事関係ない程には可愛い。

 

 二人の頭を撫でていれば、若干不服そうな視線もあったが気にしない。おれとしてのファミリーは家族愛で完結するものであり、それ以上にはならない。

 

 そのまま二人を置いてシャワーを浴びに行こうとしたが、背後にへばりついたシュガーが離れない。

 

 

「おい、退かないとこのまま連れてっちまうぞ」

 

「一緒に入るー!」

 

「………ヴァイオレット…」

 

 

 救いの手を求めれば、仕方ないとばかりに取ってくれた。助かったと言い、バスへ向かう。

 その前にそういえばと声がした。

 

 

「海軍からの招集でしょう?何か仕事があれば片付けておくけれど」

 

「いい、もう終わらせてある」

 

 

 そう、普段は余り行かないが今回はクロコダイルが失脚したらしいので、それに伴っての会議がある。流石に出席しないといけない会議だ。ハンコックなど一部は通常通り来なさそうだが。

 

 そも鰐野郎とは相性も悪い上、ビジネスパートナーにもならなかったので感慨はない。

 寧ろロシナンテに会う可能性があるため、それをどう回避するかの方が問題だ。

 

 センゴクがトップじゃなきゃ、ロシナンテも部下として同行する機会が減るのに…。会う度に精神的に落ちていちゃあ何も始まらない。

 

 

「気を付けてね、ドフィ」

 

「……若様行ってらっしゃい」

 

「おう、何か土産でも買ってくる」

 

 

 素直に返事した二人に軽く手を振った後、漸くシャワーを浴びた。

 

 

 

 

 

 -----

 船長が向かったのを見送ってから、二人はお互い睨むように見た。

 

 

「フン、所詮嘘の恋人のクセに、若様を愛称で呼ぶなんて頭が高いわ!」

 

「貴女だって、子供のフリして若にベタベタしてるじゃない」

 

 

 話題の中心にある人物は、既にファミリー内で二人が恋人ではないとバレている事を知らない。

 ファミリーのメンバー、おおよそ彼女の身を守るための偽装だろうと思っているのだ。

 

 彼女も彼女でそれを利用している。

 

 女王としてよりも一人の女としてありたいと思う今、自身が国の頂点になるのではなく、どうすれば今の頂点の隣に座れるか悩んでいる。

 

 

 それがシュガーは気に食わなかった。船長はファミリーのもの、謂わば家族のものだ。

 ヴァイオレット自身も家族の枠に入っているが、それ以上を求めている彼女がどうしても気に食わない。

 

 男の特別になれないと分かっているため余計にだ。

 特別とは言っても、恋人と言ったものじゃない。

 

 

 もっともっと、特別なものになりたいと思うのだ。

 

 彼女自身はそれに名前を付けることが出来ていないが、周囲がその感情を覗き見ることが出来れば名前こそ付けないもののこう言うだろう。

 

 

 _____弟へ抱いていた、あの歪んだ愛情を欲しているかのようだ…と。

 

 

 シュガーは欲しいと思う。その感情を自分に向けて貰いたいと。

 少女の少し歪んだ感性は、船長に対しては依存という形で現れていた。

 

 

「どうせあんたなんか振り向いてもらえないんだから」

 

「貴女よりはマシよ。ずっと子供として見られてるよりは」

 

「ム〜〜!!バカ!!」

 

 

 握り拳を作りシュガーがヴァイオレットに殴り掛かろうとし、それを彼女はほんの少しの動作で躱した。

 暗殺業を身に付けた今素人同然の動きなど避けるのは容易い。

 

 そして闇に足を染めたのも、上に立つ事を拒む理由になっている。

 

 

 

 シュガーと違い彼女が男に向けたのは、深い愛ともう一つの感情。

 そんな彼女は思う、自分と男は違うのだと。

 

 汚れた以上、相応しくない。それなのに船長を国王として否定する気持ちが湧かないのは、彼が汚れながらも誰よりも国民を想っているからだろう。

 

 国を守るために冷静に物事を進め、その中で誰かを犠牲にできるのだ。自分にはできまいと感じる。

 

 けれど、壊れ易いドフラミンゴという男。

 故に支えたいと思うのだ。それは隣に立つ存在とは違う感情。仲間として彼に着いて行きたいという感情。

 

 

 二人の視線が再度合わさる。

 

 

「若様は…わたしたちが守らなきゃ。守られてるだけじゃダメだもん」

 

「えぇ…そうね」

 

 

 二人は笑い合い、バスから出てきた男に視線を向けた。

 

 

「ん、どうした?」

 

「ふふ」

 

「えへへー」

 

 

 頭の上で疑問符が飛び交う船長を尻目に二人は目を細める。

 これ以上傷付かないよう男を守りたいと、強く決意した。

 

 

「何でもないよ」

 

「何でもないわ」

 

 

 

 

 

 女とは、強い生き物なのだ。

 

 

 

 

 

 -----

 会議の前に散々センゴクに小言を言われながらも終えた。

 今はクマの部屋に窓から侵入している。メシにでもどうかと誘ったが断られた。

 

 

「行こうぜ、奢るからよ」

 

「断る。何故俺がお前と行かねばならない」

 

「え、おれたち結構仲良くなかったか?」

 

「ない」

 

 

 おれとしては苦労人気質の奴とシンパシー感じてたんだけど、そうでもなかった?よく会議中の喧嘩で迷惑掛けられてた仲間じゃん。

 

 そうは言っても向こうはどうでもいいらしい。本当連れねェクマ野郎だ…。

 

 

「聖書なんて読んでて楽しいか?」

 

「貴様に俺の宗教心をどうこう言われる筋合いはない」

 

「フッフッフ、おれには到底理解出来ねぇなァ」

 

 

 神に縋るなどした事がない。ずっと自分の道は自分で切り開いて来た。時には壊れたり、仲間に支えられて進んだ道。

 

 神に祈った所で未来など進まない。己で進まなければ始まらないのだと思って来たのだ。

 

 

「貴様には宗教心など無いのだろうな。敬虔(けいけん)する心とは対極にある存在だ」

 

「そうだなァ。んなもんあったら即壊してるさ」

 

「……」

 

 

 おれとの会話に飽きたのか、クマは再度読み始めた。声を掛けども無視される。

 つまらない奴だと思っていればノック音がした。

 

 

「おや、やっぱりこんな所にいたのかい、ドフラミンゴ」

 

「げっ」

 

「なぁに嬉しそうな顔してんだい」

 

 

 してない。分かってていってる辺り、からかわれてるな。

 クマがダメならおつるさんと行こう。

 

 タイミングよくおつるさんもおれをお茶に誘うつもりだったらしい。奢るからと言ったら、高い場所をオーダーされた。中々策士だこの人。

 

 

 

 

 

 一旦知人の天竜人とヴェルゴの様子を久し振りに見てからレストランへ訪れた。

 

 金銭感覚はジョーカーと違い庶民価値観なのでクソ高いと思うが、だからといって払う分には痛くも痒くも無い。

 

 通された個室で最早別人になっていた奴の事や、ヴェルゴが何故スルメイカを頰に付けていたのか推理していれば、おつるさんが来た。

 

 現在変装中だが悪戯心が湧き、声も変えて出迎えれば帰ろうとした。

 

 

「おつるさん待て、おれだよおれ!」

 

「…声帯変化も出来るのかい、器用な奴だね…」

 

 

 最初は雑談をしながら、頼んだメシを食べていたが、段々内容が変遷していく。

 

 

「そういやおつるさんは何でおれがクマの部屋に居るって分かったんだ?」

 

「あんたが最近奴をビジネスライクな目で見てたからだよ」

 

「フフフ、ビジネス…ね」

 

 

 ビジネスというよりはクマの関係者とコネクションを得られないかと模索していたのだが、話し合いが望めないため失敗に終わっている。

 

 革命軍_____政府の転覆を画策する集団。

 

 

「また変な事でも企んでるんじゃないだろうね…こちとらあんたの悪行で胃が痛い奴らがわんさかいるんだ……まだ奴隷売買に手を出してないだけ、マシだが…」

 

「ん?してるぜ?」

 

 

 驚愕の顔。そのまま彼女は手に持っていた焼酎の入った盃を落とした。度数が高いのをよくその歳で水のように飲めるな…。

 

 

「あんたが?まさか…」

 

「冗談を言う要素があったと思うか?」

 

「………」

 

 

 時代はスマイルだ。スマイルといっても、子供たちの平和な顔って意味だが。

 それと同時に虐げて笑ってる奴らは、顔面を大根おろしのように原型など残らぬまで摩り下ろしてやる。

 

 

「おつるさん、飲まねェのか?」

 

「…あたしゃ、あんたの笑みが年々怖くなってるよ」

 

 

 何を言う。おつるさんの鬼面の方が怖いぜ。

 

 おつるさんは眉を寄せたまま落とした盃を拾って床を拭いた後、新しい焼酎を取り替えた盃に注いで一気に煽った。

 …そんなに飲んで本当に大丈夫か、まぁ本部に送ってくぐらいはするが。

 

 暫く飲んだ後、彼女はポツリと零した。

 

 

「……話は変わるが、ロシナンテの事だけどね。…話しても大丈夫かい?」

 

「……え?あ、あぁ。別にいいぜ」

 

 

 彼女からはいつもおれの精神を気遣ってか余り弟関連の話題は出ないが、何かあるらしいので聞くことにしよう。大丈夫、発狂したら帰りはジョーカーに頼む。

 

 

「じゃあ遠慮なく話すよ。気分が悪くなったら言いな」

 

「…分かった」

 

「ロシナンテが最近出会った男の話なんだけどね_____」

 

「………!」

 

 

 話に出て来たその名前を久し振りに聞いた。ジョーカーの地雷源のため余り話の話題になったことはなかったが……。

 

 思わず昔を懐古していれば、耳元で冷えた声が聞こえた。

 

 

『分かってるな』

 

(……分かってるよ)

 

 

 ロー。懐かしい名前だ。最近騒がしているルーキーに見覚えがあるとは思っていたが………目付きが……………。まさかヤクでもやってるわけじゃねぇだろうな…。

 

 それ程までに目がやばかった。

 

 奴とはなるべく関わらないとジョーカーとの話し合いで既に決まっている。

 俺を狙いに来る存在。嘗ての仲間とはいえ、おれの計画を邪魔するならば容赦はしない。

 

 ……そうは言っても、刃を向けられた時にやり返す自信はないが。

 

 

『分かってる、な』

 

(うーん…)

 

『ガキ』

 

(…尽力はする)

 

 

 その言葉に奴はため息を吐いた。もし関わって来れば絶対におれは手を出せない。誇るほど自信がある。

 

 だってあの子供は何度も言う通りロシナンテが命を懸けて救った子供だし、今復讐の道の中にある。おれ自身今も尚同じような道の上にあるのだから、気持ちは誰よりも分かる。

 

 

 あの子供を救うには、おれじゃあ無理なのだ。今だと分かる。

 ロシナンテのような優しい奴じゃあなければダメだ、幸せを願うなら尚更。

 

 

 ……ん?ちょっと待てよ…。

 

 

「おつるさん、二人の様子ってどんな感じだったんだ?」

 

「感動の再会を果たした親子みたいな感じだったね。センゴクの奴も感動して泣いてたよ」

 

「………そうか」

 

 

 これおれの失脚フラグはないんじゃないか?二人仲良くしてればおれも嬉しいし…。

 

 

(ジョーカー、ローぐらいには会っても…)

 

『駄目だ』

 

(…何でだよ)

 

 

 ピリついた空気が奴との間で飛び交う。それを察したのか、おつるさんは食事の方に戻った。

 

 

『……』

 

(理由があるなら言えよ)

 

『……』

 

(…ジョーカー)

 

『…気分を害す、絶対に』

 

(いいから言え)

 

 

 奴はそれでも躊躇いを見せたが、観念したように口を開いた。

 

 

『ロシーは兄としてのお前を死んだ事にしてるのは分かってるな。その話題に触れるのが地雷なのも』

 

(……あぁ)

 

『なら事情を知らないローがロシナンテに、どうしてお前が兄だと言わないと思ってる。例え出会いは良くとも、話す内に壊れたロシナンテを垣間見ただろうよ』

 

(…………)

 

『…大丈夫か』

 

(……)

 

 

 首だけ頷く。話の行く末は分かるのに、頭は理解したくないと言っている。これ以上聞きたくないと思う反面、聞かなければ進まないと言う自分もいる。

 

 おれの反応に間を置きジョーカーは続けた。

 

 

『そんな壊れた男を作った存在が、お前だと思うだろうよ。例え違くとも、復讐からなる思い込みは激しい。ヴァイオレットの件で重々理解してるだろ。ローに関しちゃ10年以上積み重なった恨みが既にある』

 

(……おつる、さんは……言ってなかった)

 

『……隠してるだけだ。テメェのために』

 

 

 確認すればいい。ただそれだけだ。回転しているわけでもないのに、目がぐるぐる回る。

 

 

「おつる…さ」

 

「…どうしたんだい」

 

「ロ、ロシな?ん…ろろろ、し、………」

 

 

 そのまま卓上の皿を犠牲にしながら床に倒れた。個室でよかった。周囲に人間がいたら酔っ払ったおっさんと思われてたな。

 

 

「………」

 

「…生きてるかい」

 

 

 そのまま指を示され三本と答えた。酔ってるわけじゃないと言ってるだろ。

 気分が落ち込んでるだけだ。

 

 

「……ろしーは…元気、か?」

 

「………元気だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 _____心以外はね。

 

 

 

 

 

 

 

 それは正しく、ジョーカーの発言を肯定する言葉だった。

 

 

 

 

(……………………)

 

『だから言っただろうが…』

 

(……つらい)

 

 

 

 

 結局そのまま意識は覚醒しているものの寝込み、帰りはジョーカーだった。




主人公
身内に甘い打倒天竜人と。弟地雷踏むと精神↓。色々模索中、人生ハードモード。

ジョーカー(モフモフ)
主人公守り隊兼おとしゃん。苦労人。予測する主人公の未来が大変。

おつるさん
主人公見守り隊。奴隷売買の件で主がバケモノになりつつあると思ってる。
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