世界はあなたを愛してる   作:アビ田

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サクサク進む頂上決戦。ローsideそろそろ入れたい…。


殺す程愛してる

 新時代の波。それを最近ひしひしと感じている。

 

 ローもそうだが、他にも数人気になるのがいる。最近七武海に加入した黒ひげやモンキー・D ・ルフィ。

 それとX・ドレーク。

 

 それぞれが自分の道を切り開く新たな勢力による群雄割拠の時代。その上でおれは自分の道をどう進むか悩む事もあるだろうが、若僧に邪魔をされて足止めしている暇はない。

 

 基本他人に己の計画を邪魔されるのは嫌いだ。

 

 

 しかし上手くいかないのが世の常だ。

 

 

 

 

 黒ひげが白ひげの所のエースを海軍に売って七武海入りしていたのは知っていたが、処刑前にモンキー・D・ルフィやその他の勢力が攻め入って来た。まぁ白ひげが攻めてくるのは同然だったろうが…。

 

 

「やる気ねェな…」

 

 

 建物の隅に座りながら以前おつるさんがくれた葉巻を吸っているが、甘ったるい。

 煙さえピンクに見えた、気のせいだが。

 

 目の前では血が舞うわ腕が飛び散るわ、至極楽しそうだ。普段なら嬉々として糸を振るっているが、気力が湧かない。

 

 

(にしても白ひげは大病のクセによく動くな…流石四皇か…)

 

 

 おれの医療の知識など専門の奴らと比べればたかが知れているが、事業を行なっている。勿論そのまんまだとマズイので、変装はしている。

 

 これに関して言えば、ローの治療のためにと建てた研究機関が今も続いているに過ぎない。

 

 取り扱っているのは不治の病の製薬開発だったり、中には「シュロロロ」と煩い奇天烈な物を作る奴もいるが基本は普通だ。

 白ひげには大分前から治療をしているが、回復の兆しはない。

 

 強者だろうが死ぬ時は死ぬ。別にジョーカーの病気を治せていたらとかそんな事は思っちゃいない。

 思ってないからな、本当に。

 

 

『フフフ、テメェは暴れねェのか?暴れようぜ、おい』

 

 

 ずっと無視しているが、お隣さんが遊園地に来た子供のようにずっとソワソワしている。そのソワソワも人を殺したくてうずうずしている訳なので、笑えない。

 

 というかこいつ…本当時折おれよりガキっぽい時がある。

 

 

(ほら暴れてんだろ、目の前の死体を見てみろ)

 

『自分から動きに行けよ。歴史の転換点、新時代の幕開けだぜ?』

 

 

 目の前には七武海だと襲ってくる阿呆どもの死骸が溜まっているが、折角モンキー・D・ルフィの助力があって牢獄から抜け出せたというのにバカな奴らだと思う。

 

 

(まさかたった一人の処刑でこんなに大騒ぎになるとはなァ…海軍も白ひげを潰そうという魂胆もあるんだろうが…)

 

『海賊王の息子だからな』

 

 

 

 ……ん?

 

 

 

(……はい?)

 

『だから海賊王の息子だ、ポートガス・D・エースは』

 

(……マジか…)

 

 

 そうなると思った以上にこの戦場は歴史の記録に残る大戦じゃねェか。だからって動かないが。

 下手に目立ちたくはないし、映像が国中に流れてるんだ。余計に目立ちたくはない。

 

 

『つまんねェクソガキだな…』

 

「あ、鷹の目と鰐野郎が戦ってる」

 

 

 よく会議中に喧嘩してた奴らが…向こうの方だとハンコックも戦っている。

 観戦する分には相当楽しいんだろうな、これ。

 

 殺している内に段々視界が悪くなってきたので、積み重なってる死体の上に登り座って見ていれば、ジンベエと目が合った。あいつは七武海の中で一番甘ちゃん野郎だった奴だ。

 

 おれの中で好感度がカンストしている。

 

 久し振りに見たので、手を振ったらこちらに向かって来た。お、お?一瞬人気投票一位になったゆるキャラが来たかと思っちまった。

 

 おれは手ェ出したくないぜ?一応奴は白ひげ側なので敵だが、なるべくなら戦闘は避けたい。

 

 

「ドフラミンゴ!」

 

「フッフッフ!ようジンベ…」

 

 

 あちらに戦闘の意思はないのが分かり力を抜いて油断していた。

 しかし突如視界が反転し、驚きの声を上げたら上から声。

 

 

「ヴァナータがドフラミンゴね〜」

 

「………」

 

 

 

 ジョ……、ジョォォオカカアアアアア!!!!

 

 

 た、助けろ!!え、何で捕まってんの!?何でジンベエとイワンコフが組んでんだよ?!すまなそうな顔をするなジンベエ!!許したくなるだろうが!!!

 

 

(ジョーカージョーカージョーカー!!!!)

 

『フ、フフフ……』

 

 

 やばい。ツボったのか笑い死んでいる。お前笑ってる状況じゃないんだよ。意味が分からないんだよ。

 

 

「おいジンベエどういうつもりだ、いくらテメェでもぶっ殺すぞ」

 

「すまん。だがちと話を聞いてくれんか」

 

「あ?何でこんな時に…」

 

「ルフィくん伝いにハンコックの話を聞いたんじゃが…」

 

 

 話の内容はフィッシャー・タイガーの事だった。

 

 こいつが奴と関係があるのは知っていたが、今まで何も言って来なかったため、おれがマリージョア襲撃事件に関わっていることは知らないと思っていた。

 

 だがハンコックが奴隷だった頃の話をモンキー・D・ルフィにし、その話をジンベエにしたらしい。

 

 だが面倒はごめんなのでしらばっくれる。甘い奴に関わると、そいつをどうにか救ってやりたいと思っちまう性分はどうしようもない。

 

 故に極力関わりたくないのだ。

 

 

「フフフ、知らねぇなァ。そんな下らねェ事のために危険を冒したってか?おれはテメェらの敵なんだぜ?」

 

「いや、わしからはそれだけだ。お礼を言いたくてな…」

 

「だからおれじゃねぇって言ってんだろうが…」

 

 

 ほらこの甘さだ。時と場所を選べと思いたいが、いつ会えるか分かったものではないし、それ以上に感情が勝ったのだろう。

 

 もう解放してくれと逃げを打とうとしたががっしり掴まれている。ずっと移動しながら俵持ちされてるおれの気持ちを考えてくれよ。ファミリーに見られたら死にたいわ。

 

 

「何だよ離せマジで。要件はもう終わったんだろ?」

 

「ヴァターシも聞きたい事があるのよ」

 

「はぁ!?」

 

 

 若干キレかけているが事実キレているのだからしょうがない。もう解放してくれ、本当。

 

 

「ヴァナタ、くまと同じ七武海なんでしょう」

 

「あん?……」

 

 

 バーソロミュー・くま。奴の様子が変だと聞かれたが、あいつは既にパシフィスタに改造されている。

 そのせいで革命軍との接近も思い切り無理になった。

 

 

「既にあいつはあんたの知ってる人間じゃないぜ、それこそ海軍の兵器だ」

 

「……まさかくまが…!?」

 

 

 人間兵器。そんなものが存在する世界自体不必要だ。

 にしてもイワンコフとくまの繋がりが見えない。いや、待て確か……。

 

 

「そういやあんた革命軍だったよな?」

 

「…!……ヴァナタがまさか…最近嗅ぎ回ってる犬ナブル?」

 

「ノーコメントだ」

 

 

 敵の攻撃が来たと同時に、それを利用して漸く解放された。あちらはまだ何か続けたそうだったが、こちらには何の利益もない。

 

 ただ恩を売っておいて損はないだろうと、パシフィスタの攻撃がイワンコフの仲間に当たるのを糸で防いだ。

 

 

「フフフ、貸し一つだ。思うかどうかはあんた次第だが」

 

 

 流石に敵を救ったと思われると後々面倒なので、それを帳消しするように他の奴らを殺した。

 途中で敵味方関係ない状態の鷹の目にぶつかったが。血の気多すぎだろ、テメェ。

 

 

「おい待て味方だろうが!」

 

「ム?ドフラミンゴか」

 

 

 ドフラミンゴかじゃねェよ。お前サイコなんじゃねェの。

 

 そう思った所で、時差が生じた奴の攻撃により額がパックリ切れた。あー視界が紅ェ。

 創傷部位の血を抑えようと手で触れたら何かが取れた。

 

 落ちかけたそれを掴めば、それは後ろで結ってたおれの髪…………

 

 

「………」

 

「どうしたドフラミンゴ」

 

 

 視界の端でジョーカーが衝撃映像を見た時のような顔をしていたが、それもどうでもいい。

 いいか、伸ばすのも大変なんだよ、女性より伸びんのは遅いんだ。

 

 

「フ、フフフ、フッフッフッフ」

 

「……」

 

 

 おれの殺気に奴は剣を握り締める。

 

 

「殺す」

 

 

 ブチっと、久し振りに血管が切れた気がした。

 

 

 

 

 

 -----

 剣技により空中さえも切られる音。そしてそれにぶつかり合う糸の摩擦音。

 

 近くに居た者はある程度の力を持たなければ簡単に骸と成り果てる。恐怖を感じた者たちはその場から退避した。

 

 

「貴様と殺り合うのは初めてだな」

 

「ぶっ殺す」

 

 

 いつもの冷静さを欠いた男は獰猛な獣になっている。途中で切られる肢体を物ともせず食らいつく。

 鷹の目も糸の攻撃により肌を深く抉られる。

 

 しかしお互いの瞳に浮かぶのは肉食獣のそれ。殺すまで止まらないと言わんばかりだ。

 

 

「フハハ!中々に愉快だ!」

 

「黙れサイコ野郎」

 

 

 転がった死体を操り盾にしながら技を繰り出していく。そこにミホークの強靭な一撃、それを男が避けた所で他の人間の攻撃に当たり遥か後方に吹っ飛んだ。

 

 

「何やっとるんじゃ七武海二人が…!!」

 

 

 センゴクは既に胃が痛い。

 

 

 派手な音を立て壁に衝突したものの、怪我という怪我は負っていない。歯を剥き出しにし唸った所で、丁度その場にいた者の一撃により男は伏した。

 

 

「おやめ!!」

 

「ぎゃっ」

 

 

 おつるの拳骨に倒れたドフラミンゴは立ち上がったが口はへの字だ。

 

 

「何すんだよ……」

 

「あんたこそバカやってないでちゃんと働きな。何をそんなに怒ってるんだい」

 

「……髪が…」

 

 

 捨て猫のようにしょげている男。それに募る苛立ちを隠し切れずおつるは叫んだ。

 

 

「伸ばしゃあいいだろ!女じゃあるまいに…」

 

「母上の……面影が………」

 

「……!」

 

 

 壁に寄り掛かり膝を抱えた男は精神がだだ下がりモードだ。

 男の母親の姿を残すものは現在しない。故に容姿が似ている自分と重ねて髪を伸ばしていたのだ。

 

 それを汲み取ったおつるは辛そうに眉を下げた。

 

 

「……その髪も似合ってるよ、ドフラミンゴ」

 

「……本当か…!」

 

 

 周りにいた海兵は、まるでそのワンシーンが飼い主に尻尾を振る犬のような光景だったと後に語る。

 

 思わずあまりのワンコっぷりにおつるも頭を撫でてしまった。

 それに更に嬉しそうに男は笑んだ。

 

 ジョーカーはその様子を見つつ、この場に男の地雷源となる人物たちがいない事に一先ず息を吐いた。

 精神瓦解すれば代わって暴れる予定だったがその必要はなさそうだ。

 

 大分荒れた戦況もエースの錠が放たれた事により終盤に入る。

 

 

『……?』

 

 

 おつるが手を離した瞬間覗いた男の顔。

 

 

 

 まるで能面のようなそれに、何か薄ら寒いものを感じた。

 

 

 

 

 

 -----

 

 戦争は終わった。

 

 勝者は居ないだろう。

 

 

 海軍も白ひげも一応引き分けだろう。ポートガス・D・エースも、モンキー・D・ルフィを赤犬の魔の手から救ったことにより亡くなった。

 

 ただ白ひげは大怪我を負いながらも生き残った。だが病魔には勝てまい、後に亡くなるだろう。

 

 黒ひげは白ひげの能力を狙っている事が戦争内で明らかになったため、近い内にこの二つの勢力がぶつかる。末恐ろしい事になりそうだ。

 

 

 今のおれは商人(仮)だ。他所様に薬を売り込むセールスマン。ジョーカーとしては善人ぶった行為に鼻で笑うが。

 資金集めだ資金集め。

 

 

『十分金は持ってるクセに何言ってやがる』

 

(……いいだろ別に。好きにさせろ)

 

 

 今日出会うのはお得意様だ。それもビックなため偶にはおれ自身が顔を出しているが、変装はいつも通りだ。

 信用を得るためにはそういうのも大切だ。

 

 しかし薬を船に運び終えいざ帰ろうと思ったら腕を掴まれた。

 

 

「ちょっと来るよい」

 

 

 フリで怯えつつ逃げようとしたがダメだった。流石に弱体化したとはいえ四皇に手を出す気はないよい、だから帰らせろ。

 

 

(ジョーカー、ジョーカーえもん!!)

 

『害はねェよ。大人しくしてりゃあな』

 

(そういうのフラグって言うんだぜ?)

 

『そんじょそこらで乱立してるテメェに言われたかねェよ』

 

 

 言う通り大人しくしていたが確かに手は出されなかった。病魔と大戦の傷でボロボロの白ひげはしかし、天辺に君臨する者の風格が微塵も衰え知らずだった。

 

 不意に赤犬に殺された男の亡骸を抱え静かに涙していた姿が頭に過ぎり、ぐるりと腹の底で渦が巻いた。

 だが関わりはしない、既にそれは決めてある。

 

 

「オメェ、糸の餓鬼かァ」

 

 

 唐突だ。変に否定するのもマズイし肯定するのはそれこそバカだ。

 どっちでしょうねと笑えば、それをかき消すように大きな笑い声が響く。血ィ吐いてるぞ。

 

 

「グラララ!なぁに殺そうってわけじゃねェ。俺も世話になってる借りがあるからな」

 

 

 病気は所詮、最後は人の意志だ。だがしかし礼を言われる。次いで言われたのは宣告とも取れる言葉。

 

 

「餓鬼、お前は愛されている。それも随分面倒なもんに」

 

「……はぁ」

 

 

 昔似たような奴を見たと言われた。それが誰かとは言われなかったが、そいつよりももっと歪なもんだと笑う。

 

 

「大いなる海…あとは月か。まぁ精々気ィ付けな」

 

 

 言ってる意味が最後までよく分からぬまま帰された。というより途中で容態が悪化したため、パイナップル野郎に蹴られて追い出された。テメェ後で覚えてろよ。絶対いつかその髪を根こそぎ刈り取ってやる…。

 

 現在は帰路の途中、蹴られた背中がまだ痛い。

 

 

「………」

 

 

 

 海と月。

 

 

 その意味するものに、身に覚えがあるのはまた事実だ。

 周囲を見渡せば視界に奴が映る。

 

 

『……』

 

「どうしたよ」

 

『…何でもねェよ』

 

 

 そう言って上と下を睨み奴は消えた。空には妖艶に輝く黄金と、地平線まで飲み込む暗い海が覗いている。

 

 

 どちらがおれを殺すのか分かったもんじゃないが、ヤンデレのこいつらにおれが言う事はただ一つ。

 

 

 

 

 

「テメェらにどうこうされるなら、自分で死んでやるさ」

 

 

 

 

 

 ニヒルに笑えば、怒ったジョーカーに頭を引っ叩かれた。




主人公
身内に甘い打倒天竜人。偶に抜けてる。海と月に愛されてる。人生ハードモード。

ジョーカー(モフモフ)
主人公守り隊兼おとしゃん。苦労人。ゼッテーに幸せにしたるでェ。
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