世界はあなたを愛してる   作:アビ田

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全部ロー目線です。
作者に医療用の知識はないです。ググった上での知識ですので何か間違ってたらすみません…。

余談で、声優繋がりで阿良々木くんポジのトラ男ネタ思いついたけど、イケメンすぎるなぁと思ってしまう…
ヒロインが全員ほの字……。


無知は愚かしい

 *****

 

【sideロー】

 

 久しく見た俺を照らした太陽は、あの時___雪の中で浮かべた笑顔で俺を抱きしめてくれた。不恰好で、でもあったかい笑み。

 いくら触れてもあの雪のように冷たくはなかった。

 

 身長の高いあの人には未だ俺が抱き着いた所で、子供扱いしかされなかったけど、それでも嬉しかった。

 心臓の音もした。

 

 

 生きていた…いや、生きている。

 

 

 

「コラ゛さん……ゴラ゛さん゛……!!」

 

「あはは、本当ガキのままかよ……ロ゛ッー………」

 

 

 おっさんのクセにガキみたいに泣くあの人が可笑しくて、でも変わっていないのだと分かって…凄く嬉しかった。

 

 

「うるせー!!お前だって泣いてんじゃねェか!!」

 

「おっさんが泣いてるよりマシだ!!」

 

「誰がおっさんじゃー!!!」

 

 

 その後二人揃ってセンゴクに煩いと殴られたが、奴も泣いていた。その三人の様子を見ていた大参謀のおつるは、やれやれと言わんばかりにため息を吐いていた。

 

 コラさんはどうやら医者に行く途中らしく、定期的に検診に行ってるらしい。

 

 

「……それって…」

 

「違ェよ、ドフラミンゴのじゃねェ。ただちょっと心の方がな…」

 

「……心…」

 

 

 考え込むようにしていれば、おつるが二人を先に行くように急かした。名残惜しいけれど生きていればまた会える、そう考え見送った。

 

 

「……中将や海軍トップが同伴するなんて相当な事があるんだろ」

 

「あんたがロシナンテが言ってたローかい……話は歩きながらする。時間があるなら着いてきな」

 

 

 俺も食料補充で停泊中だったため時間があった。まさかこんな辺境の島に大物がいるとは思わなかったが。

 

 

「ロシナンテの身体的な怪我はもうほぼ治ったさ。ただ精神の方が参っちまってる。この島にいるのは知り合いの医者のジジイがここに住んでるからだよ。全く…あっちから出向いてくれりゃあいいものを…」

 

「……」

 

 

 コラさんが精神病を患わってるのは既に窺えた。俺も医者だがその知識は外科としてのものであって、精神のエキスパートではない。それでも少しは知識はある。

 

 

「言っとくが海賊のあんたに関わらせる気はないし、あいつのは簡単に治せないよ。じゃなきゃ10年以上苦しんでない」

 

「10年……」

 

 

 それは俺が復讐へ歩んだ時間と同じ期間か。いや、俺以上にきっとコラさんは苦しんだに違いない。

 俺のせいか、それとも奴のせいなのかはまだ判然としないが…。

 

 考えていれば前方不注意でぶつかった。何だと思えばコラさんだ。

 隣でセンゴクが腕を引っ張っているが動かない。

 

 

「コラさん?」

 

「…………」

 

 

 何かと思い視線の先を見てみれば、兄弟の子供の姿。どうやら転んだらしい弟を兄がおぶっているようだ。

 自分のドジと重ねて、昔の事でも思い出しているのかもしれない。

 

 コラさんは優しいから、まだ兄のあいつの事を止めようとしているのだろう。心に傷を負って動けないでいるけれど、それでも自分と戦っているんだ。

 

 

「コラさんは…まだ兄のあいつの事を止めようとしてんだな……」

 

「………あ」

 

 

 コラさんの口から小さな声が漏れたのと、両サイドから静止の言葉が入ったのは同時だった。

 どうしてそんなに焦っているんだ。

 

 ギギギと、壊れた機械のように首が向いた。その笑顔にゾッとした。

 

 

 

 

 

「兄ゥえハ? 死!んだ、ン だ」

 

 

 

 

 コラさんのいつもの___あの笑みじゃない。酸素に触れて変色した血の色のような瞳で、綺麗に笑った。

 つくられた笑み、そんな笑みを自然と出す。

 

 肩を掴まれて、コラさんは尚も続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あにうえはしんだ兄上は死んだあにうえはしんだあにうえはあにうえはあにうしんだあにうえしんだあににににうえはあにうえはあにうえはあにうえはあに?うえ??あにうえ。しんだ、しんだしんだしんだしんだ死んだ_______________」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あにう えは 死んだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の太陽は、壊れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *****

 

 PTSD、心的外傷後ストレス障害。

 

 

 症状は精神的な不安や不眠、トラウマ関連の物に対する回避行動。事故や事件のフラッシュバックによるものがある。

 

 特徴として恐怖や虚無感、苦痛の想起や心的外傷物の回避行動、過度の覚醒が多い。

 コラさんは特に過度の覚醒と回避行動が目立った。

 

 心的外傷物関連を見た際に感情の爆発や混乱、自分の感情のコントロールが不能になり暴れたり、無気力状態になる。

 

 ストレスに対して過剰な精神への自己防衛が起こっている。

 

 

 症状は急性型で治療を試みているものの、快癒する傾向はないそうだ。軽くも重くもならない。症状は最初から底辺で、これ以上沈みもしない。

 

 

 PTSDになる前にはその前の記憶が重要になってくる。パターンとしては重要な出来事が記憶されるか、事後的にそれほどでもない出来事が記憶される。または元々ない記憶がその人によって創作されるか。

 

 基本はこの三つだ。

 

 

 この点は兄に撃たれた「出来事」が記憶され、誘発されたのだろう。

 

 それ故に兄弟というものに対し過度のストレスを抱くようになった。

 

 

 コラさんは、ドフラミンゴに撃たれないと言っていた。それはきっと奴の甘さを理解していたからだ。

 弟に依存していたあいつはしかし撃った。家族に撃たれたショックが精神疾患を引き起こしたのだろう。

 

 自分がラミに撃たれたと変換して考えれば末恐ろしいものがある。持っていた本に力が加わった。

 

 

 幸と言うべきか、コラさんは合併症状を患わっていなかった。PTSDの患者の半数以上は鬱や精神障害を合併する。

 

 精神治療は認知行動療法やストレス管理法などがあるが全く改善を見せていないと聞く。薬物療法も存在するが、それは大概合併症状を持つ精神患者に服用される。

 

 コラさんはPTSD単体なので、処方されていないようだ。そもそも耐性があるため効果が望めないらしい。

 

 

「ハァ……」

 

 

 ため息を吐き突っ伏せば卓上が揺れ、積み重なっていた本が頭の上に落下した。

 医者だというのに何も出来ない。そりゃあ海賊と海兵だ、無理なことぐらい俺も分かっている。

 

 

 

 

 

 結局コラさんはあの後精神的混乱状態に陥り過呼吸になって倒れた。

 

 場合によっては暴れる事もあるらしい。強靭な肉体からなされる無差別の攻撃は、彼以上の強者でないと止められない、故にセンゴクやおつるが居たんだ。

 

 センゴクの方は上司以上の…それこそ親心の責任感から着いていたようにも見えた。

 

 

 苦しそうな顔が忘れられない。あんな顔見たことなかった。ずっと強いと思っていたコラさんにも弱さがあった。

 

 …いや、強かったはずだ。海軍や諜報活動の中で培われた精神、それはあの傷だらけの身体と直結している。大きなストレスにも耐えうる強さを持っていた。

 

 それが壊れてしまうほど、コラさんの負った心の傷は大きかったんだ……。

 

 

 

 月が昇ったまま太陽が昇って来ないような感覚。忌々しさだけが胸の内を支配している。

 

 けど、今内にあるのは復讐心だけじゃない、迷いだ。俺自身がどう進んでいいか迷い始めている。

 

 大参謀が言っていた言葉。それが喉に小骨が引っかかったように取れない。無意識に指が気管を塞ぐように食い込んだ。

 

 

 

 _____()()()()、壊れちまった。

 

 

 

 どっちもとは詰まり、ドフラミンゴもという事。

 

 直ぐに否定した、奴は圧倒的な悪だと。しかし続いたのはそれを性質悪と捉える返答。

 被害者を生むのは被害者?違う、あいつは……あいつは悪だ。表も裏も悪で、全部真っ黒で……。

 

 

 ……いや、優しさはあった。それを裏付けるようにコラさんは死んでいなかった。

 確かに死んだはずだ。ミニオン島で銃殺され、骸となったはずだ。

 

 

 でも生きていた。それが結果じゃないのか?あいつがまさか殺し損ねるはずはない。甘い部分はあったけれど、あいつは…殺す時は絶対に殺していた。

 

 分からない。あいつは何を考えている?何も考えていないのか?

 そんな訳はない。奴は今や七武海に入り、国王にもなっている。奴の目的は確実に進んでいるだろう。

 

 あいつの一歩とおれの一歩は違う、正しく身長が違うように。

 

 それでも必死に食らいついて進んできた。おれはコラさんの本懐のために……奴を止めるためにここまで来た。後戻りは出来ない。

 

 

 大参謀は、止めろと言っていた。止めてくれと、らしくもなく言っていた。

 自分ではもうあれは、バケモノになりつつある男は止められないと。

 

 その思考は測れないが、確かに奴はもうブレーキを無くしたケモノだろう。頂上決戦の際死体の上に死体を重ねても感情一つ動かさなかったように、感情も既に死んでいるのかもしれない。

 

 俺やコラさんに笑いかけたあいつは、内に潜んでいた破壊欲に壊されて……でも、まだ少しだけ残っていたように思う。

 

 

 白ひげがポートガス・D・エースの死体を抱いていた際、映像の中で一瞬だけ……一瞬だけ映った瞳。

 

 揺らいだ海の色の中には、悲哀があった。

 

 

 

 

 

 不意に窓を見れば、朝日があったはずがいつのまにか暗闇に支配されている。陽が沈んで、暗闇には怪しい光が浮かんでいる。その光景があいつの笑みと重なり舌打ちが漏れる。

 

 すっかり冷たくなったコーヒを飲んで、目を閉じた。

 

 

 コラさんを壊した恨みはある。雪の中で大切な人を失ったと思ったあの感情は、永遠に消えないだろう。

 おれは本懐のために奴を止める。でもその理由の中に、もう一つ新たな想いが生まれたのも確かだ。

 

 復讐心よりはよっぽど小さい、それでも……これ以上はと、思う。

 

 

 

 _____これ以上あの男が壊れる前に、止めてやらなければ。

 

 

 

 それは嘗て受けた愛情から来るのか、それともコラさんを思ってなのか。判然としない。

 

 だが俺のドス黒い感情をコラさんが溶かしてくれたように、奴の闇を少しでも晴らしたいと思うのだ。

 子供の頃はコラさんが晴らしてくれると思っていた。でもダメだった、余計に悪化している。

 

 

 それでもいつか……いつか奴に追いつき、そして追いついて捕まえた時、風切羽を斬り落とした上で言ってやろう。

 

 

 

 

 

 お前は_____愛されているのだと。

 

 

 

 

 愛するばかりで、仲間や家族に愛されているという自覚がない男。その根底にある闇が、無意識下で奴をそうさせている。

 

 あのブラコンは恐らく自分でも考えていない内に、コラさんに拒絶された事がトラウマになっているはずだ。優越感が湧くが、今はそんなちっぽけな感情に浸っている場合じゃない。

 

 愛される事が怖い。失うのが怖い。

 

 実際にどう思っているかは実際に会って状態を見なければ分からない。だからこそ俺は進む。俺のしたいように、生きるんだ。

 

 

 

 

 愛を分かっていない奴に食らわすのは、痺れるショック療法だ。

 

 

 

 

 

 だから首洗って待ってろ、ドフラミンゴ。




副題:愛を知らない小鳥へ
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