世界はあなたを愛してる   作:アビ田

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若様のビブルカードを買うために…生きてました。


暗礁

「……荒れてるわね」

 

「荒れてるだすやん」

 

 

 ベビー5とバッファローは現在覚醒剤に溺れた子供たちの怪我の治療に当たっていた。轟音が響くと共にパンクハザード全体が揺れる。

 

 近くにいるのは海兵。前に行われたシーザーの殺戮兵器の放送に伴い海軍が動いたのだ。

 偶然それに出会し戦闘になりかけたが、一時協定を結んでいる。

 

 睨むのはスモーカー。寒くないのかと冷静にベビー5はツッコんだ。特に仲の悪い二人の仲裁に入るのはたしぎ。

 

 

「ウルセェ!何で海賊の野郎となんざ…」

 

「お二人ともストップ!もう…スモーカーさんしょうがないですよ、上からの命令ですもん」

 

 

 急遽ドフラミンゴが王下七武海の権利を利用し協定を取り付けたはいいものの、双方の関係は悪い。

 一応部下を送り付けた理由としては、こちらの商売の邪魔をしたということにしてある。

 

 しかしさらに面倒な事に麦わらの一味も島に侵入していると聞く。

 

 

「麦わらの一味は何で来たのかしら…」

 

「偶然だ」

 

「……」

 

「そういう奴らだ」

 

 

 スモーカーの言葉にベビー5は眉間に皺を寄せた。

 

 

「何で二本も葉巻吸ってるのよ…」

 

「あ!?」

 

「け、喧嘩しないで下さい!!仕事中ですよ!!」

 

 

 三人の様子を見ながら、バッファローは痛みに呻く子供たちの治療に専念した。

 

 

「喧嘩する暇があったら治療手伝って欲しいだすやん…」

 

 

 

 

 

 時は少し遡る。

 

 

 

 

 

 シーザーは招いた男の傍に付いていた謎の二人を避けるため、部屋の外で待機させるよう男に命じた。

 ドフラミンゴとしては予定通りである。

 

 また万が一の時のために二人にはガスマスクを用意させていた。

 

 そして隙を突いてモネの救助に当たれと命令していた。その間中の映像からシーザーの注意を引くのがドフラミンゴの役目。

 

 モネが中にいればそれで済むのだが、どうなっているのか男にも予想が付かない。

 

 

 最初は穏便にいくが、シーザーからモネの居場所を得られなければ、誰に逆らったのか教える意味も含め直々に男によって制裁が加えられる。

 

 

 二人はそれを聞き想像して震え上がったものの、頷いてモネを探していた。

 しかし先に見つけたのは子供たち。しかも薬物の症状があるとすぐに見抜いた。

 

 さらに突如海軍の登場。協定関係を結び一先ず子供たちの救助をと思ったところで、轟音が鳴り響いたのである。

 

 

 あ、若様ブチ切れてるなと判断した二人は、急いで子供たちを連れ外へ飛び出た。

 急いでいたため全員は救助出来なかった。

 

 その間麦わらの一味と出会わなかったのは幸と言えよう。

 

 

 モネの捜索をと思うものの、あの荒れようでは下手したら自分たちが巻き込まれて死ぬ。

 子供たちの怪我の治療をしながらもどうしようかと悩み中だった。

 

 子供たちの方は最悪海軍に薬物の治療を任せればいい。

 

 目の前のダブル葉巻の男は、正義感は人一倍強そうだからと、ベビー5は判断した。

 

 

「ねぇどうする。(若が)今の麦わらの一味と出会ってたら一触即発よ」

 

「どうするって言ってもどうにもならないからこそ、今自分たちが出来る最善をするのが重要だすやん」

 

「バッファロー……」

 

 

 そうねと頷き、二人は子供たちの手当てに回った。

 

 

 

 

 

 -----

 

 狐。

 

 

 シーザーがそう呼ぶ男は、いつも通りセールスの笑顔だった。

 

 部下と思われる仲間も不用心に部屋の外に待機させ、己は殺戮兵器のプレゼンを行った。

 一応まだ狐の組織には便宜上所属はしている。

 

 

 プレゼンにケチを付けようものなら直ぐに殺そうと考えていたが、しかし男はただ笑っているだけだった。

 

 あったとしても途中電話で何かやりとりをしていた程度だ。

 

 たかがその程度の事で気を悪くする程、俺は小さい男ではない…と自分に言い聞かせた。怒れば鼻で笑われそうな気がしたのだ。

 

 

「おや、モネさんが居ないようですが…」

 

「シュロロ、あいつは別室で研究でもしてんじゃねェのか〜?」

 

「…そうですか」

 

 

 モネは先程ローに話があると言われ、出て行った。シーザーとしては興味が無かったので、忘れてしまっている。

 

 そしてそのままプレゼンは終わり、男の様子に特に変わった所はなかった。

 いつもこうだ、ビジネスの目。

 

 良くも悪くも言わない。人によってはいいだろうが、シーザーは誉められて上がるタイプだ。

 

 もう殺そうかと思った所で、男は珍しく他にも見たいと言い出した。

 まさか今頃俺様の兵器の価値に気付いたのかと思い無性に腹が立った。そこでいいアイディアが思い付く。

 

 

(こいつを毒で弱らせて、ガキどものキャンディーと一緒に置いてやる!そうすればこいつは食い殺されるぞ!!シュロロロ!!)

 

 

 とびっきりのを見せてやると言い、シーザーは子供たちの部屋へ向かう前に一度確認しようと、映像の方を振り向こうとした所で、質問に合い不機嫌そうに向きかけた身体を戻した。

 

 

「子供たち?そんな研究もしてらしたんですね」

 

 

 当たり前だ、バレないように言わなかったのだ。契約上には人間を使った実験の禁止とあった。

 従って契約違反ということになる。

 

 端的に覚醒剤を使用した実験と告げれば、へぇと呟く。

 

 

「天才の貴方が作る物ですから、さぞ効力が強いのでしょうね」

 

 

 天才だと?しかし簡単にノせられたシーザーの口は軽くなる。

 

 

「当たり前だ!天才の俺様が作ったんだ!シュロロロ!ガキはせいぜいガキのまま死ぬだろうなァ!!」

 

「ガキのまま……つまり、大人になれないと?」

 

 

 そうだと肯定し、蛇のように舌を動かす。高笑いの中一瞬寒気がした。

 何だと思い見れば、そこには笑った男の姿。

 

 

 笑っている。ただ笑っている。

 

 

「な、何……!?」

 

 

 ただ笑っているその笑みに、今まで感じたことのない程の恐怖を覚えた。笑っている、笑っている。

 

 

 

 

 笑って笑って笑って笑って笑って_______そして笑う。

 

 

 

 

 一歩、男が近づく。それに半身だけガス化しているシーザーは二歩分下がった。それが数度続き、とうとう後ろの映像機器にぶつかる。

 

 

 恐怖。

 

 しかし男の笑顔から目を離せない。伝った汗が地面に落ちた。

 

 

「貴方は誰よりも人を殺せる才能を持つ。その才能は、人を生かせる才能にも昇華出来ると思い雇ったんですかね」

 

「そ、それ以上近付けば俺の毒ガスで殺すぞ!!」

 

 

 簡単だ。この場での生殺与奪の権利は己が持つ。なのに何故か己の本能が、目の前の男から逃げろと言っていた。

 

 

「一つ、質問をしましょう。最も世界で人間を殺せるものとは何だと思いますか?」

 

「に、人間を…?ん、んなもん俺の兵器に決まってる!!」

 

「貴方の兵器…ファイナルアンサー?」

 

「ファ、ファイナルアンサー!!」

 

 

 相手の回答を待つ。

 何だこのミリ●ネアのような間はと言い掛けたが、シーザーは何とか出かけた言葉を飲み込んだ。

 

 

 

「半分、正解だ」

 

 

 

 瞬間、男の声色が変わった。好青年じみた声だったのに、まるで地獄の底から出ているような……背筋が凍るような声になる。

 

 

「兵器の部分は不正解だ。なら残りの半分は何だと思う、シーザー・クラウン?」

 

「……え、あっ……??」

 

 

 ゆっくりと、しかし確実に男は近づいてくる。逃げようとしてももう逃げられない。恐怖に染まった脳内で攻撃するという選択肢は最早出なかった。

 

 

「人間さ」

 

「…は?人間ン?」

 

「そう、人間だ」

 

 

 今までずっと弧を描き閉じられていた両目が開かれた。

 色の違う瞳がギラギラと輝く。不思議なそれに場違いに魅入った。

 

 

「武器を生み出すのも兵器を生み出すのも人間。不思議だよなァ、同族を殺すために必死になって狂気を体現化しようとする。愚かな行為だと、テメェは思わねェか?」

 

 

 その言葉にシーザーは、科学者であり殺戮兵器を生み出す自身を、真っ当から否定しているのだと捉えた。

 恐怖に浸っていた感情の中にふつりと怒りが湧く。

 

 それに男は気付いたが、素知らぬフリをし、続けた。

 

 

「そんな狂気を持つ人間は、自分の才に(おご)り傲慢且つ横暴になる。生きていてもしょうがない、生きる価値もない」

 

 

 そしてプツンとキレたのを自覚した。殺す殺す殺す!自身自ら殺してやると技を放とうとした時、男が笑った。

 

 

 

「お前はおれを、裏切ったな?」

 

 

 

 シーザーの毒ガスの攻撃を食らい、普通に男は立っている。まるでただ海風に当たっていますと言わんばかりの平気な顔で。

 

 男は近付きながら、普段は糸で固定しているカツラを取った。シーザーはいよいよ声さえ出なくなる。

 

 

「お、おっ……お前〜〜〜!!?」

 

「どうした?まるで化け物に遭っちまったって顔だなァ」

 

「な、何でお前が…!?それにどうして俺の毒ガスを食らって普通でいられるんだ!!?」

 

「あぁ…まぁ色々前にあってよ、大分毒とはお友達になったんだ」

 

 

 ゴンと、シーザーの顔の横で男の手がぶつかる。

 

 壁ドンだ。だがこんなに嬉しくない壁ドンはきっと無いだろう。殺人犯が包丁を自身に向け、今から殺しますと笑いながら言われて、喜ぶ人間がどこにいるだろうか。

 

 

「さぁ、モネの居場所を吐いてもらおうか」

 

「だ、誰が服じゅ……」

 

 

 瞬間すぐ真横で武装色に包まれた拳が壁にぶつかった。攻撃を吸収しきれなかった壁は凄まじい音を立て瓦礫になる。

 震えながら錆びついた機械のごとく振り返れば、数部屋巻き込み穴が空いていた。

 

 

「逃げようとした瞬間テメェの顔を潰す。能力を使おうとしても同様だ。利口になれよ」

 

「ヒ、ヒィィィ」

 

 

 覇気を纏わせた糸がギリギリと肉を軋ませ、シーザーの肢体を拘束する。

 

 最初から勝ち目などなかったのだ。

 

 招いた瞬間から…いや、招く前から己が気付かなかっただけで、既にこの部屋には糸が張り巡らされていたのだ。

 

 

 己はしかも、最も密に展開されている糸の上。肢体は覇気のせいでガス化出来ない。それ以上に恐怖心が身体を支配し、ろくに思考回路が回らない。泣きたくなった。

 

 

「さ、地獄へのデートをしましょうか」

 

 

 敢えて狐用のスマイルを浮かべ、ドフラミンゴは笑った。

 それにチビる思いで、シーザーは赤べこのように高速で頭を上下に動かした。

 

 長い髪も相まって、宛らその様子はロックバンドのヘドバンをかます歌い手のようだった。

 

 

 

 

 

 -----

 

 シーザーを蓑虫状態にし、市中引き回しの刑のように引きずりながら、モネを探している。

 

 

 だが姿が見当たらない。奴の言う「黒い男」が既に連れ去ってしまったのか…それともローや麦わらの手中にあるのか…取引するなら手は出さないだろう。

 

 出した時、おれが何をするか向こうも分かっているはずだ。既に怒りゲージは振り切れている。

 また奴から聞き出した情報を含め、おおよその今後の展開が把握出来てきた。

 

 

 

 先ずローだが、黒い男に逆アプローチされた事は確かだろう。ジョーカーの際はドレッシング…じゃなくて、シーザーを交渉材料に取引を持ち出したらしい。

 

 

 だがおれにとってこいつはモネを見つけ次第、ボコボコにする予定なので所詮死んでも構わない。

 それを理解しているためモネを持ち出したのだ。…いや、元から狙いはそちらにあったのかもしれない。

 

 おれの目に付く範囲では、絶対にファミリーに手出しは出来ないからな。黒い男はそこを狙ったんだろう。

 

 

 しかしローがただ良い用に利用される男じゃない事は分かっている。

 だって七武海になるために、大量の海賊の心臓を交渉道具に持ってきたぐらいだぞ。

 

 お前とんだサイコパスになったな…。

 

 

 あいつとは結局まだ一度も会っていないが、打倒おれに向け進んでいるのは確かだ。その進み方がここ数年で急速なのも理解の上。

 もうすぐおれの首を取りに来るだろう。

 

 やられるわけにはいかない。まだ天竜人どもを堕としていないからな。

 

 知り合いの天竜人も他の天竜人数人と協力関係を組み、改革を起こそうとしているようだ。

 そんなに人間感情を持った天竜人がいるなんざ知らなかった。

 

 あとよく分からん宗教も随分前に建てていたようだが、それに関してはノータッチだ。

 

 ヴェルゴも止めろよと思ったが、まさかのあいつも乗り気だった。いつの間に仲良くなってたんだよ…。

 

 

 いや、それよりも驚いたのはヴェルゴに東洋系のえっらいキレイな嫁さんがいたことだよ…報告し忘れていたと聞いてまぁ…天然の奴らしいと思ったが……。

 

 

 

 

 余談はさておき、本格的におれも畳み掛ける時期が来ている。

 ローが単体でも、麦わらと組んでいてもいいように布陣を揃えておく必要がある。

 

 奴らだけなら仲間だけでも大丈夫だ。

 しかしチャンドーラ_____黒い男が率いる勢力が不穏な動きを見せているのも知っている。

 

 

 ローがモネを交渉材料に使いおれを七武海から下ろした上でドレスローザの奪還、もといおれの失墜を狙うのだろう。

 

 それに乗じチャンドーラも攻め入る気だ。確実におれの息の根を止めるために。

 

 

 幸な事に革命軍とはある交渉材料を使い、連絡を取れている。

 ロー(+麦わら一味)はファミリーが、チャンドーラには革命軍の人員を当てる。

 

 絶対に来るかは分からないが、情があるのなら来るに違いない。間違いなく一部は来る。じゃなければ政府に行っていた意味が無くなるからな…。

 

 しかし完璧に倒せなくても問題はない。黒い男さえ殺せれば終わりの組織だ。

 

 

 

 また同期して国王も終わりにする。ドレスローザの国王をヴァイオレット_____ヴィオラ王女に返還する。

 

 長かったがもう十分国の体制も周辺国家との安全も築いた。それに彼女自身が強くなった。

 もう潮時だろう。

 

 そして後は_____ファミリーには選択させるが、おれに着いてくるか否かを問う。

 

 

 最後の大詰め。数年以内に起こる人間宣言。思った以上に天竜人のあいつは尽力してくれているらしい。

 

 またその後、世界規模のクーデターが起こる。大きな変革、それを指導して天辺を崩す。

 これに関して言えば、おれの存命中に終わらない可能性が高い。

 

 革命とは長い時間を費やすものだから余計にだ。

 

 

 故に着いてくる奴だけだ。言うなればおれの意志を継いでくれるかどうかということになる。

 

 

 

 

 

 

 しっかしやっぱりモネはいねェか…。

 一通り探し終えようとした所で、麦わら一味の姿が………

 

 

「!?!」

 

「おいだすげ……むがっ」

 

 

 咄嗟に隠れたが……。シーザー何言ってんだちょっと黙ってろおい。奴にだけ殺気を向ければ黙った。

 

 何してんだと思えば、映像に映っていた子供たちを救助しているらしい。あーマジかよ甘ちゃんだらけじゃねェか。

 流石に好きでも糖分高過ぎると吐きそうだ。高血糖、高血糖。

 

 道を引き返そうと思ったがまた麦わらの一味である。

 

 

(……挟まれてんじゃねェか…!!)

 

 

 一旦近くの部屋に隠れ、脱出までの算段を立てるがどうにも難しそうだ。

 

 こいつを利用するしかあるまい。糸を使えば正体がバレる可能性があるため、使えない。

 人を(たぶら)かすのは得意だが、ここまで嫌悪を抱く奴は初めてだ……殺しちまおうかもう…。

 

 

(………殺すか否か…)

 

『…利用して暴れさせろ。その隙に逃げればいい』

 

 

 あ、おじーちゃん起きたの。

 

 そう思ってればぶん殴られた。こいつ…!!シーザーが余計に怯えた。

 

 

(……確かに逃げやすくなるだろうが…麦わらたちにも影響が出るだろ)

 

『こんなんで死ぬんだったら、おれが失脚してるわけねェだろうが、ア?それと暴れさせれば恐らくこいつは、兵器を使う序でにプロモーションとして実際に使用している映像を流すだろう。最初の映像では使用している様子を流してはいなかったからな』

 

(…?それにどういう意味があるってんだ?)

 

『狂気の映像は、同時に人間の抵抗心を煽る』

 

(……!今後の天竜人へのデモ用の布石ってわけか)

 

『分かったら退け、おれがやる』

 

 

 一瞬そのやるは殺すの方かと思ったが、奴と代わればシーザーを上手く誑かしている。

 …あ、出た。信仰心の目だ。

 

 

「分かった!俺が世界一の科学者って事を世界に知らしめてやる!!シュロロロロ!」

 

「フッフッフ」

 

 

 シーザーはオモチャを買ってもらった子供のように駆けて行った。次いで麦わらたちの「追えー!!」という声が廊下に響く。

 あいつが天才なのかバカなのか、本気で分からなくなってきた。

 

 まぁ良かったと思っていたら、何故かジョーカーが戻ってくれない。

 

 

『…ジョーカー???』

 

「ちょっとな」

 

『ちょっとじゃねェ!……お、お前まさかローを…!?』

 

「違ェよ」

 

 

 探るようにしているのでモネを探しているのかと聞いたが、操られてるなら気配が知れないだろと言った。

 そうだ、能力者の能力にそんなのあったな…ドジ……うっかりしてた。

 

 

『何探してんだよ』

 

「四肢」

 

『……?』

 

 

 そうしてジョーカーが研究室をいくつかチンピラのように蹴り破っていれば、確かに四肢があった。まさかの冷凍室に保管されていたが。

 普通なら凍傷を負っているはずだが、その四肢にはない。まさか……

 

 

『…モネ』

 

「壊死してねェってことは生きてんだろ。能力を考えれば随分妥当な場所に入れてたな」

 

『…ローの仕業か』

 

 

 肉体改造されてるなと、ジョーカーは普通に言っていたが怒るとこだろ。嫁入り前の娘に何をやってるんだあの野郎は。

 

 

「そう怒んな、回収しただろ」

 

『………』

 

 

 まぁいい、ただ殴るリストには入れておく。会った時は覚悟しとけ。

 ジョーカーとようやっと代わった後、無事に一味とも出会わず外に出られた。

 

 途中で轟音が鳴り響き始めたので、予定通りシーザーが暴れてくれているらしい。

 

 

 何故かベビー5とバッファローに距離を取られたが、おれが暴れていると思っていたらしい。おいおい、流石に時と場所を弁えるぜ?

 最初の一発はおれがやったけどな。

 

 あと一応おれ=今の変装とバレるのはマズイので、演じたままだ。

 ベビー5が一瞬「わ」と言い掛け、バッファローが口を塞いだ。ナイス。

 

 

「さ、行きましょう」

 

「それ……」

 

 

 おれが持ってた四肢を見て引き攣った顔を浮かべたベビー5はさておき、帰りだ。

 白猟のスモーカーはブチ切れていたが、知ったことではない。

 

 

 

 …モネはきっと大丈夫だ。今はそう思うしかあるまい。

 これ以上ここにいるのは危険な上、素性がバレると面倒なことになる。

 

 ローが身柄を捕獲しているか、黒い男が持っているか、はたまた双方間で取引をした後脅してくるのか分からないが、どう転んでもいいよう計画は立ててある。

 

 でももし少しでもモネに傷があったら、マジで許さねェからな…。

 

 

「ハァ……」

 

「どうしたの若様……あぁやっと言える…」

 

「ン?疲れたなぁと思ってな」

 

「………」

 

 

 時間が無いのだ。早く進めなければ。

 そう思いながら笑えば、ベビー5は泣きそうな顔をしていた。

 

 

「モネは大丈夫だ。お前らが信じないで、誰が信じる?」

 

「それもそうだけど……若様は…」

 

 

 子供の頃のように撫でれば、更に泣き出した。対してバッファローも飛びながら鼻を啜っている。

 

 

「……重かったら降りるぞ?」

 

「大丈夫、だすやん…!」

 

「……わか、…さま」

 

「泣くなって」

 

 

 情緒不安定気味な二人を宥めていれば、ふいに見えたジョーカーの姿。

 

 

『………』

 

 

 憂を浮かべる目で、おれたちを見ていた。

 

 

 

 

 

 みんなそんなしけたツラして、どうしたっていうんだか。




主人公(狐)
身内に甘い打倒天●人。時折 ぬけてる。変装名人(?)。ロ?におこ。

ジョーカー(モフモフ)
主人公守り隊兼おとしゃん。苦労人の度が最近過ぎてる。
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