バケモノ_____おつるがそう思っている存在から連絡があった時、彼女はおかきを食べていた。元々つい昨日の七武海の特権乱用
交渉の内容はおつるさえ知らないものの、相当ヤバイことをしているのだとは理解している。それに伴い、交渉についてロシナンテに調べさせていたのだ。
「あんた何しでかしてんだい!勝手に色々と…」
《そう怒んなよ。腰痛めるぜ?》
「あ!?」
このクソガキと思った所で、突然聞こえた小さな声。
《おつる…もうおれじゃ無理だ。なぁ、もう……》
「…?何だってんだい。ちょっと落ち着きな、ゆっくり話し合い……」
そこで突然蹴り破られた扉。勢いよく吹っ飛んだそれは、おつるのデスク目掛けて一直線に空中を飛ぶ。それを蹴り一つで返し、蹴破った人物は戻ってきた扉に顔面を直撃し地面に伏した。
男の持っていた資料が宙を舞う。
「いっでェ〜〜〜!!」
「何だ、ロシナンテかい」
今忙しいんだよと言い掛けロシナンテを外に出そうとし、その異変に漸く気が付いた。
まるで昔センゴクが拾って来た時のような、そんな恐怖に歪んだ表情。でもその色にはどこか心配な色も含まれている。
「兄上、あにうえ死んじゃう。あにうえ、あにうえ…」
「落ち着きな!!」
おつるのビンタを食らった男は壁に減り込んだ。肢体は数度痙攣し、壁に手を付け顔を引っ張り出した。埃は舞ったが、先程より幾ばくか落ち着きを取り戻している。
「……おつる、さん。兄上____が、しんじゃ、う」
「……!あんた、記憶が戻ったのかい…!?」
「兄上が、あにうえ、おつるさ……」
様子はしかしいつも通りではない。記憶を思い出したはいいものの、混乱の方が強いのだろう、ケアは取り敢えず後回しだ。
この状態を引き起こした原因を知る必要があると、床に散らばっていた資料を拾った。
「……何だい、これ」
「あにうえ、あに、う え………」
書かれていたのは交渉の内容と、ドフラミンゴ自身が掲示した自分の交渉物の有用性など。捲ったページ数枚には、その有用性を立証するに当たって行われた実験の数々が記載されていた。
慌てて足にへばりつくロシナンテを引きずったまま、おつるは放り投げた電伝虫を持ち直す。
「…あんたが言っていた内容は大体分かった。要は力を貸せってことだね」
《フッフッフ…そういうことだ。だが七武海を辞める前提のガキに、あんたがどうこうする理由はあんのか?》
「……分かってて言ってるだろ、あんた」
電話越しの相手は愉快そうに笑った。男はおつるがドフラミンゴに向ける母親の愛情に似た感情を、理解して言っている。詰まり思い切り利用してやると、面と向かって言っているようなものだ。
本当に趣味が悪いと、ため息を吐いた。でもと、彼女は続ける。
「止めてやるさ。あんたにゃ出来ないんだろう?」
《フフフフ、口の減らねェ鳥口だ》
「あんたにゃ言われたくないね」
電話はそこで一方的に切られた。本当にマナーの悪い男である。そう思いながら紅鶴の捕獲に向け、思考を巡らせる。
その中で協力者の候補として上がったのは、同じ七武海の男。
ダイヤルを回し掛ければ、電伝虫はロシナンテ以上の目付きの悪さになった。
《…何だ急に》
「ちょいと協力してくれるかい」
そしてロシナンテの持ってきた資料の内容を大まかに話せば、ローの感情を写し電伝虫の目が変わる。
《てっきりあんたは…あの男を止めるのを諦めてると思ってたんだがな》
「…煩いよ、あたしだってまだ現役だ」
海軍と海賊ではあるが、目的は一緒だ。ローはおつるの誘いに乗った。
羽を欠けさせていく鳥、それを捕まえようと組まれた意志に大きな灯火が点く。
おつるの足元で若干の精神混乱を見せる男もまた、同じ意志を見せていた。
「……止め、なきゃ」
_____バケモノはロシナンテに殺意を見せた幽霊ではなく、男自身だったのだ。
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ローが同盟相手でもある麦わらの一味と共にドレスローザに向かっている中、その電話が来た。
「誰からだートラ男?」
「…今電話中だ。麦わら屋、お前はあっちに行ってろ」
ぶーとルフィが口を尖らせる横で、ローは事の事態が一刻を争うことを知った。
それに準じて海軍からはおつるやロシナンテが応援で来ることになったのだ。
チャンドーラがローたちの襲撃に合わせドレスローザを襲うことは分かっていたが、おつるによればまさかの革命軍も動いているらしい。ドフラミンゴも切れるカードを使い、己の有利に立とうと動いているのだろう。
それも思考は己よりもよっぽど数歩先を見据えている。
《こっちも色々ある。遅れるかもしれないが、持ち堪えておくれ》
「あぁ…」
思う所は多い。記憶が戻ったことによるロシナンテの精神状態の悪化や、ドンキホーテ側の大将の精神状態。本懐がメインだというのに、その前に何故ここまで医者の思考に陥っているのか、
そんな中不意に影が落ちる。上を見れば、ナミが皿に乗った肉を持っていた。
「ほら、体力付けとかないと保たないわよ」
「いら…」
ないと言い終わる前に、ナミの手にあった肉は一瞬過ぎった黒い影と共に忽然と消えた。犯人はうんめーと言っている麦わらのあいつである。
「こら!!もう自分の分食ったでしょうが!!」
「えートラ男食ってなかったろー?」
「あんたが食う前に盗ったんでしょ!!」
ナミの一撃により沈んだルフィを見ながら、ローはふと疑問に思っていたことをポツリと溢した。
「同盟は組んだが…それでも麦わら屋、どうしてお前は俺に協力してくれるんだ?」
「にしし!んなもん決まってんだろ、トラ男はおれの仲間だからだ!」
それにと、半分埋もれていた頭を起こし、猿のようにジャンプし着地したルフィは、ローの黒鉛色の瞳を見つめた。その目は純粋で、太陽の面影を持つ。
「あいつ、止めねェと」
エースが亡くなった時に感じたツンとする死の匂いを、マリンフォードで見た際感じ取ったのだという。その言葉にやはりと、ローは瞼を閉じた。ルフィの野生的感を以ってしてそう言うのだ。おつるの電話の内容は確実だろう、ロシナンテが調べたのだし。
香る潮の匂いにつられ頭上を見れば、青い空が広がっていた。
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ドレスローザに侵入後、ローはモネを連れ取引の場所へ一人で向かい、麦わらの一味は招かれた闘技場でドンキホーテファミリーのメンバーと一対一の試合をすることになった。
景品は肉などそれぞれの嗜好を突いたものばかり。ルフィが肉の単語で涎を垂らしていた所を殴っていたナミも、金のワードで目がベリーになった。
一方で一部参加していないドンキホーテのメンバーはチャンドーラ一味の応戦と偵察を兼ね、国を見回っていた。シュガーもその一人だ。隣にはトレーボルも一緒である。
「べへへ〜俺たちに楯突くなんてバカだんね〜〜」
「どこからでも来なさい!オモチャにしてボッコボコにしてやるわ」
その時二人の目の前に現れたのは、黒いローブの人物。剣の切っ先が光を反射した瞬間、トレーボルは一撃で地面に伏した。
「……!?誰!!」
シュガーが叫ぶのと、ローブをまとっていた人物の帽子が取れたのは同時だった。
覗いたピンクの髪に、どこか見覚えがあるような気がした。
今の状況はかなりまずい。元々戦闘には出るなとドフラミンゴから言われていたが、彼女はそれでも戦いたいと強く願い、上司のトレーボルに協力を申し込んだのだ。
戦法としては、トレーボルが対象の敵を足止めしている間に、シュガーが回り込んでオモチャにする手筈だったが、既に根底から崩れてしまっている。
のびている男をひと睨みし、シュガーは唸った。
「あんたもしかして…チャンドーラって奴の一味?」
「一味じゃないわ。でも協力関係ではあるわね」
「あんな下衆な奴らと組んでるなんて…正気を疑うわ」
「……下衆?」
その言葉に女は笑い出す。どちらが下衆なのか、彼女が辿って来た人生を考えれば、その答えは明白だった。
「国を奪った海賊と、その海賊たちを潰そうとしている海賊。一体どちらが悪か、そんなもの明白じゃない」
「……!まさか、あんた……」
美しい瞳がシュガーを映す。この時のためにずっと耐え、鍛えて来た。覗く肢体は剣闘士のように筋肉質ではあるが、それも猫のような無駄のない筋肉である。
剣先を少女に向け、彼女は名乗る。
「私はレベッカ。お祖父様やお母様の仇を……今この手で果たすため参上した」
「っ…!!」
戦況が不利の中、己の能力が肉弾戦に富んではいないことを重々理解しているシュガーは、逆方向に向かって走り出した。他の仲間に…しかし、空を切る音と共に激痛が背中に走る。
「う……ぁ」
小さな肢体は斬撃の威力を受け、壁にぶつかる。背中はぱっくりと切れ、出血が酷く、ぶつかった衝撃で体の隅々に青あざや擦り傷ができた。
痛いと呟けども、その痛みや苦しみはレベッカの比ではないと会って早々だが理解した。
だからこそ苦しみを漏らしちゃいけない。自分のやったことに責任を持たなきゃいけない。歯軋りし、背中に隠していたナイフを持って駆け出す。己の大切なものを___守るために。歪んでいるけれど、それがシュガーにとっての正義なのだ。
「若様には…絶対手出しさせない!!」
「邪魔よ!!」
宙を舞ったナイフは刃が両断され、カランと軽い金属の音を立てながら地面に落ちた。その柄を持ったまま、ゆっくりとシュガーの肢体は地面に倒れようとする。その様を、剣を鞘に戻しながらレベッカは見ていた。
しかしシュガーの肢体は地面に倒れず、代わりに堪えるような、そんな声が聞こえた。
その人物の腕の中にシュガーの小さな肢体がキャッチされる。
「……レベ…ッカ?」
「……!ヴィオラお姉様…」
感動の再会…ではないのだろう。今二人が向かい合うのは敵同士、それをレベッカも理解していたし、ヴァイオレットも直ぐにこの場で理解した。
呻くシュガーの肢体をゆっくりと下ろし、被害の出ない場所まで運ぶ。
「…今までどこにいたの、レベッカ…。ずっとずっと探していたのよ…?」
「………」
ずっとこの日のために修行して来たレベッカも、何度もヴァイオレットが自分を探していたことを知っていた。しかし捕まれば自分は殺されてしまうと、必死に隠れて来たのだ。
それにあの男のお気に入りになるぐらいだったら、自分は死を厭わないと自覚していた。それでもずっと男の元からヴァイオレットを救いたいと願っていた。
「ヴィオラお姉…いえ、ヴァイオレット。貴女も…あの男に洗脳されてしまったのね」
「何を言ってるの…あの人は、本当は……」
「煩い!!」
白くなるほど握られたレベッカの手が、ヴァイオレットの視界に映る。どれほど彼女が苦しみの中で生きて来たか、自分には計り知れない。でも、間違った道をこれ以上進んではいけない。
「彼が私の殺意や苦しみを受け止めてくれたように、貴女の苦しみも悲しみも……今度は私が受け止めて上げるわ、レベッカ」
「邪魔しないで!!お願い……お姉様…じゃないと私は……っ、…私は!……貴女と戦わなくちゃいけなくなる…!!」
「…敵同士なのよ、当たり前じゃない」
感情に流されちゃいけない。これ以上彼の邪魔はさせまいと、ヴァイオレットは己の武器を握った。
暗器に富んだ彼女の武器、それを構え目の前の敵に向き直る。
「…あくまでも、退いてくれないのね」
「お互いそれは分かっているでしょう」
自分たちの持つ覚悟のために、お互いの今まで培って来た全総力を以って立ち向かう。
ヴァイオレットは懐から取った第二波を投げ、その武器はレベッカの足元に向かった。掠ったものの致命傷になる前にすんでの所であんきを避け、後方に跳びのきながらバックする。
それから一進一退の攻防が続いた。しかし未だ余裕そうなヴァイオレットの様子に、レベッカは眉を寄せた。
先程からの攻撃然り感じていた違和感。まるで攻撃がわざと避けられ易い場所を狙っているかのような、そんな違和感だ。
何か隠している。そう思い口を開こうとした所で、突如足から力が抜け落ちた。
「!?」
「…ふぅ、やっと効いてきたのね」
何をしたとレベッカが声を荒げれば、ヴァイオレットは胸元から小瓶を取り出した。
「暗器にねぇ…ちょっと細工をしておいたのよ。思いっきり当たっちゃったら、即あの世行きの強さなんだけどね」
「…っ、だから掠る程度の傷を…!」
「…貴女を殺すなんて、私には無理だもの」
それにとヴァイオレットは続ける。優しく笑んで、剣を落とし倒れたレベッカの頰に触れる。
「貴女の苦しみも悲しみも…受け止めるって言ったでしょ?」
「離して!!」
「だから貴女も…真実を知って」
ヴァイオレットはおのれの能力を使った。その時過ぎったのは、ドフラミンゴの姿。
王位を自分に戻すと言う男に、必死に考え直るよう言っても、終ぞその考えが変わることはなかった。
これも運命なのだと受け止めて、涙した彼女に男はこう言った。
_____何で泣いてるんだ?
その瞳は、悍しいほど綺麗な海の色だった。
主人公
身 ちに甘い●●●りゅ、biと。時折▽けでえう?
ジョーカー(モフモフ)
主人公守り隊兼おとしゃん。苦労人。辛い。
シュガー&ヴァイオレット
若様守り隊。
レベッカ
主人公に敵意メラメラ。