世界はあなたを愛してる   作:アビ田

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マリージョア襲撃事件に突っ込む主人公。
ここらは記憶が薄っすらなので何か間違ってたら、申し訳ないです(汗)


魚釣り

聖地マリージョアから幾分か離れた場所。

 

建物自体も高価な場所だが、部屋の内装はどこを見ても金ピカだった。

 

 

その場所でそわそわとする男性。服は宇宙服と酷似している。

 

あの方はまだかえとずっと部屋を回りながらうろちょろ動く様は、正しくアイドルを待つファンのようだ。

 

 

そこに控えめなノック音。

 

 

男はパッと顔を明るくし、扉の前で止まった。

 

 

フフフと息を弾ませるように笑う独特な笑い声。

 

あの方がいらっしゃった!沸き起こる高揚は留まることを知らない。

 

 

「そんなに待たせてしまったかな」

 

「ぜ、全然待ってないえ!寧ろ今来たばっかりだえ!!」

 

 

嘘である。もうかれこれ1時間以上はそわそわしている。

 

入ってきた金髪の男は嘘だと分かりながらもまた愉快そうに笑った。

 

 

普通ならば無礼だえと言われて殺されてもおかしくはない。

 

しかし宇宙服を着た男はそれをしない。

 

 

金髪の男の人を魅きつける圧倒的なカリスマ性に、そして氷河よりも冷たい殺意に畏怖しているのだ。

それは相反して今では信仰にも似た感情になっている。

 

 

自分が神ならば、目の前の男はそれよりも崇高な存在だと信じて疑わない。

 

 

その有様はどこか滑稽でいて、天に君臨する存在が目下の者に頭を下げる光景は異様だった。

 

 

「じゃあ私と久しいゲームの続きでもしようか」

 

 

白い歯を見せて、ニコリと笑う様に目が離せない。

 

 

手持ち無沙汰にチェスの駒を操る長い指も、自分よりも遥かに高い身長ながら細い体躯も、どこを見ても美しい。

 

名画の中から出てきた住人なんじゃないかと本気で思う。

 

 

 

強張る体を動かして、天竜人の男は金髪の男の前に座る。

 

 

手配書で眺める男とは全く違う容貌。

 

本当に同一人物かと疑いたくなるが、確かに同じその人だ。

 

 

「名前で呼んで欲しいえ…いい加減……」

 

「…フッフッフ!」

 

 

膝を縮こませる天竜人に男はさらに楽しそうに笑い、座っていてもソファに有り余る長身を生かしてぐいっと顔を近付けた。

 

 

 

 

おれが豚の名前を覚えるわけねェだろ。

 

 

そう言われた言葉にカチンとくる。

 

殺してやろうかと何度目かの感情を出しかけたところで、男は自分の名前を甘く呼ぶ。

 

 

本当に鞭と飴が上手い男だ。

 

 

抜け出せない、このドラッグにも似た甘さと苦味に似た苛立ち。

 

 

そのカリスマ性にもう既に自分は抜け出せないのだと男は薄々理解していた。

 

自分の高貴なプライドが邪魔をする時もあるが、それも男の前では無に帰す。

 

 

この関係にある種の依存性を持ちながら、天竜人の男は今日も口軽く話すのだった。

 

 

 

散々こちらに優位に進ませながら、最後はしっかりと勝利を掴む。

 

 

そういう所も本当に、抜け出せない理由の一端になっているのだろう。

 

 

 

 

 

-----

長らくぶりにおれを信仰の対象のように見ている天竜人と会い情報を得た。

 

本来なら会いたくもないが、利用できるものは利用せねば勿体無い。

 

 

会うきっかけを作ったのは魚だった。

 

 

 

魚といっても魚人だが、そいつはおれのように天竜人の豚どもを至極恨んでいるようだった。

 

偶然寄った酒屋に酔いつぶれていた男。

 

 

名前はフィッシングだか何だかと言っていたが、呂律が回っていなかったのでよく聞き取れずじまいだった。

 

おれも仕事が上手く行った帰りでかなり飲みまくっていた。

 

おかげでアジトに帰るのが予定の数日遅くなったのは悪かったと思っている。

 

 

気付いたら知らない島にいたのだ。切実に樽で飲むのは控えようと思った。

 

 

 

まぁそんなわけで魚人の男にあったのだが、お互い天竜人とは直接言わずに愚痴を数時間飲みながら言い合う始末だった。

 

 

最初に向こうが「あの野郎ども」でおれも察したんだから、恨みといのは恐ろしいと思う。

 

何となくで分かっちまうんだから。

 

 

 

ベロンベロンに酔って、意気投合したおれたちはそのまま朝まで飲み明かした。

 

朝起きた時には奴と同じく外に放り出されていた。

 

財布の中身が無かったので勘定の方はしっかり頂かれたらしい。

 

 

というか魚人の男の分まで払っていた。

 

 

 

おれは酔っても記憶は全部あるタイプなのでそのまま帰ることにした……が、起きたあちらさんに目が合った瞬間殺されかけた。

 

どうやらおれと違って酔うと記憶が全部無くなるタイプらしい。

 

着替えはしていたものの血の匂いが酷かったせいもある。

 

 

それに天竜人はおろか人間嫌いの男の隣にいてみろ、そりゃあ殺されかける。

 

 

 

魚人の男はおれが好ましく思うタイプの甘い大人だった。

 

だから手出しはしなかったが余計にナメるなだのと、そのつもりも無かったのに煽ってしまったのだから自分が情けない。

 

追いかけっこは数時間続いたが何とか逃げ切れた。

 

 

にしてもバケモノじみた強さだった。

 

 

仕事は無傷だったはずだがここ数年で一番の傷だ。

 

 

「痛ェ…」

 

「若様また5股かけたの?」

 

「………トレーボルか」

 

「うん!モテる男は大変だんねーって」

 

「……取り敢えずおれは遊び人じゃねェから」

 

 

ベビー5にミイラ男にされながら疲れた心を癒していたはずだったのに、いつのまにか胃が痛くなっている。

 

 

トレーボルお前とは一度腹を割って話し合わなきゃいけねェようだ。

 

有る事無い事ベビー5に吹き込んでんじゃねェ。

 

信じやすいタイプなんだから。

 

 

「…若様大丈夫?」

 

「フッフッフ、あぁ、大丈夫だ」

 

 

本当いい子だなベビー5。天使だ。

 

 

 

 

そんな軽い冗談を踏まえていたのが数週間前。今は天竜人と会ってから数日後。

 

 

得た情報は最近の天竜人どもの大まかな動向だ。

 

それにおれが別方面で得た情報を照らし合わせる。

 

 

「……やっぱりか」

 

 

フィッシング何とかと言っていた人物は、かなり大物の探検家だった。

 

 

あのでかさと強さ、それに魚人という条件で絞り込めば少ない情報だが出てきた。

 

 

 

名をフィッシャー・タイガー。

 

魚なのか虎なのか分かりづらいわ。

 

 

特に目についたのは“奴隷”の文字だろう。

過去の奴隷をそれとなく調べてもらったがあるにはあった。

 

 

子供の頃に奴隷云々と思っていた時期もあったが、打倒豚ども掲げてから等閑にしていた問題か。

 

 

奴隷は定義とすれば人間以下の存在だ。

 

この世の気味の悪いところは世界貴族が奴隷を持つことを容認している事実だ。

 

普通は奴隷がいる自体世界デモが起きて然るべきだろう。

 

 

しかしそれが出来ない体制が、法がある。

クソみたいな世の中だ。

 

 

早くその全てを根本からぶっ壊してやりたい。腹の奥のどす黒い欲求が渦を巻いた。

酔ってないが気持ち悪い。

 

 

 

それにフィッシャーが酔った中で口にしていた奴隷の自由というワード、あいつは何かしでかす気だ。

 

それも恐らく、この先すぐに。

 

 

 

根拠がないわけじゃない。

 

 

奴は会話の中に多くの具体性を持った言葉を言っていた。そこから推察するに奴隷の奪取、または解放を狙っていると見ていいだろう。

 

ただ人間を嫌っているのは確実だ。

 

甘さを見れば魚人しか助けない可能性は低いだろうが、万が一もある。

 

 

もし人間の奴隷が残された時に救ってやる奴がいなければ、そいつらの絶望は考えなくとも分かるだろう。

 

終いには激高した天竜人に殺されるやもしれない。

 

 

秘密裏で動くのも悪くはないだろう。

 

糸で作った影武者の効力も試してみたい。

 

 

 

思い立ったが吉日だ。

 

 

 

フィッシャーの動向をバレないように探りながら天竜人のコネを使い作戦を立てる。

 

 

誰にも言わない完全な独断行動。だが豚どもに一泡吹かせるいい機会だ。

 

船長の責務から考えれば咎められて当たり前だが、おれの私怨を偶には発散させてくれ。

 

 

もう恨みが溜まりに溜まって無差別に周囲の人間を殺しちまいそうだ。

 

 

 

ジョーカーはおれの行動に特に口を挟まなかった。

 

ただ一言、精神と肉体の疲労でベッドに突っ伏していた時に言われた。

 

 

『…気を付けろよ』

 

「……父上…」

 

 

 

父親のような優しさ。

 

 

 

それに当てられたせいか、別に言葉にしようと思わなかったのに勝手に声が漏れた。

 

 

父上が亡くなっていたとロシーから聞いたのはごく最近だ。弟は余り父上についておれに語りたがらない。

 

筆談越しなのもそうだがおれと弟の垣根は高い。

 

 

そうだろうな、だっておれはお前と父上を海軍に任せて会いに行こうとはしなかったんだから。

 

 

所詮愛が歪んでいるだのと、お前がおれを嫌っているからと言っていたのは言い訳だ。

 

 

 

お前に会う勇気がなかった。

嫌われていることが確証に至ったら、おれは死ぬと思ったから。

 

…きっとそれさえも言い訳だ。おれは弱い。家族がいなくなれば死ぬ。

 

 

歪んでいてどうしようもない生き物だ。

 

 

「……」

 

 

涙も出ない。そんなおれに奴は無言で撫でる仕草をする。触れるわけもないのに、この動作を何度もするんだ。

どうせいつも通りでけェガキだと思っているんだろう。

 

 

おれが子供の時からこうだ……本当に子供みたいに縋ればいいのにな。

 

 

 

この日は久し振りに、母上の腕の中で眠る夢を見た。

 

温かい幻に涙が出た気がした。

 

 

 

 

 

-----

久し振りにヴェルゴが戻って来たファミリーは宴だった。

 

 

ヴェルゴは常通りコラソンであるロシーを睨み、対してコラソンはヴェルゴに肝を冷やす。

 

そんなファミリーにしては珍しく穏やかな日だったが、グラディウスの爆発によって悲劇に変わった。

 

何のことはない。だすやんが時間を守らなかった、それで爆発した。

 

だが偶々通りかかった若が巻き込まれた。

それだけならおいおい、ドジっ子かお前もなんて笑い話で船長は済ましただろう。

 

 

しかし、ドフラミンゴは爆発に巻き込まれて糸になった……そう、糸に。

 

 

「グラディウスさんが若を殺しただすやんんんん!!!」

 

「!?!?!」

 

 

悲鳴と怒号と滑ってこける音。

 

 

異様な雰囲気に駆けつけたヴェルゴが、ドフィの能力だと告げると、ファミリーはすぐ平穏に戻った。

 

ただヴェルゴは相棒がいない珍しさに、拭いきれない違和感を覚えるのだった。

 

 

「何か仕出かしていなければいいが…」

 

 

 

 

 

-----

 

マリージョアにて。

 

 

「あら●●●聖のご子息の……その小綺麗にしている人間は新しい奴隷アマスか?」

 

「しっ、使用人だえ!!」

 

 

首輪も何も付けていないだろうと思う辺り、自分も大概変わってきているのだと天竜人の男は思った。

 

 

にしても斜め後方にいる元天竜人である男の顔が見られない。

 

綺麗な顔がどんな顔をしているのかと思うがそれ以上に恐怖でちびりそうだ。そう思ってただ正面を見ていた。

 

しかしそれを無視するかのように目の前の天竜人の女はつらつらと喋る。

 

やめて欲しい、本気で。

 

 

「あら、だったら私にくれないアマスか?金ならいくらでも払うわ!」

 

「か、金でどうこうする気はわたすにはないえ…」

 

「いいでしょう?貴方のお父上に言付けてしまうアマスよ、貴方のご子息はちっぽけな奴アマスってね!」

 

「え……えぇー…」

 

 

最早天竜人の男が同じ天竜人に引いている。

 

それを客観的に見ていた金髪の男は喉奥でくつくつと笑った。

 

それにカチンときた女は怒りの矛先をこれでもかと金髪の男に向ける。

 

 

「人間の分際で何を笑っているアマスか!!今すぐその喉を潰すアマスよ、私の奴隷たち!!!」

 

 

いや勝手にやめろえと天竜人の男が口を開き掛けたところで、後ろから長い手が己の首に回った。

あ、殺される?そう思った。

 

 

「フフフ」

 

 

耳元で声がする。絶対怒ってるえ、男は恐怖で身が竦んだ。

 

だが彼自身怒りが湧かないのが不思議だった。

殺されるのは怖いが、それに否定的な感情は出ない。寧ろ殺されて本望な気さえする。

 

 

首元に腕が回り、肩に若干の重さが来る。

 

何これどういう状況だえ?へし折られるの自分の首??

 

 

思考が恐怖で埋め尽くされた男が知る由はないが、金髪の男は体重をかけるようにしゃがみこみ、男の肩を杖代わりのように体重を乗せている。

 

そして男は口の動きだけで女に喋る。

 

 

 

黙ってな、子猫ちゃん。

 

 

 

そしてトドメの女性なら秒で堕ちるスマイル。

 

見事に天竜人の女は膝から崩れ落ちて顔を真っ赤にした。

 

それを知らない天竜人の男は大丈夫かこいつとどこか冷めた目で見つめる。

 

 

「フフフ、今私が頼れるのは貴方だけなんですよ」

 

「わ、分かってるえ…。でもわたすに危険が及ぶことはしないで欲しいえ……父上に怒られる…」

 

 

しっかりしねェと殺すぞ豚、男にはそう聞こえた。いや、絶対心中ではそう言っている。

 

 

元々数週間護衛としてこちらに置いて欲しいと頼まれたのだ。前に負けたゲームの見返りとしてだ。

 

天竜人の男にとっても、崇拝する存在が近くにいるのは嬉しかった。

 

憧れのアイドルが目の前にいる、それも当分。

そりゃあ嬉しいだろう。

 

 

金髪の男が何をする気なのか天竜人の男は知らない。

 

そもそも頭の中身が違うので理解出来るとは思っていない。

 

 

鼻歌を歌いながら体重をわざと肩に乗せてくる男の手の元から逃れようとしながら、取り敢えず命の危機がない事だけを天竜人の男は祈るのだった。

 

 

というかこいつ隠してるだけで絶対いじめっ子だろ。

 

 

 

 

 

それから一週間後。

 

 

 

 

 

世界を震撼させた、フィッシャー・タイガーによるマリージョア襲撃事件が起こった。




主人公(おれ)
猫かぶる時は真摯っ面した一人称私。甘ちゃんと家族は好きな倫理崩壊人間。
胃が痛いしストレス溜まってる。善行をしようと思ってしてるわけじゃない、自分の目的のため。

モフモフ(ジョーカー)
主人公守り隊兼おとしゃん。ウォーミングアップしてたら主人公が何か仕出かす気で心配。
やらかすなマジで。

名無し天竜人
ドフィ教信者第1号。いいように利用されてんなと自分で思ってる。
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