閃乱カグラ ケイオス・ブラッド   作:虚無の魔術師

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えー、今回新しい話を投稿させていただきました。

まぁ前に書いてる途中のものが完成したので投稿してる訳ですが。

少しずつスランプから解放されかけているので、腕を磨いていきたいと思います。


それでは、あまり上手くはありませんがどうぞ↓


百六話 終わり、そして始まり

「飛鳥……!?」

「で、でも彼女は確か───」

 

 

呆然と焔は目の前にいる少女の名を呟くが、紅蓮が即座に首を振った。

 

 

そう、飛鳥はある日を境に仲間たちと共に行方不明になっていた。その存在すらも誰にも追跡できず、死亡を疑われたほど。

 

 

しかし、彼女は今ここにいる。破滅へと進もうとしていた青年を助ける為に。

 

 

 

 

 

 

が、しかし。

それを戦力とは、脅威とは見ない敵が───この場にはいた。

 

 

 

「はははは!驚いたなぁ!ま、さ、かぁ!!本気で助けに来る人間がいるとは!!この世界もまだ捨てたものではないということか!!!」

 

響き渡った哄笑はこの空間に響き渡る。邪魔をされたのにも関わらず、ゼロの顔はまだ変わらなかった。いや、変わる訳がない。

 

 

現れたのはただ一人、しかも少女だ。忍とは言えども所詮は人間。世界を変える力を有する超越者の敵ではない。

 

この場の誰もが、理解している事であった。

 

「────しかし、たった一人で何が出来る?お前がこの戦況を変えられるのか?…………もしや、俺を殺すとは言わんよなぁ?貴様一人で」

 

 

 

 

「──違う」

 

対して、飛鳥はただそう返した。キッパリと宣言してみせる。その上で、彼女はゼロを睨みつける。

 

 

 

「ここに来たのは、私だけじゃない」

「─────」

 

何を話しても無駄だと判断したのか、重苦しいため息が吐かれた。同時に禍々しき魔手が蠢き、天へとそびえ立つ。この世界後と一人の少女を引き裂かんと。

 

 

 

しかし、腕が振るわれたのは縦ではなく、真横だった。白く雪の纏わせる氷の槍と鋼鉄の大きな塊、ミサイルの雨を容赦なく吹き飛ばしたのだ。

 

 

 

火薬を包装したミサイルが起爆した事で連鎖的な爆炎が巻き起こる。一つの爆発と化した現象となり、世界を赤く染め上げた。

 

 

ゼロは首を、首だけを動かす。ゴギリと鳴りそうな程に曲げた顔がある方向にいる人影を目に捉えていた。

 

 

 

「…………厄介ですね、あの腕は。シルバーのミサイルをも正確に撃ち落とすとは」

「ゆ、雪泉ちん………あまり先走らないで欲しいって言うか、此方に標的が来るから、正直あんなのに敵意向けられたくないって言いますか────」

 

冷静に状況を把握する着物の少女 雪泉、その横でブツブツと呟き続ける銀髪の青年 シルバー。先の攻撃は二人によるものだったのだ。

 

 

 

 

「な、なんだ………?どういうこと、なんだ?」

 

 

「…………」

 

 

 

おかしい、とゼロは思っていた。

彼は自らの力を内包する結界を張ることで暴れることが出来た。しかし、外から忍である者達に簡単に破れるほどの強度ではない。

 

現にユウヤに割られたが、それが微弱でも神の力であったからこそ。僅かにもゼロの結界を穿つ事が出来たのだ。

 

 

しかし、彼女らは違う。神の力を宿していた訳ではなく、普通より強い程度の忍には、到底破ることなど出来ない。

 

 

 

 

 

 

考えられるとすれば一つ。

 

 

手を貸した、誰かがいる。ゼロの結界を破る事の出来る、『誰か』が。

 

 

 

 

 

 

ゴリュ、と。

 

有り得ない動きを見せた眼球だけが、『誰か』を捉えた。

 

 

暗闇の内側。

闇を打ち消すような存在感を持つ、一人の男がいる。その『誰か』をゼロは記憶していた。

 

 

 

「混沌派閥の────カオスの離反者か」

「オレをそう呼ぶのか、『四元属性』の王」

 

 

その『誰か』の名は───カイル。

両腕に義手を備えた光の異能使い。ゼロは彼を“離反者”、そう呼んだ。

 

 

「そうかそうか………全て貴様の、貴様が仕組んだ事か。確かに、貴様になら結界は破れるだろう………なッ!」

 

 

肥大化した魔手が振るわれ、全てを引き裂きながら迫る。災害にも等しい一撃に、カイルは身動ぎすらしない。

 

 

それどころか、彼の指先から放れた一条の光によって消された。か細い光線が禍々しい黒を容赦なく消し飛ばす。

 

 

指を折り曲げ、義手を見下ろしたカイルは拳を握り締める。その上で、納得したように漏らした。

 

 

「────やはり、間違いではないか」

「何がだ?貴様の強さは認めるが、俺を倒せる程では無いだろう。自らに自惚れたりでもしたか」

 

 

嘲る声にカイルは答えない。彼はゼロを指差しながら、ハッキリと告げた。

 

 

「超越者 ゼロ、お前の強さは絶対だ。しかし、完全な無敵ではない」

「…………」

「お前が世界を滅ぼせるのなら最初からそうしていた。しなかったんじゃなくて、出来なかった。

 

 

 

 

何故ならお前の強さは────時間制限による無敵。お前はこの世界で超越者としてはいられない、精々『法則』としての力を振るうことしか出来ない。制約を掛けられた強さの正体はそれだ」

 

自らの力、その真意を見透かされているのにも関わらず、ゼロは平然としていた。むしろどうでも良いように大した反応がない、今更か?とでも言いそうな様子だ。

 

しかし、カイルは続けて言う。

 

 

「そしてオレの教え子と協力者、彼女達は忍ではあるがオレに遅れは取らない実力者だ。

 

 

 

超越者 ゼロ。これだけの敵を相手にお前はその身体であとどれくらい持つ?10分、30分、1時間?少なくとも、お前の限界の時間までは相手出来るぞ」

 

 

ここで、初めて。

自らの力を看破された超越者が顔をしかめた。忌々しいと吐き捨てかねない程歪んだ顔を浮かばせる。

 

 

時間稼ぎ、もしくは持久戦。それこそがゼロの唯一かつ致命的な弱点を突く方法であった。

 

考えれば当然だろう。世界を滅ぼす事の出来る超越者が表立って動かなかった理由も、自らが戦場に出なかったのも、そうされるのを警戒しての事だったのだ。

 

 

 

「大人しく退けばいい。お前には弱ってまでオレ達を叩くメリットはない。オレも彼等に用がある訳だからな」

 

「フハッ────貴様は馬鹿か?」

 

楽しそうな笑みとは一転して、底冷えさせるほどドスの効いた声。それを発したゼロの眼には特定の感情がドロドロと濁りきっていた。

 

 

 

人はそれを、憎悪と呼ぶ。溶岩のように煮え滾り、深淵のように深いものが。

 

「もう、止まれないのだ。俺は、我等は。────この世界は俺達の場所だけではなく、家族とも言える仲間を奪った」

 

聞いていた中でただ一人、シルバーは目を細める。何故か、何故かだが分からない。かつて戦った筈の男性の姿が脳裏に浮かんできた。

 

 

ヴォルザード、そう名乗っていた【禍の王】の人間。自分達の居場所を、世界を求めた、正義感ある人物が。

 

 

「これは終わりだ、我々の犠牲により成り立った偽りの平和の。光と闇により調和が為された世界の」

 

 

難しい言葉を使うが、言いたいことは単純。自分達の平和の為にこの世界を滅ぼす、それだけに過ぎない。

 

 

だが、それを認めない者もいる。ユウヤ達、この世界に希望を見出だした者達だ。

 

 

 

────だからこそ、決着を決めなければならない。世界の命運を手に取るのは、誰なのかを。

 

 

 

「───────始めよう、俺達と貴様らの殺し合い。永続か新生か、この世界の命運を掛けた長き戦いを!!」

 

 

 

【禍の王】、組織の名を肩代わりする超越者。そして両手に義手を携えた、混沌の尖兵であった異能使い。彼を筆頭として三人の少女と女性が一斉に動く。

 

 

それが戦闘の引き金、次元を越えた戦いの始まりだった。

 

 

 

「……………っ!」

 

激しい余波は少し離れたユウヤ達の顔にまで届いた。それだけでは飽きたらず近くの建物の壁や天井が引き剥がされていく。

 

 

 

「………行こう、ユウヤくん」

「……………あぁ」

 

肩を貸し、心配したように見る飛鳥の言葉に、ユウヤは応じる。ゆっくりと立ち上がり、静かに呟いた。

 

 

 

今度は、今度こそは、何としてでも───守ってみせる。

 

身近に感じられる暖かさを胸に込め、ユウヤ達は戦場から立ち去った。勝利としてではなく、圧倒的な敗北として。

 

 

 

 

 

 

 

「─────ハァ、上手く逃げたようだなァ」

「…………」

 

建物の上から世界規模の現象を見ていた二人のホムンクルス、アルトと紫瑞(しおみず)。彼等は撤退した少年少女を確認し、

 

 

「王サマに報告だァ、『四元属性(エレメント)』の連中も動くしなァ。アイツらは放っておいても構わねぇだろォ」

「えぇ、分かりました」

 

素直に撤退を選んだ。理由は簡単────命令されていなかったから。

 

 

たったそれだけ、それだけの理由で、倒すか倒さないかを決める優柔不断なホムンクルス。表面上は楽しそうに何かを口ずさみながら、彼は仲間を連れて去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

蛇女子での戦いが終わり、ゼロは人気の無い道を歩く。身体を揺らすように歩く男以外に人はいなかった。

 

 

そんな中、その形の一部が崩れた。

黒い禍々しき片腕が、生々しい泥のようになって地面に落ちていた。

 

 

「やれやれ、やはりこれで限界か。俺が言うのもなんだが、随分と不憫なものだ」

 

出血もなく起こる破損に、ゼロは片方の腕を動かす。スッと線を引くようになぞられた直後、黒い泥が腕の中へと吸い込まれていった。

 

 

先を失った腕を見て溜め息を吐くゼロはすぐに首を持ち上げた。目の前に、誰かが来ていた。同時にその誰かは、旧知の人物でもある。

 

 

 

「迎えに来たぞ、ゼロ」

「…………………む、覇黒か」

 

フードを上げた男 覇黒が呆れたように呟き、ゼロが気づいたように首を上げる。ボロボロになりかけた身体の自分の仲間に細めていた目を深くする。

 

「何故動いた?肉体が未完成なのはお前でも分かってた筈だ。話に聞いた『烈光』により削られたとも聞いたが……」

「まぁな、お陰で俺はもう動けない。計画の進捗の為に休むしかあるまいよ」

 

まず、ゼロをエネルギー砲台と例えてみよう。

彼の強さの真価は砲台としての強みではなく、莫大なエネルギーを扱える事にある。そして、世界を変える程のエネルギーが敵などはいなくなる。

 

 

しかし、目に見えた弱点もある。それは砲台として、肉体の容量の問題。どれだけ無限なエネルギーを使えたとしても、それを内包、放出出来るだけの構造と耐久力が無ければ意味はない。

 

仮にやったとしてもエネルギーに耐えきれなくなった砲台の崩壊によりエネルギーは四散することになる。自滅を辿るに他ならない。

 

 

だからこそ、そこを補うのが【禍の王】の計画の第一目標。ゼロの器を、超越者向きの最適な肉体へと変異させる。そうすれば、ゼロは世界を変える程の力を問題なく操れるのだ。

 

 

「そうそう、『白音』から連絡が入った。奴等の場所は追跡出来なかったらしい。どうやら高度の隠蔽技術を使ってる」

「…………」

「まぁあいつら自体に興味はない。目的の邪魔にさえならなければ捨て置いても─────」

「いや、来るぞ」

 

軽く切り捨てようとした覇黒を遮り、ゼロは告げた。何?と訝しげに見てくる男を無視して、重苦しい身体で立ち上がる。

 

 

崩れかけた身体を動かし、ゼロは高らかと口を開いていった。

 

 

「奴等は必ず我等の前に立ち塞がる。創世廻帰(ワールド・リバイブ)を止めるため、今ある世界を守るため、我等の敵として。

 

 

 

 

ならば、相手をするしかあるまい。全ての力を以てな」

 

 

本当に嫌な立ち回りだ、と覇黒は息を吐いた。重苦しいというより苦々しい感覚が残る。

 

 

【禍の王】の者たちは世界の全てに否定されてきた者の集まり、そんな自分達が目指すのは───────新しい世界、自分達を受け入れてくれる居場所。

 

 

 

 

その為にこの世界を滅ぼす、それは全てを敵に回すという意味だ。自分達の居場所を奪ってきた影の世界も、何も知らずにただ無自覚に生きている光の世界も。

 

 

しかし。

心の中から嫌だと感じる立場にいる事を覇黒は後悔してはいない。元より、彼にはそんな生き方しか出来なかったから。

 

 

 

────あの日、自分の祖父に全てを奪われた者たちの復讐という苛烈な八つ当たりをその身に味わったあの日から。

 

────苦しんで生きていた自分の事も気にせず、子供たちを育てて平和に過ごしている祖父の笑顔を知ってしまった時から。

 

 

 

何処に向けるべきか分からない憎悪は暴走し、祖父とこの世界を憎んでいた。冷たい部屋の中で自らの両足を切り落とし、復讐者たちを皆殺しにしても消えることはなかったのだ。

 

 

 

いずれ満たされるだろう、と彼は思う。恨むべき黒影亡き今、自分と同じあの男の孫娘である少女を殺せば、いずれは。

 

 

 

 

「─────さて、俺が目覚めたのだ。あいつもそろそろ動いてるだろう」

「“神楽”、か」

 

笑みを浮かべ歩くゼロの言葉に覇黒は復唱するように呟く。それが表す意味は何なのかを明かそうとせず、彼はただ口に含むだけしかしない。

 

 

パチン!

綺麗な方の手を使い、指を鳴らしたゼロ。彼は背を向けながら 何処か遠くに目を向けていた。

 

 

「本拠地に着き次第、咲人たちを呼べ──────前哨戦を盛り上げようではないか…………それが、あいつらへの手向けであるしな」

 

 

彼等はもう止まらない。

 

────最早止まる段階は既に通りすぎた。だからこそ、どんな形であろうとも、彼等は先に進み続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

──────そうして、蛇女子での騒乱は幕を引いた。多大な犠牲と悪意により傷跡を残す形で。

 

 

 

 

 

 

そして、人気の無い森の奥で。

 

 

「説明しろ飛鳥!なんでお前が急に現れたんだ!雪泉もシルバー達もだ!何か理由があったのか!?」

「え………えっと」

 

詰問してくる焔に飛鳥は困り果てていた。肩を貸されていた気を失ったのか沈黙し、静かに眠っている。その中であまり大きな声を出して欲しくはないが、焔も事情が事情だ。

 

 

 

雪泉達も同じように問い質されていたが、シルバーだけは違った。一人だけ達観したような態度で、

 

「いやいや、オレ達に聞くのも何なんで…………あの人に聞いてくれません?」

「…………あの人?」

「だからさぁ、結局の所────」

 

詳しく説明しようとしたシルバーの口が止まった。無言になった彼に問いただしていた雅緋が聞こうとした時。

 

 

 

 

「─────彼の言う通りだ。彼女達は保護されていたのさ、オレの手で」

 

 

そんな焔の疑問に答えたのは飛鳥ではなく、別の人物だった。義手を装着した男、カイル。先程まで怪物と戦っていた筈の男は無傷とは言えない状態でその場にいた。

 

 

 

「────さて、君たちも幾分か無茶をするな。『超越者』相手に五体満足なのは奇跡に等しいぞ……………キラという青年はそれ以上の奇跡だと思うよ」

「キラ…………そうだ、キラはどうしたんだ!」

「彼なら今現在治療を受けている。必ず命は助かるから心配しなくてもいい」

 

戸惑いながらも食いかかる雅緋にカイルは平然と返す。大人の対応と言うべき態度に少女達は黙っていた。

 

 

しかし、現状に余裕が出来た彼等にもあるものが浮かび上がってくる。特に焔と紅蓮、二人は思わずと言ったように敵意を向けていた。

 

 

それも当然、必然だろう。

目の前に立つ男はかつて自分達を利用し────殺そうとまでした相手なのだから。

 

 

 

「カイル………」

「…………」

「自己紹介は不要か。ならばオレに必要なのは、君達の知らない事実を伝えることか。

 

 

 

だがその前に、区切りを付けておかなければならないな」

 

 

先へと進んだ男は彼等に向き直り、義手である両手を広げる。その上で、告げる。心から認めるように、新たなる挑戦を誘うように。

 

 

 

「歓迎しよう、無知で気高き少年少女よ。度重なる苦難や脅威が広がるこの世界へ。先駆者として出来る限りの手立てはしてあげよう」




今回のでこの章は終わりとなります。次の投稿は何時になるかは分かりませんが、出来次第活動報告でお伝えします。


この小説を呼んでいただける皆様に感謝を。そしてこの物語を続けようと覚悟のもとに私は執筆を続けます。どうぞ、よろしくお願いします。
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