閃乱カグラ ケイオス・ブラッド   作:虚無の魔術師

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百八話 『異』なる『能』力

「まず『異能』、これは世界にとって重要なものだ。忍である者達も、無関係ではない」

 

 

椅子に腰かけた全員に、カイルは説明を始めた。

 

 

「発現した時は何も無い透明な力でね。それを『異能』足らしめるのは発現した人間により決まる。その人物の精神的障害(トラウマ)、もしくは基本とも言える属性の中から」

 

「………そんなもので決まるのか?あまりにもあっさりとしてるが」

「いや、それで間違いない。俺は《雷》、紅蓮は《炎》、シルバーは《水》、キラは《闇》、カイルは《光》だからな」

 

補足するユウヤに忍の少女達(と紅蓮とシルバー)はふむふむ、と納得していた。キラは既に知ってるのか億劫そうに天井を見上げていた。

 

 

 

「人間の中でも発現するのが滅多にない…………だが、僅かな確率で発現するのであって、絶対に無い訳ではない」

 

話を進めたカイルが静かに目を細くする。全員が怪訝そうに見るが、彼が何処かを見ていることに気づいた。

 

 

今度こそ移動するように視線の先を向くと、話の途中からポカンとしていた銀髪美形のシルバーがいた。ようやく気づいた彼は、困惑するように周りに声をかける。

 

 

「え、は?何見てんの?」

「……………彼の異能は強いが、身体に適応できていない。だから君達のような肉体の強化を発揮できてない。どちらかと言うと───────説明の仕方に悩むな」

「ハッキリ言えよ!この中で異能の適正低いんでしょぉ!?素質がゴミクズですみませんね!ちくしょう!!」

 

大声で文句を言い、不貞腐れたシルバーに全員が残念そうな視線を向けていた。顔は良いのに、何故ここまで残念な性格なのだろう? と。

 

 

 

 

………真実は、彼のこの性格は演技に等しい。本来の性格は他にあるのだが、彼は最も親しい人間にも演技を見せる。大切な人を守る為ならその人すら騙す、それがシルバーという忍の在り方であるのだが。

 

 

 

「けど、シルバーさんも戦えるんだよね?普通に雪泉ちゃん達を追い詰めてたって聞いたけど……」

「あー…………シルバーさん、元々は忍だからね。異能の代わりに忍としてだからかなぁ?まぁ、普通の忍には遅れは取らないから安心して欲しいぜ」

 

 

普通、自らの強さを明かす忍などいやしない。余裕なのかもしれないが、そうではないなとユウヤを含む数人は察した。

 

 

飛鳥に声をかけられたシルバーはやけに嬉しそうだった。そりゃあ女の子と話すのが良いのかと思うが、何故か釈然としないユウヤ。しかし実際口に出すことはなかった。

 

 

 

シルバーのすぐ横で雪泉が、それはそれは冷めた目を向けていたのだ。冷気を纏うかのようなオーラにこの場の全員が何も言えずに沈黙していた。怒ってるというか不機嫌になってる、間違いなく。

 

 

 

コホン、とカイルが咳き込む事で空気がすぐに切り替わった。話を戻そうとしただけに見えるが、この現状を変えただけでもユウヤ達からは心底ありがたかった。

 

 

 

「────しかし、異能使いにも例外がある。天然である君達とは違う───人為的なものが」

「それは………なんだ?」

「【禍の王】、『四元属性(エレメント)』という派閥の者達。構成員の多くが異能を使っている…………滅多に発現が難しいその力を」

 

ようやく、彼等が戦ってきた敵が明かされた。しかし一部の者はあまり表向きに戦ってはいない────例外は、ゼロと名乗る組織の代名詞とも言える王。

 

 

しかし雪泉はすぐに思い浮かんだ。滅多にない異能、それを扱う者達が集まる組織の秘密の一つを────

 

 

「何らかの力で、異能を生み出しているんですか?」

「その通り、力を持たない者も勧誘さえすれば異能を与えることが出来る。

 

 

 

 

それをオレは第三世代と呼んでいる。彼は第一世代や第二世代とは違い、属性とは違う一つの力に特化している。君らが戦った『鮮血(デューク)』や『反鏡(ヴォルザード)』と言った者達もそうだ」

 

 

複数人、ユウヤと雪泉、シルバーの三人が様々な反応を示す。彼等はカイルが挙げた者達と戦った経験があるのだ。世界を滅ぼすと誓った人工の異能使い達と。

 

 

 

愛する人の命で生き延びてしまった───血を操るデューク。

 

 

家族を守る為に善忍に追われる事になった───鏡を操るヴォルザード。

 

たった二人、遭遇した異能使い達には普通とは違うものがあった。強さもあるが…………覚悟。例え、自分が死んででも目的を果たすという重い覚悟が。

 

 

そして、とカイルは付け足す。

 

 

 

 

「超越者 ゼロ、組織を束ねる奴は人為的な異能使いを生み出す鍵、(みなもと)を持っている」

 

数人が反応した。無理もないだろう、自分達を殺しかけた存在相手に臆するなと言う方が無理な話だ。

 

 

が、たった一人、ユウヤは顔を上げた。彼がとてつもなく重要な事実に気づけたのは、異能を越えるような規格外な存在を前にした事があったからだ。

 

 

「まさか……………『聖杯』?」

「惜しい、少し違うな。奴が手にしているのは『聖杯』の模造品、オレはそう確信している」

 

 

言外に、『聖杯』の存在を証明していた。聖杯事変の時の偽物とは違う、本物があると言うばかりに。

 

 

「そして、忍である君達も無関係ではないと言っただろう。その理由こそが、『聖杯』にある」

 

 

 

「…………待て、いや待ってくれ」

 

静かに話を聞いていた雅緋が声をあげた。言葉を言い直したのは、年上への礼節を怠ろうとはしなかったからだ。

 

「異能なら分かる。あれもあれで未知だというのは分かる…………だが何故忍も関係している?まさか聖杯に与えられた力だと────」

「おかしいと思った事は無いか?」

 

 

落ち着いた様子でカイル言う。かつては自分が抱いていたある種の謎を。

 

 

「忍としての力、忍術とは何から出来ているのか。地脈から力を授かり、忍術という通常の理から外れた力。それをおかしいと思った事は一度もないのか?」

 

誰もが、答える事ができない。そもそも出来る筈がなかった。

 

 

確かにそうだ。忍も一般的から見れば異常、『異能』と同じ常識外に位置するものなのだ。忍である者達は当然として、あまり関係の無い青年達も大して気にしていなかったのだから。

 

では、その答えは何なのか。

 

 

「天恵を、『異能』を与えられなかった者達が『代わりとなる力を求めた結果────忍は生まれたのさ。自分だって戦いたい、そう思う力の無い者達の為に」

 

(なに)と戦うのか、そう聞く者はいない。既に分かりきっている事なのだ。昔から語られてきた忍、そして人類の天敵。

 

 

妖魔、それと戦うために忍は生まれたのだ。異能という力に恵まれなかった者達が、脅威から多くの人々を守る為に。

 

だがその前に、重要な事がまだ残っている。

 

 

 

『異能』は、何の為に生まれたのか。何を為す為にその力は人々に宿り、扱えるようになるのか。ただの偶然な筈が無い、それならば『異能使い』達が同じ年月に集まらないから。

 

 

しかし、肝心な事を言う前にカイルは顔を上げた。腕に着けていた腕時計を目にするや否や、いきなり眉をひそめた。

 

 

 

「時間だ、君達。着いて来るといい」

「…………時間?何かあったのか?」

 

焔は不思議そうに首を傾げる中、カイルは少しだけ歩いた。両手の義手を大きく広げ、彼は全員に向けて問い詰めるように聞く。

 

 

 

「────君達は【禍の王】、秀でる『四元属性(エレメント)』と『混沌派閥』に勝てるか?」

「随分な物言いだな、負けるという気か」

「彼等だって本気だ。自分達の目的の為に総力を尽くす。その為にも、君達の力を高める必要がある。

 

 

 

と、言ってたからなぁ」

 

何処か投げ槍な言い様に全員が疑問を抱いた。まるで自分ではなく誰かの言葉であるかのように。答えを待つ視線に、彼は「唐突だが」とようやく弁明を始める。

 

 

「君達、具体的に異能使いであるユウヤ達と戦いたいらしいんだ。オレの教え子達とその協力者がね…………勿論、オレは止めたが」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

カイルの頼みをユウヤ達は(ほぼ強制的に)受け入れて、廊下の先を進んでいた。何処まで行けば良いかという疑問、場所に関しては心配する必要はなかった。

 

 

「この先……………いや、この部屋か」

 

 

カイルに教えられたマークが壁にあった。それも大きく、見逃すとは思えないくらいに。

 

 

 

赤く浮かんだマークのある壁に立つと、隔壁が左右にスライドし、入り口を作った。ハイテクとも言える技術だが、ユウヤは所属する組織で何度も経験してるのであまり反応を見せない。

 

 

奥が見えないほど薄暗い部屋。彼が入ってきた壁がすぐに閉ざされた事で完全な密閉空間へと様変わりする。しかしユウヤはただ暗闇の奥を睨み続けていた。

 

 

姿は見えないが────確かにいる。この部屋に一人、手練れとも言える人間が。カイルが言うには、教え子か協力者と呼ばれる者が。

 

 

 

部屋の中に入ったユウヤにようやく反応したのか照明がついていく。彼が入ってきた壁から順に奥の方へ照らされていった。そして、十秒も経たずに暗闇が晴れることになる。

 

 

 

無機質な素材で型どられた部屋。家具などは勿論、扉や窓などは無く、通気孔らしきものが小さくあるだけだった。

 

 

試しに薄い色の壁を殴ってみるが、キィーンと音が響き渡る。しかしそれだけ。破壊出来なくても、

 

 

(……衝撃緩和材、それも高度のタイプか。多分、俺の本気でも完全破壊は難しいだろう。要するに、ここはトレーニングルームだな。……………そして)

 

 

 

 

「────待っていたよ」

 

その部屋の、中央に立つ人物があった。杖をついた猫背気味の老人の女性。しかしすぐに考えを改めた。彼女の手にあったのは杖ではなく、同じような長さのキセルだったのだ。

 

 

昔物と思われる黒眼鏡を外し、此方を観察するような目を向ける老人にユウヤも同じようにする。そんな中で、ある違和感を胸に抱いた。

 

 

 

(あのスカーフ、飛鳥のと似てる………?)

 

それだけではない。何処と無く雰囲気も飛鳥と酷似している伏がある。しかし、同一であるとは絶対に思えない。

 

 

 

「まずは礼を言うよ……………孫の飛鳥と半蔵が世話になったね。『黒雷』」

「………………」

 

声を聞いたユウヤの顔色から余裕や僅かな気の緩みが消えた。ただ普通の生き方をする青年の顔から、裏社会の闇に君臨してきた傭兵の顔へと変わる。

 

 

この名前を呼ぶという事は、裏社会に生きる人間であるということ。老人だからと言って油断をするつもりはない。闇とは、相手に心から気を許してしまう程度の者が生き残れるほど優しくは無いのだから。

 

 

 

当然のように、老婆は臆す事はなかった。それどころか気安く声をかけてくる。

 

 

「わしは小百合。今回お前さんの実力を見させてもらうから、よろしく頼むぞ」

 

 

ユウヤと同じく裏社会の君臨する存在である忍。しかし彼女は普通の引退した老人と断じてしまえるほどの者ではない。

 

 

 

 

元カグラ───過去の話だとしても最強の忍に与えられるであろう称号を持つ人物なのだから。




………やっぱり、会話シーンとか筆が進まない。というか苦手なのが分かりましたわ。


早く戦闘シーンが書きたい………。わりと久しぶりに。
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