閃乱カグラ ケイオス・ブラッド   作:虚無の魔術師

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今回は予定より早く投稿します!


所で、皆さん。胸は大きい方か小さい方が好きですか?
私は両方で(殴


百九話 元カグラと三姉妹

「小百合…………元カグラ!」

 

目の前で名乗った女性の名を知ったユウヤは、思わず唾を飲み込んだ。彼には何度目か分からない緊張が、冷や汗となって全身から沸き出た。

 

 

小百合という名前を聞くのも初めてではない。むしろ何度も聞いたことがあった。

 

 

一度目は彼のお得意でもある半蔵から。世間話(半蔵が絡んできたもの)の最中、彼が自分よりも強いと口にしていた。その恋の為に黒影とは何度もぶつかり合い、ようやく勝利したとも自慢していたのを覚えている。

 

 

二度目はいつも近くにいる飛鳥から。元気の無かった彼女は、自分の祖母である小百合が家からいなくなったと心配していたのだ。だからこそ、ユウヤもすぐに忘れなかったが、この事がここで活かされるとは思っていなかった。

 

 

気にかけている少女の祖母。こういうのはキチンと接さなければと彼が思う直後、

 

 

「一応言っとくけど、あたしを年寄り扱いするとただじゃおかないよ。遠慮なくぶっ飛ばすからね」

「…………………はぁ、分かった」

 

まるで心を読んだかのようなタイミングだった。そして小百合の配慮………というか、警告に彼も仕方ないと腹をくくった。

 

 

 

「元カグラにこういう言い方はしたくないが………善忍について聞きたい事がある」

「それは何じゃ?」

「───ずっとおかしいと思ってた」

 

彼がずっと胸に残っていた謎。遠野の里での騒動が終わった直後に聞いたある事件について。

 

 

「何故飛鳥達が《混沌派閥》に狙われたのか。飛鳥達だけになるのを待ったようなタイミング、まるで善忍の動向を知ってるようなもんだ。忍と言ってもそこまでの無能じゃない」

「……………」

「考えられるとしたら一つ。裏切り者の存在だ。内部と言っても限られる。権限のある所にいると予想するなら─────善忍の上層部」

 

 

懸念していた一つの考え。善忍を束ねる上層部、彼等は忍を道具のように扱っているが、大義を理由にテロリストと手を組むような程堕ちているとは思えない。

 

 

ならば内通者。情報を組織に送り込んだ存在を疑うのが一番であった。

 

 

「答えろ、飛鳥達の元から離れた理由を。上層部の裏切り者をどうにかする為にお前はカイルと手を組んだのか」

 

切迫した様子でユウヤは小百合を問い詰める。自分達の窮地を、危険を知りたがってるように見える。しかし別の感情が見え隠れしているのが分かった。

 

 

それは私情、飛鳥の家族である彼女の意図を少しでも聞きたかったのだろう。甘さ、と言えばそれまでだが、彼なりの優しさがある行動に小百合は思わず微笑んだ。

 

 

 

そして、小百合はゆっくりと口を開く。ようやくその意味を説明するのかと、理由を教えてくれるのかとユウヤは思った。

 

 

 

 

だが違った。

小百合が口にしたのは長ったらしい話ではなく、短い単語であった。

 

 

 

「───絶・忍転身」

 

その姿を白い輝きが覆う。視界を塗り潰しかねないその光景は、ユウヤは何度か知り得ている。光から目を守ろうとせず立つその姿には僅かな驚愕があった。

 

 

 

そこにいたのは年老いた老婆ではなく、一人の美女だった。挑戦的な笑みを隠そうとせず、大きなキセルを肩に乗せる女性。その姿は、ユウヤが心から認めている少女と類似してると言えた。

 

 

しかし、重要なのはそこではない。忍転身、その力を使った意味が、ある程度は理解できた。

 

 

「何のつもりだ!俺は聞きたい事があると───!」

「カイルから聞かなかったかい?戦いたいと言ってるとね、それはあたしも例外じゃないんだよ!」

 

声を張り上げるユウヤに、小百合───否、この姿ではジャスミンと。彼女はやはり笑みを浮かべながらキセルの持ち方を変える。

 

 

それは今にでも振るい、戦いを始めようとするように見えた。

 

 

 

「護りたい娘達がいるんだろ?だったらその力を見せてみなよ、自分を犠牲にせず誰かを助けられるその力でね」

 

 

思わず、冷静な思考を燃え盛る熱が焼き斬りそうになる。何も出来なかった、何も護れなかった。その不甲斐なさが、雷となって自らの中で炸裂した。

 

 

 

やるしかない、と。一瞬で覚悟を決める。

 

 

「とにかく!殺す気でかかってきな!さもないと本気ではっ倒しちまうよ!」

「───ッ!!!」

 

 

言われるまでもないとユウヤは構えた。両手の指を曲げたのがトリガーとなるが如く、全身の隅々にまで一瞬で『神の力』が行き渡ると同時に─────

 

 

 

落雷が、落ちた。屋内の中で、建物や壁を貫通して一本の雷が彼へと落ちる。煌めく雷鳴の中で瞬時に、彼の姿が切り替わる。

 

 

 

巨人の腕のように肥大化、金属装甲を纏った右腕。全身には帯電するように青い電気がバヂッ!バヂィッ!! と鳴り、浮遊するように金属片が宙を舞う。

 

 

 

神化覚醒、初期段階(ファースト・アウト)。神の力を使い、神を擬似的に再現する彼の生み出した姿。《聖杯事変》の元凶を倒し、『聖杯』を破壊した────『雷神』。

 

 

 

「ほぉ、そいつが例の『雷神』かい。ヒシヒシと伝わってくるよ」

「………知りたいことが山程ある。だからすぐに終わらせるぞ!」

 

 

一対一の戦い。されど一人は『雷神』、一人は元カグラ。過小評価できるようなものなどではない。

 

 

様々な場所で起こる戦いの中で最も凄まじい戦闘が、この施設を、周りの一帯を轟かせた。一撃一撃が重く、世界そのものを振動させるように。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

(今のは────ユウヤか。《聖杯事変》での力と見るべきだな。これ程の力で相手しなければならん奴がいるというか?)

 

ユウヤと同じく、広い部屋の中心で立ち尽くすキラは振動音のする方向を見た。近くもなく遠くもない、しかし音だけは確実にするという施設の構造に思わず納得する。

 

 

しかし、彼にとって最優先は目の前。

 

 

 

「……………」

「おうおうテメェ!さっきから何ぼけってしてんだい!」

 

一メートル近く空いた距離の先に少女がいた。腹や肩と、色々と露出の覆い茶色の服。両手には太鼓に使うバチが握られており、鈍器には相応しいとは思う。

 

 

極めつけにはその性格。男勝りした江戸っ子気質、暑苦しいとは違う感覚にキラは辟易しそうだった。

 

 

彼は面倒そうに、金色の髪をかきむしる。痒いという訳ではない、自然とでた行動であった。ため息を押し殺し、質問した。

 

 

 

「────貴様が俺様を指定したのか?」

「おうよっ!何せお前が最強って聞いた訳だしな!その実力を見てみたいんだよ私は、よっ!」

 

手の中でバチを回す少女は今にでもやりたいと言わんばかりにうずうずとしていた。

 

やはりか、と思う。彼女の属性からして雷、ユウヤと対立したどうなるかとは考えるが、今はそんな事は必要ないと割り切る。

 

 

「実力を知っているなら分かるとは思うが………俺様はキラ、常闇綺羅。蛇女子の有権者だ…………貴様は?」

「私は蓮華。カイル先生の事を知ってんなら話が早い……………私達は先生の教え子だぜ」

 

教え子、先生………と口の中で呟き、静かに観察していた。それに『私達』と言った、他にもいるのか?

 

 

考え事を咄嗟に止め、カン! と杖で床を叩き、片手を広げる。呆れた声音で彼女に問いかけた。

 

 

「今の俺様を見て何も思わんのか?怪我人相手によくケンカを挑めるものだ」

「へぇ、じゃあアンタは戦わないのかい?その怪我を理由に大人しく引き下がるってのかい」

「────馬鹿にするな、貴様」

 

挑発的な笑みを浮かべる蓮華に、キラは顔色を変えて額に置いた手を横へと振るう。彼の掌には一瞬で杖ではなく、漆黒のハルバードが握られた。

 

同時にゾワゾワと足元から這い出た影がキラの周りに沸き上がる。不気味とも言える影は、キラの力でもあるのだ。

 

 

『闇』、悪感情により強くなる異能。形が無い物を操り、それと同化する事の出来る第二世代の力。キラはそれにより、最強の称号を与えられてきた。

 

 

 

「…………?」

 

だが、今回も感じていた。自らの力にある不思議な違和感。それは何度か前兆があった、一時期は《聖杯事変》からの日々。紅蓮に負け、雅緋達と共にあると誓ってから。

 

 

違和感の数々は徐々に、そしてついに確信へと変わった。

 

 

(衰えてる?俺様の『闇』が………?)

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

一方、紅蓮はというと。

 

 

「じーっ」

「………?なにかあるっすか?」

「いや、気になったからかなぁ?」

 

紅蓮は目の前にいる少女に首を傾げた。少女も同じように傾け、不思議そうに聞いてくる。対する紅蓮はあまり考えられないと言うようにスッと座り込む。

 

 

 

「俺は紅蓮、焔紅蓮隊のリーダー。君は?」

「うちは華毘(はなび)っす!巫神楽三姉妹……蓮華お姉ちゃんと華風流(かふる)ちゃんの三人姉妹の次女、それがうちっす!」

 

 

元気な声で自己紹介をする華毘に紅蓮はふんふんと首を振る。話を聞いて納得していた紅蓮は、ん?と疑問に思った。

 

 

「巫神楽って何なのかな?俺も詳しく知りたいんだ」

「?そー言われると、よく分かんないっすね。先生は別世界に交信する事が出来るって言ってたっすけど………むーっ」

 

自分で言ったのにも関わらず難しく考える華毘。そこまでしなくても良いよ と言おうとした紅蓮に、彼女はハッとした様子で首を横に振った。

 

 

「うーっ、いけないっす!うち色々考えると爆発しちゃうんっす!」

「え!?そうなの!?」

 

衝撃を受けたように紅蓮は華毘に飛びつく。恋人感覚まで近づかれ、びっくりしながら頷くのを見て紅蓮は心底そうに考えた。

 

 

(考えると爆発しちゃうなんて………そんな酷い事があるなんて。あの娘、絶対苦しんでるよね)

 

ちゃんと動けてるので勘違いしていたが、紅蓮の本来の年齢は二歳程である。精神年齢は一七近くではあるが、ある程度抜けてる所は抜けきっている。

 

 

そこで何をするかと考えていた華毘はあっと声をあげた。よくよく考えれば、彼とはそれをする為に呼んだのだ。

 

 

 

「紅蓮さん!色々考えると大変なのでうちと勝負しましょう!」

「───良いよ!」

 

 

即答だった。よくよく考えていない、(爆発という機能を心配している)紅蓮は華毘の事を気づかい、彼女のやり方ことをしてあげようと思う。

 

 

あまりにもあっさりとした勢いで、勝負は始まった。物事を難しく考えられない…………要するにアホの子と二年くらいしか生きていない常識が欠如したりいらない事を覚えてる純粋な無垢な青年(見た目は一七ぐらい)なので、余計にめんどくさい。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「はっ!!?今紅蓮パイセンとキラの奴が美少女達とイチャコラしてるオーラを感じたぞ!!!ユウヤは…………まぁうん!あまり考えない方がいい気がしてきたぞう!」

 

一方、部屋で一人騒ぎ出したのは案の定シルバー。そんな馬鹿な事は全て独り言なので誰も答える者もいなければ返事など返ってこない。

 

 

 

しかし、この部屋にいるのはシルバーだけというわけではない。その相手をチラリと、様子を窺うようにシルバーは視線を前に向けた。

 

 

 

目の前にいた少女は怪訝そうな視線に目を細める。気づいたらしく不服というのを顔に表した。

 

 

「何よ、私に何かあるの?」

「…………子供じゃん、子供じゃん!何でシルバーさんだけなの!?もうちょっと美人なボンキュッボンな女の子と話したかったのに何故自分だけェ!?」

「子供って、アンタの方が子供ってぽいわよ」

 

 

んだとぉ!? と喚くシルバーの前で少女は達観したように束ねられた紙を取り出した。何枚か捲っていき、聞こえるような声音で読んでいく。

 

 

 

 

「シルバー、忍名は銀河、そのまんまね。悪忍養成学校の創設者の家系らしいけど………国の犬として同族を狩ってたアンタが善忍と絡んでるのはどういう意味?」

 

 

ふざけた様子で話を聞いてたシルバーの顔から感情の全てが消え去る。能面のような顔を浮かべる青年は、眼光だけを鋭くしていた。

 

 

 

そして、重苦しいと息を吐く。

 

 

「…………えぇっと、もうこの喋り方とかしなくても良いよね?」

 

少女の前で、シルバーは苦笑する。しかし声だけで、彼の顔は動くことすらなかった。少女の反応を待つ様子もなく、青年はゴキゴキ首を鳴らし────

 

 

 

 

 

「はー、疲れた。ホントに困る。こういうのはオレの柄じゃないんだが」

「それで?さっきの答えは何なの?」

「甘さだよ、甘さ。忍狩りが聞いて呆れるくらい温くなったってんだ。腹抱えて笑うか?」

 

何時もの飄々とした態度が鳴りを潜め、少しばかり口の荒くなったものへと切り替わる。つるやかな銀髪を片手で払う、女性のような仕草は彼が自然と行っていたのだ。

 

 

 

「それよりアンタ、何であんな態度取ってるわけ?」

「演技だ、どんな忍も第一印象で相手を判断しちまう。『なんだ、意外と大した事なさそう』とか………実戦でも面白いくらい効くぞ。人間の(さが)を利用してやったやり方だがな」

 

他人の印象を変える為の演技。

あまりにも高度で疑り深い人間でも見逃してしまいそうな程、恐ろしい技術だった。

 

忍として暗躍した間にか、忍狩りとして同族を殲滅していた時に、自分の才能で編み出した技術なのかは彼しか知らない。

 

ともかくシルバーは気だるげに声をあげた。今にも欠伸をしかねない態度で。

 

 

「で、どうしても戦わねーといけないのか?」

「まぁ一応ね。先生にはどうしてもって言っちゃったわけだから」

「………面倒だな、オレやる気が無いから勝ちを譲ってくれねーかな?巫神楽三姉妹、末妹の華風流(かふる)ちゃん?」

 

この施設に集められた仲間達ですら知ら得なかった情報。それをシルバーは赤子の手を取るように示してきた。さっき少女───華風流がしてきた事への意趣返しと言わんばかりに。

 

 

 

 

「勝ちを譲る?負けなら譲ってあげるでちゅけどね~?」

「勝ちだよ、そりゃオレは勝ちが欲しいに決まってるじゃん。ただえさえポーカーフェイスでも疲れるのに戦闘とか無駄な事したくねぇーんだが」

「そんな事言ったって、どうせ負けるのが怖いんでしょ。そう言うのを虚勢って言うのよ、はい論破」

「論破って、ガキかよ?そういうの振りかざしてくるの幼稚に見えてくるから止めた方がいいと思うぞ?」

 

フッと互いに笑い合う。

二人がする挑発の数々は他人の精神を逆撫でるように悪意がある。だが得意分野であるからか、二人は乗ったようには見えなかった。

 

 

 

 

そして、一瞬で。二人は表面上の綺麗事を拭い去り、本物の顔を見せた。

 

 

 

「図に乗るなよクソガキ!警告してやる、これから撫でてやるからガキみたに泣き喚くなよ!」

「────言うわね!アンタに負けたらあたしがすたるのよ!アホ毛男!」

 

シルバーはマグナムとマシンガンを両手に、イルカの形をした水鉄砲を構えた。口の悪い躍り文句を言い、同時に引き金を引き放つ。

 

 

 

紅蓮と華毘、『炎』と『花火』。シルバーと華風流、『水』と『水』。

 

 

間接的にもまるで相性の合った相手を組ませるような意思が見える。これも誰かの考えなのだろうかと。

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