閃乱カグラ ケイオス・ブラッド   作:虚無の魔術師

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今回から始まる京都編は基本ストーリーオリジナル(変わらない所はあるけど)です。


そこの所、よろしくお願いします!


5章 京都決戦編
百十二話 一時(ひととき)の安息


京都。

日本でも過去の建物や並びが多く、名所の多い街。旅行などで行く事が何回もある場所。

 

 

 

伝承や歴史が残り続け、後に大きな争いの舞台となる土地。

 

 

 

 

そして現在────。

偶然と言うには、意図や陰謀が絡んだ物語が幕を開く。その舞台に現れた登場人物達も、何も分からず動いていた。

 

 

 

 

 

「でも、京都に行けるなんて正直意外だったよね」

「そうか?だが我は気にしてないぞ!日本の名所、京都の旅行だ!楽しまねばなるまいよ!」

 

ポツリと漏らした飛鳥の言葉に反応したのは人形のような大きさをした小人。それでいて邪悪さと神聖さを兼ね備えたモノ。

 

 

 

 

統括者 ゼールス。

自分の手で全ての生物を統括した完全な理想世界を作り出そうと企んだ高次元的存在。『神の器』 天星ユウヤを利用し聖杯を使おうとしていたが、彼と少女達によって敗北し、今のような姿になっている。

 

 

彼としても現状に不満は無いらしく、普通に生活している。後遺症として与えられた小さな身体に悪戦苦闘しているが、共に生活している彼等が支えていた。

 

 

 

 

 

 

「うん────カイルさんが“京都に旅行してきたらどうだ?”って言ってくれたからだよね!」

「あぁ、そこんとこは感謝しないとな!あの人も気が回るぜ!」

 

…………そこが一番問題なんだよ、とユウヤは溜め息を押し殺した。

 

 

 

 

 

そして、彼女達は統括者を主にして京都の町並みや名所を満喫していく。

 

 

「飛鳥、あれは何だ?我の未知せぬ建造物だ」

「金閣寺だよ!昔に立てられた金色のお寺!何時だったかは……………えぇっと」

「…………全然金色ではないか。まぁ、金なんぞ雨で溶けるから当然か。あんなのに金をかけるとは、昔の人間の考えは分からんな」

「そんなドライに言わなくて良いのでは………?」

 

 

 

 

「何?舞妓だと?」

「そうそう!京都と言ったらもうそりゃ舞妓さんだよ!何なら名物の一つだぜ!」

「………それは舞妓に触ることですか?」

「斑鳩、そいつは違うな。アタイは触るんじゃない、もみもみしたいんだ!」

「────それも文化か、我は受け入れよう。そのようなものは拒絶する理由は無いからな」

「いや、受け入れないでください!キチンと拒絶してください!」

 

 

 

 

 

 

「─────」

「…………」

 

 

そんな彼女達を他所に、ユウヤと柳生の二人は建物の影で待機していた。彼等がそんな風にしている理由は単純、動きたくないからだ。

 

 

壁に背を預けながらも、今も元気そうにしてる飛鳥達を見逃さないように目配りをする。人混みが多いが、不可能な訳ではない。

 

 

「………スルメ、食うか?」

「あぁ、貰う。─────しっかし、飛鳥達も元気だな。まぁ京都なんて滅多に来れないからな、無理もないか」

「ユウヤ、お前はあまり反応が無いな。京都には来たことがあるのか?」

「そうだ。私事としてじゃなくて、傭兵としてだから、あまり経験は無いが………土地勘は無いが、ある程度は覚えてる」

 

あむあむ、とスルメを頬張る二人。少しずつ()んでいく柳生の横で、ユウヤは大きく噛み千切りながら飲み込んでいく。

 

 

「─────やはり気になるか?」

「多少、だがな」

 

彼女よりも早く平らげ、親指を軽く舐める。その仕草に柳生はジッと見ながら何かを呟いていた。話の内容はあまり聞こえなかった。『…………いや、少しくらいは良いか?』とか何を言ってるのか分からない、ワカラナイ。

 

 

ユウヤは冷静に、自分の中にある不安を吐露した。

 

 

「カイルが俺達に旅行を提案してくれたのは良いが、この時期になるのは少し気になった。それに都合が良すぎる、何か企んでいるのか?」

 

確かに、と柳生はあっさりと賛同した。

 

ユウヤはカイルの行いを許しはしたが、彼を認めた訳ではない。前科がある以上裏があるのかと考えていた。柳生も同じ考えらしく、そんな風に頭を働かせている。悪いことではない、彼等のような何としてでも守りたい人がいる者だからこそ、必然な事だ。

 

 

 

 

しかし二人は楽しそうに満喫する飛鳥達を見て、

 

 

「…………まず、オレ達が警戒しておくべき事が大事だ。訳も分からない戦いに雲雀が巻き込まれるのが一番不安だ」

「同感だ。奴の考えが分からない以上、乗るしか無いってのが癪だがな」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

一方で、彼等が京都で楽しんでる中。

 

 

「やだぁっ!美野里も遊びに行きたいー!」

「美野里っちと同意見ー!ウチらも旅行くらい良いでしょー!?」

「────夜桜ママヘルプ!!自分じゃあ無理ですね!やっぱりここはオカンの出番だねウン!!」

「誰がママやオカンじゃ誰が。ったく、美野里も四季も何を騒いでるんですか」

 

中々にカオスな状況になっていた。駄々を捏ねる美野里と不満を愚痴る四季に、説得が無理と秒で判断したシルバーが夜桜に泣きつくという凄まじい光景が。

 

 

 

────何だこれ、と。

 

沢山の資料を運んでいたカイルとそれを手伝っていた雪泉が唖然としながらも目の前の状況に対して呟く。そんな二人の感傷に答えたのは、般若面を装着している叢であった。

 

 

 

「…………飛鳥達が京都に旅行に行った事が不満らしい。自分達も遊びたいと」

 

 

 

あー、なるほどね。とひきつった顔でカイルは苦笑いを浮かべる。

 

 

勿論、そんな彼女達に旅行を勧めたのは彼本人だからだ。だからこそ、少しばかり訂正しようと思った。

 

 

 

「彼等は遊びに行ったというのには少し語弊があるね。オレが彼等を派遣したのさ、まぁ知らないのは当然だが」

 

「ふぅーん。忍どもが活発的なのもそれね」

「…………気付いていたのか?」

「まーね。だって元忍だし、情報収集だって暇潰しにはなるぜ?」

 

 

納得したように言葉を紡ぐシルバー。しかしその内容に続きがあるのかひっそりと続きを言う。

 

 

「何て言うの? 『四元属性(エレメント)』って奴等だっけ?そいつらと善忍が全面抗争をするとか言ってたぜ。その下準備と妨害の為に京都に行くとかさ」

 

 

ペラペラと饒舌ながら自分の口で話していたシルバーだったが、途中で飽きたのか話題を切り替えてくる。ニカニカと活気に満ちた笑みを浮かべながら。

 

 

 

「雪泉ちーん、ヴォルザードって男を覚えてる?」

「えぇ、あの研究施設で戦った異能使いですよね」

「─────どんな風だった?雪泉から見て」

 

 

問いかけに雪泉はしばし考え込む。ゆっくりとかつて相対した男についての印象を語る。

 

 

「…………不思議でした。善忍への怨みもありながら彼は世界を、いえ仲間の為に動いていたように感じて」

「オレもだ。決して悪いような人間じゃないように見えた。性格も在り方も、その心も。

 

 

 

 

そんな奴が、何であんな事をしたと思う?」

 

 

言葉に対して答えることが出来なかった。いや、分かってはいたが口に出せなかったのだ。

 

 

雪泉は彼の口から呪詛を聞いていた。自分や仲間達がどんな風な扱いをされてきたかを。それは雪泉ですら知らない、この世界の闇を見せられたような衝撃であった。

 

 

 

だからこそ、あんな風にするしかなかった。そう思っていた雪泉だったが、

 

 

何処か懐かしむような顔を浮かべる青年が呟いたのは、彼女の予想とは少し違っていた。

 

 

「きっとアイツ自身どうしようも出来なかったんじゃねぇの?」

「どうしようも?………それは一体」

「さぁね、けどさ思うんだよ。感情には実体は無い、けど概念的な存在がある。この世界からつま弾きにされて苦しんできた奴等の怨嗟と憎悪、それによって復讐が始まる。

 

 

 

 

 

────何つーか()()()()()()()?よくある物語の流れみたいに」

 

アッサリとシルバーは核心を突くような事を言い切る。意図も分からずに首を傾げる数人の中で、雪泉とカイルだけ沈黙していた。

 

 

全ての事が計画されている、そのような考えがあるのはすぐに分かった。

 

 

 

「この状況を作った黒幕は楽しんでるだろうなぁ。……オレに余計な事を告げ口してきやがったあのイカれ野郎、見つけたら必ず殺すッ」

 

何処か掴めない様子から一転、顔から表情の全てを消して怒気を放つシルバー。この場には大切な少女達がいるのだが、彼はそれすら忘れ程の怒りに囚われていた。

 

 

 

自分が心を許した少女が、両親を殺した黒影の孫娘であった事。これを知った雪泉は悲しんで涙を流した。何も悪くないのに、ごめんなさいと謝っていた。

 

 

 

許せない、許せる訳がない。あの仮面の怪物を。目の前に出てきたら確実に殺す。いや、殺しても気が済むとは思えない。

 

 

そして同時に確信する。やはり今回の事も怪物が絡んでると。人の苦しみと悲劇を嗤う、忌まわしき混沌が。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

駆ける

 

 

駆ける

 

 

────必死に、駆ける

 

 

木々の間を掻い潜るように、風を裂いて一つの影が静かな光景を通り過ぎていく。疾風とも言える速度で走る人物は、酷く苦し気であった。

 

 

 

「……はっ、はぁっ!───くはぁ!!」

 

呼吸も荒く、苦しそうに呻きながらもその人物───いや、女性は走り続けた。なんの為に走るのか、その理由は単純。

 

 

自らが抱き抱えている少女。幼さのある女の子を守るため、それだけで十分であった。

 

 

「……奈楽ちゃん、もう休もう。このままじゃ倒れちゃうよ」

「……………そうですね、分かりました」

 

奈楽と呼ばれた女性は少女の言うことに従い、動きを止めて休憩を始めた。

 

 

この事から分かるように、少女の方が身分が上なのかもしれない。女性はそんな少女の護衛であるのだろう。

 

 

ならば、何故彼女達は走っていたのか。それも難しく説明する必要もない程簡単である。

 

 

 

 

 

──────逃げていたのだ。少女を狙う追手達から。

 

 

 

 

 

「─────見つけた」

 

無機質な声が、風に乗って透き通った。熱を帯びた憤怒も嬉しそうな声でもなく、何も無い空虚。

 

 

一つだけではなく、複数の声が続いて出てくる。

 

 

「見つけた」

「見つけた」

「見つけた」

「どうする?」

「どうすれば?」

「標的を保護する障害、その体調は?」

「疲労は十分、このまま追い詰めるべきだと判断」

「その前に、『中枢』の言葉を通達はする。行動はそれからだ」

「了解」

「了解」

「了解」

 

黒、というより青。詳しく言えば深海のように薄暗い藍色の外套を纏う集団がいた。顔は何らかの仮面で隠しており、感情の起伏が見えない。ゆらゆらと亡霊を思わせる幽鬼のように揺れるその姿には不気味さが滲み出る。

 

 

あまりの気味悪さに幼い少女が強張る。そして少女を抱き抱える女性も少女を怯えさせた存在に顔を歪めた。すぐに敵意と怒りという感情に変換することで。

 

 

「ッ!もう追いつかれたか!」

 

 

忌々しげに舌打ちをする女性。目の前の集団こそが、彼女の言う追跡者。何日も休まず、侵攻してくる追手に違いなかった。

 

 

機械を思わせる装甲を纏う覆面の兵士。人形のように何かが欠落した装甲兵士(アーマード)。忍という裏社会の存在とは駆け離れた存在の一片。

 

 

 

 

「────我等が通達する事は、ただ一つ」

 

集団の中から躍り出る影が一人。他とは違い、大きな体格の人物。同じ外套を纏い、その片手には装甲と同じ色合いの斧が握られている。

 

 

周りの兵士と変わらぬ声音。合成音声を疑わせるほど精密な声は彼女にこう要求を示した。

 

 

「『かぐら』を渡せ。そうすればお前の命は保障しよう」

「………抜かせ、この下郎が。かぐら様に指一本でも触れさせはしない」

「そうか─────」

 

 

怒りに満ちた返答を聞いても、装甲兵士(アーマード)の反応は変わらない。普通なら失意や逆上があってもおかしくないのに、他の者達と大差なく感情が欠落している。

 

 

そんな過酷な状況に、奈楽という女性は『かぐら』と呼ばれた少女を後ろに下がらせた。

 

 

 

「かぐら様、どうか身を隠してください」

「な、奈楽ちゃんは?」

 

 

ご安心を、と彼女は告げる。

 

 

「この命に変えてでも、必ずお守りいたします」

「──────やれ」

 

心配させないように向き直る奈楽という女性の前で、ゆっくりと左手を振った。それが合図となる。

 

 

 

十数人の装甲兵士(アーマード)が一斉に殺到する。最早壁にも等しい群体が自らの得物を手にして、標的を捕獲、同時に障害の抹殺に躍り出る。

 

 

対する奈楽は、唸るような勢いで脚を振るう。両足に繋がれた鉄球が振る舞わされながらも、宙を暴れ狂う。

 

 

 

 

激しい衝突。大地を森をも揺るがす衝撃波。近くの動物達が恐怖により逃げ出すが、それでも戦場から戦いの余波が消えることなく、広がり続ける。

 

 

 

 

 

 

 

そして、件の場所から離れた場所。

十人程度の装甲兵士(アーマード)が散開していた。差違があるとすれば、少女達を追っていた装甲兵士(アーマード)より装備が上質、強さが格段と上がっていたのだ。

 

 

強化個体。そう呼ぶべき兵士達は円を作るように並んでいる。彼等は円形の中心に、真ん中にいる一人の青年へと向けられていた。

 

 

 

「────よし」

 

周囲の兵士と同じく暗い色の軽装を帯びる青年が平坦とした様子で頷く。顔色には表立った感情は見えず、機械のような義務的なものしか感じられない。

 

 

彼は身動きもせずに兵士達からの情報を耳にしていく。聞き流しているように見えて、脳内にまとめあげているのだ。そして、追手の状況を理解して更なる命令を与えた。

 

 

「休憩中の『盾』と接敵中の『斧』を前衛に、『弓』を後衛に置け。戦術は単純、前衛であの娘を相手取り後衛は支援と遠距離攻撃を行え。『かぐら』よりも先に娘だ、奴を無力化してから捕獲しろ」

 

 

青年の命令に黒衣の兵士たちは無言で応じる。口頭を受け取った兵士達の数人は木々の奥へと駆け出して行くが、十人程度の兵士は彼を護衛するように待機している。

 

 

実を言うと、この森の至る所に何百を越える兵士が個々の集団として動いていた。しかし全てを動かそうとはしない、追撃する部隊で標的を追い立てて、その場に待機している部隊と挟み撃ちにする。

 

 

圧倒的な戦力差を用いて起きながら、その青年が全ての兵力を使わないのには理由があった。

 

 

「手負いの獣は余力を振り絞り襲い掛かる。ならば余力を削り切ればいい。昼夜問わず追うことでな」

 

ササクレ程度の警戒心。全て数で圧倒していたというのに、そこから逃げ出した時の可能性を疑っている。追跡も出来ずに逃すくらいなら、数人を連続で襲う方が確実性がある。

 

それだけのものを元として青年は部隊を動かしている。自らの中にある疑心を信用し、全ての情報を警戒していく。相手がもう戦うことが出来ない、そう聞いた情報すら疑い、騙された時の事を考えている。

 

 

故に消耗戦。陰湿なまでのこの作戦にはそんな風な疑心が絡んでいた。

 

 

「奴が弱り果て、抵抗できなくなるまで追い込め。決して気を許さず、体力を浪費させていけ。そして、『かぐら』の捕獲に力を尽くせばいい」

「…………抵抗してる娘はどうします?」

「痛めつけるのは良いが、生かしても面倒だ。無力化を確認次第、処分をしろと命じてある。

 

 

 

 

────コソコソと逃げ回る鼠め。お前を片付けて『彼女』を我々が確保する。いや、我々でなくても構わないか。いずれにせよ、我等の宿願に近づくのに変わりはない」

 

青年の言葉を変わりきりに、空気が変わった。無口であった兵士達がスイッチが切り替わったように声を響かせていく。それは最早言葉の羅列ではなく、詠唱に近かった。

 

 

「─全ては願いの為」

「───全ては望みの為」

「─────全ては理想の為」

 

 

一つの単語だけを変え、兵士達はそう繰り返す。自我が存在しない機械のように寸分違わず同じ言葉を告げていく。

 

その中心で青年は、自らの歯を噛み砕く。ゴギィ! と硬い感触を口に含み彼は口先を広げた。人はそれは、笑顔という。だが、決して生易しい感情によるものではない。

 

 

彼等が口にするのは、祈りと怨嗟。一句違えず、王への敬服を、世界への憎悪を。

 

 

 

「────全ては我等が宿願、我が王、『ゼロ』の為に」

 

歪みきった笑みをその顔に彫り込み、青年は立ち上がる。十人の兵士達と共に今も逃げる少女らの追跡を行う。見落としていたが、彼等の軽装にはある紋様が印されていた。

 

 

 

赤、青、黄、緑、四つの色の中心にある(虚無)。組織のトップとその幹部達を示す────『四元属性』。四方の陣はその組織のエンブレムを意味していいる。

 

 

 

人為的に力を与えられた、『四元属性』の異脳使い。様々な因縁によって引き起こされる守る為であり復讐の為である戦いが、京都で引き起こされる。

 

 

これはその予兆。来るべき大戦の前座に過ぎない。

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