本気で死ぬかと思ったわ。
「───着いたぞ」
ボソリと呟くような声音で紅蓮は
「………え?ここは───」
戸惑う雲雀を他所に、紅蓮は扉のドアノブを掴み、扉を開けた。
「久しぶりね、雲雀」
「春花の部屋、だ」
蛇女選抜チームの一人、春花は嬉しそうにしながら、部屋から出てきた。
「ここに来たということは………答えは出たの?」
春花は先程とはうって代わり、真剣な声で雲雀に問いかけた。雲雀は少しの間、目を閉じて、
「うん、………春花さん。雲雀、蛇女に、春花さんたちの仲間になる」
蛇女に入ると決断をした。
「……………そうか」
「そう………懸命な判断ね」
雲雀の決断に、紅蓮と春花は納得したように反応をする。
(これは雲雀にしか出来ないこと。蛇女に入って隙を見て超秘伝忍法書を取り戻してみせる)
雲雀は自分の目的を果たそうと、心の中で再度決意を抱いた。
(まぁ、魂胆は見え見えだけど、しばらく付き合ってあげるわ。…………面白そうだし。ふふふ)
(………春花も理解しているのか?………ならいいと思うが)
だが、二人に感づかれていることは、雲雀はまだ知らない。
「ここが、訓練所だ」
仲間になると決めた雲雀のために、紅蓮と春花は案内をしていた。だが、紅蓮は不満そうに呟く。
「本来なら、まずは、あの方に、紹介するつもりだったがな」
「別にいいじゃない、鈴音先生も出掛けてるし、あの方も今は忙しいんでしょ?」
項垂れる紅蓮に春花は少し嬉しそうに説得をしていた。雲雀は訓練所で少女達が行う訓練に息を飲んだ。
「………それで、いつまで、隠れてる?」
ため息を漏らした紅蓮はおもむろに後ろの木々に声をかけた。
その直後に、木々から飛び出した4つの人影が地面に着地をした。
「新しく入ったお前に、紹介をしよう。眼帯を着けているのが、未来。さっきから無表情のこいつが、日影。そして、お嬢様みたいなのが、詠だ」
紅蓮の紹介に、未来は不満そうにそっぽを向き、日影は同じような無表情を浮かべ、詠はニコニコと笑みを浮かべる。
「最後に…………この
「おい、今バカって言ったか!?」
「きのせー、きのせー」
その紹介に憤慨する焔を紅蓮は適当に流していた。その時、紅蓮の目が笑っていないことを雲雀は視認していた。
「新入り?この子、半蔵学院の忍ですわ」
「あら、私がスカウトしたのよ」
二人の問答を他所に詠が思い出したかのように聞き、春花は全員に詳しい事情を説明した。
「………本気なのか?」
「はっ、はい……もう半蔵には戻れませんから」
焔の問いに雲雀は少し怯えながらも答えた。
「そうか、では今日からお前は私達の仲間だな」
あっさりと仲間と認める焔達に雲雀は驚愕を隠しきれなかった。
「雲雀、良いこと教えてやる。実はこいつ、さっき俺に挑んできてボロクソ負けてるからな」
「何かお前、冷たくないか!?」
陰口を言うように紅蓮は雲雀に耳打ちをした。それを見逃さなかった焔は戸惑いながらも、紅蓮に突っかかる。
「冷たい?………当然だろ」
その直後、紅蓮の様子が明らかに変わった。全身に着込んでいた服から凄まじい程の熱気があふれでる。そして、親の敵を見るような憎悪の視線を浮かべ、勢いよく焔に指差した。
「お前、俺の『期間限定ふっくら手作り生クリーム大増量バニラアイスシュークリーム六個入り』を食っただろうが!!」
「───────え?」
修羅場を予想し、慌てていた雲雀は、その事実をよく理解できなかった。まぁ、ある意味、修羅場なのだが。
「なっ!?それくらい別にいいだろ!!」
「一個だけなら妥協はしたさ。だが!お前、全部食った癖になに言ってるんだ!!」
「また買えばいいじゃないか!!」
「『期間限定』なんだよ!!もう売ってないだろ!!」
物凄い勢いで取っ組み合いを始める焔と紅蓮。それを見ている選抜チームの皆さん。そして、混乱している雲雀。
………二人の取っ組み合いは半時間もの間、続いた。
「すまない、迷惑をかけた」
訓練所を後にし、紅蓮は着いてきた雲雀と春花に平謝りをした。雲雀は
「………どこに行くんですか?」
「仲間と決まったからな、あの方にご紹介をする」
────あの方、
何度も聞いたそのフレーズに、雲雀は疑問を抱いた。
「………そういえば、雲雀はまだ知らなかったのね」
春花がそう言ったと同時に、目の前の扉がゆっくりと開いた。
その部屋は明かりがついていない周りが暗く、部屋の広さを確認することができなかった。
「────選抜チーム『焔紅蓮隊』紅蓮、春花、御用があります」
紅蓮と春花は真剣な顔つきになり、その場で頭を垂れた。
「………ご苦労だったな、よく頑張ってくれた」
暗闇から声と共に、現れた。
銀色のローグコートを着た黒髪の男だった。よく見れば、男の両腕には機械のような腕があった。そして、男は藍色に輝く瞳を立ち尽くしている雲雀に向けた。
「………で、その娘は?」
男は興味深そうに雲雀に視線を向けた。その視線に雲雀は違和感を感じた。
───黒いナニかが蠢いてる……その視線に。
「春花がスカウトしてきた者です。才能もあります」
頭を垂れた状態のままで、紅蓮は男にそう答えた。男はそうか、と呟くと顎を撫でて考え込んでいた。
「フム、新しく入ってきたのなら、自己紹介をしよう。オレはカイル、この蛇女子学園の最高権力者だ」
混乱する雲雀に男、カイルは両腕を広げ、歓喜するような笑みを浮かべた。
「…………よろしいのですか?」
紅蓮達が雲雀の紹介を終えた後、すれ違うように一人の女性が入ってきた。その女性はその話を聞き、
「鈴音先生か…………どういう意味かな?」
椅子に背中をかけてくつろいでいたカイルは、鈴音に対してそう聞いた。
「いや、にわかに信じがたい話で………」
「まぁ、別にいいだろう。邪魔になるなら、始末すればいいだけだからな」
機械の腕をクイクイと動かしながら、物騒なことを言うカイルの言葉に鈴音は頭を下げて部屋から出ようとする。
「………ところで、鈴音先生。少し話があるんだが」
そして、扉の前で呼び止められた。
鈴音は表情を変えずに、くつろぐカイルに振りかえる。そして非難の視線を向けた。
「………次の訓練の準備があるんですが」
「安心してくれ、すぐに済む」
軽い口でそう答えるカイルに鈴音はドアノブに手を置き、
「スパイごっこは楽しかったかな?元半蔵学院の善忍 凛とやら」
────戦慄した。
「オレが貴様の秘密を理解していないとでも思ったか?全て知っているさ、貴様が半蔵学院に情報を漏らしたこともな」
くだらん、と吐き捨てるように立ち上がるカイルは先程とは別人のように変わっていた。
「───クッ!」
鈴音は懐から忍が常時持っている武器、苦無を両手に持ち、カイルに向けた。
途端に、後ろの扉から数人の忍が飛び出し、鈴音を囲んだ。
「抵抗は止めて下さい、先生」
「私達も貴女を殺したくはない」
一人対数人、明らかに不利な状況に、鈴音は素直に苦無を地面に落とした。
「悪いな、鈴音先生。オレの計画、望みの邪魔をされたくなかったからな」
両腕に錠を付けられた鈴音にカイル近寄って謝罪をした。だが、その謝罪は心からのものではない。ただ、目の前の
「────計画?」
だが、鈴音───いや、凛には引っ掛かることがあった。それはこの男の計画、目的が何なのかを理解していなかった。
「いい機会だ、短い余生に免じて教えてやろう!オレの計画の目的を」
カイルは嗤う。もうすぐ叶う自分の望みに興奮を抑える為に。そして、大声を張り上げた。
「───神々の奇跡、『聖杯』を手に入れる、そしてオレの望みを叶える!それがオレの目的だ!」
カイルは高笑いを周りに響かせ、歓喜の表情を浮かべた。だが、まだ誰も知らない。
カイルの『聖杯』に執着する狂気と歪みを。
蛇女子学園の黒幕たる存在、カイル。
その存在を知らないユウヤ達は雲雀を助け出すために蛇女子学園への潜入を決行する。
次回、『蛇女子学園 潜入』
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