いやー、凄い頑張ってきたわ。
「………やったか」
起き上がらないカイルを見てユウヤはそう呟く。飛鳥は頷くと元の姿に戻り、フラリッと倒れかける。
倒れそうになった飛鳥を誰かが支える。
「やったな、ユウヤ、飛鳥!」
「すごいよ、二人とも!」
「見事ですわ」
「流石だな」
和気あいあいと仲良さげに語り合う飛鳥達に、ユウヤは苦笑いを浮かべる。だが、斑鳩がそれに気付き、声をかける。
「ユウヤさん、その姿は?」
「あ?」
ユウヤは呆然とすると、鏡を取り出して顔を覗く。鏡には髪の一部が銀色で右目は金色のままの自分の顔が写っている。
「……………何で」
呆然として鏡を見つめていたユウヤはそう呟く。その様子に飛鳥たちは疑問を浮かべる。
直後に、大きな揺れが発生する。
「…………なに!?」
混乱する六人は周りを見渡す。大きな揺れと同時に壁や天井に亀裂が入る。自分達がいる建物が崩れてきているのだ。
「クソッ!皆、早く逃げるぞ!」
ユウヤの言葉に頷くと、急いで外へと飛び出していった。
「………が………ぁ………ぁ」
部屋の中で一人、カイルは呻き声をあげる。動かぬ体を力ずくで動かし、ビキビキと音を立てる機械の腕を伸ばした。
「まだ………オレは……………『聖杯』ヲォ………」
ふと、上へと伸ばしていた腕がピクリッと止まる。天井から穴が開き、自身を照らす輝かしい光を見たからだ。
───あぁ、ようやく理解できた。
ゆっくりと体の力を抜き、その場に大の字で倒れる。
「……………ごめ………ん、父さん…………母さん……
……………ゆ─」
声は瓦礫が落ちる音に遮られる。カイルは静かに涙を流しながら、落ちてくる瓦礫を見上げた。
目が覚めると、白一色の部屋にいた。いや、少し付け足そう。自分はベッドの上で寝ていて、近くには機械が置いてあった。
「──────は?」
そこで紅蓮は、朦朧としていた意識が覚醒した。自分の体に取り付けられた器具を見て、ふと思い出した。
(…………あの時、俺はカイルの攻撃を防いで………)
死んだはずでは?と訳のわからない疑問に抱くが、分からないものは仕方がないと思い、起き上がる。
「やぁ、目が覚めたようだね」
扉が開く音と共に声が響いた。驚きを隠せずに、扉の方を見やる。
「え?」
そして、口をポカンと開いたまま、硬直した。扉から出てきたのは、ダボダボの大きな白衣を着ている、子供だった。
「フーム、やはり見てみると右腕と両足が麻痺を起こしているね。検査によると、薬の副作用。最低二日は安静にしないと駄目だね、ウン」
子供の割には随分と小難しい話をしている白衣の男の子。紅蓮から見て、8,9歳くらいだと推測できる。
「………あの、君は?」
「ん、あぁ、そうだね。まだ何も分からないんだったね」
その男の子はやれやれと困ったような顔をすぐに消して、笑顔を見せる。
「僕は、桜木・ツァーリ・フロントライン。こう見えてもこの病院一の医者だよ。後、病院の皆からは桜木先生、もしくはDr.ツァーリなんて呼ばれてるさ。それと、僕はロシア人のハーフだからね」
「………………………はぁ!!?」
多分、紅蓮がこのくらい声を張り上げて驚いたのは、初めてだろう。何せこの子供が医者だと言ったのだから。
「いやー、驚いたよ。彼に電話を貰った後に、女の子たちが君を抱えて来たんだからね」
その言葉に紅蓮は反応する。女の子たち、それは焔たちのことだろう。だが、紅蓮は周りに焔たちがいないことに少し困惑を隠せなかった。
「安心してくれ、あの娘達は無事さ。昨日も君に会いに来てくれたよ」
「……………え、昨日も?」
安心させるように言った桜木の発言に紅蓮は確認をするように桜木を見る。
「君はね、3日間も眠ったままだったんだよ?」
3日間。そのくらい眠っていたという事実に紅蓮は俯いた。自分を助けてくれた彼女たちに迷惑をかけたと思い悩む。
「僕もホムンクルスを治療するのは初めてだったけど、彼の助けがなかったら危なかったね」
何か重要な事を言ってる気がするが、それよりも気がかりなものがあった。
(…………彼?)
性別は男と分かるが、誰だかは不明だ。ユウヤかと思ったが、話を聞くとカイルと戦っていたと聞く。
「まさか……………」
自分が知る人物で男は一人しかいない。だが、有り得ないという考えがあった。
「紅蓮、無事だったか!」
勢いよく扉を開けて、焔達は走るように入ってきた。その様子を見て桜木は、静かに入っておくれよ…………と頭を抱えていた。
「皆!……………その、すまない」
駆け寄ってきた彼女たちにユウヤは頭を下げる。自分のせいで迷惑をかけたと深い後悔があったのだ。
「いやー、紅蓮。こっちも言わなきゃいけないことがあるんだが………………」
焔が困ったように頭を掻く。いや、よく見ると他の四人もそっぽを向いてる。おい、待て、目をそらすな。
とか、変なことしているうちに意を決したように焔は言った。
「……………私たちがカイルを倒したってことになって、抜忍になったんだ」
……………………は?
紅蓮はまた、口をポカンと開き、唖然としていた。
「…………そう言えば、桜木先生……でしたわよね」
「ウン、そうだけど………何か用かい?」
ようやく正気に戻った紅蓮が焔に掴みかかり、詳しく問いただそうとしている間に詠は桜木に声をかけた。
「前も言ってましたが…………紅蓮さんを助けてくれた『彼』って誰のことです?」
先程も口にしていた『彼』と呼ばれる人物に詠は奇妙に思っていた。
「…………僕もね、名前は分からないんだ。けど」
桜木は椅子に腰を掛けて、机に資料を積み重ねる。そして、資料を整理しながら、話した。
「────両腕に機械の義手を着けていたね、彼は」
死塾月閃女学館。
半蔵学園とは違う、善忍の育成機関の一つ。半蔵学園とは違い、女子校とされている。
その近くの森の中で人影があった。
『こちら、レフト・チーム。特別強襲作戦β-3、プラン05無事成功』
黒ずくめの武装した男の懐から取り出した無線機から声が聞こえる。
「ご苦労、指示があるまでその場で待機」
『了解』
黒ずくめの男は顔に着けていたマスクを外す。そして、顎髭を擦りながら、森の奥へと進んだ。
奥には武装した兵士達が隊列を組むように、並んでいた。
「いつでも作戦を実行できます……………ボス」
大木に寄りかかっている青年がいた。整えられた白髪に一本だけピンッと立ち、自己主張を表している。そして、薄暗い軍服の上に口元を隠すような上着を着ていた。
「いいだろう、丁度頃合いだ。
午前14:52、特別強襲作戦β-5を実行するッ!」
青年の言葉を聞き、兵士たちが近くの機器を弄り始める。そして、ガラスケースを開き、赤いボタンを押した。
ドガァァンッ!!
死塾月閃学館の校舎の一部から爆発が起こる。突然の爆発に驚いたように数人が飛び出してくる。
「プランⅠ、成功。プランⅡを開始します」
兵士の一人がそう言うと、青年がゆっくりと腰を上げる。その様子を確認した男は持っていた無線機のスイッチをいれる。
「プランⅡを開始するッ!全員、突撃ィ!!」
無線機からの声を聞いた兵士たちが、森の中から飛び出す。
「なッ!?」
「クッ!襲撃────がッ!?」
兵士たちに驚いた男女は兵士たちに針を撃たれる。針を撃たれた男女はすぐさま引き抜こうとするが、ガクンッと白目を剥いて、地面に倒れこんだ。
「先生ッ!」
校舎から出てきた少女達が周りを確認すると、すぐさま兵士達の銃撃を回避し、自分達の武器を構える。
少女達の様子を見て、兵士達も銃の弾を別の物に変える。そして、銃の先を少女達に向ける。
「───お前達は、アレを探せ。
歩いてきた青年が腕を兵士達の前に出して止める。兵士たちは少し戸惑ったが、すぐに敬礼をすると、校舎の中に入っていった。
そして、この場にいる襲撃者が一人になった。
少女達は困惑を隠せずに、互いを見るが、警戒を忘れてはいない。少女達は武器を構えながら、青年の隙を狙う。
ポツリッ
腕に落ちてきた水滴に少女は気を取られた。だが、それは他の少女達も同じだった。ふと、少女達は空を見上げる。
「……………雨?」
空から落ちてくる水滴の正体を呟いた。だが、少女達は信じられないと思っていた。
空に雲一つもなく、太陽が照らされていた。それなのに水滴は空から降り注がれる。
「────悪いが、大人しくしててもらう」
青年の言葉に答える者は居なかった。
少女達は体の至るところから、鮮血が噴き出たのだから。少女達は何が起こったかも分からず、全員地面に崩れ落ちる。
「安心しろ、急所を外した。死にはしないだろう」
雨と少女達の血が混じり、地面を濡らす。青年は意識を失った少女達の横をゆっくりと歩き始める。青年は雨がかかっているにも関わらず、濡れてはいない。
「さぁ、計画を実行しようか」
そうして、襲撃者達は死塾月閃学館に侵入した。
次章 『Judgment to Abyss』
是非とも、この小説をよろしくお願いします!!
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