月閃女学館の雪泉という少女から、協力してほしいと頼まれたユウヤ達。飛鳥達ならともかく、相手が悪いと首を捻っていたユウヤだったが、
「…………やっぱり、引き受けんだよなぁ」
目の前で仲良くする少女達を見て、甘いなとため息を吐く。だが、彼には少し違和感が残っていたのだ。
(こいつら、何か隠してるのか?)
雪泉と他の四人の動きに何かぎこちないものがあったのだ。まるで、後ろめたい事があるような…………。
(いや、よそう。あまり疑うべきじゃない…………警戒はするがな)
「生憎、仲良くしてる所、悪いが」
心の中で決心したユウヤは両手を叩いた。その音に反応して少女達は一斉に振り向く。
「まずは、今後のことについて話し合うべきだろ?」
その後、ユウヤの言葉通りに話し合いが行われ、結論が出た。
───互いに別れて見張りをするという結論に。
「あー、結局俺一人になるのかよ」
一人で校舎をパトロールしながら、ユウヤは悪態をつく。まぁ、自分の実力を知ってての事だろうが、やはり寂しかったりするのだ。信頼されてるとはいえ、泣けてくる、と項垂れる。
だが、彼は知らない。
「あの人、誰でしょう?お客様でしょうか?」
「よく見ると、格好いいですよ」
教室から扉を開けて、生徒達が見ていることを。そして、顔を赤らめていることも。
「あ?」
熱い視線にユウヤは振り向くが、何も変化は無い。前へ向き直り、歩き始めたユウヤはふと外を見た。
(風が一つもない、か)
静かになっている外を睨む。風が少しもない…………まさに、攻撃にはいい状況──────
ドガァァンッ!!!
突如、爆音と共に衝撃が起こった。
「何ですか!?」
「爆発!?」
校舎内にいた生徒達が困惑を隠せずにいた。
「皆さん、早く避難を!」
雪泉の言葉に頷いて、生徒達は急いで外へと駆けていった。時間が経ち、その場には雪泉達、五人しかいない。それが普通だ。
「…………もう誰も居ませんよ。出てきなさい」
誰もいない空間にそう問いかける。彼女達しかいない場合、返答が返ってはこない。
「ふぅん、気付いてたか」
だが、答える声があった。それと同時に空間が歪んだ。文字通り、『歪んだ』のだ。
そして、その場に一人の青年がいた。
コートを羽織った口元を隠すような銀髪の青年だった。青年は左右の手にショットガンに、マシンガンを持っていた。
「貴方ですね、私達の学校を襲撃したのは」
「…………いかにも、その通り」
青年は身振りをして、腰を曲げる。そして、続けた。
「まずは、自己紹介をしておこう、自分の名はシルバー。対忍殲滅部隊『
シルバーはそう言うと自身の持つ二つの武器を地面に投げ捨てた。
「覚えとく必要はないね。君たちはどうせ痛めつけるし、」
「…………私達を舐めているのですか?」
「舐めてる?とんでもない」
余裕そうな態度に雪泉達は怒りを顕にする。だが、シルバーをそれを見て、やれやれと困ったような顔をした。
そして、呆れた声音とは違い、嘲笑するように告げた。
「これは、ハンデさ。むしろ、感謝してほしいね。君達のような現実を見ない子供に『くだらない正義を叶える』チャンスをあげているんだから」
その言葉が彼女達のナニかに触れた。
「────さい」
「?」
「取り消しなさいッ!!」
雪泉の足元から吹雪が起こった。一瞬で、部屋の中を氷の世界へと変えた。
「私達の前で正義を語らないでくださいッ!!」
雪泉だけではなく、夜桜に叢、四季、美野里もシルバーの前に立ちふさがった。
額に手を置いたシルバーは、深いため息を漏らす。そして、彼女達に告げた。
「ほら、だから言ったんだよ」
そう口にすると、彼は手で払った。
「え?」
少女達は衝撃を受けた。凄まじかった怒りを忘れるほどの衝撃を。
シルバーが手を振るっただけで、氷の世界は消滅した。吹雪が吹き飛ばされ、氷は粉々に砕かれる。
そして、シルバーが続けた言葉が呆然とする雪泉の耳に聞こえた。
─────現実を見ない子供とね。
「チッ、どういうことだ?」
周りにいた生徒を避難させ、爆発の起こった場所に向かったユウヤは舌打ちをしながら、周りを見渡す。
「……………静かすぎる」
そう、静かすぎるのだ。今もなお、避難していた生徒達の声が遠ざかり、物音ひとつも聞こえない。
(襲撃者の気配もしない…………何故だ?)
どれだけ神経を研ぎ澄ましても、何一つ感じられなかった。この感覚にユウヤは不安になってくる。
(まるで、世界そのものが別のものへと入れ替わったような……………)
「はろー、元気かなぁー?」
ゾクリ、その声はそう感じさせた。
「ッ─────ぁ」
強者の威圧感とは違うソレに、彼は久しぶりにある感情を抱いた。
『恐怖』だった。
逃げろ、と全神経が悲鳴をあげる。だが、体が地面に同化したように硬直していた。
ユウヤは声のする方向に視線を向ける。
侵食される。
侵食される。
世界が徐々に侵食されていた。
闇でもない、聖でもない、光でもない、影でもない、黒でもない、白でもない、
純粋な『混沌』に。
その『混沌』の中から人影が現れた。
赤黒いフードの付いたコート。
タランと垂れるボロバロの袖。
そして、フードの中から見える─────ニンマリと笑う明るそうな仮面。
その仮面は幼い子供が着けていそうな雰囲気を醸し出している。
だが、仮面にあるどす黒い丸い瞳が、その雰囲気を台無しにする。
「お前………………は?」
込み上げてくる吐き気と恐怖に堪え、震えながらそう聞いた。
目の前にいる、全ての邪悪な部分を塗り固めたような本物の『怪物』は嗤い、首を捻った。
「そうだねぇーーーーーーーー。僕は『カオス』。かつて君達が倒した男、カイルの共犯者。分かりやすく言うと、彼を操っていた黒幕さぁ」
次回『混沌』
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