青年の姿をしたナニかは腕を振るっただけだった。
突風が周りに吹き荒れ、校舎を半壊させた。
だが、その影響を受けたのは、飛鳥達だけではなかった。
「きゃああぁぁ!!?」
ガラスを割り、壁を吹き飛ばす程の強風が雪泉を襲った。突然起こった強風に耐えきれず、彼女達は壁に叩きつけられる。
「…………遅かったか」
地面に駆動鎧の脚と腕を打ち込み、強風に耐えきったシルバーは半壊した校舎の方へと目を向ける。
「全部隊に伝令、緊急非常事態発生。標的への攻撃を優先しろ。不可能な場合、撤退を許可する………繰り返す」
シルバーは小さなマイクに向かって声を出す。だが、マイクからは返事が来ないことに、彼は舌打ちとともにマイクを地面に叩きつけた。
「………まずいことになったな。もし、史実通りの奴だったら、相当危険だぞ」
「どういう、意味ですか?」
余裕のないシルバーに背中を打ち付けた雪泉は苦しそうに問いかけた。
「お前達、月閃女学館が所持してる宝物さ…………まさか、本当に知らないのか?」
雪泉は戸惑いながらも、首を横に振る。その様子を見たシルバーは呆れたように顔をしかめた。
そして、銀髪の青年は聞こえるようにハッキリと告げた。
「あれは伝説上の存在、『
「………………ッ!?」
ハッと、意識が覚醒したユウヤは勢いよく飛び起きた。そして周りをキョロキョロと見渡し、自身の体に手を置いた。
「夢…………か?」
ズキリと杭が打ち込まれるような頭痛に頭を押さえる。彼は自身の記憶を辿ることにした。
『深海の魔神』の襲撃に備え、パトロールを行っていた最中、爆破があったのだ。
その直後、
『はろー、元気かなぁー?』
とてつもない吐き気が込み上げてきた。口を押さえ我慢しようとするが、思い出すだけでも震えが止まらなかった。
「何だよ………アレは」
彼は今まで多くの敵と戦ってきた。
人間、忍、妖魔……………自分が対面したアレはそんな優しいものではなかった。
この世の悪意の塊、その呼び方が相応しかった。
もう止めようと両頬をパンっと叩く。
「………奴の事は後だ。それよりも、どういう状況だこれは」
周りの荒れように戦慄していたユウヤは、服についた誇りを払いながら、立ち上がる。
「………ここは?」
意識を取り戻した飛鳥は周りを見渡す。倒れていた仲間達に気付き、助けようと動こうとした途端、すぐさま目を疑った。自分達がいたのは確か地下だったはずだ。
ならば何故、太陽の光が自分達を照らしてるのだろうか?
先程の出来事を思い出そうとすると同時に、
「…………人間が、まだ生きていたか」
青年、いや青年の姿をしたナニかが、飛鳥を見下ろしていた。青年はつまらさそうに手をゆっくりと─────
「『
青年のすぐ横に向かって電気の槍が穿たれた。青年の目が目の前の飛鳥から外れ、遠くから槍を放ったユウヤへと向けられる。
「今のうちに、逃げろォ!!」
その怒鳴り声に飛鳥はすぐさま走り出して、倒れていた仲間を助けようとする。
「………その力、そういうことか」
青年は少しだけ興味深そうに彼を見た。ニヤリと笑みを浮かべ、彼へと向き直った。
何もしようとせずに、立ち尽くしたまま。
「…………上等だ」
舐められてる、そう確信したユウヤは奥歯からギリィッと音が鳴るのを耳にする。だからこそ、彼も決断した。
全力で葬り去ると。
バッとユウヤは右腕を空へと掲げた。彼の右腕から電気が音を立てて唸った。
先程の一撃とは違う、凄まじいくらいの電撃が蓄えられる。そして、銃のようにした右手を青年へと向ける。
「…………一撃で仕留める!
『
光速の勢いで空間を焼く程の電撃が、青年へと放たれた。明らかに人を殺すだけではなく、死体をも消滅させる程の威力。
青年は何もせずにその一撃を────
ヴォン
「………え?」
まるで、空間そのものが声をあげたようだった。そして、飛鳥は目の前の出来事に呆然とするしかなかった。
青年は傷一つ付いていない、だが問題はそこではない。
「は」
一撃を放ったはずのユウヤの右腕が喪失していた。肩の先から、焼き焦げた後が残っている。
遅れて視界の上から、彼の右腕が確認できた。
ユウヤはバランスを崩し、転げ落ちる。地面に落ちた直後、落下の痛みと右腕の痛みに苦しそうに悶えた。その痛みでなお、我を失わなかった彼は流石と言えるだろう。
「……あがッ……………何だよ、テメェは」
ユウヤは有るだけの敵意を向ける。青年は満足そうに笑うと、腰を折り丁寧な礼をする。
そして、告げた。
「我が
『聖杯』の命に従い、この地上の生命体を殲滅させる者である」
次回『統括者ゼールス』
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