「あーぁ、最近こんな騒動ばっかだな」
バヂッ、と紫電の弾ける音が鉄の壁に響く。言葉とは裏腹に荒れ狂う電気が周りの空気すらも焦がす。その現象を引き起こしているユウヤは内心苛立っているのだ。
「───失せろ、そうすれば見逃してやる」
裏社会の傭兵の本気の威圧。本来なら一般人は気絶し、裏社会の人間でも戦意を失う程のものに青年は平然とする。そして、服を払うと口を開いた。
「その前にいいか?」
「…………なんだ?」
高慢な態度を見せていた青年は行動する。ユウヤに向かって右手を伸ばすと、
「少し話おう。やっぱり俺様でも勝てなさそうだし」
ストップと手の平を見せながら、すぐさま頭を下げてきた。
有り得ない。
シルバーは脳裏でそう叫んだ。自身は水の異能を使用する。水は個体・液体・気体の状態に変化することができる。知っているだろうか、人間はほぼ水分で出来ていると言っても過言ではない。シルバーはその気になれば、どんな人間も手で触れれば、一瞬で殺せるのだ。
それなのに─────、
「あひゃひゃっ!ざーんねーん、でぇーしたぁー!」
「ッ!?」
後ろから首を捻りながら、ボロボロのフードの存在が狂気の声をあげる。不意打ちにシルバーは心臓が止まりかけるが、後ろに振り向くと同時に水を飛ばす。
弾丸のような速さで放たれた水のつぶては、フードの存在の体に複数の風穴をつくる。鮮血を撒き散らし、死んだ──────
「えへぇ、だぁからぁ、僕はぁ君じゃあ、殺せないんだよぉ?」
いや、死んでいなかった。胴体に空いた穴はズブズブと傷口から膨らんでいき、完全に元通りに戻った。フードの存在、カオスも挑発するような喋り方でシルバーに告げる。
「─────化け物め」
現実から目を背けようとしていたシルバーは正気に戻ると、カオスを睨みつける。
「えへへ、そういえばさぁ」
「?」
「君のご両親、災難だったねぇーー」
最後に伸ばしながら話すカオスに、青年は我慢の限界だった。腕を振り上げ、もう一度、確実に殺そうとした。
「………………誰が殺したか、知りたくなぁい?」
「─────────何?」
ビキリッと引っ掛かった。
聞くに耐えない戯れ言と無視することもできた。だが、その話し方には何かを隠したように籠っている。警戒しながら、耳を済ませた。
「君がぁ、知ってる人だよぉ。確かぁ、
黒影って、言ってたねぇ?」
「…………………は?」
聞いた、聞いてしまった。頭が真っ白になり、何もかもが考えられなくなる。
黒影とは、あの少女雪泉達の育て親でもあった人だったはず………………そんな訳がないと。
「おかしいと思わなぁーい?君のご両親はさぁ、悪忍でしょ。黒影って悪を嫌ってたじゃん、殺さないわけがないよねぇ?」
ゾッと悪寒が走った。
シルバーの両親が悪忍だという事実は彼しか認知していない。それは、目の前の存在の言葉が事実だということ。
その考えが、唯一の隙となった。冷や汗をかきながら試行錯誤をしていたシルバーにカイルは邪悪そうに嗤った。
「安心してよぉ。僕はぁ、君を強くしてあげるだけだから」
「く、くがぁぁぁぁぁぁあああああァァァァァァァァァァァァァァ!!!?」
言葉で形容できない程の激痛。それに襲われたシルバーは地面に蹲り、絶叫する。全身を抱え、血液を、肉を、神経を食い破られるような痛みに悶えた。
「異能使いってさぁ、凄いんだよねぇ」
「ぎぎぃぃぃぃ、いぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!?」
全身の至るところから砕ける音と共に血が吹き出る。よく体を見ると血管が黒く変色し、蛇のように蠢いていた。
「普通の人間や忍より、頑丈だしさぁ!!」
───壊れる
───こわれる
───コワれる
激痛に呻くシルバーは肉体と精神、そしてなにかが音を立てて壊れる感じがした。大切なものはまだ耐えてるが、無事というわけではない。
壊れた場所を埋めるようにセレが侵食を行い始める。シルバーは全てを押さえ込むように絶叫した。
「ぎ、ぎぃ、ぐがぁぁぁぁぁァァァァァァァぁぁぁぁぁぁああああああああああああああァァァァァァァァァァァァァァ────────!!!!」
意識が、消えた。
次回『深淵』
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